Another 10 Yearsベビメタ名場面(10) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月29日は、2017年、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、フロリダ州マイアミAmerican Airlines Arenaに出演。チャド(D)、フリー(B)、RHCPスタッフ(tp)が「ギミチョコ」で共演した日DEATH。

<2016年(1)>
●2016年4月2日:「THE ONE」
BABYMETAL World Tour 2016 Kicks off at the SEE Wembley Arena

<セットリスト>
1.    BABYMETAL DEATH
2.    あわ玉フィーバー(海外初披露)
3.    いいね!
4.    ヤバッ!(初披露)
5.    紅月-アカツキ-
6.    GJ!(初披露)
7.    神バンドソロ~Catch Me If You Can
8.    ド・キ・ド・キ☆モーニング
9.    META!メタ太郎(初披露)
10.    4の歌
11.    Amore-蒼星-(初披露)
12.    メギツネ
13.    KARATE(海外初披露)
14.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
15.    ギミチョコ!!
16.    THE ONE(海外初披露)
17.    Road of Resistance
神バンド:藤岡幹大(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)

Wembley Arenaは、ロンドン五輪でも使われた市内最大級の屋内会場であり、大物ロックバンドのライブが行われることも多かった。本来2016年3月にX-Japanのライブが行われる予定だったが、メンバーの病気により延期となったため、BABYMETALが日本人として初めてこの会場を使うことになった。
収容定員は1万2000人。この規模の会場で単独ライブを海外で行える日本人アーティストはほとんどいない。その意味でも歴史的なライブであった。
会場に英語の「BABYMETAL神話」が流れ、「BABYMETAL DEATH」のイントロが始まると、ステージの上段に白い衣装をつけた3人が浮かび上がり、大歓声が上がった。
だが、それはダミーだった。
ベビメタ体操に入る直前、「♪キュイーン」というピッキング・ハーモニクス&爆発音とともに、客席中央にしつらえられた島舞台のスッポンから、本物の3人が“降臨”し、周囲にキラキラとラメが舞った。
これには、イギリス人観客も度肝を抜かれ、もっと大きい歓声と笑顔にあふれた。
“日出づる国のメタル魔法少女”というギミックは、2014年の欧米デビュー時から「J-POPかメタルか」論争を超えて、欧米人ファンの心をつかんで離さない。神出鬼没の登場は、そのイメージを裏切らないスペクタクルだった。
セットリストを見るとわかるとおり、前日にリリースされた2ndアルバム『METAL RESISTANCE』の収録曲が8曲、そのうち4曲が初披露、3曲が国内では披露されていたが、海外では初披露となる曲だった。名門Wembleyを皮切りに、東京ドームへと昇りつめる2016年のツアーは、『METAL RESISTANCE』を宣命するツアーだったわけだ。
ロンドン市内では、地元のプロモーターによる『METAL RESISTANCE』の視聴イベントが行われており、日本からのファンで参加した方もいた。
そのため、すでに新曲を知っている方もいたとは思うが、大多数は初めて聴く曲だったと思う。
だが、聴きなれた「BABYMETAL DEATH」のあと、電子音で始まる「あわ玉フィーバー」にも、イギリスの観客はノッテくれた。
2015年までに知られたポップ系の「いいね!」の後には「ヤバッ!」、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の後には「META!メタ太郎」。
おなじみのSU-ソロの「紅月-アカツキ-」の後にはBBMの新曲「GJ!」、おなじみのBBM曲「4の歌」の後にはSU-ソロの新曲「Amore-蒼星-」という具合に、前作『BABYMETAL』のバリエーションを敷衍しながら、それぞれ世界初披露となる新曲を織り込んだ。
和風メタルの「メギツネ」の後にはやはり和風のモチーフで『METAL RESISTANCE』のリード曲としてシングルカットされた「KARATE」が海外としては初披露された。
そして圧巻は「THE ONE」だった。
この時点ではゴンドラに乗って客席の上空を飛翔したあの映像はまだ公式MVとして公開されていなかった。だが、熱心なファンは、前年12月に行われた横アリでの「THE ONE」を知っており、ヨーロッパのファンの間で、“万国旗プロジェクト”が計画されていた。
それは、各国からやってきたファンがそれぞれの国旗を持ち込み、「THE ONE」の際にそれを振って、BABYMETALの究極のテーマである「メタルで世界を再びひとつにする」という光景を、Wembley Arenaに現出させようという計画だった。
壮大なプレリュードにのって、英語で「…Even this time, 10,000 of heavy metal spirits shone away from Japan…」というアナウンスが流れ、スクリーンに映ったのは、同時刻―日本時間午前5時―に日本のZepp Tokyo会場に集った日本人のファンの姿だった。
海外で活躍するBABYMETALだからこそ、そして高速・大容量化されたインターネットインフラが確立した2010年代だからこそ実現した光景だった。
そこに、神バンドによるイントロが重なり、曲が始まった。
曲の後半「♪ララララー…」のところになると、Wembley Arenaに集まった各国のファンが、計画通り自国の国旗を振り始めた。イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、日本…。「We are THE ONE」という歌詞が現実化した夢のような光景になった。
現実の世界では、北朝鮮による弾道ミサイル実験、ロシアによるウクライナ侵攻、中国による南シナ海・東シナ海島嶼の力による占拠、中東でのISの台頭など、紛争が勃発していた。
音楽がリアルな国際政治に及ぼす影響などほとんどない。
だが、音楽が自由に聴けるかどうか、表現の自由があるかどうかは、独裁国家を見分けるバロメーターだ。「敵国」を設定し、その国の文化や情報を統制し、実際に起こった歴史的事実でさえも都合のいいように捏造する。そこまで国民を目隠ししなければ正当性を認められない。「真実」こそ独裁国家が最も恐れるものだ。
音楽は、こういう国で少しでも状況をよくしようと努力する民衆の心の支えになることができる。
BABYMETALが誰でも自由に聴ける国。
世界のすべてがそういう国になることが、本当のBABYMETAL革命=「世界征服」である。


●2016年4月5日:「Please welcome, BABYMETAL!」
米CBS『The Late Show with Stephen Colbert』

Wembley Arena公演を終えたBABYMETALは、日本へ直接帰らず、ニューヨークへ赴いた。
そして、米CBSの人気番組『The Late Show with Stephen Colbert』に出演した。
この番組は、エルビス・プレスリーやThe Beatlesが出演して爆発的な話題を呼び、全米の人気者になった伝説の音楽番組『エド・サリバン・ショー』の後継番組であり、収録は当時と同じライブハウス様式の「エド・サリバン・スタジオ」で行なわれた。
銀縁メガネがトレードマークの名司会者Stephen Colbertが、観客席に「Please Welcome, BABYMETAL!」(Jaytc意訳:拍手でお迎えください、BABYMETALです!)と呼び込んだ瞬間、拍手・歓声の中、白塗りの神バンドとあのKawaii三人が登場。
大音響の為、マイク収音とライン録りを併用を提案したことで、ヘヴィながらクリアな神バンドの生演奏と「C!I!O!チョコレート、チョコレート…」と歌い踊る三人の姿が全米に放送された。
人口3億人のアメリカ3大ネットワークのひとつであるCBSに出演した影響力は計り知れない。
例えば、帰国後の4月22日にBABYMETALが出演したテレビ朝日『Music Station』で、タモリがYUIに「海外で有名になってなんかいいことあった?」という質問をした際、YUIは「飛行機の中で、キャビンアテンダントさんが、あなたたち、テレビ出てたでしょ、BABYMETALでしょ、って言って」タモリ「おう、それでどうした」YUI「おかしをいっぱいくれました」というやり取りがあった。
日本全国のYMYなファンはこれで萌えタヒしたわけだが、この話のポイントは、偶然乗り合わせたキャビンアテンダントでさえ、『The Late Show with Stephen Colbert』を見ていたという事実である。
また、2017年にぼくが米ノースカロライナ州シャーロットで行われたRed Hot Chili Peppersのサポートライブに行った際、現地在住の妹の義理の母(80歳)にBABYMETALを知っているか、と聞くと、「去年、『The Late Show』で見た」とおっしゃった。息子の嫁が日本人だから、日本の文化に興味があったからかもしれないが、それにしても一年前のBABYMETALの印象は強烈だったわけだ。
つまり、BABYMETALの知名度は、日本人が考えている以上に「全米級」なのであり、その契機となったのが『The Late Show』だったわけだ。
ちなみにこの番組で生演奏した曲は「ギミチョコ!」だったが、Stephen Colbertが紹介してくれたのは、この曲が収録されていない2ndアルバム『METAL RESISTANCE』だった。
その結果、『METAL RESISTANCE』は、米ビルボード200総合アルバムチャートで39位となり、坂本九以来、日本人として53年ぶりに40位以内を獲得した。

●2016年5月8日:「Everybody, Jump!」
Carolina Rebellion 米ノースカロライナ州Charlotte Speedway

<セットリスト >
1.    BABYMETAL DEATH
2.    ギミチョコ!
3.    神バンドソロ~Catch Me If You Can
4.    KARATE
5.    Road of Resistance
神バンド:藤岡幹夫(下手G)、BOH(B)、青山英樹(D)、大村孝佳(上手G)

Carolina Rebellionは、モンスターエナジーの協賛によるローカルなロックフェスであり、ノースカロライナ州の金融・エネルギー産業の中心地シャーロットの郊外にあるインディー500のレース会場Charlotte Speedwayで行われた。
このライブスケジュールが発表されたとき、ぼくはびっくりした。
シャーロットは、日本ではそれほど有名な都市ではない。だがそのシャーロットには、アメリカ人と結婚して国籍までとってしまったぼくの実の妹が住んでおり、数年前に結婚式で訪れた都市だったのだ。
すぐに妹に連絡してCarolina Rebellionのチケットを取ってもらい、2016年World Tour初日ニューヨーク公演が行われる当日に、ダラス経由の飛行機でシャーロットに飛んだ。
フェスはSpeedwayの中で行われるのではなく、その周囲にある丘の上にいくつかのステージが組まれていた。
BABYMETALの出番は、最も奥にあるメインステージではなく、その横にあるセカンドステージの午後2時ごろ。暑い盛りだった。
前のバンドが終わると同時に「ドセンに突撃」したが、ぼくの位置は最前列から5列目くらい、ステージセンターから客席を貫通する通路の脇だった。
開演直前には、直角位置にあるメインステージの前あたりからセカンドステージ周辺まで、数万人の人で埋まり、BABYMETALの現地人気のすさまじさを実感した。
「BABYMETAL DEATH」で登場した三人は、横アリとは比べ物にならないほど「至近距離」だったこともあって、大きく見えた。アメリカのロックフェスに参加したのは初めてだったが、ものすごい盛り上がりで、頭の上をひっきりなしに巨体のアメリカ人男女がクラウドサーフしていくのに驚いた。
4曲目「KARATE」では、2016年World Tourのニューヨーク公演@Playstation Theater以来、間奏部で三人が倒れこむのではなく、SU-が「♪ウォオーウォオーウォオー~」とハミングするバージョンになっていた。まだ正直言ってぎこちなく、アドリブで歌うメロディラインもサマになってなかった。
だが、後半、YUIとMOAが拳を振り上げ、SU-の「♪ウォオーウォオーウォオー」に、客席が「♪~ウォオーウォオーウォオー」とレスポンスし、「♪全部全部研ぎ澄まして」のあと、SU-が「Everybody、Jump!」と叫ぶと、「♪ひたすらセイヤソイヤ戦うんだ、ウォーウォーウォー」に合わせて、観客がジャンプし始める光景が展開された。
その瞬間、ぼくは泣いてしまった。
このブログをお読みの方はわかってると思うが、2014年から、離婚と仕事の不調で50台半ばにして人生にすっかり自信を無くしてしまっていたぼくは、幼くして海外で勝負しているBABYMETALの存在を知り、再び生きる気力を見出し、このブログを始めた。
すると、成人して遠く離れてしまった妹が住む町でBABYMETALがライブをやることになって、その場に居合わせることになった。すべては偶然に過ぎないのだが、その「シナリオ」のような不思議さが全身を駆け抜けたのである。
ちなみにBABYMETALは、翌2017年にRed Hot Chili PeppersのサポートとしてシャーロットのSpectrumに出演し、2018年にもシャーロットのThe Filmoreで単独公演を行った。
大好きなBABYMETALが、日本人にはあまり馴染みがないのに、妹が住むシャーロットで3年連続公演をやるという不思議な“縁”は、今でも感じている。

(つづく)