10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅸ(2)+Ⅹ | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日4月16日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

4月15日、10 BABYMETAL BUDOKANは、最終日Dooms Day-Ⅹを無事終了した。
セットリストはⅨと同じで、終演後発表されたのは、6月26日に10 BABYMETAL BUDOKANの総集編となるWorld Premireをオンライン配信するということだけだった。

https://liveship.tokyo/10_babymetal_budokan/

アベンジャー体制を変更して“三人目”を発表するとか、一部ネットで噂になった4thアルバムとか、ワールドツアーやフェス出演のスケジュールとか、ぼくらがドキドキワクワクしていたBABYMETALの新たな段階=「新章」についてのアナウンスは何もなかった。
つまり、METAL RESISTANCEは最終章を終えたが、その後どうなるかはまだOnly The Fox God Knowsということである。
何かを始めようとしても、武漢ウイルスのせいで、何もかも決められないということなのだろう。
したがって、昨日のⅨのライブレポートを続け、後ほど10 BABYMETAL BUDOKAN全体の考察を行ってみたい。

<2021年4月15日 10 BABYMETAL BUDOKAN Doomsday-Ⅹ>
1. BABYMETAL DYSTOPIA
2. イジメ、ダメ、ゼッタイ
3. ギミチョコ!
4. ド・キ・ド・キ☆モーニング
(「紙芝居~鋼鉄の応援団」)
5. GJ!(MOAMETAL+4人のダンサー)
6. No Rain No Rainbow(SU-METALソロ)
7. Distortion
8. PA PA YA!!
9. メギツネ
10. KARATE
11. ヘドバンギャー!!
(アンコール)
12. THE ONE
13. Road of Resistance
アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:ISAO(南西G)、BOH(北西B)、青山英樹(北東D)、大村孝佳(南東G)

SU-METALが全宇宙の中心となった「No Rain No Rainbow」が余韻を残して終わると、拍手が鳴りやまなかった。
場内の照明が真っ赤に変わり、キーンという不協和音の中、遠くから「♪ウォーウォーウォーウォー…」というコーラスが聴こえてくる。一部ネットではYUIの声も入っているというあのコーラスである。
7曲目「Distortion」。
「In the Name of」をオープニングにするセトリでは、この曲が武漢ウイルス禍によって引き起こされた「緊急事態宣言」=世界の終わり=DYSTOPIAに、救世主BABYMETALが降臨した!というイメージだが、MOAソロ、SU-ソロの後だと、世界を救済するために、それぞれの場所で戦っていた三人が再集結したという「梁山泊」感が加わる。なんのこっちゃか、わからんかもしれんが、とにかくカッコ良さが倍増なのである。
ドラムロールと細かいDjentのギターリフで三人が踊りだすと、ステージにいよいよ戦いが始まるという緊張感が走る。
最初は敵の一撃だ。「Give up Give up!」「Can’t stop the power」「Stop the Power」…。
だが、この連の最後、「Caught in a Bad Dream」の時、アップになったSU-の表情は、鋭い光を目に宿したまま、うっすらとほほ笑む余裕を見せる。彼女はこれが「ただの悪夢」であることを知っている。
2018年には悪夢のような現実に翻弄された。だが今は、それが必ず終わることを知っている戦士の微笑みなのである。
間奏部。SU-が「ブドーカーン!」と叫ぶ。
「Everybody Clap Your Hands!」に応えて観客は手拍子を打ち、「♪ウォーウォーウォーウォー」とシンガロングした。その間のISAO神、大村神のギターのディストーションのかかったリフが力強い。そして青山神のドラムロールが高まり「♪ウォーウォーウォーウォー↑」で、武道館が一つになった。
興奮さめやらぬまま、ステージ外周と中央ステージの側面が炎の映像に変わり、パイロが本物の炎を噴き上げる。
8曲目「PA PA YA!!」である。
観客がすかさず「パッパパパヤー!」と歓声を上げ、タオルを準備し始めると、SU-は「Are you ready---?」と長く叫び、「Jump!Jump!Jump!Jump!…」と煽りながら、曲に入っていく。
観客はタオルを振り回しながら、身体を上下させつつ「ッパッパッパッパ、パパヤー!」と唱和する。
5,000人が巻き起こす風によって、武漢ウイルスなど吹き飛んでしまう勢いである。
MOAとMOMOKOがクルクル回りながら笑顔を振りまく。
SU-は「♪祭りだ祭りだ」のところを、以前のように巻き舌ではなく、普通に歌っている。MOAの「祭りだ祭りだ」は以前と変わらずKawaii。
間奏部、F.HEROが上部スクリーンに現れると、三人は腕組みをしてドヤ顔をする。三人ともその表情は誇りに満ち、美しかった。
曲が終わると、5,000人の観客が拍手し、「ウォー」と歓声を上げた。
場内が赤く染まり、「♪キーツーネー、キーツーネー、わーたーしーはーメーギツネー、キーツーネー…」というSU-のアカペラが響く。9曲目「メギツネ」である。
スクリーンには、2014年の日本武道館、2015年の新春キツネ祭り、2015年の横アリ、2017年広島のモノクロ映像が次々と映し出される。その中にはYUIの後ろ姿もある。
10年のBABYMETALの歩みは、キツネ様に導かれたものだ。
その10年を振り返る10 BABYMETAL BUDOKANもまた、キツネ様に捧げられているのだ。
和楽器のカラリンコンという響きから、ステージ中央でMOAとMOMOKOがキツネサインを合わせ、観客席に突き刺すと、ピッキングハーモニクスに合わせて、三人がぴょんと飛んだ。
「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」で三人が踊りだす。
2014年のSonisphereでイギリス人を驚嘆させた、浮遊感をともなう踊りながらの平行移動のシークエンスだが、ぼくは10 BABYMETAL BUDOKANで、さらに一皮むけた段階に達したと感じた。
身体がまだ小さかった2014年までは、何も考えずに跳んでいたと思うのだが、2015年以降、大きくなった身体で跳ぶために、筋肉をつける必要があった。そのため、アスリート並みのトレーニング(MIKIKO師)を積み、2017~2018年には女子プロレスラーのようなムキムキの身体になっていたのだ。
だが昨年からはMOAもSU-も身体をしぼり、結果、しなやかで、力を入れずともふわりと跳んでいるみたいに見えるようになった。実際どのような体の使い方をしているのかはわからないが、武道館の客席から見る限り、跳躍、移動の動きがいとも軽やかに見えるのだ。これは、ダンサーとして理想だろう。
それと同時に、SU-の歌唱も、目いっぱい息を吐きだして歌うのではなく、八分くらいの息でビックリするくらいの声量が出る。「♪ここに生きーるー」のピッチは、SU-の調子をはかるバロメーターだが、Doomsday Ⅸではまったく狂いがなく、しかも透き通るような声を響かせた。
間奏部。SU-は「ヘイ!ブドーカーン! I want to see the Big Wave!」と叫び、KOBAMETALの「前説」どおり、東から2周、ビッグヘドバンウェイヴが行われた。するとSU-は「Thank you guys!」と叫び、さらに「On the count of three, Let’s jump up with the Fox God」と言い、「1、2、123!Jump!」から、5,000人の大ジャンプ大会となった。「メギツネ」の興奮おさまらぬまま、場内が今度は青く変わる。
10曲目「KARATE」。
三人が斜めに伸ばした両手の角度は完全な平行を形作っている。
「♪心折られても…立ち向かっていこうぜ~」
歌が始まると、SU-のピッチがまったく狂わないことに改めて驚愕する。
人間の声帯には鍵盤やフレットがなく無限に音程が変わってしまう構造である。だが、Doomsday ⅨのSU-METALは、押さえ方の強弱で音程が変わるギターよりも正確なピッチで歌い上げた。大音量のメタルバンドの中でも、SU-の声はよく通り、正確なピッチでメロディラインを観客席に伝えてくる。
やはり、「世界の歌姫」なのだ。
この歌を生で聴けることこそ、10 BABYMETAL BUDOKANの価値だろう。
間奏部。ステージスクリーンには、過去のBABYMETALが倒れる映像が流れる。現実の三人とオーバーラップするのだ。そして、スクリーンでSU-が上手に倒れているメンバー、すなわち顔の見えないYUIを助け起こす瞬間、その映像はDarksideのロゴが描かれた会場でのシーンに変わる。
10 BABYMETAL BUDOKANの「KARATE」の映像には、こういう細かい歴史が刻み込まれていたのだ。
雷鳴が轟き、運命を示すオルガンの音色が響き渡る。
11曲目「ヘドバンギャー!!」
この曲は「紙芝居」のいう「死と再生の物語」、すなわちBABYMETALの「次の段階への進化」を予兆する曲であり、METAL RESISTANCE最終章である10 BABYMETAL BUDOKAN10公演では常にセトリ終盤に置かれていた。
「♪ヘドバン、ヘドバン…バンバン、ババン…」と腰に手を当てて横降りヘドバンをする三人の動きはあくまで軽快である。SU-がマイクスタンド=魔法の杖=ファルスの象徴を振り回して歌い、MOAとMOMOKOは、風車ヘドバン、ツインテール持ち上げをしてこの曲の「成長」テーマを伝える。それは今までと変わらないが、10 BABYMETAL BUDOKANでは、全方位から見られるように、「正面」を変えていく。それが軽やかで実に自然だ。東京ドームなど、これまでのライブではステージ自体が回ることが多かったが、今回はステージ自体は動かず、ステージスクリーンの映像が動き、それにつれて自分たちが踊りながら回っていくのだ。
日本武道館が一体化したヘドバン地獄を経て、人形ぶりで三人が倒れ込んだ時、改めて後姿まで見せるという10 BABYMETAL BUDOKANのパフォーマンスの凄さに驚嘆した。
薄明りの中、「BABY、METAL、チャッチャッチャッチャッ」のSEが繰り返される。
ここから先はもうわかっている。すべての回に共通する12曲目「THE ONE」からの13曲目「Road of Resistance」フィニッシュである。
BABYMETALロゴ旗を担いだ三人が、ライブ始まりと同じ位置から再登場し、ステージ中央に集まる。
SU-がピットを分ける仕草をしても、WODはできない。それがもどかしいが、MOAの「1234!」の掛け声で曲が始まり、SU-が「♪東の空に~」と歌い出すと、やはり場内は「DEATH!DEATH!」の合いの手であふれた。
驚異的なのは、SU-のピッチである。1時間歌い続けてきたのに、ピッチがまったく狂わない。
MOAも元気いっぱいで「Now is the Time!」のところでアップになる表情は誇りに満ちた微笑だった。シンガロングパートでのSU-のセリフは以下のとおり。
「10年間、私たちを支えてくれたすべての皆さんに感謝します。みなさん、BABYMETALに出会ってくれて本当にありがとうございます!」
「♪命が続く限り、決して背を向けたりはしない。今日が明日を創るんだ。そう、ぼくらの未来、On the way!」の後の雄たけびは、「ブドーカーン!」だった。
そして「♪ぼくらのレージースターンス!!」まで、ピッチは正確なままだった。
「We are?」「BABYMETAL!」のコール&レスポンスが繰り返され、ステージ外周を回る三人は最高の笑顔で客席に手を振った。


ステージ北側に巨大な銅鑼が現れ、「3、2、1!」でSU-が銅鑼を鳴らした。
4月15日のⅩでは、ついにこの「鐘」が10カウントを数えた。1月19日に始まった10 BABYMETAL BUDOKANは全日程を終了したのである。