10 BABYMETAL BUDOKAN Ⅲレポート(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日2月16日は、2016年、6月5日のオランダのフェス『FORTAROCK 2016』に出演することが発表され、2020年、ベルギー・ブリュッセル公演@ABが行われ、2021年10 BABYMETAL BUDOKAN Ⅲが行われた日DEATH。

<セットリスト>
01. In The Name Of
02. Distortion
03. PA PA YA!
04. ギミチョコ
05. ド・キ・ド・キ☆モーニング
06. シンコペーション
07. メギツネ
08. KARATE
09. From Dusk Till Dawn
10. ヘドバンギャー
11. Road of Resistance
12. THE ONE
13. イジメ、ダメ、ゼッタイ
神バンド:(下手G)ISAO(B)BOH(D)青山秀樹(上手G)大村孝佳
アベンジャー:岡崎百々子

入場するといつものようにラムシュタイン、メタリカ、マリリン・マンソンらお馴染みのBGMが流れていた。
本日のぼくの席は、西側二階席P列という東京ドーム2日目以来の天空席。それだけにステージの構造がよくわかる。ステージ構成は約1か月前のⅠ・Ⅱと全く同じ。
18:31。客電が消える。
揺れる蝋燭の映像とともに現れたKOBAMETALは、Ⅰ・Ⅱと同じように、2020年、世界がDYSTOPIAに覆われた経緯を語ったが、後半から少しずつ違う言い回しが増えた。曰く、DYSTOPIAによって世界は「破壊された」こと。そして、禁じられた「ぼくらの声」「メタルの叫び」とは「歌うこと」だったこと。
確かに、前回一番もどかしかったのは、シンガロングや合いの手で、すぐそこにいるSU-やMOAと一緒に歌えないことだった。
だが、今回は新機軸が打ち出された。
「あらゆる表現方法」で心の声を伝えることができるとして、まずは南側客席を対象にSEの「BABY、METAL、××××」のところで手拍子をする練習が行われた。
次に北側客席に向けて、「BABY、METAL、××××」のところで、足踏みをする練習。
最後に、西から東へ、ヘドバンウェイヴの練習。客同士、手をつなげないのがもどかしいが、両手を上げておいて、「ヘドバンギャー!!」のヘドバン地獄のようにタイミングを合わせて折り曲げるのだ。
KOBAMETAL曰く、「こうして我々は、THE ONEになるのだ」
Ⅰ・Ⅱではこういう練習がなく、特に初日は観客も戸惑っていたのだが、今回は「ウォー!!」というSEの歓声に合わせて手拍子、足踏みをすればいいというわかりやすい「前説」があったわけだ。
KOBAMETAL客席にワクワク感があふれると、暗転し、1曲目「In The Name Of」の神秘的なイントロが流れ、前回同様、8人のキツネ面の男たちが、たいまつを持って現れた。
天空席からだと、前回以上にステージ全体の照明による演出がよくわかった。八角形ステージの最外縁から天井に向けて垂直に放たれた数十本の青いサーチライトの「柱」が、ローマの神殿を思わせる。
続いて、南、東、西のスッポンから、ガウンとマスクをまとったSU-METAL、MOAMETAL、岡崎百々子が現れた。禁じられていても、ここは「ウォー!!」という拍手、歓声が湧きあがり、客席が一斉に立ち上がる。
Djentなギターのリフから曲が始まると、三人が手に持っている錫杖の動きに合わせて、客席が手拍子しながら両手をステージに向けている。それは、声は出せないが「ぼくらはちゃんとここにいるよ、見ているよ」という5,000人の気持ちの表れである。ともすれば、「近くに見えるのに、ちゃんと伝わっているのかなあ」というお互いの戸惑いがあったⅠ・Ⅱより、客席とメンバーの距離がぐっと縮まった感があった。
神バンドは前回同様、南西角にISAO(G)、北西角にBOH(B)、北東角に青山秀樹(D)、南東角に大村孝佳(G)という布陣。
通常のライブと違って、客席に最も近いのがバンド、客席から遠い中央ステージで歌い踊る三人という構造である。
オープニングのインスト曲「In The Name Of」が終わると、不穏な雰囲気のSEが流れ、遠くから「♪ウォーウォーウォーウォー…」というコーラスが聴こえてくる。
2曲目「Distortion」である。
このスタートは2018年と同じ。現在の状況がBABYMETALにとってDarksideであることを如実に表している。
客席は、「♪ギバッギバッ」の合いの手や、「♪ウォーウ、ウォーウ、ウォーウ、ウォー!」のところでキツネサインを掲げて「心の声」を伝える。
間奏部で、SU-METALは、ニコニコ顔で「ぶどうかーん!」「Welcome to 10 BABYMETAL BUDOKAN!」と叫んだ。ぼくが2018年6月、イギリスはドニントンパークのDownloadフェスで観たときのような悲壮感はない。どんな苦境にあっても、BABYMETALは勝利する。その確信のオーラが全身から放たれていた。
曲が終わるとSEで「ウォー!!!」という歓声が入る。Ⅰ・Ⅱでは控えめだったが、今回は曲終わりに被るように流れるので、客席からの本当の拍手や小声の歓声を「増強」してくれるようだった。
3曲目は「PA PA YA!!」。
パイロが火を噴き、ステージの側面、ステージ床面も一面炎に包まれる。
イントロと同時にSU-が「Are You Read---y!? 」と叫ぶ。武道館規定でジャンプを煽ってはいけないのだが、客席は、小刻みにジャンプしながらタオルを振り始める。だって声も出せないのだからね。
天空席から見ていると、1席置きにいる5,000人のほぼ全員が立ち上がってタオルを振っていた。壮観の一言である。
これで、ライブは一気にヒートアップした。
「歌えない」どころではなく、5,000人がタオルを振り回し、「♪ッパッパッパッパ…パパヤ!」に合わせてジャンプし、「♪祭りだ祭りだ…」のところはニコニコ顔で盆踊りをしていた。モッシュやシンガロングはできないが、やっぱり楽しい。いや、本当は5,000人で歌いたいし叫びたいしモッシュしたい。それを禁じられた中での最大限の楽しさを、10 BABYMETAL BUDOKANは提供しているのである。
大興奮のうちに「PAPAYA!!」が終わると、舞台は暗転し、SEで「ベイビー、メートー、××××」というコールが流れてくる。観客は「××××」のところで、「前説」どおり、素直に手拍子をした。
約3分間、インターバルが続き、ステージ上方の八角形スクリーンとステージ床面に「Give Me Chocolate」という文字が点滅する。
「MCなし、アンコールなし」がBABYMETALライブのお約束だから、暗転中、メンバーはステージ下で水を飲んだり、呼吸を整えたりしているのだろうと思う。それが、天空席から見ていると、手に取るようにわかる。
今回のライブは、大掛かりな舞台装置というより、シンプルな構造で、ステージ上方の八角形スクリーン、ステージ床面や二段ステージの側面もスクリーンになっており、連動して動く映像をそれぞれのスクリーンに映写することで曲ごとの演出がなされるしくみになっている。
「ギミチョコ!!」はハードコア楽曲なので、そのシンプルさがストレートに客席に伝わる。
暗転の中で繰り返される「♪Give Me…」キリキリキリ…というSEの中で、三人が再びステージに現れ、シンクロ率200%の角度で手を上げた瞬間、巨大な日本武道館がまるで小さなライブハウスであるかのように、一体化した。
1番は西側を正面としていたので、三人の振り付けの連動性が、すさまじいまでに上がっていることに戦慄を覚えた。まずは岡崎百々子。前回よりもさらに身体を絞っており、一つ一つの動きのキレが見ていて心地よい。
MOAは相変わらず綺麗だが、この曲ならではの大胆な子どもっぽさ、いたずらっ子っぽさが全身からあふれている。変幻自在のダンサーっぷりが際立つ。どこまで進化するのだろう。
SU-は1か月ぶりの「初日」なのでまだ「剛速球」という感じではないが、その代わり、アイドルらしさがあふれていた。間奏部のSU-のセリフは、「みんな!ちゃーんと見えてるよ!」。もちろん客席は「ウォー!!!」。
そのあとの「♪あたたたたーた…」でMOAがSU-のほっぺをつんつんしたシーンでは、アップになった表情がめちゃめちゃKawaiかった。
そのアイドルっぽさは、次の5曲目「ド・キ・ド・キ☆モーニング」で、頂点に達した。
『10 BABYMETAL YEARS』は、言わずと知れたベストアルバムであるが、その1曲目にセットされたこの曲は、10年経った今、何度聴いてもやっぱりBABYMETALの本質を表現していると思う。
リフは、ちゃんとヘヴィメタルだし、SU-の歌の上手さは際立っている。そこに入るYUI、MOAの合いの手の声はまだ声変わりする前で、もう犯罪的にKawaii。
それを、成人した現在、「緊急事態宣言」真っただ中の東京、日本武道館でやってしまうというところが「アイドルとメタルの融合」の真骨頂ではないか。声を出せなくても「♪リンリンリンッ!」「♪チョ待ってチョ待って」というところの振りマネをすれば客席-演者のコミュニケーションはカンペキだし、イントロ部分とアウトロン部分で「♪ハイ!ハイ!ハイ!…」とやれば、一気に時間が10年間戻る気がする。
6曲目は、前回「Oh!MAJINAI」だったところ、今日は「シンコペーション」だった。
やっぱり!変えてきましたね。(^^♪
「シンコペーション」の初演は、2016年8月8日、Aporypha White Mass in大阪@なんばHatch。
『METAL RESISTANCE』日本盤のみに所収された楽曲で、US盤/EU盤のみに収録された「From Dusk Till Dawn」と対をなす曲でもある。Ⅰ・Ⅱで、2ndアルバムの楽曲が少ないと昨日書いたばかりだったが、これが伏線だったのだ。
ぼくにとっては、この曲は2017年10月の巨大キツネ祭り@SSAが印象深い。
背景の大スクリーンに心電図のような波形が現れ、鼓動の高まりとともに曲が始まる演出は、今回も踏襲された。
2020年の汎ヨーロッパツアーで、観客がポルカのリズムで踊り狂った「Oh!MAJINAI」よりも、「シンコペーション」の方が、「♪めぐる!」「♪回る!」という合いの手を入れやすいので、日本人にはウケるのかもしれない。
そして、ライブは「メギツネ」「KARATE」と進み、9曲目、2017年ハリウッドでの初演以来となる「From Dusk Till Dawn」へと進んでいく。
(つづく)