DYSTOPIAの歴史(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日1月25日は、2017年、Guns N’ RosesのSupport Actとして、横浜アリーナに出演し、2020年、METAL GALAXY WORLD TOUR in Japan@幕張メッセ(初日)が行われた日DEATH。

<2021年1月24日現在>
PCR検査数    累計6,377,499    2020年12月24日4,547,779    直近1か月1,829,720
陽性判定数    累計360,661    2020年12月24日206,139    直近1か月154,522
死者数        累計5,019    2020年12月24日3,050        直近1か月1,969
致死率        累計1.39%    2020年12月24日1.48%        直近1か月1.27%
(データ元:厚労省「新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料」)



2021年1月19日、10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅰのオープニングで、KOBAMETALは「2020年、世界はDYSTOPIAによって支配され、メタルの叫び、すなわち我々の声はDYSTOPIAによって奪われたのであった。ひとたびメタルの叫びを発すると、それを聴きつけたDYSTOPIAが我々を捕らえ、“あっちの世界”へと連れ去ってしまうとても恐ろしい存在であった…。」とぼくらに告げた。
2012年10月6日、BABYMETALにとって初めて1,000人を超える会場でのライブとなったLegend “I”@渋谷O-East(収容定員1,300人)の「紙芝居」で、これまた初めてBABYMETAL神話が語られた。
いわく、「昨今、政治・経済・社会のあらゆる分野は、“巨大勢力アイドル”によって支配され、アイドルソング以外は禁じられ、メタルもその例外ではなかった」。
それを悲しんだメタルの神キツネ様は三人の少女を召喚し、「メタルで世界を再び一つにするため」の戦い―METAL RESISTANCE―を命じた。
こうして、この世に降臨した「アイドル界のダークヒロイン」がBABYMETALである…。
以降、METAL RESISTANCEはBABYMETALの代名詞となり、2013年の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でのメジャーデビュー、「五月革命」からの神バンドを帯同した国内ロックフェスへの出演、2014年3月1-2日の日本武道館2デイズ、7月1日からの初ヨーロッパツアー、Sonisphereの奇跡へと、BABYMETALは歩みを進めていった。
2015年1月10日の新春キツネ祭り@SSAでは、「アイドル」としては前代未聞の欧米での大成功に、「幼いメタルの魂は、国を超え、言葉や性別や世代を超え、世界は再び一つになった」と総括された。
BABYMETALの勢いは止まらず、2016年4月1日にリリースされた2ndアルバム『METAL RESISTANCE』は、坂本九以来、日本人アーティストとしては53年ぶりにビルボード200の39位を獲得。日本人として初めてロンドン・ウェンブリーアリーナでの公演を成功させ、9月の東京ドーム公演には、のべ11万人が集まった。
荒唐無稽と思われた「紙芝居」のBABYMETAL神話は、AKBグループ全盛期の日本のアイドル界の状況を逆手に取った「設定」に過ぎなかったはずなのに、現実の世界を変えてしまったのだ。
その後、2017年のBABYMETALは、Red Hot Chili Peppers、METALLICA、Guns N‘ Roses、KOЯNといった大物バンドのツアーへの帯同、5大キツネ祭り~巨大キツネ祭り~広島グリーンアリーナでのSU-METAL凱旋公演へと進んでいったが、ここで運命が暗転した。
YUIMETALが体調不良で広島公演を欠場し、年明けの2018年1月5日には神バンドの音楽的支柱だった小神様こと藤岡幹大氏が不慮の事故で逝去。迎えた5月からのアメリカツアーでも、YUIMETALの姿はなく、Darksideと銘打った新体制がお目見えした。ロゴは、皆既日蝕をデザインしたものに代わっていた。コスチュームやメイクアップも一新され、フォーメーションは四人~七人と変わっていった。そして10月、ついにYUIMETALの脱退が発表された。
だが、BABYMETALはシンガポールでのJudas Priestのサポートアクト、初のオーストラリアGood Thingsフェスへの出場と歩みを止めることなく、2019年6月には、SU-METAL、MOAMETALに加えて、鞘師里保(元モーニング娘。)、藤平華乃(さくら学院)、岡崎百々子(元さくら学院)の3人から1人がライブごとに加わるアベンジャー体制がお目見えし、イギリス・グラストンベリーフェス出演、MOAMETALの凱旋公演となるLegend-M-@PMなごやが行なわれ、9月からは史上最長の全米横断ツアーが行われ、10月にリリースされた3rdアルバム『METAL GALAXY』は、米ビルボード200で、日本語で歌う日本人アーティストの史上最高位となる13位、イギリスでもThe Beatlesの復刻ベスト盤を抜いて、ロックチャート1位を記録した。
2020年1月に幕張メッセでのLegend METAL GALAXYを行ったあと、2月から、初の北欧・ロシアを含む汎ヨーロッパツアーを敢行したところで、武漢ウイルス禍により、以降予定されていたアジアツアー、汎ヨーロッパツアー第二弾、METAL RESISTANCE Episode-Xなど、すべてのライブの中止を余儀なくされた。
それでも、BABYMETALはMETALLICAなど世界の大物バンドと同じく、YouTubeで過去の大規模ライブを無料プレミア配信し、7月にはLegend-M-、9月にはLegend METAL GALAXYを全国映画館で上映、12月12日には目黒鹿鳴館からのオンラインライブを行い、12月31日には遂にNHK紅白歌合戦に初出場した。
このとき、2019年まで11年連続だったAKB48の出場記録は途絶えた。
「巨大勢力アイドル」に代わって、2020年のBABYMETALを苦しめていたのは、現実の世界を覆う闇、DYSTOPIA=武漢ウイルス禍だった。
アイドルもバンドも関係なく、ライブを行うことも許されない世界では、もはや、アーティスト同士が対立している場合ではない。
「アイドルとメタルの融合」であるBABYMETALは、「緊急事態宣言」下でもギリギリ許された最大5000人・場内での飲食禁止・ソーシャルディスタンス厳守・マスク二重着用といったレギュレーションを守りつつ、日本人アーティストの先陣を切って、東京のど真ん中、日本武道館でのライブを敢行した。
BABYMETAL神話は、現実の世界とリンクする。
皆既日食をかたどった2018年のDarksideロゴは、見ようによってはコロナウイルスである。
あのDarksideを乗り超えたBABYMETALは、DYSTOPIAとの戦いにも必ずや勝利するだろう。

では、DYSTOPIAとはいったいどんな世界なのか。
DYSTOPIAとは、想像上のユートピア=理想郷の正反対で、人類が悲惨な生活を強いられる想像上の未来社会=暗黒郷のことである。
だが、実はユートピアとDYSTOPIAを動かしている原理は、同じ「理性万能主義」である。
トマス・モアが1561年に書いた『ユートピア』をはじめ、ルネッサンス期に想像された理想郷は「理性によってコントロールされた合理的な社会」である。
『ユートピア』は、キリスト教信仰を基盤として、「非合理的」な慣習や格差でがんじがらめになっていた当時のヨーロッパ社会への風刺なのである。表立って教会批判をすることができないため、トマス・モアは一見荒唐無稽な文学作品に仕立てたのである。
だが、『ユートピア』に描かれた「ユートピア島」の社会制度は、全体主義そのものである。

―引用―
「ユートピアでは個人資産の所有は認められておらず、人々が必要とする品々は倉庫に保管される。家々のドアにも鍵は設置されておらず、住む家も10年ごとの輪番で決まる。島で最も重要な仕事は、農業である。男女共に農業を学び、2年間田園地帯に住んで農耕に従事する義務がある。
これに並行して、全ての市民は、織物業(女性中心)、木工業、鍛冶、石工など他の重要な商業を少なくとも1つ、学ぶ義務がある。これらの商業は意識的に簡素化されている。例えば、同じデザインのシンプルな服を全ての人々が着用し、凝った服を作る業者は存在しない。健康な市民には勤労の義務があるため、失業は根絶され、労働時間は最短となっている。」
「奴隷はユートピアでの生活に必須であり、全ての家庭に2人ずつ配置されているという。奴隷は、他国出身のこともあれば、ユートピア出身の元犯罪者のこともある。元犯罪者は、金製の鎖に繋がれている。金はこの国の国有財産の1つで、犯人を拘束したり、寝室用便器のような上品でないものに使ったりするなど、市民は金を嫌悪し、質素な価値観が損なわれないようにしている。財産にはほとんど重要性がなく、諸外国から必需品を購入したり、互いに戦う国家を買収するために役立てるだけである。行いがよい奴隷は、定期的に解放される。」
「ユートピアの革新性には、他にも重要なものがある。医療費の無料化などの福祉制度、国家も認める安楽死、既婚の聖職者、離婚の他、婚前性交渉に対する罰則は生涯の独身生活、姦通の場合は身分を奴隷に落とされた。食事は地域の食堂でとり、配膳の仕事は輪番で家ごとに回された。全員が同じメニューを食べるが、ラファエルの説明では、老人と行政官によい食べ物が回されるという。島内を旅行するには許可証だけでよいが、許可証なしが発覚すると、1度目は猶予されても2度目には奴隷に落とされるという。」
(Wikipediaより)
―引用終わり―

私有財産の否定。
統一された服装。
全員が同じメニューの食事。
離婚したら生涯独身。
不倫をしたり、許可証なしで旅行すると「国有財産」として鎖をつけられて奴隷にされる。
などなど、ユートピア島の「国民」には全く自由がない。
「男女共に農業を学び、2年間田園地帯に住んで農耕に従事する義務がある」というのは、1960年代に毛沢東が文化大革命で行った「下放政策」(徴農制度/上山下郷運動)を思わせる。

こういう社会体制に声もあげず従うロボットのような人間像。
これがトマス・モアの考えた「理性でコントロールされた合理的社会」なのだ。
ユートピア、という響きからぼくらが想像する理想郷には程遠い。というか、これはDYSTOPIAそのものではないか。
トマス・モアは、イングランドの法律家で、ヘンリー8世時代の宮廷で、大法官まで出世した。
引用したユートピア島の談義は第2章で、第1章は、現在のベルギー、アントワープに出張した折、旅人のラファエル・ヒュトロダエウスと交わした時事問題に関する問答で始まる。
そして、その話題は、当時ヨーロッパで流行していた感染症(ペストと思われる)の影響で、王が戦争を始めたり、見込みのない出費を続けたりするのをどう防ぐか、ということなのだ。
感染症を封じ込めるには、全体主義的な社会体制が有効だ―。
この発想こそ、DYSTOPIAの根源である。
(つづく)