ライブレポート10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅱ(続) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日1月21日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。



全方位ステージなので、「ギミチョコ!!」では1番が「西正面」、2番は「東正面」と振り付けられており、3人のポジションが目まぐるしく変わっていくのがよくわかった。
だが、例えば横一列に並んで、MOMOKO側から見た場合、MOMOKOとMOAのシルエットは重なっており、シークエンスのそれぞれがまったく同じタイミングと角度で動くのが驚異的だった。
大観衆の歓声と、アリーナエリアでのサークルモッシュやクラウドサーフといった、ライブを盛り上げる観客のリアクションが行えない中、BABYMETALは歌唱とダンスのクオリティをとことんまでレベルアップすることによって、1年間会えなかった観客に「思い」の強度を伝えようとしていた。
それがわかった瞬間、ぼくはウルウルしてしまったよ。
ある意味、メタルバンドとしての手足を縛られた状態で、いかにして観客とつながるか。それを考え抜いたSU-、MOA、MOMOKOの気持ちを思うと、切なくなる。
神バンドの面々だってそうだ。
今回、神バンドは八角形ステージの最外周の内側の四つの角に離れて陣取っていた。メンバー同士のアイコンタクトは、ほぼ不可能である。
構造的には、中央ステージにBABYMETALの三人、外周の内側に神バンド、そしてそこから数メートルの距離を隔てて観客席という同心円状になっている。
よく考えてみると、通常のライブでは、神バンドが文字通り「バックバンド」であり、観客に近い位置にいるのはBABYMETALである。
ところが今回は、同心円の中心にいるBABYMETALの三人が、同心円の最外周にいる観客から最も遠くにいて、神バンドの方が物理的には観客席に近い。
バンドが演奏する方向は、曲によって変わるが、時には外側向き=観客の方向を向くことなる。そうなれば各ミュージシャンは、BABYMETALを見ることもできず、アイコンタクトも取れない。
もちろん、BABYMETALの各メンバーや神バンドメンバーのイヤモニからは、タイミングを知らせるメトロノームの金属音が響いているだろう。だが、そのジャストのタイミング感からわずかに前ノリだったり後ノリだったりすることで、バンド全体の音像が決まる。それは通常、アイコンタクトや、観客のリアクションを含んだ「せーの!」感で成り立つものだ。
だが、このライブでは、それが一切できない。
つまり、このライブを成立させているのは、10年間に培った、目に見えないお互いの“絆”だけなのだ。
それが「ギミチョコ!!」では、驚異的にシンクロしていた。
間奏部。サーモンピンクのESP-Snapper7藤岡幹大モデルを持った大村神の奏でるソロの間、SU-は「みんなー、会いたかったよー!」と叫んだ。MOAとMOMOKOは、楽しくて仕方がないというように、ニコニコと笑っていた。
2021年1月20日、「緊急事態宣言」の中、バーチャルではなく、リアルな空間である日本武道館で、切実なリアリティを持ってSU-が叫んだ“絆”には、3年前に逝去した藤岡幹大氏も、その場にいたぼくらも、あるいは、日本武道館には行けなかったが、少しでもライブのリアルを知りたいと思ってこの拙い文章を読んでいるあなたも含まれていた。
BABYMETALは、時間も、国境も、生死さえ超えている。
そのことがぼくの体内を駆け巡り、全身が震えた。この日の「ギミチョコ!!」は、DYSTOPIAが仕掛ける「感染者拡大」に打ちのめされ続けるぼくらの日常の価値観を揺さぶる破壊力を持っていた。
最後に東向きになったBABYMETALの「♪パーパーパパパパ!」のKawaiiこと。
その破壊力抜群の能天気さは、次の5曲目「ド・キ・ド・キ☆モーニング」でさらに加速された。
場内にモーニングコールの電子音が響くと、我慢しきれず観客から「ウォー!!」と歓声が沸いた。
イントロに入り、三人がXポーズをとると、観客は裏拍で「♪ハイ、ハイ、ハイ、ハイ…」と合いの手が入る。
「♪パッツンパッツン前髪パッツン」のSU-の声、「Cuty Style!」のMOAの声は、滅茶苦茶Kawaii。
KOBAMETALの言うとおり、「あの日、あの時、あの場所」へとタイムトリップしたみたいだ。
だから観客もSU-が「Say!」と煽らなくても、「今何時!」と叫ぶ。叫ばずにはいられない。
サビでは今回、声を出せない前提で練習してきたらしく、「♪リンリンリンッ!」のポーズ×2回~「チョ待って、チョ待って」のポーズ~「♪ド・キ・ド・キ☆モーニング」のペンギン振りをする観客が多数見受けられた。
これでいい。声を出せなくても、振りマネでBABYMETALに思いを伝えることができるのが、BABYMETALのいいところだ。
3人が倒れ込むところでは、SEによる歓声が入ったが、実際に声を出していた人も多かった。
6曲目は「Oh!MAJINAI」。
上部スクリーン、中央ステージ、外周ステージの側面に、ヨアキム・ブローデンのコミカルな映像が映り、中央ステージ上ではSU-、MOA、MOMOKOに三人が見事にそろったダンスを披露した。
中央ステージで3人がSU-を中心に横一列になり、コサックダンスしながら回転するシークエンスは、まるでレコード盤の上で踊っているようで、360度から見られる今回の舞台装置の特徴を生かした演出だと思った。
この曲では、「合いの手」がなく、観客は手を叩き続けることしかできなかったが、「♪なんでもなーい、きにしなーい、もったいなーい、おまじなーい」と叫ぶ者もいた。
BABYMETALのダンスを鑑賞するだけでもいいのだが、ヨーロッパでのこの曲の盛り上がりを考えると、声を出せない状態でも、一工夫欲しい。例えば「ベビメタ体操」みたいに、ダンスと連動して観客がその場でできる「振り付け」を映像で教えてくれるとか、どうだろう。
なお、この曲の最後、各ステージの側面スクリーンで、増殖したヨアキム・ブローデンが「♪ナイナナナイナイ、ナイナイナイ…」と歌いながら少しずつ消えていく映像が切れてしまったため、真っ暗な中で曲が終わるというアクシデントがあった。
「あれれ?」と思ってみていたが、すぐに会場が真っ赤に染まり、「♪キーツーネー、キーツーネー…」とSU-のアカペラが始まった。
7曲目「メギツネ」である。
キツネ面も被っていない三人が東・西・南からしゃなりしゃなりと中央ステージに向かう。
上部スクリーンには、2014年の日本武道館、2015年新春キツネ祭り、2015年12月の横アリ、2016年東京ドーム、2017年広島など、キツネ様がこれまでBABYMETALに見せてくれた、あるいはBABYMETALがぼくらに見せてくれたこの曲のHistoryが次々に映し出された。ライブ冒頭でKOBAMETALが言った、「あの日、あの時、あの場所で、我々が目撃した数々の伝説」である。
きれいにそろった狛ギツネポーズから、ぴょんと飛び上がると「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と踊り始めると、武道館の5000人も「ソレ!」のタイミングで一斉にジャンプする。
間奏部。E♭m→Em→Fmのコードが繰り返される中、SU-が「Hey!ぶどうかーん!How are you feeling tonight? We are so--- happy to be here!On the count of Three, jump up with the Fox God. Are you ready? A--re y--ou read---y? One ,Two, 1,2,3, Jump!」という完成されつくしたセリフで、観客を煽る。この瞬間のためにBABYMETALのライブに足を運ぶといっても過言ではない。
後半、「なめたらいかんぜよ」のところでは、「ウォー!」という歓声があがるのだが、これはSEなのか、本当に観客があげているのかわからないほどの大歓声となった。
いつもの流れだが、場内が赤から青に変わると次の8曲目「KARATE」になる。
昨日、イントロから「ストン」というドラムの音で、信じられないほどタイミングが揃った正拳突きのポーズに変わる瞬間の凄さについて特筆したが、今日はそれを東側、つまり背中側から見ることができた。全く見事に腕の角度、足の動き、肩のラインの揺れ方が一致していた。もちろん、この曲は、2016年4月2日のウェンブリーでの初披露以来、昨日まで世界各地で156回も実演されてきたのだが、ここへきてその完成度はますます高まったのである。
ただ、惜しむらくは、2016年~2017年ごろ、三人が倒れ、立ち上がって進むシークエンスで、SU-が「Everybody Jump!」と言って観客が一斉にジャンプする煽りが復活していないことだ。観客はもちろんタイミングをわかっているので、心の中でそう言ってジャンプするのだが、声を出せないので、あそこはSU-が叫んでくれたら、もっと盛り上がるのに、と思った。
9曲目は「Starlight」。
昨日と同じように、レーザーによる演出で、雲の上を歩くような三人、宇宙を浮遊するような三人、その周りを彗星のようなレーザー光が走るといった美しく幻想的なシーンが現出した。
先ほども書いたが、今回の舞台装置や演出は、見事に「同心円」を描いている。
まず、中心のコアにSU-の歌。
その周りにMOAとMOMOKOのダンス。
その周りにレーザー光による照明があり、その周りにはステージ側面のスクリーンによる映像が広がる。
その外周に神バンドのメンバーが4人いて、1F・2Fの観客席の全面にはレーザー光による彗星が走り、さらにその外周にぼくら観客がいる。
そして、これを延長していけば、日本武道館は東京のど真ん中であり、畏きあたりがおわします皇居内宮の一角にある。ここから発した光あるいはエネルギーの波は、まるで、池に波紋が広がるように、日本全体へ、世界へと広がっていく。
世界がDYSTOPIAによる闇に覆われる中、それに打ち克つMETAL RESISTANCEの波動が、今、ここ日本武道館から発し、世界へと広がっていく。
同心円とは、SU-を中心とする太陽系のような一つの宇宙の誕生を意味する。闇の混沌=カオスに対する宇宙=コスモス。その壮大な宇宙観は、ぼくらの前に現出した曼荼羅でもあった。
それが、ハッキリとしたイメージをもって幻視できたのが、故・藤岡幹大氏に捧げられたこの曲であることに思い至ると、右手でキツネサインを掲げるぼくの目から自然に涙があふれてきた。
小神様は生きている。遥か彼方のメタル銀河に居ながら、同時にBABYMETALの中心―ぼくらの心の中―に存在して、闇=Darksideを乗り越えるためのエネルギーを送り続けている。
そして、次の10曲目はその波動に後押しされて、DYSTOPIAと戦うためにぼくら自身がメディアに汚された日常をぶち破り、変わるための曲、「ヘドバンギャー!!」だった。
上部スクリーンにモノクロームのSU-の足元が映る。
この曲も、昨日とは違う角度で三人のダンスのクオリティを確認することができた。
例えば、風車ヘドバン。普段とは違って真横から見ると、MOAとMOMOKOが風車ヘドバンをする手の伸び方、身体の中心線、足の組み換えなどのタイミングが、完全に重なって見える。
MOMOKOはMOAより一回り身体が大きい。東から見ていると、激しく動きながら、MOMOKOの体の線からMOAがほとんどはみ出ないのだ。少しでもタイミングがズレれば、MOAの腕や足が見えるはずなのに。
うしろ向きになると、SU-の身体を中心として、左のMOMOKO、右のMOAが完全なシンメトリーを描き、全体がシンクロして動いている。なんというダンスチームだろう。
二日目とあって、動きはよりダイナミックになり、観客のヘドバンのふり幅も大きい。
昨日と全く同じアレンジで、「ヘドバン地獄」のシークエンスも短かったが、武道館全体が大きくヘドバンし、揺れていた。この曲はBABYMETALの歴史において、常に「次の段階への成長・進化」を象徴する曲だった。日本武道館から、理不尽な状況への戦いを始める狼煙となる曲だった。
そして、次の11曲目は当然「Road of Resistance」である。
プレリュードで、ライブ冒頭と同じく、西にMOA、東にMOMOKO、南にSU-がBABYMETAL旗を持って立つ。SU-が観客席を分ける仕草をすると、観客はどんどん速くなる手拍子で応えた。
中央ステージの三人がMOAの「1234!」の掛け声で踊り出すと、通常はモッシュになるところ、どうにもできない観客は手拍子を打ち、「DEATH!」「DEATH!」のタイミングで両手を上げた。
シンガロングパートになると、SEによる「♪ウォーウォーウォウォー…」が流れたが、もちろん本当に歌っていた観客もいた。途中でバンドが止まり、アカペラになる瞬間には、ほとんどの観客が歌っていたのではないかと思う。ここでSU-は、「みんなのおかげで、私たちはここに立てています。今日は、来てくれてありがとう!」と叫んだ。観客席からは「ウォー」という歓声。
そのまま、シンガロングしながら、SU-は南→西→北と外周ステージを回っていき、Cメロに入るタイミングで、中央ステージに戻ろうとして振りむいた瞬間、立ちすくんだ。
外周ステージと中央ステージを結ぶ「橋」の部分がせりあがっていなかったのだ。
咄嗟の反射神経で、もう一度北の観客席へ向いたSU-は、その場で「♪いのちが続く限り…」と歌い、歌パートの最後までそこで歌い続けた。
ブリッジがせり上がり、「♪ぼくらのーレジスターンス!」のあと、ようやく中央ステージに戻ったSU-に対して、MOAとMOMOKOはニコニコ顔で出迎えた。ハプニングもライブのうち、むしろそれを楽しむのがBABYMETALだ。
握りこぶしを天に突き上げたMOAとMOMOKOを見やりながら、SU-はニコニコ顔のまま「Get Your FOX Hands---Up! あー!」でいったんステージを去った。
そのあと、SEによる「チャッチャッチャッチャッ、BABYMETAL!」のアンコールがあり、12曲目「THE ONE」、13曲目「イジメ、ダメ、ゼッタイ」と続いたのは昨日と同じ。
だが、観客の盛り上がりは昨日よりはるかに大きく、声を出せない、モッシュもできないという異常なライブ、しかもいくつかのハプニングがあっても、逆にその状況によって三人や神バンドとの距離が近づき、大いに心動かされ、楽しめたライブになった。
「We are?」「BABYMETAL!」のC&Rでは、観客も叫び、歯を見せた笑顔で外周を巡ってくるSU-、MOA、MOMOKOに手を振り、ベビメタオルを振り、心を通わせた。
三人が中央ステージに戻り、「321!」でSU-が銅鑼を鳴らして終了。
終演後の「紙芝居」で、これまで封印されていた10 BABYMETAL BUDOKAN後半のスケジュールが公開された。
10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅶ    3月15日
10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅷ    3月16日
10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅸ    4月14日
10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅹ    4月15日
そして、あの銅鑼の意味は最終回に向けた「十音」を意味していたこともわかった。
今回の1月19-20日で、そのうち「二音」が終了したことになる。
METAL RESISTANCE最終章なのだから、4月16日最終回Ⅹのあと、BABYMETALがどうなるかはOnly The Fox God Knowsである。
だが、少なくとも、「緊急事態宣言」下、東京のど真ん中の日本武道館でも、5000人までという限定や、声が出せない、モッシュも禁止という縛りはあるものの、ちゃんとメタルのライブができることが証明された。その意義は大きいといえる。

武道館を出ると、突き刺すような寒さの中、三日月が煌々と東京の夜を照らしていた。

「家に帰るまでが10BABYMETAL BUDOKAN」というKOBAMETALの言葉通り、アフターパーティはなかったが、まるで酔ったような気分で、家に帰った。駅や電車の中吊りはPCR検査の広告だらけだ。

この国はおかしくなっている。

だが、希望はある。

ぼくらには、救世主BABYMETALがいる。