ライブレポート10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅰ | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日1月19日は、1981年、小神様こと藤岡幹大氏が誕生し、2021年、二度目の「緊急事態宣言」下、10 BABYMETAL BUDOKAN-Ⅰ@日本武道館が行われた日DEATH。

 

セットリストは以下のとおり。
01. In The Name Of
02. Distortion
03. PAPAYA!!
04. ギミチョコ!!
05. ド・キ・ド・キ☆モーニング
06. Oh! MAJINAI
07. メギツネ
08. KARATE
09. Starlight
10. ヘドバンギャー!!!
11. Road of Resistance
<アンコール>
12. THE ONE
13. イジメ、ダメ、ゼッタイ
アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:大村孝佳(下手G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、ISAO(上手G)

日本武道館に到着したのは16:30頃。すでに日が暮れかかっており、冷たい風が吹き始めていた。
ここ数年のライブ会場より一回り小さく、「緊急事態宣言」のレギュレーションに合わせるため、“最大5000人以下”に抑えられているため、A・B二つの入り口の回りにいるメイトさんたちは一目で見渡せる人数である。とはいえ、約1年ぶりのBABYMETALの国内ライブに、集合指定時刻前なのに、数千人が集まっていた。
開場は10分ほど遅れて17:10頃。
入場時には、スマホチケットを顔の横にかざして、顔認証とチケット認証、検温を同時に行うシステムが用いられ、そのあと金属探知機、最後に入り口でアルコール消毒をして入場という流れだったが、非常にスムーズだった。
場内を一目見て驚いた。
ステージは、日本武道館の構造に合わせて八角形のセンターステージが組まれており、ステージの上部にはやはり八面のスクリーンが組まれ、2014年の赤い夜・黒い夜や東京ドームを思わせる造りになっていた。
だが、東京ドームはもとより、見慣れたSSAや幕張メッセに比べると、どうしても「ミニチュア」のように小さく見える。
八角形のステージは、外周、内周、中央ステージの3層構造になっており、外周部が地上から2メートルくらい、内周部と中央ステージはせりあがる構造で、中央ステージの最高位置は地上から10メートル近くになる。3層のステージ側面はすべてスクリーンになっており、さまざまな映像が映るのだが、全部がせりあがると3段の「ウエディングケーキ」みたいになる。
外周ステージの内側、一段下がった南東の角に大村神(下手G)、南西角にISAO神(上手G)、北西角にBOH神(B)、北東角に青山神(D)という布陣。
客席は1F席と2F席に分かれているが、モッシュ可能なアリーナはなく、すべて指定座席である。さらに座席は前後左右とも一つ置きの配置なので「密集感」はない。
上部8面スクリーンには、いつもの撮影禁止、スマホライト点灯禁止などに加えて、「飛沫感染防止のため大声を上げての声援はご遠慮いただきます。拍手や手拍子や足踏みなどは可能です」「公演中は自席での観覧をお願いします。他のお客さまとの接触はご遠慮ください。」といった注意が映し出されていた。
それでも、BGMにMetallica「Hard Wired to Self-Distruct」や、Dragonforce「Through The Fire and Flames」が流れると、BABYMETALのライブらしい雰囲気になる。
定刻18:30。客電が落ちた。
上部八面スクリーンに蝋燭が映り、「キッツネだおー」とKOBAMETALが登場。
ライブの注意点が多いため、いつもより早口だったのでうまく聴き取れなかったが、なんでも「世界はDYSTOPIAによって支配され、“メタルの叫び”は禁じられ、見つかった場合には“あっちの世界”へと連れ去られてしまう」のだという。
そういえば、待機中、日本武道館の天井に掲揚されている日の丸の下の無機質なステージは何本もの赤いレーザー光に照らされ、日本の「緊急事態」を表現しているようだった。
「キツネ様のご指示」により、公演中はマスクの上にSaciorMaskをつけ、立ち上がっての観戦や足踏み、手拍子で声援してほしい。そして、公演が終わったら自宅へ帰り、オンラインで語り合ってほしい、寄り道、ダメ、ゼッタイ」だそうだ。
KOBAMETALの口上が終わり、暗転すると「In The Name Of」のイントロが流れ、燃えるたいまつをもった8人の銀キツネ面の男たちが現れ、八角ステージの八つの角に進んでいく。八つの角にはパイロがあり、8人がそれぞれの配置につくと、音楽が高まり、南、西、東のそれぞれからリフトアップされた小ステージの上に、長い錫杖をもったSU-METAL、MOAMETAL、MOMOKOが現れた。
本来は大歓声が沸くところだが、大声禁止なので、もどかしい。だが、観客は一斉に立ち上がり拍手で応える。もちろん、がまんできずに叫ぶ人もいた。
歪んだギターのフレーズに続いて、1曲目「In The Name Of」がスタートした。その瞬間、3層のステージ側面は燃え盛る炎の映像に変わり、パイロから本物の火花が噴き出した。そのパイロを8人のキツネ男たちが叩く。なんというドラマチックなオープニング。
インスト曲なので、3人は外周ステージを巡るだけだが、錫杖が観客席に向けられるたびに、我慢できないどよめきのような歓声があがる。客席とステージの間には、動物園の猿山のような空間があるが、直線距離は意外に近い。ぼくは1FのC列という「前から3番目」のラッキー席だったので、巡ってくるそれぞれの表情までよく見えた。
今日のSU-はあくまでも凛々しく、美しかったし、MOAは華奢になり、Kawaiさよりセクシーさが増した気がした。MOMOKOも以前よりほっそりして表情も豊かになり、後述するが、MOAとのコンビネーションが素晴らしくよくなった。とにかく、会いたかったよー。
大興奮のうちに「In The Name Of」が終わると、サイレンのようなSEの向こうから「♪ウォーウォーウォーウォー…」というコーラスが聞こえてくる。
2曲目「Distortion」である。
これは2018年のDarksideと同じオープニングだ。
これは、昨年末このブログで書いたように、現在の世界で起こっている事態が、2018年にBABYMETALが乗り越えてきたDarksideであることを意味しているだろう。
あのとき、ぼくらは、声を限りに「♪ウォーウォーウォーウォー…」と叫び、YUI不在のBABYMETALを元気づけようとした。だが今、マスクで口を封じされ、声を上げることさえ禁じられている。
だから、キツネサインや握りこぶしをタイミングよく挙げて、ステージ上の彼女たちに気持ちを伝えるしかない。
それでも、間奏部になると、SU-は「ぶどうかーん!」と叫び、「Everybody Clap Your Hands!」と煽るので、必死で手拍子をした。すぐそこにいる彼女たちに声援を送れないのは、なんとも歯がゆかった。
だが、次の曲は声を出せなくても意思表示のできる曲だった。
3曲目「PAPAYA!!」である。
パイロが火を噴き、3層のステージが「ウェディングケーキ」のような形状になり、側面が真っ赤に燃え上がる中、最上段でSU-が「Are you ready!!」と叫び、曲が始まった。
この曲では、観客は声を出せなくてもタオルをぶんぶん振り回せる。前後左右が空席だから、気にすることもない。見渡す限りの観客が「♪パッパッパッパッパ…パパヤ!」に合わせてタオルを振っていた。
最後の「♪パパヤ、パッパッパ!」まで、客席はうねるようなタオル振りを続けた。
暗転。
闇の中に「♪ギリギリギリ…」というSEが響き、ステージ上に「Give Me…」の文字が映し出される。
4曲目「ギミチョコ!!」である。
全方位ステージなので、1番は西を正面に、2番は東を正面にした振り付けになっている。
ここでのMOMOKOは、キレキレかつパワフルなダンスで、華奢になり、「ズキュン、ドキュン」もイノセントというよりセクシーさを放出しているMOAの振りと、動きのタイミングや腕の角度のシンクロ率が驚異的だった。大村神によるギターソロに入ると、SU-は「みんなー、会いたかったよー!」と叫び、我慢できない観客から「ウォー!!!」という歓声が上がった。その間MOAとMOMOKOはニコニコ顔で客席を煽り、客席も手拍子で応えた。
声を出せないながら、大いに盛り上がったあと、次の曲は意外だった。
ステージが、2014年の八角ステージを思わせる黒赤のカラーに染まる。5曲目「ド・キ・ド・キ☆モーニング」である。『10 BABYMETAL YEARS』の冒頭を飾るBABYMETALのデビュー曲を、ここに持ってきた。10 BABYMETAL BUDOKANは、BABYMETALの10年の歴史を振り返る旅でもあるのだ。
「♪パッツンパッツン前髪パッツン」「♪Cuty Style!」とSing&ScreamするSU-とMOAの声は、あくまでもKawaii。2014年にはそれが等身大だったが、今はさまざまな表現の引き出しのひとつになっている。それでも、観客の中にはあのときのコルセットを持参している者もいたから、6年前がタイムスリップしたかのように感じる。
『ROCKIN’ ON JAPAN』のインタビューで、SU-は、この曲で自分のなかのSU-METALが覚醒したといい、日本武道館は幼い頃の夢の成就した場所であり、かつ、BABYMETALを海外に送り出してくれた「空港」でもあったといった。日本武道館は、目的地であり、出発地でもあった。
だから2021年の日本武道館もまた、10年の BABYMETALの歩みの「最終章」でもあり、新たなチャレンジの出発点でもあるのだ。そんな意味を含めた「ド・キ・ド・キ☆モーニング」だった。
ところが、6曲目は、1年前とはいえ、ライブとしては直前回にあたる汎ヨーロッパツアーで大ブレイクした「Oh!MAJINAI(feat. ヨアキム・ブローデン」だった。
ステージが一気に明るくなり、八面スクリーンに、ヨアキム・ブローデンの映像が映る。本来なら大歓声が上がるところだが、観客は拍手しかできない。曲が始まっても、本当はアリーナフロアレベルで、観客同士肩を組んで、コサックダンスやフォークダンスを踊る楽しい曲なのだが、今回は他の客との接触も、自席を移動することも禁じられている。だから、観客は棒立ちで手拍子を打って3人の踊りを鑑賞するしかなかった。楽しいはずの曲が、もどかしさに変わってしまう不条理。
そんな雰囲気を一掃したのが、7曲目「メギツネ」だった。
(つづく)