BABYMETALの哲学(13) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月6日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

グラストンベリーフェスについて、『別冊カドカワNo.830』でKOBAMETALはこう語っている。
「不可能を可能にしていくのがBABYMETLだというところで。移動に関しても、横浜アリーナの2日目が終わってすぐに移動しないと本番に間に合わなかったんで、いわば3Daysみたいな感覚でした。(中略)グラストンベリーはすごく歴史のあるフェスで、しかもフェス開催発表時点でチケットが売り切れていて、会場にBABYMETALのお客さんはほぼ皆無だったと思うんですよね。だから久しぶりにアウェー感があったというか、最初はみんな様子見をしているんですけど、曲が進むごとにお客さんが盛り上あがっていく。そういう5年前に初めてソニスフィアに出た時と同じような光景がありました。」(KOBAMETAL、同書P.172)
グラストンベリーフェス2019で、BABYMETALの出番は、最終日のイギリス時間6月30日14:35-15:15のセカンドステージ。出演アーティスト/パフォーマー2800組(!)の中で、最終日メインステージに出演できるのはわずか7組、セカンドステージは9組。BABYMETALは見事にその中に入っていた。
BABYMETALの出演決定は最終ラインナップが発表された2019年5月29日で、すでにチケットは完売していたから、主催者側としても集客力を見込んで出演させたわけではない。グラストンベリーという歴史ある音楽祭で、現代のイギリス/世界の音楽シーンを象徴する存在として、BABYMETALを出演させるべきだという判断が働いたのだろう。
だが、アーティスト側から見れば、KOBAMETALのいうようにBABYMETAL目当ての観客は「ほぼ皆無」というキツイ状況だった。
加えて、問題は時間だった。
東京-ロンドン間の時差は9時間。
東京・羽田空港-ロンドン・ヒースロー空港間のフライト時間は約13時間。
日本時間6月29日19:00ごろに横アリ2日目が終演したあと羽田空港に直行し、最終便で13時間飛ぶと、デロリアンの魔力によって、ヒースロー空港にはイギリス時間6月30日の早朝に到着する。
そこからバスでグラストンベリーまで約3時間とすれば、午前中には会場に到着できる。綱渡りのようなスケジュールで、交通機関にひとつでも支障が出ればその時点で万事休すになってしまう。だが、そこはキツネ様のご加護により、無事BABYMETALはグラストンベリーに到着した。
アベンジャーは前日に初登場した藤平華乃ではなく、鞘師里保。神バンドのギタリストのうち前日のISAOに代わって大村孝佳がグラストンベリーのステージに立った。


セトリは、「メギツネ」「Elevator Girl」「Shanti Shanti Shanti」「Distortion」「PAPAYA!!」「ギミチョコ!」「KARATE」「Road of Resistance」というラインナップだったが、KOBAMETALの言うとおり、5年前のソニスフィアのようなアウェー感があったようだ。
だが、ソニスフィア2014が「日本から来たJ-POPアイドルを、本場のガチメタラーが受け入れるか」というアウェー感だったとすれば、同じイギリスの音楽祭でも、グラストンベリー2019は、「異色のメタルアイドルを、メインストリームの音楽ファンが受け入れるか」というアウェー感だった。一つ後の出番のBring Me The Horizonと同じく、5年の月日を経て、BABYMETALはヘヴィロック代表となったのだ。このことについてSU-とMOAは『ヘドバンVol.24』で次のように語っている。
SU-「ポップフェスなのは行く前から言われていたのでわかっていたんです。なので、まあアウェーだろうなっていう予想はしつつ。」
―いざ、ステージに立ってみたら?
SU-&MOA「むちゃくちゃアウェー!(笑)」
MOA「あそこまでアウェーなのは久しぶりだったね。」
SU-「本当に。想像以上にアウェーだった。」
―ライヴのどの辺で、「これはアウェーだな」って感じた?
SU-「もうステージに出た瞬間からアウェーを感じました(笑)。」
MOA「(中略)BMTHさんはいたんですけど、私たちの方が出番は先だったし。いざステージに立ってみたら、メタラーっぽい人はいないしっていう。それこそ、どちらかというと女の子とか、小っちゃい子どもとかいましたから。」
SU-「ああー、確かに!」
MOA「あとは、若い人が多かったイメージかも。」
(中略)
SU-「横アリで「PAPAYA!!」が凄く盛り上がったから、その感じでグラストンベリーでも盛り上がると思って、「PAPAYA!!」でみんな凄く頑張ったんですよ。」
MOA「お客さんは見よう見まねでやってはくれてるけど、まだ全然ついていけてない様子で。」
SU-「そうそう。そのときに「これはちょっとノリが違うな」って思って。でも「KARATE」とかは凄いわかりやすくてノリやすい曲だったのかなっていう印象でしたね。最後の方は、よくわからないけど手を挙げてみたりとか、そういう反応をして下さる方はいたので。」
(『ヘドバンVol.24』P.15-16)
このブログを継続的に読んでくださっている方にとっては、BABYMETALが何たるかはよくわかっていると思うが、一般人にとってBABYMETALとは、名前は聴いたことはあるけど、顔も曲もパフォーマンスもよく知らない、という存在である。そのことは、モーニング娘。’20でも、現在のAKB48でも、乃木坂46でも櫻坂46でも日向坂46でも、程度の差こそあれ、実は同じである。
インターネットの発達によって、マスメディアの情報独占力が低下した一方、アーティストの活動の場はネット&ライブへ移行した。「国民的歌手」や「国民的ヒット曲」がなくなり、音楽はよりパーソナルなものになった。
かつてはラジオやテレビが新しいアーティストを広く知らしめる唯一の手段だったが、聴取率/視聴率が低下し、広告収入が激減した現在は、放送局の営業部門とのタイアップなしでは出演できないほど「業界」が既得権でガチガチに固められている。そして、そのことが新しいアーティストやコンテンツが生まれず、ラジオやテレビがさらに魅力を失うという悪循環をもたらしている。
その意味で、今や大規模音楽フェスは、新しいアーティストを発掘し、紹介するという社会的役割を一手に担っているといえる。
グラストンベリーフェス2019に2800組ものアーティストが出演したという事態は、イギリスでも同様のことが起きていることを示しており、BABYMETALが呼ばれたことにも、そうした背景があるのだと思う。
だからBABYMETALが、彼女たちを全く知らない観客の前でパフォーマンスする「アウェー」は必至だったのであり、武漢ウイルス禍が収まれば、今後もこうした機会は増えるだろう。それだけBABYMETALには魅力があり、まだまだ「知る人ぞ知る」存在なのだ。
重要なことは、グラストンベリーフェス2019で、BABYMETALが、ポップファンの観客に「最後にはよくわからないけど手を挙げ」させたという事実だ。
それはソニスフィア2014の再現であり、遡れば、Join Alive 2013@いわみざわ公演キタオンやLOUDPARK13と同じく、「アウェー感」を楽しみつつ観客を圧倒する実力を磨き上げてきたからだといえよう。


幼い頃から過酷なライブをこなし、2018年にはBABYMETALファンの前ですら「求められているものと違うものを見せているのではないか」という不安に駆られたDarksideの苦境を経験したからこそ、現在のBABYMETALがある。
グラストンベリーフェス最終日のセカンドステージに立ったという事実、「アウェー」を乗り切って観客に受け入れられたという事実。それは、テレビ局や「業界」が創り上げたものではない。だから尊いのだ。
「ソニスフィア2014の再現」という位置づけは、中1日置いた2019年7月2日に、ちゃんとBABYMETALファンのためのロンドン単独公演@アカデミーブリクストンが行われたことからもわかる。


そして、横アリ2Days、グラストンベリー、ロンドン単独公演の4つのライブをもって、METAL RESISTANCE第8章は完結し、帰国後のMOAMETAL聖誕祭=BABYMETAL ARISES Legend-M- BEYOND THE MOON@ポートメッセなごや2日間は、特別にMETAL RESISTANCE第9章と位置づけられた。
2020年に結成10周年=METAL RESISTANCE第10章を迎えるために、無理やり章をすすめたという感がないわけではないが、ともかく『別冊カドカワNo.830』でKOBAMETALがそう明言しているのだ。
「そうですね。「LEGEND-S-」が単発で第6章になっているのと同じで、「LEGEND-M」も、いわゆる外伝という意味で「APOCRYPHA」という言葉を使って、それだけで第9章というひとつのチャプターになっています。」(KOBAMETAL、同書P.173)
Legend-M-が、「単発」「それだけで第9章」であるなら、その後の全米横断ツアー、Legend METAL GALAXY@幕張メッセ、汎ヨーロッパツアーは第10章となるはずなのだが、今のところ、その言葉は使われておらず、2020年10月10日がMETAL RESISTANCE最終章=第10章であるとアナウンスされたまま、宙ぶらりんになっている。
「正史」である『別冊カドカワNo.830』の巻末年表でも、第9章のまま、2020年9月10日で終わっている。
10月10日から1か月近く経過した2020年11月6日現在、METAL RESISTANCE第何章なのか、ぼくにはよくわからない。
(つづく)