BABYMETALの哲学(12) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月4日は、2013年、Japan Pop Culture Carnival in松戸にSU-がソロ活動として出演し、2014年Back to the USA/UKツアーニューヨーク公演@ハマースタイン・ボールルームが行われた日DEATH。

2019年6月28日、横浜アリーナ。「BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-」初日。
Darkside日本ツアーの神戸ワールド記念ホール公演二日目が行われた2018年10月31日以来の国内ライブに、ぼくらメイトは大興奮していた。当日早朝、新曲「PAPAYA!」がリリースされたが、前々日にBD『METAL RESISTANCE EPISODE Ⅶ -APOCRYPHA- THE CHOSEN SEVEN』が届き、金色のパッケージに包まれた金色のディスクに「PAPAYA!」が収録されていた。
2018年のDarksideのイメージを一新し、聞きなれないタイ語(イーサーン語)のラップが含まれたサマーチューンだった。
「BABYMETAL AWAKENS」=BABYMETAL、目覚める。
「THE SUN ALSO RISES」=陽はまた昇る。
このライブタイトルからして、横浜アリーナが「Darkside明け」の始まりであることは明白だった。
「1年半ぐらいBABYMETALの形がなかなか定まらずにいて、ようやく新たな形で出発するんだという気持ちで迎えたライヴでしたね。ステージに立った瞬間の3人のシルエットを見たお客さんの歓声を聞いて、この場所に帰ってきたなっていう気持ちになったし、この時をみんな待っていてくれたんだなって。私たちも絶対に進化していかなきゃいけない、新たなBABYMETALを見せなきゃいけないって思ったし、すごくフレッシュな気持ちで新しいスタートが切れたんじゃないかな。」(SU-METAL)
「第6章から第7章までの間に、たくさん試行錯誤した上でライヴを行ってきましたけど、第8章で“3人”という形でライヴをしようと決めたので、この形がどう受け入れられるのかが楽しみでしたね。しかも「Arkadia」で始めたり、“新しいBABYMETALをこう見せたい”って強い気持ちが私たち2人にあったからでしょうね。不安はなかったです。」(MOAMETAL、同書P.163)


観客が横アリの会場に入ると、客席中央に島舞台が作られ、そこから花道がメインステージにつながっていた。その島舞台には2019年初の公式サイトにアップされた宇宙空間を飛翔する正八角形のオブジェが鎮座していた。
ライブが始まると、英語の「紙芝居」が流れる中、舞台から花道へ、白い衣装と仮面をつけた3人の少女たちが島舞台に向かって進んできた。その一人はふわふわヘアとぷにぷにホッペのビジュアルで、YUIMETALを彷彿させた。だが、これはLive at Wembleyと同じく、フェイクだった。
花道の途中で、かつてのBABYMETALを表現していた白い少女たちは消え、島舞台のオブジェが鈍く光って割れると、中から蝶々のような形をしたBABYMETALのロゴが飛び立った。
蝶々の「背中」、つまりぼくら観客から見えるところは薄型スクリーンになっており、2010年の結成から2012年のLegend コルセット祭り、2012-13年のLegend”I,D,Z”、2013年のLegend “1999”と“1997”、2014年の日本武道館、欧米デビュー、ワールドツアーから東京ドームに至る名場面が、夢の中の風景のように映し出されていた。これは、BABYMETALの歴史だった。
客席上空を飛んでいったBABYMETALロゴが舞台に到達した瞬間、ステージが明るくなり、初めて聴くパワーメタルが始まった。
それが「Arkadia」だった。


「♪…Glorious、You just Be Ambitious!星の欠片を抱いて~」
初日の1曲目にいきなり新曲を持ってくるのは、2015年12月、所も同じ横アリの「THE ONE」以来。ダブルバスドラが終始ドコドコ響き続ける2ビートのリズムで、転調も多いので、正直、曲の全貌はよくわからなかったが、力強いメロディラインのサビの歌詞が、ぼくの心にズバッと入って来た。
「♪今For your Dream、For your Faith、For your Life 動き始めた未来の地図は君の(君の!)中に!(中に)ある!」
「♪今No more tears、No more Pain、No more Cry あの光の彼方へ 遥か遠くへ 目指すは夢のアルカディア~」
「星の欠片」とは、亡くなった小神様と、BABYMETALを去ったYUIMETALのことだろう。
夢のために、信じるもののために、人生のために。
もう涙も、痛みも、泣くこともない。
「アルカディア」=BABYMETALが目指す音楽の理想郷に向けて、前を向いて進んで行こうという力強い宣言だと思った。
極めつけは、曲の真ん中に入るBメロだった。
「♪光より速く、鋼より強く、使命の道に怖れなく、どれほどの闇が覆い尽くそうと 信じたこの道をあるこう」
リズムがマーチ調に変わり、運命と戦う勇壮な「意志」が表現されていた。
世界とは、客観的に存在するものではない。
経済的な指標や科学の法則は客観的なものであり、誰にでも当てはまる尺度である。
だが、幸せや喜びは数値では測れない。
どんなお金持ちでも、愛しい人を亡くした人にとって、世界は闇だろう。
どんなに苦境にあっても、明日への希望を持って日々を生きる人には、世界は決して闇ではない。巨大な怪物と戦う勇者は、自負と誇りに満ちている。
人は、長い人生の中で、生きていくあらゆる望みが絶たれたと思う瞬間に何度か遭遇する。過酷な運命の圧迫感に、それが、神が自分に与えた罰なのか、それとも自分が悪いのかもわからず、戦う気力を失い、打ちひしがれてしまうこともある。
だが、過酷な運命に翻弄されているのはあなただけではない。
そして、どんなに個別具体的な足かせがあろうとも、神はあなたに再び生きる希望を与える。
打ちひしがれたあなたが、ほとんど何もしていないのに、なぜかある日、生きるための個別具体的な条件が整ってくるのだ。それは、今までのあなた自身の価値観や習慣を変える事態かもしれない。だが、絶望のどん底でそれを受け入れた瞬間、再び人生が時を刻み始める。思い描いていたのとは違う方向性かもしれないが、考えもしなかった新しい海路が、突然あなたの前に現れる。だから、自ら死んではならない。
定まったコース、あるいは思い通りの人生を歩み続けられる人は幸せであるが、考えようによってはそれほどつまらない人生はない。
思い通りにならない運命に抗い、その巨大な怪物と戦う人生こそ、最も輝かしいものかもしれない。
2018年と2019年で、BABYMETALを取り巻く環境は変わっていない。藤岡幹大氏はメタル銀河の彼方で下界を見守っているし、YUIMETALは自らの道へ進んだ。
だが、BABYMETALは「どれほどの闇が覆い尽くそうと 信じたこの道をあるこう」と決意し、宣言した。そうすることで世界が、新しくなったのだ。
Darksideを脱した新生BABYMETALは、前年度とはまったく違った。
黒を基調にし、虹色に輝くスカート姿の新コスチューム。ツインテールとポニーテール、ナチュラルメイクに戻った美しいビジュアル。2018年12月のシンガポール~オーストラリアと同じく、3人組のフォーメーション。その“3人目”に入ったのは、元モーニング娘。9期生の絶対的エース、鞘師里保というビッグネームだった。


鞘師里保は「アイドル戦国時代」の先駆者ともいえるモーニング娘。の9期生として2011年1月に加入し、2015年12月まで在籍した。プラチナ期のメンバーが抜けたあと、再びオリコン第1位を連発する第二の黄金期を作った“絶対的エース”だったが、もともとSU-METALとは、小学生だった広島時代に、アクターズスクール広島(ASH)で同じ時間を過ごしていた。
アミューズに移籍したわけではなく、あくまでも「アベンジャー」=助っ人ダンサーの1番手という立場だが、「あの鞘師里保がBABYMETALの一員に!」というサプライズは、業界を震撼させるのに十分だった。
Darksideを始めた2018年5月のカンサスシティと同じく、横アリ初日でもBABYMETALは新曲「Arkadia」でスタートし、インド風の曲調を持つ「Shanti Shanti Shanti」、アジアの熱風を感じさせる「PAPAYA!」をドロップし、鞘師里保が“3人目”に入るという「バットを振り切」った姿を見せてくれた。


翌日の2019年6月29日は、ライブ構成やセトリは前日と同じだったが、「アベンジャー」は、さくら学院生徒会長(当時)の藤平華乃が務めた。
SU-METALは二代目、MOAMETALは四代目生徒会長だったから、「KARATE」で肩を組みこぶしを振り上げる3人の姿は、「生徒会長揃い踏み」と呼ばれた。
「闇」=Darksideが世界を覆い尽くしても、信じた道を行くと決意したBABYMETALは、輝いていた。
ここから、綱渡りのようなグラストンベリーフェス出演、ロンドン公演@O2アカデミーブリクストン、MOAMETAL聖誕祭であるLegend-M-@PMなごやという怒涛の進撃が始まった。
(つづく)