BABYMETALの哲学(10) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月1日は、2014年、「メギツネ」のYouTube再生数が1000万回を突破した日DEATH。

Bring Me The HorizonがBABYMETALとコラボした新曲「Kingslayer ft. BABYMETAL」がYouTubeで公開された。
SU-METALは日本語と英語で歌っており、曲調はどこかBABYMETALの楽曲を思わせる。
https://www.youtube.com/watch?v=fKyXvNkGQKc

「いきなり辞めますとなるよりも、YUIMETALがいない状態で半年間ライヴをやってきて、場所にもよりますけど、お客さんがどういう反応なのかを見てきただけに、よりつらかったですね。BABYMETALって、この3人だからこそだったんだなって。だから個人的には、最初はなかなか脱退を受け入れられなかったというか。もちろん脱退することはわかっていたけど、でも、ひょっとしたらと思っていた部分もあったりして。」(SU-METAL、同書P.118)
これは重大な発言である。2018年5月8日~10月19日までをスケールに取れば約半年間となるDarksideのツアーの中で、「もちろん脱退することはわかっていたけど」といっているのだ。
2018年USツアー二日目の5月10日オースティン公演の直前、現地メディアがアメリカでのBABYMETALのマネージメント会社に問い合わせたところ、「YUIMETALは未だにBABYMETALに所属しているが、本アメリカツアーには参加しない」という答えだったとの報道があった。
また、2018年のアミューズ株式会社の株主総会で、数名のメイト株主の方がYUIMETALについて質問したところ、「YUIMETALは回復しているが、会社として個々の所属タレントの詳細は公表しない。
BABYMETALについては新しい試みも行われているので、期待してほしい」旨の取締役発言があったとされる。
これらの言葉は、その後わかった事実と矛盾しない。水野由結は未だにアミューズ所属であり、BABYMETALのツアーには参加していない。株主総会の時点で、BABYMETALは確かに新しい試み=Darksideツアーを行い、Chosen Sevenの準備を進めていた。ただ一点、SU-の『別冊カドカワNo.830』の発言によって、「半年間ライヴをやってきて」いる間に、すでに「脱退することはわかっていた」ということが今回わかった新事実である。
Legend-S-@広島の欠場時点では、SU-は「いつでもYUIMETALが戻ってこられるように」と思っていた。だが、KOBAMETALは、Darksideについて、以下のように語っている。
「広島公演が終わって、この先どう進めていくかということを決めるタイミングになっても、YUIMETALがいつ復帰できるかの目処がなかなか立たなかった。そこでメンバーはもちろん、我々スタッフも考え方を変えないといけない部分が出てきました。」「今まではリアルとファンタジーを共存させながらストーリーを紡いでいったんですけど、ここに来て全然違うことをやらなきゃいけなくなった。それに、当時はYUIMETAL本人も復帰への希望を持っていたので、その糸を紡いでいくような状況だったと思います。そういう状況だったので、今までの3人編成で別の人がステージに立つのは、個人的にはどうなのかなって思ったんですよね。本当にそれでいいのかな、と。(中略)だから、もしメンバーが「無理です」と言ったら、そこで終了していたかもしれません。でも、2人の意志は「やりたい」「続けたい」ということだった。メンバーの意志も確認して、続ける方法を、新たなストーリーを考えようと。」
(KOBAMETAL、同書P.128)


つまり、YUIMETALが「脱退することはわかっ」た時期は、広島公演が終わった直後ではない。
その時点ではYUIは復帰の意志をもっていた。このインタビューでは抜けている藤岡幹大氏の逝去という事態があり、かつ2018年のUSツアーが迫る中で、「続けたい」というSU-、MOAの意志を確認して新たなストーリー=Darksideが準備されたことは間違いない。
そして、2019年6月の横アリが、元々YUIMETAL聖誕祭用に予約されていたことを考えると、少なくとも2018年6月ごろまで、YUIMETALは復帰の意志を示していたのだろうと推測されるわけだ。
脱退が発表された2018年10月19日時点で、SU-は「ひょっとしたらと思っていた部分もあったりして。」といっているわけだから、その前から脱退確定を知っていたことも間違いない。
つまり、YUIMETALが脱退の意志を示したのは、2018年のヨーロッパツアーからDarkside日本公演までの間の「いつか」なのだ。
ぼくはこうした条件から、YUIは何らかの疾患を抱え、復帰に向けて必死にリハビリに励んでいたが、2018年夏ごろ、どうしても展望が開けないため、これ以上、宙ぶらりんの状況ではSU-とMOAが前へ進めないという想いから脱退を表明したのだと推理した。
ただ、YUIは脱退声明の中で、「何度も考え直したのですが」、「もう1度ステージに立ちたいという強い思いもありましたが」とは言っているが、ぼくの推測のように、疾患と戦っていたという証拠はない。
「ただYUIMETALは本当に家族みたいな存在なんですよ。それだけ長い間、密度の濃い時間を一緒に過ごしてきたので。だから、やっぱり彼女が前に進める選択が一番であって。それをBABYMETALのなかで実現するのが難しいのであれば、脱退して新たな道に進むことはベストな選択だし、そこはサポートして応援したいなって思えるようになったんです。」(SU-METAL、同書P.118)
「誰にでも夢を見る自由はあるから、選んだ道を否定するよりも応援すべきだと思うし、だから私もYUIMETALのことを応援したいなって、その時から変わらず、ずっとそう思ってますね。BABYMETALを愛してくれてるからこそ、いろんな意見があるのはわかるんです。だけど本当に思ってくれるのなら、私たちは今が最新で最強だと信じているので、今のBABYMETALの試みをしっかりと見届けて、感じてもらえたらうれしいですね。目の前にいる私達以外のところに心が行ってしまうのはステージに立つ身としては寂しいことなので。」(MOAMETAL、同書P.123)
こういう発言からは、YUIが何らかの身体的な疾患によってBABYMETALの一員であることを諦めざるを得なかったというより、「以前からの私の夢、水野由結としての夢に向かって進みたいという気持ち」によって、脱退を決意したと考えた方が自然であるような気がする。
ただ、今回は、そのことより、MOAの「目の前にいる私達以外のところに心が行ってしまうのはステージに立つ身としては寂しいことなので。」という強い言葉にフォーカスを当ててみる。
広島でのYUI欠場以来、MOAは「SU-METAL以外のBABYMETALのパート」を一身で表現すること、つまり、かつてのステージ上のYUIMETALをわが身に内在化させ、MOA including YUIというべき存在になろうとした。そしてそれは見事に結実した。
METAL GALAXY WORLD TOUR以降のMOAは、エレガントさやハッとするような美しさも含めて、YUIが放っていたオーラをも身に纏い、ペアになるダンサーによって変幻自在のダンスを見せるようになった。


にもかかわらず、未だにステージにはいないYUIの幻影を追うファンがいる。実際、今年1月のLegend METAL GALAXY@幕張メッセの会場にさえ、「ゆいちゃん命」のコスチュームを着たファンがいた。
この2年間、ダンサーとしてのYUIの技術やオーラさえも身につけるために必死で努力してきたMOAにとって、それを見るのはやはり辛いことなのだろう。
また、前回書いたように、現在のBABYMETALは、この2年間でより表現力の増したシンガーSU-METALと、同じくYUIを内在化させ、ダンサーとして大進化したMOAMETALに、それぞれ個性的なアベンジャーによって構成された新3人組=見えない4人組であって、「昔のBABYMETAL」の方が良かったと思われるのは心外だろう。
MOAにとって、ステージを降りた親友は水野由結であって、もはやYUIMETALではない。キツネ様に召喚されたBABYMETALのScream & Dance担当はMOAMETALに統合されたのだ。
だがしかし。
アイドルファンというものは、ステージ上のアイドルを愛するだけではない。
歌が下手でも、ダンスが下手でも、おバカでも、塩対応でも、人見知りでも、そのアイドルを心の底から愛し、いくらでもお金と時間を捧げるファンは存在する。
パフォーマーとしてのYUIMETALの技術やオーラを見事に内在化させても、それは進化したMOAMETALであって、水野由結その人ではない。あのYUIラグや、時差ボケで海外のインタビュー中にウトウトしちゃうシーンは二度と見られない。
YMYのコスチュームを着て、現在のBABYMETALのライブに来るメイトさんというものは、そういう「アイドル」としての水野由結の幻影を忘れられないというだけで、やっぱりBABYMETALを愛してくれているのだ。彼らはMOAMETALの中に、内在化=統合されたYUIMETALを観つつも、そこにいない生身の水野由結のファンでもあり続ける。なかなかにハードな選択だが、それでもBABYMETALのライブに足を運ぶ彼らの心根は、律儀そのものではないか。決して「目の前にいる私達以外のところに心が行ってしまう」わけではないとぼくは思うよ。


本当に気がかりなのは、水野由結がアミューズに所属していながら、未だに何の芸能活動もしていないという点に尽きる。
以前も書いたが、水野由結はさくら学院結成前に、子役として日テレ、フジ、TBSのドラマに出演しているし、さくら学院時代にも、松井愛莉と身体が入れ替わっちゃう「水野由結の憂鬱」という特典ドラマの主役を務めている。
これだけ世界的にファンがいるのだから、日本ではもちろん、ハリウッドで主演映画を撮ってもいいくらいだとぼくは思う。
「今も体調が万全ではない」状態が続いているなら無理しないでほしいが、脱退理由の一つとして「水野由結としての夢」を掲げた以上、ぼくらファンはいつまでも待ち続ける。
(つづく)