ZOCの真情(3) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日10月17日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

アイドルになりたいアイドル志願の少女の欲望を歌った楽曲。

愛を感じられなくなった少女が、反抗しながら「クッソ生きてやる」と叫ぶ楽曲。

ダメ男とのドロドロの恋愛に陥ったアイドルが、もう一度「愛され人生」に戻りたいと嘆く楽曲。

メンヘラ少女の非現実的なアイドル願望を歌った楽曲。

こうしたアイドルをテーマにしたメタアイドル=ZOCの楽曲を、ファンはどう楽しめばいいのか。

まるごと愛せばいいのである。

大森靖子の真情あふるる愛は、マニアックな音楽活動を通じて出会った10歳年下のメンバーや、その予備軍というべきアイドル志願の少女たちに向けられている。

「愛」を与え、「愛される存在」になりたいということ、それ自体は素晴らしいことである。

だが、結局男性目線の幻想に過ぎない「女の子らしさ」を担保しつつ現代社会で生きていく困難さが、「アイドル」になることですべて叶うはずもない。

いや、特定の男性に愛され続けることだって難しいのだから、「万人に愛されること」を続けていくことほど難しいことはない。人気が出たからといって、それが永遠に続くはずもなく、実はほとんどの「アイドル」は、ただオトナたちの商材として、使い捨てられているだけに過ぎないのだから。

それでも、大森靖子は、かつてアイドルになりたいと本気で思っていた自分自身への愛を込めて、アイドルであろうとする少女たちを肯定する。だから自分自身も「共犯者」としてメンバーに加わっている。

大森靖子は、アーティスト人生を賭けてZOCに関わっている。その真情のほとばしりが、オンラインライブですら、ZOCのパフォーマンスから伝わってくる。

その大森靖子を信じ、世界観を実現しようとするZOCのメンバーたち。

その共同体ないし運動そのものを愛すること。

それが、ZOCの楽しみ方である。

日向坂46の、今聴く「誰よりも高く跳べ」に涙し、「アザトカワイイ」の転調の連続に、既存のアイドル史の次元を超えてゆく凄みを感じるファンは、日向坂46の歴史も、新三期生もすべて含めて、まるごと彼女たちを愛しているだろう。

もちろん、10月14日をもって欅坂46から櫻坂46と改名した新グループに変わらぬ忠誠を誓い、新たな展開を信じるファンも同じだし、レッチリやメタリカやジューダスプリーストやアイアンメイデンのファンも、楽曲とともにバンドの歴史を愛している。

こんな景色の中ではこのバンドのこの曲、こんな気持ちの日にはこのバンドのこの曲が「似合う」とかいうピーター・バラカンみたいな「オシャレな聴き方」は、ぼくにとってはクソみたいなものだ。

たった1フレーズ聴いただけで人生が変わってしまう曲だってあるのだ。それを簡単に切り貼りするのは、何冊もの小説からお気に入りのフレーズだけ抜き出して並べるようなものだ。

結局、音楽とは愛なのである。

アイドルだって同じことだ。

「愛」を与え、愛される存在であるアイドルのファンであることは、時間やお金を使って、アイドルと同じく、アイドルに「愛」を与える存在になるということだ。

息の詰まりそうな日々の仕事や家庭生活の中で、あるアイドルのある楽曲に心惹かれるとき、そこに永遠への回路が開かれる。

それが音楽「商品」であり、想定顧客に向けたプロモーション=「釣り」のカモだと思われていたってかまわない。その楽曲のフレーズや歌詞の一部に触れた瞬間、限りある人生を生きる意味がわかったり、生きていてよかったと思ったりするなら、それは彼/彼女にとって運命の音楽なのだ。

アイドルをプロデュースするオトナたちは、少なくともそういう聴き手の反応を求めて、全身全霊を込めて楽曲を作っている。無数の選択肢がある中で、それに「釣られ」ることに何のためらいがあろうか。

ZOCのメンバーには、小学生の頃から奇行を繰り返したり、過酷な家庭環境だったり、引きこもりだったりした子もいる。それは、少なくともオトナたちのビジネスモデルに組み込まれたメジャーなアイドルグループには採用されないキャラクターである。現に、2018年の結成メンバーからはすでに3人が辞めている。

だが、ZOCの「A INNOCENCE」を見れば、このグループが、大森靖子が構想した「アイドルをテーマにしたアイドル」=メタアイドルでありながら、見る者に「愛」を与え、「愛される存在」=本物のアイドルでもあることがわかるはずだ。

https://www.youtube.com/watch?v=amlD_oCmrRA

メタアイドルとは、アイドルを考えるためのアイドルである。

そして、BABYMETALもまた、メタアイドルなのだ。

(この項終わり)