10年のキセキ(130) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月27日は、2017年、巨大キツネ祭り@さいたまスーパーアリーナ二日目が行われ、2019年には、米コロラド州デンバー公演@Ogden Theatreが行われた日DEATH。

2020年3月1日(日本時間3月2日)、汎ヨーロッパツアー第一ラウンドファイナルとなるモスクワ公演7曲目、ポルカ+コサックダンス+メタルの「Oh!MAJINAI」が大ハッピーのうちに終わり、暗転すると、今度は日本らしい「さくらさくら」のメロディでSU-が「♪きーつーねー、きーつーねー、わーたーしーはメーギツネー、きーつーねー、きーつーねー…」と歌うSEが流れた。
8曲目「メギツネ」である。
BABYMETALは近未来=ハイテク日本の象徴であるとともに、ロシアを含むヨーロッパ文明圏の人々にとっては未だにミステリアスな「日出づる国」の文化を背負った存在である。
C#mの重低音リフをバックに赤い照明が点滅し、スクリーンには赤と青に彩られた巨大なキツネ面が浮かび上がる。2010年11月28日、さくら学院重音部として誕生して以来、BABYMETALの守護神キツネ様は、ついにBABYMETALを極北のロシアにまで導いたのである。
三人がステージに再登場し、右手を頭の上から回して左目の上にかける独特の「メギツネポーズ」をとる。
「♪カラリンコン…」という和楽器の響きに、MOA、百々子がSU-の両サイドで「狛キツネポーズ」を決め、キツネサインを客席に突き刺していくと、「狐火」を思わせるピッキングハーモニクスから曲が始まった。
観客は、MOA、百々子の「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」に合わせてScreamし、ジャンプする。8,500人もの大会場で観客がジャンプし続ける光景は、日本と同じである。


間奏部、SU-は前回同様、ロシア語で「привет! москва(Hello! Moscow)」と叫び、おそらく「мы счастливы быть здесь(We are happy to be here!)」と叫んだのだと思う。もちろん、会場からは大歓声が沸く。そのあとはいつものように英語で「Are you ready to jump? A--re you read-----y?」と畳みかけ、「1、2、123、Jump!」と叫んで、自分もジャンプしながら踊った。
会場は「BABYMETAL祭」に突入し、数千人の観衆が右手を突き上げ、「ソレ!ソレ!ソレ!…」と燃え上がった。曲が終わっても、その熱気は収まらず、歓声とどよめきがビッグウェーブのようにピットを駆け巡った。
さらに、9曲目「PAPAYA!!」のイントロが鳴った瞬間、観客から野太い「パッパパパヤー!」という合いの手が沸き起こった。SU-が「もすくわー!」と叫び、「んJump!んJump!んJump!んJump!…」と煽りながら曲に入っていく。観客は後方付近までものすごい勢いでタオルを振り、ジャンプしている。ツアーファイナルで、タオル振りが定着したこともあるだろうが、これほどのタオル率は間違いなく日本並みである。


SU-の「祭rrりだ!祭rrりだ!」に対して「祭りだ!祭りだ!」、SU-の「騒げ!騒げ!」に対して「ヘイ!ヘイ!」、を合わせ、最後の「騒げよ、パパヤBoys」には「Yo! 」を合わせるMOAのScreamにシンクロするだけでなく、グロウルの「パッパヤー!」まで途切れない合いの手も完璧。2019年のこの曲のリリース、MV公開からBABYMETALのライブを待ち焦がれていたロシア人ファンがいかに多いかがわかる。
「パパヤ!パパパ!」で曲が終わると、またも歓声とどよめきのビッグウェーブがこだまする。
暗転した場内に、遠くから「♪ウォーウォーウォーウォー」と繰り返すコーラスが聴こえてくる。
10曲目「Distortion」である。5回目にメロディが「♪ウォーウォーウォーウォー↑」と上がると、大スクリーンにMVと同じ夕陽に照らされた廃墟の街が浮かび上がり、マーチのようなドラムスとDjentの細かいフレーズに合わせて三人が踊り出す。観客は、その速いテンポに合わせて小刻みにヘドバンし始め、熱心なメイトさんの多い最前列付近では、アリッサのグロウルに合わせて「ギバッギバッ!」「ストップザパワー!」「Distortion!」とScreamしていた。間奏部、中音域が強調されたディストーションサウンドのリフにMOAと百々子がステージの左右で手拍子を促し、SU-が裏のリズムで「Sing!」と煽ると、観客席は「♪ウォーウォーウォーウォー!」の大合唱となった。最後の「♪ウォーウォーウォーウォー↑」と上がるところで、MOA、百々子が両手を上げてダンスに入り、SU-が「♪歪んだカラダ叫びだす…このセカイが壊れても」と歌い出すタイミングはThe Forumや幕張同様バッチリ決まり、滅茶苦茶カッコよかった。
大歓声のうちに曲が終わると、照明が青く変わった。
三人が腕を斜めにそろえたポーズから、11曲目「KARATE」が始まる。
2018年のDarksideを知るメイトなら、「Distortion」と「KARATE」が、苦難を乗り越える一対になっていることがわかるだろう。「Starlight」のないAセットは、3曲目に「ギミチョコ!!」を入れて会場を早々と熱気に包むとともに、後半、楽曲の深みを見せるドラマチックな作りになっている。
ロシアの観客は、その意味をよく理解していた。


SU-が「♪ひたすらセイヤソイヤ戦うんだ」と歌い上げると、観客は「♪ウォーウォーウォー」と答える。その正確なコール&レスポンスは、BABYMETALへの愛だ。ロシアの観客の熱い思いが胸を撃つ。
三人が倒れ、起き上がり、肩を組んで前へ進み、SU-が「Everybody、Jump!」と叫ぶと、ピットでは波のようにうねるジャンプが見られた。
さらに全米横断ツアー、汎ヨーロッパツアーのセトリに必ず入っていた12曲目、「ヘドバンギャー!!」の意味も、ロシアの観客は理解していた。モスクワ公演の会場には、若いロシア人女性ファンが目立ったという。
日本でもそうだが、BABYMETALを見て、初めてロック/メタル音楽というものに出会い、ジャンルそのものに強く惹かれたという女性ファンは多い。この曲は、ヴィジュアル系バンドの追っかけをする“バンギャ”の成長がモチーフとなっているが、今やBABYMETALこそ、圧倒的なオーラをまとった「伝説の黒髪」のグループとなった。2015年5月のメキシコシティ公演でもそうだったが、2020年3月1日のモスクワ公演を「一期(いちご)の夜」として初めて見た若いロシア人女性観客の中から、BABYMETALに憧れ、将来ロックバンドをやる子が出てくるだろう。
最後のシーンで三人がクタクタと崩れるのは、もう誰かに操られる「お人形=いい子ちゃん」ではなくなったことを示している。メタルのパワーに触れ、「いい子ちゃん」を卒業することから、人生が始まるのだ。
会場にロシア式の「BABY、ME-TAL、BABY、ME-TAL」コールが響く。
三人がBABYMETAL旗を担いでステージに再登場する。フィニッシュ曲「Road of Resistance」である。
SU-がピットを分ける仕草をする前から、すでにピットフロアには巨大なモッシュサークルが出現し、肩車をしてBABYMETAL旗を掲げたメイトさんを中心に、100人近い観客がぐるぐる回っている。曲が始まる前の時点でこんな光景は初めて見た。それほどロシアの観客は熱かったのだ。
MOAの「1234!」で曲が始まると、さらにサークルは巨大になり、数百人の観客が笑顔で高速回転した。
「ウォーウォー…」のシンガロングパートでは、ピット、二階席とも観客のほとんどが拳を突き上げ、大合唱している。MOAは笑顔を作って観客を煽っているが、アップになる目はキラキラしている。


「♪命が続く限り、決して背を向けたりはしない…」からはまたキリッとしたカッコイイBABYMETAL。そして「♪ぼくらの未来on the way!」のあと、SU-が「もすくわー!」と叫ぶと、会場から怒号のような歓声が湧きあがった。
曲が終わり、ステージ中央に集まった三人は、歯を見せて笑っていた。
だが、「We are?」「BABYMETAL!」のコールをする間にSU-の表情は複雑になっていった。
過酷なツアーを乗り切り、泣きそうになっていたのか。現場にいたItchie-METALさんの情報では、終演後、SU-はフラフラで、MOAに支えられて舞台袖に入っていったとのこと。
本当に過酷なツアーだったのだ。それが無事終了したことの安堵感で、気が遠くなったのだろう。
それでもSU-は最後の「We are?」の前で、後ろを振り向いて両手をヒラヒラさせ、銀河神バンドを労っていた。見ているこちらも胸が詰まった。
スクリーンにエンドロールが流れ始めても、モスクワの観客はなかなか帰ろうとせず、「スパシーバ!スパシーバ!(ありがとう)」のコールがいつまでも続いた。
終演後のDark VaderことChris Kellyのツイートが面白い。
「Taking a minute to appreciate where I’m standing. What a trip. What a job. What a life. Music is Sick.」(少しの間、おれが今立っている場所について感謝したい。なんて旅だ。なんて仕事だ。なんて人生だ。音楽は凄い。)
おまえは小峠か。
BABYMETAL史上最長となる11か国17都市28日間にわたるMETAL GALAXY WORLD TOUR 2020汎ヨーロッパツアー第一ラウンド完結。フェス出演はなかったが、動員数は約45,000人にのぼった。
帰国後、3月20日のKnotfes Japan 2020に出演したあと、3月22日からはタイ、マレーシア、インドネシア、台湾、フィリピンを巡る灼熱の東南アジアラウンド、6月からはヨーロッパの主要メタルフェスと東欧ポーランド公演、南欧スペイン公演を含む汎ヨーロッパツアー第2ラウンドが始まる予定だった。
だが、世界中の誰も予想しなかった事態がBABYMETALを待ち受けていた。
(つづく)