10年のキセキ(120) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月13日は、2014年、BABYMETAL WORLD TOUR 2014@幕張メッセ初日が行われ、2019年には、米ペンシルバニア州フィラデルフィア公演@The Fillmoreが行われた日DEATH。

2018年10月のChosen Seven体制で、日本5公演のサポートダンサーを務めてくれたKotono(大森小都乃)が、『Young Guitar』2020年10月号連動の動画で、IRONBUNNYの「Lightning Speed」の速弾きギターを披露しています。https://www.youtube.com/watch?v=J17VI1fbans
IRONBUNNYは西暦2300年からやってきたというサイボーグコスプレギタリストEdiee Ironbunny(Cv.森久保祥太郎)がプロデュースし、2019年3月28日にKotono、Minami、Hinaの3人で結成されたハードロック・アイドルユニットで、2020年8月にHinaが眼病により脱退したため、現在は2人組。
ギターはほとんど弾けなかったとのことですが、解説によると2020年5月からの半年の練習で、タッピングを含めて全曲弾き通しています。裏・裏と入るリフが崩れないのはさすがのリズム感です。

2020年2月14日、BABYMETALはドイツ・ベルリン公演を行った。
セットリストは以下の通り。

1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.ギミチョコ!!
4.Shanti Shanti Shanti
5.BxMxC
6.神バンドソロ~Kagerou
7.Oh! MAJINAI
8.メギツネ
9.PA PA YA!!
10.Distortion
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance

アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:Chris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

会場のHuxleysは、ベルリンのNeue Welt(ノイエ・ヴェルト)=新世界と呼ばれる一角にあり、1930年の国政選挙でヒトラーが演説を行ったイベントホール。1950年に再建されて、ジミ・ヘンドリックス、DIO、ホワイト・スネイクなどがライブを行い、2015年8月には、BABYMETALがヨーロッパツアーの追加公演を行った。 
ドイツのファンは、2016年のケルン、シュトゥットガルト、2018年のRock am Ring、Rock im ParkとBABYMETALの歩みを見てきているわけだが、SU-とMOAにとっては懐かしい場所だったはずだ。
オープニングは「FUTURE METAL」。
収容人数は1,600名だが、縦に長い会場でステージが狭いため、銀河神バンドが登場してスタンバイするとスクリーンに影が映り込んでしまうが、場内からは大歓声が沸き起こった。
続いて照明が点滅し、イントロのメロディが繰り返される中、三人のシルエットが浮かび上がる。スクリーンが真っ赤に燃え上がり、2曲目「DADADNCE」が始まった。


アベンジャーは8公演目にして岡崎百々子に代わった。以降、モスクワまでの10公演は岡崎百々子が務めることとなる。日本人遠征組はざわついているが、ドイツ人観客はお構いなし。SU-の冴えわたるハイトーンと、MOA&百々子のキレの良いダンスにヒートアップしている。
岡崎百々子は3人のアベンジャーの中で最も大柄であり、手や足を振るたびにブンブン音が聴こえてきそうなほどダイナミックなダンスが特徴である。百々子が入ることによって、ダンスユニットとしてのBABYMETALはパワーアップした印象となる。
アベンジャーが変わることによって、MOAのダンスの印象が変わることは以前も述べたが、実はSU-の歌の印象も微妙に変わるように思う。
あくまでもぼくの見た印象に過ぎないが、鞘師里保は表現力の塊だから、歌うSU-も抑揚や表情のつけ方が陰翳を帯び、歌詞の意味を繊細かつ深く歌い上げる感じがする。
藤平華乃は手足が長く華奢な印象なので、SU-の雰囲気は「三姉妹のお姉さん」っぽくなり、ライブ全体がアットホームな感じになる。
それに対して、岡崎百々子がアベンジャーを務めるライブまたは楽曲では、SU-の歌唱は一言で言えば、荒ぶる感じになるのだ。
岡崎百々子は、デビュー戦となった2019年8月の超犀利趴10で、「メギツネ」「ギミチョコ」「PAPAYA!!」「Elevator Girl」「Shanti Shanti Shanti」、「Distortion」「KARATE」「Road of Resistance」の8曲を踊り通し、その後、9月~10月の全米横断ツアーでは、鞘師里保と日替わりでステージを務めた。
THE FORUMでは、「DADADANCE」(初披露)、「メギツネ」、「Elevator girl」「Shanti Shanti Shanti」「Distortion」「KARATE」「ヘドバンギャー!!!」「Road of Resistance」(全員)を担当した。
11月のSSAは両日ともに岡崎百々子が務め、2020年1月の幕張では、初日が「DADADANCE」「Elevator Girl」「Shanti Shanti Shanti」「Road of Resistance」、二日目が「Kagerou」「BxMxC」(初披露)「シンコペーション」「ヘドバンギャー!!」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(全員)を担当した。
「PAPAYA!!」は2019年6月の横アリで初披露されたが、「♪祭りだ祭りだ」のSU-の巻き舌とMOAのキュートボイスとのコントラストは、SSAで爆発した。「♪最強で最高って才能か?You Know What?」で始まる歌詞は、けっこうな「上から目線」なのだが、岡崎百々子のパワフルなダンスが加わると、圧倒的な迫力となって熱狂を生む。
「DADADANCE」はTHE FORUMで初披露されたが、この時の担当が岡崎百々子だった。
「♪DA、DA、DANCE、DA、DA、DANCEゆめまぼろし…消えて行け…目を覚ませ…舞い踊れ!」というサビの雰囲気も、ジュリアナ東京のようなビート感を強く感じる。
極めつけは、Legend-METAL GALAXY@幕張二日目の「ヘドバンギャー!!」だ。
Darksideという位置づけによるものだとは思うが、この曲でのSU-はニコリともせず、マイクスタンドを持ったまま、客席をにらみつけ、その間MOAと岡崎百々子は土下座ヘドバンを繰り返し、ピットの観客も長時間にわたって土下座ヘドバンをした。まさに荒ぶるSU-METALである。
こういうシーンを思い出すにつけ、岡崎百々子が加わったBABYMETALはパワフルかつ荒ぶる感じを受けるのだ。
ベルリンに戻る。
3曲目は「Shanti Shanti Shanti」。ドイツ人観客にとっては、3か所目にしてセットリストが変ったことになる。
この曲でも岡崎百々子のダンスはパワフル。大柄な身体からエネルギーがあふれている。


鞘師里保がこの曲を踊ると、しなやかでセクシーな感じを受けるが、岡崎百々子がこの曲を踊ると、例えば「♪アリーアリーアリー」の首の動きなど、コケティッシュでユーモラスな印象を受ける。
見ていてどっちが楽しいか、あるいは没入できるかは見る人の好みによるだろう。少なくともベルリンの観客はインド風リズム&メロディとヘヴィなギター・リフと三人のパワフルなダンスの「融合」に圧倒され、曲の間中、手拍子とヘドバンで声援を送り続けた。間奏部の三拍子になるところも、二拍のリズムがキープされるところがBABYMETALらしい。
4曲目は「ギミチョコ!!」。ピットでは早くもモッシュが始まる。
間奏部。SU-が「Hey! べるりーん!」と叫び、英語で「How are you feeling tonight!」と挨拶すると、古風な装飾がいたるところに施されたHuxlays全体がビリビリ震えるような大歓声が湧きあがった。MOAと百々子は上手と下手に分かれて笑顔で手拍子を促していた。この曲は頭指さしヘンテコダンスがイノセントな少女の無慈悲性や破壊力を表現しており、その意味ではKawaii顔してダイナミックに踊る岡崎百々子が適任だと思う。
ちなみに、かつてはYUIMETALとMOAMETALは「双子感」を出していたが、アベンジャー体制では、パワフル←→エレガント/セクシー←→イノセント/繊細←→大胆といったエレメントで、MOA+アベンジャーがコントラストを見せるようになっている。岡崎百々子がいるときは、MOAはエレガント/セクシー/繊細担当になる。それだけMOAのダンス表現力が幅広くなっているのだ。
5曲目は「BxMxC」。前述したように、この曲が初披露されたときのアベンジャーは岡崎百々子だった。


日本語ラップの「意味」はヨーロッパ人には理解不能だろうが、ヘヴィな音像と無機的なシンセ音+「B!M!C!」という意味不明のフレーズでグイグイ押していく曲調に、観客が惹きつけられているのがわかる。サビで「Be!」という合いの手を入れるのも定着し、後半部のSU-のアカペラパートでも大声援が起こった。
6曲目は、神バンドソロからの「Kagerou」。
2018年にはSU-ソロだったこの曲は、2019年からサイドダンスがついて、より表現力を増した。特にMOAのしなやかなでセクシーなダンスは、歌詞の世界観を伝えるノンバーバルな「言語」のようである。
それこそMIKIKO師流であり、BABYMETALのダンスとほとんどの日本の「アイドル」やK-POPグループの振り付けとの違いである。さくら学院出身者はみなMIKIKO師の指導を受けており、ニューヨークで学んだ鞘師里保も、かつてMIKIKO師が講師を務めたASHで小学生時代を過ごし、ダンサーとしてのスタートを切った。ダンサーとしての個性は、身体や感性によって異なるが、アベンジャー三人は、同じDNAを持つのだ。
それが言葉のわからないヨーロッパ人にも受け入れられ、BABYMETALの音楽/パフォーマンスが世界性を持つ基盤となった。ドイツ人観客の熱狂は、ただ単に「日本のKawaiiアイドルがメタルをやっている」という話題性によるものではないのだ。
7曲目は「Oh! MAJINAI」。1月25日の幕張では、この曲から鞘師里保に代わったから、岡崎百々子にとっては初披露となる。三人が手をつないで回るところや、腕組みをしたコサックダンスのシークエンスでは、ちょっと「浮遊感」が弱いかな、という感じ。もちろん、ゲルマン民族の末裔たるベルリナーたちは大喜びで、「♪ナイナナナイナイナイナイナイ」と叫びながら、踊り狂っていた。
ポルカのあとは日本のお祭りメタル。8曲目「メギツネ」である。
間奏部。今日のMOAは現地語あいさつの確認ではなくひょっとこのような変顔をしてみせる。それを見た下手の百々子がこらえきれずに笑っている。SU-は「Hey!べるりーん!」からドイツ語で客席に語りかける。「Ich freue mich hier zu sein!」(ここに来られて光栄です)といったあと、はにかむような笑顔を見せると、客席から大歓声が上がった。そこからはMOA、百々子の明るい「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」の掛け声に合わせ、熱狂のジャンプ大会となった。
続く9曲目は「PA PA YA!!」。今度は熱帯アジアのお祭りである。
イントロが鳴るとすかさず観客ハ「パッパパパヤー!」と叫ぶ。SU-が「べるりーん!」から「んJump んJump んJump!」と煽るとピットは灼熱の熱帯アジアと化した。
いつにも増してSU-の巻き舌が強い。「♪Brrring it on Brrring it!」(パッパパパヤ!)「♪Brrring it on Brrring it!」(パッパパパヤ!)「Bring Bring Bring Bring it!」(パパッパパ!)「♪祭rrりだ!祭rrrりだ!」と荒ぶるSU-のド迫力に、大男のゲルマン人も踊らずにはいられなくなる。
10曲目は「Distortion」。
短いインターリュードから「♪ウォーウォーウォーウォー…」のコーラスが響き、ドラムスのリズムに合わせて三人が踊り始める。そこにDjentなギターのフレーズが重なると、最前列付近ではモッシュの準備が始まった。
「♪Give up! Give up!」というグロウルは、11月の日本4公演以降、アリッサ・ホワイト・グラズのものに変わっている。SU-が「♪Stop the Power!」「♪Caught in a bad dream」と応える間、観客はまだ動かない。ピットにエネルギーが蓄積されていく。アリッサが「Distortion!」と叫び、SU-が「♪歪んだカラダ叫びだす」と歌い出すと、「♪ウォーウォーウォーウォー!」と合唱しながら、エネルギーを解き放った観客が激しいモッシュを始めた。ゲルマン人の大男たちがぶつかるパワーは、本ツアー最高の強度だった。
その勢いは11曲目「KARATE」でも続いた。イントロが始まると、観客は三人の正拳突きに合わせて「Hey! Hey!」と拳を突き上げる。

スクリーンの中ではCG合成により、三人の身体から炎が立ち上る。それは観客席の熱気とリンクして本当に陽炎が立ち昇っているようである。


間奏部、三人が倒れ、起き上がって肩を組む小芝居。今回はSU-が「Everybody Jump!」と叫び、大ジャンプ大会となった。
12曲目は、「ヘドバンギャー!!」。
2019年の全米横断ツアーから、この曲はずっとセトリに入っている。それはこの曲が、「これまでの自分の殻を破り、成長すること、運命をつかみとること」をテーマとする曲だからであり、Darksideを乗り越えたBABYMETALを象徴する曲だからである。しかし、それはアベンジャーの三人にも当てはまる。
岡崎百々子はまだ16歳。さくら学院卒業後はアメリカに留学し、語学とダンスを学んだ。BABYMETALの一員として台湾でデビューし、全米を横断し、ドイツ、イギリス、フィンランド、ロシアを回ることは、かつてSU-、YUI、MOAが経験したのと同じく、彼女の人生にとって大きなターニングポイントだといえよう。もちろん、世界的なアーティストとなったBABYMETALといえども、アベンジャーは先が見えない仕事だ。だが、2014年のBABYMETALは、日本では「ヘンテコアイドル」だったし、欧米では全く無名の存在で、いつポシャってもおかしくなかったのだ。そういう「生身性」こそが、BABYMETALというユニットの魅力でもある。だから「ヘドバンギャー!!」には深い意味があるのだ。
フィニッシュはいつもどおり「Road of Resistance」。
2015年にこの場所でライブを行った時も、この曲がフィニッシュだった。
「アイドル」とは、少女の憧れだが、99%が生き残れない過酷な職業である。それは「アイドル」の主戦場が「ポイ捨て」が標準の地上波テレビだからだ。今日のトップスターは、明日の「あの人は今」である。
「メタルレジスタンス」とは、「メタル」の力を借り、テレビに頼らず、市場を世界に求めてライブツアーに明け暮れるBABYMETALという生き方のアンセムである。だから、「Road of Resistance」で「♪進め!答えはココにある!」とステージを指さす三人の姿は、運命をつかみとるには、今宵限りのライブを続けていくしか道はないのだという生身のBABYMETALの決意を示している。
5年の年月を経て再びHuxleysに戻ってきたBABYMETALは、その変わらぬ確信を証ししたのだった。
(つづく)