10年のキセキ(119) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月11日は、2019年、米マサチューセッツ州ボストン公演@House of Bluesが行われた日DEATH。

昨日、全国の映画館で『Legend-METAL GALAXY』LVが行われ、ぼくも最寄りの映画館で観た。
ぼくの行った映画館はすべての座席が埋まっていた。見たところ男性は9割が50代以上、女性も20代後半から40代だった。ソーシャルディスタンスのため、一つおきの座席になっているのが本当にモッタイナイと思った。
Live Viewingは、ライブに行けない地方の人でも、その雰囲気を共時的に楽しめるというのがそもそものコンセプトだったはずで、ウェンブリーや東京ドームのLVがZEPPで行われていた頃はモッシュさえ発生したが、映画館では応援グッズを持ち込んではいけない、立ち上がってはいけないというように縛りがキツくなり、武漢ウイルス禍以降はさらにキツくなった。
7月31日と8月3日の『Legend-M-BEYOND THE MOON』LVもそうだったが、マスク着用を義務づけられ、大声を出して声援するのも禁止となった。ぼくはマスク着用賛成派だが、手拍子もダメというのはハッキリ言ってどうかしていると思う。
映写されている『Legend-METAL GALAXY』が示しているのは、中国・武漢市が閉鎖された2日後の2020年1月25-26日に、あれだけの大観衆が世界中から幕張メッセに集まり、スクリームし、シンガロングし、モッシュッシュ=肉体的接触を繰り広げたにもかかわらず、一人の武漢ウイルス感染者も出なかったという事実だ。
ライブビューイングの配給元や映画館というより、感染防止のレギュレーションを決めている自治体は、「コロナ脳」から脱却して、社会的リスクを冷静に考えた方がいい。
ぼく自身の感想としては、SU-が「みんな!もっと大きな声出せるよね!」と叫び、MOAがニコニコ顔で手拍子を促し、画面の中の自分が両手を上げてヘドバンしているのに、声も出せず、キツネサインさえ挙げられないというのは「苦行」以外の何物でもない。よく考えれば、実際のライブに参加しているのだし、BDも手元にある。それでも行ってしまうのはなぜだろう。
早く本物のライブに参加したい。頼むよ新首相。

ぼくが小学生のころ、ドイツは東西に分断されており、西ドイツの首都はボンだった。そのすぐ近くにあるのがケルンである。
南北に長い日本から見ると四角いドイツは都市と空間の関係を把握するのが難しい。山手線で考えると、池袋がハンブルク、上野がベルリン、東京がドレスデン、品川がミュンヘン、目黒がシュトゥットガルト、渋谷がフランクフルト、新宿がデュッセルドルフである。ケルンは代々木、ボンは原宿かな。
つまり、BABYMETALは2020年2月8日に池袋でライブをやったあと、2月9日に神奈川県横浜(フランスのパリ)、2月11日に千葉県幕張(オーストリアのウイーン)でライブをやったあと、東京に戻り、2月13日に代々木、2月14日に上野でライブをやったという位置関係である。(なんのこっちゃ)
もちろん、ケルンといえば2014年MOAMETAL聖誕祭の街であり、MOAは2015年のJ-Wave『ANA world  AIR CURRENT』で、「忘れられない街」であると話し、ライブ終了後に三人でケルン大聖堂に登り、美しい街並みを眺めたことを明かした。
セットリストは以下のとおり、ハンブルクと同じ「Starlight」入りのBセットに変わった。

1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.Distortion
4.PA PA YA!!
5.BxMxC
6.神バンドソロ~Kagerou
7.Starlight
8.Oh! MAJINAI
9.メギツネ
10.ギミチョコ!!
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance
アベンジャー:鞘師里保
神バンド:Chris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

会場のCarlswerk Victoriaはケルン市内の工場街ミュールにあり、古い工場を改築して、バウハウス風のモダンなデザインのイベントホールとして2018年に開場した。収容定員は1,600名。2014年7月、2016年6月のLive Music Hall(1,500人定員)よりわずかに大きい。
オープニングアクトのSKYNDが終わると、ドイツ特有の「チャッツ、チャッチャッチャ、べいびーめーろー」というリズムのコールがかかる。
BGMが消え、客電が落ち、ステージ奥のスクリーンでモノクロの「FUTURE METAL」が始まる。
この曲のテクノな雰囲気は、無機質なデザインの会場によく似合っている。小さなステージなので、スクリーン前を銀河神バンドのメンバーが横切ると大歓声が上がる。レーザー光がBABYMETALのロゴを右上の髑髏に至るまで焼き上げると、いよいよライブのスタートである。
「DADADANCE」のイントロが始まり、点滅する青い照明に三人のシルエットが浮かび上がると、そのたびに「イエー!」という野太い歓声が上がった。リフがピークを迎えると、爆発したように照明が明るくなり曲が始まった。「♪BABY BABY ベイビーメロッ!」で、三人が腕を斜めにするポーズを決め、「フォー!」というスクリームが入る瞬間は、何度見ても鳥肌が立つ。


しかし、Carlswerk Victoria ではSU-のマイクが不調で、歌い出しの14小節まで歌が聴こえなかった。ようやく「♪…愛のレクイエム」でマイクが復調。タイミングよく「♪フォー!」が入ると、そこからは熱狂のライブとなった。
3曲目は、「Distortion」。Darksideだった2018年のRock am Ring、Rock im Parkでこの曲を披露しているから、ドイツ人メイトさんには、思い入れがあるかもしれない。
まして、2014年から見てくれている人がいるとすれば、MOAMETAL聖誕祭でのKawaii METAL、2016年の少し大人になったBABYMETAL、2018年のDarksideでの濃いメイクを経て「成長」してきたBABYMETALの姿に感慨深いものがあったはずだ。
「♪ウォーウォーウォーウォー」のコーラスが盛り上がり、マーチのようなドラムスから曲に入ると、ピットはモッシュの嵐となった。


間奏部、ChirisとC.J.のディストーションの効いたリフをバックに、SU-が「Hey! けるーん!」と叫ぶと、ドイツ人観客は大歓声を上げ、SU-の「Sing!」に合わせて「♪ウォーウォーウォーウォー!」の大合唱が狭い会場にこだました。

4曲目は「PAPAYA!!」。幕張のようにパイロが火を噴き花火が点火される代わりに、スクリーンに激しく燃える炎が映り、「♪パッパパパヤー!」のグロウルと共に、会場が熱帯アジアのお祭り空間と化す。タオル振りも定着してきたようで、ジャンプする者、MOAを真似て盆踊り風に踊る者、何かわめき続ける者など、会場は外気温5℃とは思えない熱気に包まれた。4曲目でもうすさまじい盛り上がりになっている。
5曲目は「BxMxC」。
この曲もバウハウス風の会場の雰囲気によくマッチしていた。
日本語ラップの意味はわからなくても「B!M!C」の連呼、「ワナワナワナ」→「Be!」「ワサワサワサ」→「Be!」の合いの手は定着してきたようだ。

日本人だってあの歌詞が何を言っているのか、わからないのだ。「てきなメタルサイファ」とは自己言及だし、「♪ライム壊すスタイルカオス巻き起こすぜMosh」「♪流行り廃り気取り誇り証し探しバトり裸足」「♪言葉巧み飾りひとりふたり踊り狼煙火消し」という歌詞に一貫した意味を見出し、「それなそれな」と同意することはできない。かろうじて、日常的なルールなんてぶち壊してしまえというメッセージのようにも聞こえる。ラップは文章ではなく、音楽だというのは、正確な言葉の意味ではなく、断片的な単語のつながりが「感情」の渦となって聴くものの心を動かすからだろう。ましてドイツで日本語ラップをやる「意味」を考え始めたらきりがない。言葉にならないヘヴィネスを伝えるMOAと鞘師里保のダンスが、会場を一つの「感情」にまとめ上げる。SU-のアカペラパートでは、言葉の「意味」はわからないはずなのに、北欧でもパリでもウイーンでも、ラップの切れ目ごとに会場から奇声が上がった。不思議だが、それが2014年から日本語で歌っているBABYMRTALの真骨頂なのだ。
6曲目は銀河神バンドのソロからの「Kagerou」。何度も繰り返すがこの曲でもMOAのエモーショナルなダンスは、妖艶かつリズミックで、目を奪われる。もちろん里保も指先やつま先まで神経の行き届いたダンスで、歌詞世界を表現している。


7曲目はハンブルク以来の「Starlight」。
ドイツ人ファンの方々がどこまで思い入れがあるかはわからないが、少なくともこの曲が藤岡幹大氏への追悼曲であることは知っていただろう。
ライブに用いられるスクリーンいっぱいの星空の中で、ひときわ輝く星が小神様だ。
だが、日本人にとってかなり思いがけないことに、欧米あるいは中東の宗教では、人が死んだら星になるという思想はない。天界は神や天使の住む場所であり、星は「天啓」を人間に伝えるサインだ。だから西洋占星術が発達した。人間が星に例えられるのは生きている間だけで、偉大な人が亡くなった場合に「巨星、墜つ」といわれたりする。


宮沢賢治の童話のような、世のため人のために尽くして亡くなった命は、天にあげられて星になるというのは、きわめて東洋的な幻想である。ぼくはカトリックだが、同時に日本人だから、藤岡幹大氏はメタル銀河の彼方で星となってBABYMETALを導いていると確信できる。この曲は、そういうロマンチックな死生観を欧米人に伝える曲でもあるのだ。
澄み切ったハイトーンを響かせるSU-とエモーショナルに踊るMOAと里保。

「♪Fly higher in the sky…Fly higher in the night」のところでは、MOAがツインテールの髪に触って、歌詞の韻とシンクロさせる素晴らしい表現をしている。

三人が祈りのポーズをとったところで曲が終わると、今度は打って変わって「♪ナイナナ、ナイナイ、ナイナイナイ…」というグロウルとともにヨアキム・ブローデンの姿がスクリーンいっぱいに映し出された。
8曲目「Oh! MAJINAI」である。
メタルの爆音で奏でられるポルカのリズムと、手をつないでニコニコと踊る東洋の少女たちの姿に、普段は眠っている民族の伝統文化の記憶が目を覚ます。
会場は縦に長い構造なので、サークルモッシュにはならないが、大柄なドイツ人の観客が手拍子を打ちながら、足を小刻みに動かして踊っている。その様子を見て、SU-もMOAも里保もニコニコ顔である。大男たちを存分に踊り狂わせた三人は、ヨアキムが5人→3人→1人になる最後の「♪ナイナナナイナイナイ…」ではスクリーン前のシルエットとなってKawaiく首を振っていた。
続いて今度は日本のお祭り。9曲目「メギツネ」である。
「♪きーつーねー、きーつーねー、わーたーしーはメーギツネー…」からのリフの繰り返しでメギツネポーズを決めた後は、和楽器の響きの中で、MOAと里保がキツネサインを客席に突き刺し、「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と踊りだすと、客席も「ソレ!ソレ!」と叫びながらジャンプする。
間奏部。SU-の煽りはドイツ語である。「ハロー、けるーん!」のあと、「Ich freue mich hier zu sein.」(I am happy to be here)」「Seid bereit zu springen?」(Are you ready to jump?)と叫ぶと、観客は大歓声を上げてジャンプ大会に入った。


10曲目「ギミチョコ!!」、11曲目「KARATE」とお馴染みの曲が続き、12曲目は「ヘドバンギャー!!」。
2014年7月3日のライブはMOAMETAL聖誕祭であり、2番をMOAが歌った。2016年はセトリに入らなかったから、ケルンでの披露はそれ以来である。残念ながら、2月13日は「MOAのたんじょうび」ではないので、SU-が最後まで歌い切ったが、MOAの横ぶりヘドバン、水車ヘドバンのキレはファンカムで見ても気合が入っているのがわかり、「♪ヘドバン!ヘドバン!」のScreamもよく通っていた。
フィニッシュは「Road of Resistance」。
この曲は、2014年にはなかった。2016年には「ヘドバンギャー!!」がなかった。
2020年のBABYMETALには、YUIMETALも小神様もいないが、日本を代表するアイドルグループの“エース”だった鞘師里保が助っ人として加わっている。銀河神バンドはアメリカ人だ。
セトリだって、「メギツネ」、「ギミチョコ!!」、「ヘドバンギャー!!」、「KARATE!!」、「Road of Resistance」、「Distortion」、「Starlight」、「Kagerou」、「DADADANCE」、「PAPAYA!!」、「Oh! MAJINAI」と、BABYMETALらしい「融合」がさらにワールドワイドに進化した。やろうと思えばLegend-METAL GALAXY@幕張最終日のように「イジメ、ダメ、ゼッタイ」だってできるのだ。
「♪進め!答えはココにある!」とステージを指さす三人。Darksideを経て、過酷なツアー、ライブをこなすたびに大きく強くなっていく。その確信に満ちた表情に思わず胸が熱くなった。
(つづく)