10年のキセキ(118) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月10日は、2020年、『Legend-METAL GALAXY』の全国プレミア上映会が実施される日DEATH。

昨夜YouTubeオフィシャルで配信された「ベビネット DADADA」は面白かった。BABYMETAL初の生配信であり、『Legend-METAL GALAXY』のCD、DVD、BDのプロモーションであることは薄々わかっていても、全世界のメイトさんが同じ時間に視聴しているというシンクロニシティが体感できた。


ぼくは30分前から待機していたが、凄い速さで流れていくチャットの文字が読めない。
かろうじてそれがキリル文字(ロシア、東欧)、ウルドゥ文字(インド、パキスタン)、ドイツ語のウムラウト文字、スペイン語の特殊文字、ハングル(韓国)、繁体字(台湾)などであることがわかった。馴染み深いアルファベット26文字からなるチャットでも、英語だけでなく、フランス語、イタリア語、ポルトガル語で書かれたものが確認できた。
現在時刻を書き込む人もいたが、日本時間21時は、パキスタンで17時、ロシアで15時、ドイツ・フランスで14時、イギリスで13時、ブラジルで9時、アメリカ東部で8時、アメリカ西部で5時だった。
「ベビネット DADADA」が配信されることを知って、みんなPCの前、もしくはスマホを握りしめて待機していたのだ。
視聴件数は、20:50に5000件、20:55に10,000件、21:00に19,000件、21:10に35,000件、21:20に38,000件、21:30に44,000件、21:40に42,000件、21:50に24,000件といった推移を示した。
オープニングは、パワーメタル系のインストゥルメンタル曲で、「新曲か?」という書き込みが多かった。
内容は『Legend-METAL GALAXY』のダイジェストで、いわば生配信のTrailerという感じ。期待されていたSU-、MOA、アベンジャーの出演はなし。
テレビショッピングを“オマージュ”して、「DACHAN-METAL氏」と「UME-METAL氏」が「購入者」としてお勧めの楽曲を紹介するとき、画面右下に小さい文字で「※個人の感想であり、効き目・効能を示すものではありません」というテロップが出たのが面白かった。
配信された曲は、DAY-1が「DA DA DANCE」「Brand New Day」「ギミチョコ!!」の3曲、DAY-2が「PAPAYA!!」「ヘドバンギャー!!」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の3曲、合計6曲だった。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」終了後、エコバッグとエプロンをアスマートで限定販売したが、直後にアクセスしてみるとダウンしており、何度かのメンテナンスの後、24時までのはずが翌朝まで販売が継続された。
配信終了間際に、KOBAMETALは「夢のショッピングチャンネル、ベビネットDA DA DAでまた会おう!」と言っていたので、シリーズ化されるのかもしれない。
大量動員のライブが実施できない状況で、無観客の生配信ライブを行うアーティストも出てきている中、今回のテレビショッピング形式はイベントとしては面白かったが、あくまでもプロモーションにとどまった。
仮に録画であってもSU-、MOA、アベンジャーが出演し肉声を聞かせてくれたなら、もっと多く集まっただろうし、有料ライブなら全世界から「観客」が集まったはずだ。9月9日は10月10日の1か月前のゾロ目だったので、何らかのアナウンスが期待されたが、それもなく、肩透かしの感は否めなかった。
本日9月10日は『Legend-METAL GALAXY』の全国LV。まあ、すでにデロは到着しているのだが、大画面大音量のLVはやっぱり行きたくなる。

「10年のキセキ」の続き。
2020年2月11日、BABYMETALはオーストリア・ウイーン公演を行った。


オーストリアはBABYMETALにとってなじみ深い国である。初お目見えは2015年6月6日、Rock in Vienna 2015への出演で、大好評だったため、翌2016年6月3日にもRock in Vienna 2016に出演した。
2017年は前半レッチリ、KOЯNのツアーに参加し、後半は日本国内での活動が中心だったためヨーロッパツアーは行われなかったが、Darksideとなった2018年には、6月4日にスキーのメッカであるインスブルックのMusic Hall Innsbruckで待望の単独公演を行った。
2019年は6月からの活動開始で、新体制となり、全米横断ツアーと日本ツアーだけだったためヨーロッパツアーは行われなかったが、2020年には2月11日という早い時期に単独公演が組まれた。つまり、オーストリアのファンは、2015年のKawaii Metalに衝撃を受け、その大きな動機だった藤岡幹大氏の逝去とYUIMETAL不在を受けた2018年のDarksideを見た上で、Light Sideに戻ったBABYMETALを見ることができたわけだ。
セットリストは以下の通り。

1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.ギミチョコ!!
4.Shanti Shanti Shanti
5.BxMxC
6.神バンドソロ~Kagerou
7.Oh! MAJINAI
8.メギツネ
9.PA PA YA!!
10.Distortion
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance
アベンジャー:鞘師里保
神バンド:Chris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

会場のGasometerは、かつての4つの巨大ガスタンクからなる貯蔵基地を、4人の建築家に依頼して、住宅、ショッピングモールなどに改装したユニークな施設で、ライブハウスもその中にある。ストックホルム以来の3,000人台の会場だったが、Sold Outはしなかった。
オープニングは「FUTURE METAL」。
ヨーロッパの古都では、正八面体の宇宙船がメタル銀河を飛翔し、SU-METALとMOAMETALが転送されてくる映像は街の風景と対照的だが、Gasometerは建物自体がUFOみたいであり、ぴったりハマる。
ウイーンはモーツァルト、ベートーベン、ブラームス、マーラーらを輩出し、音楽の都と呼ばれるが、美術分野では、19世紀末に画家のクリムト、建築家のオットー・ワグナーらが展示会場を独占していた守旧派のボスたちに対して「分離派」と呼ばれる運動を起こして以降、エゴン・シーレ、オスカー・ココシュカ、クノップフら、ドイツ表現主義の影響を受けた前衛画家を輩出した。


ところが、国家社会主義ドイツ労働党=ナチスが政権を握った1937年、美術学校で風景画ばかり描いていたヒトラーは、彼らの作品を集めて「退廃芸術展」を開催し、以降、作品を制作することを禁じた。
ナチスドイツの敵だったソ連でも、ヨシフ・スターリンが1930年代からロシア・アヴァンギャルドに属する芸術家を次々に粛清、迫害していた。現代の中国、北朝鮮でも美術の主流は古臭い「社会主義リアリズム」であり、前衛的な芸術は隅に追いやられている。
このあたりにも、ナチズム/ファシズムと共産主義/社会主義が、根っこを同じくする全体主義であることが現れている。要するに、独裁者は前衛芸術がお嫌いなのだ。なぜか。
公序良俗や「平和」を装って思想を統一しようとするのが全体主義であり、そのうさん臭さに対して、既存の形式をぶち壊し「人間の真実」を突きつけるのが「前衛」の役割だからだ。
だからといって「前衛的」であればアンチファシズムの証明になるわけではない。現存する独裁国家のプロパガンダを「前衛的」に表現したものは、ただのゴミである。
ちょっと脱線してしまったが、BABYMETALも、オールドスクールなメタルのスタイルや欧米中心のメタル観をぶち破るという意味で、音楽における前衛=アヴァンギャルドであるといえる。
新生BABYMETALのOVERTUREである「FUTURE METAL」は、メタル銀河の彼方からやってきた未来のメタル少女降臨!というニュアンスが観客席に印象づけられる。だが、オートチューンされたSU-のアナウンスは「…This ain't Heavy Metal. Welcome to the World of BABYMETAL」であり、BABY「METAL」と名乗りながら「既存の」メタルであることを拒否している。そして、そのことをウイーンのファンは大歓迎した。
照明の点滅とイントロの繰り返しで三人のシルエットが浮かび上がると、会場の興奮は一気にスパークした。二つの彗星がぶつかって爆発し、新しい銀河が誕生する映像とともに「DA DA DANCE」が始まる。


会場に詰めかけた観客は、MVで「予習」してきており、「♪DADADANCE、DA、DA、DANCE!」と歌う。Screamの「♪フォー!」じゃないのが面白い。
アベンジャーは引き続き鞘師里保。キレのある動きとコケティッシュな表情で、堂々たるBABYMETALの一員となっていた。
3曲目は「ギミチョコ!!」。
2015年のRock in Viennaは砂埃が舞う巨大な野外フェスで、「紙芝居」が始まっても会場後方ではひっきりなしに観客が移動していた。しかし、「BABYMETAL DEATH」間奏部の藤岡幹大によるギターソロの超絶さに、「お?何だ何だこの凄い演奏をするバンドは?」という感じで足を止め、ステージに見入る光景が展開された。
代表曲だった「ギミチョコ!!」は8曲中6曲目にセットされており、この曲で観客の心をがっちりつかんだ。
あれから5年。今や観客のほとんどがBABYMETALを知っており、無条件でモッシュを繰り広げている。
SU-の「Hey!Vienna!We are so happy to be here!Clap your hands!And scream!」という呼びかけに、手拍子と大歓声が広がった。つかみはOK!
4曲目は「Shanti Shanti Shanti」。
メタル+インド音楽+インド舞踊という悪魔的なアイデアは、保守的といわれるドイツ語圏のメタルヘッズには思いもよらないだろう。この曲の二拍子はヘドバンに好適であり、途中、三拍子になるところも実は六拍であり、二拍子でヘドバンし続けられる巧みな編曲になっている。


SU-の「♪ヒューリ-ラ、ラーエラリー…」というインド演歌風ファルセットを交えたボーカルは冴えわたり、MOAと鞘師のダンスはしなやか、かつセクシーである。ファンカムには、後方の客があまりのカッコよさ、楽しさに笑い出してしまう様子が映っていた。
この頃になるとピットフロアの最後列までびっしり埋まり、観客が手拍子をとっているのがわかる。超満員とはならなかったが、ほぼ満員ということだ。
5曲目は曲調の全く異なる「BxMxC」。電子音とヘヴィなギターのリフによるダークな音像に、SU-の日本語ラップが響く。この曲も、三連符に日本語の三々七拍子ないし五七五のリズムを乗せて韻を踏みながらも、ヘドバンに好適な二拍子がキープされる構造になっている。「Wanna wanna wanna 」「Be!」、「Want some want some want some」「Be!」の合いの手はさすがに最前列だけだが、観客は間奏になるたびに歓声をあげていた。


明るいハードコアの「ギミチョコ!!」、インド風メタル「PAPAYA!!」のあとは、アンチユートピア風のダークな意味不明ラップ「BxMxC」。これがアヴァンギャルドでなくて何だろうか。
6曲目は銀河神バンドソロからの「Kagerou」。
2015年Rock in Viennaでは、神バンドの演奏力とKawaii日本人少女アイドルのコントラストが、ウイーンっ子の目と耳を惹きつけた。それは神バンドが、Djentからジャズまで、あらゆる奏法・フレーズの引き出しを持ち、アドリブでは予想もしないフレーズが飛び出す日本最高峰のメンバーだったことが大いに与っている。
銀河神バンドは、よく言えば王道、悪く言えばよくある演奏であり、驚異的とはいえない。
だが、そこに三人のダンスが加わることで、美女と野獣というか、怪物とキツネ少女というか、他ではあり得ないコントラストが生まれる。GasometerでのMOAと鞘師のダンスは、しなやかな動き、くるくる変わる表情、指先まで力の入ったキメポーズの美しさなど、鳥肌モノだった。
7曲目は、汎ローロッパツアーの目玉ともいうべき「Oh! MAJINAI」。
「♪ナイナナ、ナイナイ、ナイナイナイ」というグロウルとともに、スクリーンにヨアキム・ブローデンが映ると、やはり観客は大歓声を上げる。三人が手をつないでクルクルと回転しながらフォークダンスをすると、観客のほとんどがニコニコ顔で手拍子を打つゲルマン民族の祝宴になった。
そして、8曲目「メギツネ」は、日本のお祭りだ。
この曲は、オープニングに置かれる場合とセトリ中盤に置かれる場合の2つの使われ方がある。
欧米人にとってエキゾチックな雰囲気を持つこの曲は海外フェスでセトリの初めのころに置かれることが多かった。Rock in Vienna 2015ではこの曲が2曲目に置かれ、観客を熱狂の渦に引き入れていった。


単独ライブでは、この曲がセトリ中盤に置かれるケースが多い。その場合、BABYMETALというプロジェクトの源泉であるメタルの守護神キツネ様が、来場者にご挨拶するというニュアンスになり、そこから終盤へ向けて「再加速」する感じになる。
2017年12月以降「BABYMETAL DEATH」が封印され、Darksideの2018年には「In the Name Of」がオープニングになったが、Light Sideに戻った2019年の全米横断ツアーでは、単独ライブでも「メギツネ」がオープニングに使われた。
そして2019年10月以降は「FUTURE METAL」「DA DA DANCE」がオープニングになったため、2020年の汎ヨーロッパツアーでは、この曲本来の役割であるセトリ中盤に置かれた。
この曲がBABYMETALのギミックの源泉であることは、この5年間でウイーンの観客にしっかり理解された。そのため2020年2月11日のGasometerでは、「♪きーつーねー、きーつーねー、わたしはメーギツネー」の後のC#mのリフから「ヘイ!ヘイ!…」と合いの手を叫び、曲が始まるとMOAの「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」に合わせてジャンプし、押し合いへし合いのモッシュ大会になった。
続いて9曲目「PA PA YA!!」。
今度は、タイのお祭りである。イントロが鳴った瞬間から客席から「パッパパパヤー!」の合いの手が響く。イントロでSU-が「Vienna!」と叫び、「♪んJump!んJump!んJump!んJump!…」と煽ると、熱狂のジャンプタイムが始まった。Legend-METAL GALAXY@幕張以来、SU-のボーカルは一段と声量が増し、太くなっている。
特にこの曲では「♪祭rrりだ、祭rrりだ…」の巻き舌が強くなっており、蓮っ葉なカッコよさ。それに応えるMOAの「♪祭りだ、祭りだ」は、アイドルっぽいKawaiさで、コントラストを見せる。そして、アメリカ人バンドマン、ヴァイキングメタルの雄、タイの巨漢ラッパーといった大男どもを従えて歌い踊るBABYMETALの鋼鉄の魂が会場を埋め尽くし、熱気に包まれた。
10曲目「Distortion」では「♪ウォーウォーウォーウォー」の大合唱が起こり、11曲目「KARATE」では、三人がステージ上で倒れ、起き上がり、肩を組んで前進するところで拍手、歓声が沸いた。12曲目「ヘドバンギャー!!」では、MOAと里保がツインテールを持ち上げるコレオグラフィが大ウケしていた。ドラマ性が好きなのは、オペラの本場ウイーンっ子特有の反応なのかもしれない。
フィニッシュの「Road of Resistance」では、三人がBABYMETAL旗を担いで登場するドラマチックなシーンで大歓声が沸いた。SU-の客席を分ける仕草に、ピット中央に大きなWODが形成された。ピットに柵がないので、幕張メッセの展示場1ホールの横幅ほどのサイズである。MOAの「1234!」の掛け声で、「ウォー!」と雄叫びを上げてモッシュが始まった。サークルモッシュには至らないが、男女入り乱れて体をぶつけあっている。大迫力。「♪ウォーウォーウォーウォー」のシンガロングでは、後方の観客まで拳を振り上げて声を上げていた。
最後はいつもの「We are?」「BABYMETAL!」のC&Rから、「Get your Fox ha---nds、U---p!」で終了。
このライブでBABYMETALのオーストリアでの人気は更新された。汎ヨーロッパツアー第2ラウンドで、2020年6月10日にNOVAROCK@ニッケルスドルフPannonia Fieldへの出演も予定されていたが、武漢ウイルス禍で中止となってしまった。現在まで2021年の出演はアナウンスされていない。
(つづく)