BABYMETAL|東西の神とアベンジャーズが集結、二晩で魅せた10年間の光と闇

今年結成10周年を迎えるBABYMETALが1月25、26日に千葉・幕張メッセ国際展示場で開催した単独公演2DAYS「METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW LEGEND - METAL GALAXY」の模様が、ライブ映像作品とライブアルバム「LEGEND - METAL GALAXY」となって9月9日にリリースされる。

3年半ぶりにリリースされた待望のニューアルバム「METAL GALAXY」を携えたワールドツアーの一環として行われたこのライブでは、アルバムのテーマである「メタルの銀河の旅」の世界が、両日かぶりなしのセットリストと、全米ツアーを経てパワーアップした彼女たちのパフォーマンス、規格外なステージ演出で表現された。この記事では、現体制の集大成とも言える2日間のステージを追体験できる「LEGEND - METAL GALAXY」の見どころを紹介する。

文 / 清本千尋 撮影 / 瀧本“JON...”行秀、Taku Fujii

3rdアルバム「METAL GALAXY」について

BABYMETAL「METAL GALAXY」通常盤ジャケット

「LEGEND - METAL GALAXY」を観るにあたって欠かせない「METAL GALAXY」は、「メタルの銀河の旅」をテーマに掲げたコンセプトアルバム。ラテンやヒップホップ、R&B、フューチャーベースといったさまざまなジャンルの音楽をメタルと融合してBABYMETAL流のポップスとして表現した作品で、B'zのTak Matsumoto、スウェーデンのパワーメタルバンドSabatonのヨアキム・ブローデン、アメリカのプログレッシブメタルバンドPolyphiaのティム・ヘンソンとスコット・ルペイジ、スウェーデンのメロディックデスメタルバンドArch Enemyのアリッサ・ホワイト=グラズ、タイの人気ヒップホップシンガーF.HEROといった名だたる面々が客演として参加していることでも話題を集めた。

オーセンティックなメタルサウンドやデジタルハードコアサウンドとSU-METAL(Vocal, Dance)のまだどこかに幼さが残る歌声をかけ合わせ、“BABYMETAL”という新たなジャンルを確立した「BABYMETAL」(2014年発売)、「BABYMETAL」の流れを汲みながらも歌謡曲を思わせるメロディラインや“KARATE”という和のモチーフ、メタルのコアなサブジャンル・バイキングメタルなど新要素を取り入れ国内外でヒットを記録した「METAL RESISTANCE」(2016年発売)を経て発表された「METAL GALAXY」は、結成10周年を目前にまだまだ広がり続けるBABYMETALの可能性を感じさせる1枚となった。

「LEGEND - METAL GALAXY」の見どころ

BABYMETALは2016年にも東京・東京ドームにてまったく異なるセットリストでの2DAYS公演「BABYMETAL WORLD TOUR 2016 LEGEND - METAL RESISTANCE - RED NIGHT & BLACK NIGHT」を実施しているが、このときはそれまでに発表していた楽曲を2日間に分けてすべて披露するという形だった。しかし今回は、1日目は「METAL GALAXY」のDisc-1の収録曲を中心に選曲した「光の世界」がテーマのセットリスト、2日目は同アルバムのDisc-2の収録曲を中心に選曲した「闇の世界」をテーマとしたセットリストがそれぞれ組まれ、これまでBABYMETALが歩んできた“光”と“闇”の物語を表現するというコンセプチュアルなステージが展開された。

また今回のライブの特筆すべき点は“東の神”と“西の神”、そして“アベンジャーズ”の集結だ。“東の神”と“西の神”とは、BABYMETALに帯同するバンド“神バンド”のことで、“東の神”は日本のツアーを共にするおなじみのバンド、“西の神”は2019年のワールドツアーから海外でのステージを共にするバンドである。1日目は“東の神”がメイン、2日目は“西の神”がメインで演奏を担当し、どちらの公演でもラストナンバーでは東西の神が共演を果たした。“アベンジャーズ”は2019年のライブからパフォーマンスに参加しているサポートダンサーたちの名称。総員3名の“アベンジャーズ”は、これまでBABYMETALのトライアングルポジションの1つを日替わりで務めていたが、この2DAYSライブでは1回のステージに3人全員が代わる代わる登場し、両公演のラストナンバーでは3人そろってステージに立ち、SU-METAL、MOAMETAL(Scream, Dance)と共に5人編成のダンスパフォーマンスを繰り広げた。

BABYMETALの“光”

BABYMETAL「METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW『LEGEND - METAL GALAXY』」の様子。(撮影:瀧本“JON...”行秀)BABYMETAL「METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW『LEGEND - METAL GALAXY』」の様子。(Photo by Taku Fujii)

BABYMETALの“光”はメタルの復興を願いスタートした彼女たちの活動「METAL RESISTANCE」そのものだろう。“神バンド”と呼ばれるバンドを従え、麗しい少女たちが歌い踊るという斬新なスタイルやその形態だからこそ生まれた楽曲群は国内外で評価され、ヘヴィメタル界に希望の“光”をもたらした。

「光の世界」を表現した1日目のセットリストは、BABYMETALの初期楽曲にも通ずるユーロビートの要素を含む「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」やインド音楽を思わせるオリエンタルな旋律の「Shanti Shanti Shanti」といった「METAL GALAXY」の楽曲に加え、彼女たちの世界的なブレイクのきっかけとなった代表曲「ギミチョコ!!」やエネルギッシュなダンスと掛け声で“光”のパワーを放つ「メギツネ」、神々しいまでの輝きを持ったメタルバラード「THE ONE」などで構成された。今回のライブはドームクラスのライブで使用するサイズの巨大なLEDビジョンを使った演出も見どころの1つで、フォークメタルナンバー「Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)」では映像内に客演のヨアキム・ブローデンが大量発生し、その前でBABYMETALが踊るというコミカルなステージングでも話題を集めた。一方、ディストーションギターが印象的な「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」ではディストピアな世界観の映像をバックに、あえて照明を浴びず抽象的なシルエットになって踊るBABYMETALの姿が観客に強烈な印象を与えるなど、1日目はBABYMETALの持つファニーな要素と神秘的な側面が融合したステージが繰り広げられた。

BABYMETALの“闇”

「METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW『LEGEND - METAL GALAXY』」1月26日公演の様子。(Photo by Taku Fujii)「METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN EXTRA SHOW『LEGEND - METAL GALAXY』」1月26日公演の様子。(撮影:瀧本“JON...”行秀)

2010年の結成からメタル界の希望の光として活躍してきたBABYMETALだが、2018年の「BABYMETAL WORLD TOUR 2018」では、サポートメンバーを迎え“ダークサイド”を表現。この“ダークサイド”期と通ずる「闇の世界」を表現した2日目のライブは、狐面をかぶり杖を手にしたBABYMETALが儀式的なパフォーマンスを繰り広げる「IN THE NAME OF」で幕を開け、2018年のワールドツアーに合わせてリリースされた、ダークサイドを象徴するナンバー「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」や彼女たちが初めてフィーチャリングゲストを迎えた楽曲「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」、代表曲の「KARATE」などが披露された。

個性的な楽曲で構成される「METAL GALAXY」の中でも異彩を放つ“デスメタルヒップホップチューン”「BxMxC」では、SU-METALのボーカリストとしての新たな才能が開花。グループ内ユニットBLACK BABYMETALによる「おねだり大作戦」など、BABYMETALはこれまでもヒップホップの要素を取り入れてきたが、本格的なラップに挑戦するのは「BxMxC」が初めてで、SU-METALは尻上がりなフロウや巻き舌を取り入れた新たな歌唱方法で観客を圧倒した。メロディックスピードメタル「シンコペーション」や会場中をヘッドバンギングの海と化すスラッシュメタルナンバー「ヘドバンギャー!!」といった人気曲が連続で届けられたあと披露されたのは、SU-METALとMOAMETALを中心とした新体制で初めて発表された楽曲「Starlight」。新たなフェーズに突入したBABYMETALを象徴するこの楽曲では、SU-METALの祈るような歌声が会場に響き渡った。

雄大な宇宙の映像をバックにした「Shine」や未来への希望が高らかに歌われる「Arkadia」を経て、この日ラストナンバーに選ばれたのは約2年ぶりの披露となる「イジメ、ダメ、ゼッタイ」。YUIMETALがグループを離れてから歌われることのなかったこの楽曲のイントロが東西の神によって鳴らされたとき、会場には怒号のような歓声が沸き上がった。アベンジャーズを含む“5人”のBABYMETALが長らく封印されてきた「イジメ、ダメ、ゼッタイ」をパフォーマンスしたことで、2019年から続いてきた「METAL RESISTANCE」の「メタルの銀河の旅」は終わりを迎えた。

BABYMETALはこのライブで、「METAL RESISTANCE」の“最終楽章”である「METAL RESISTANCE EPISODE X」をスタートさせることを予告した。まもなく迎えるXデーに備え、BABYMETALの歴史を語るうえで欠かせないライブとなった「LEGEND - METAL GALAXY」の映像をしっかりとチェックしておこう。

ベビネット DA DA DA
2020年9月9日(水)21:00~

「LEGEND - METAL GALAXY」の発売日9月9日(水)21:00からBABYMETALのYouTubeチャンネルで、BABYMETAL初のテレショップ番組「ベビネット DA DA DA」が配信されることが決定! 番組では本作から厳選されたライブ映像と共に、作品の見どころや聴きどころが紹介されるほか、限定特典付きの「LEGEND - METAL GALAXY」やスペシャルグッズを取り扱う特設オンラインショップのURLが公表される。特設オンラインショップでのお買い物は当日24:00まで。アーカイブなし、一夜限りの「ベビネット DA DA DA」の配信をお見逃しなく!