10年のキセキ(115) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月4日は、2019年、米国フロリダ州オーランド公演@Hard Rock Liveが行われた日DEATH。

2020年2月5日、BABYMETALは北欧3か国目デンマーク・コペンハーゲン公演を行った。
セットリストは、ストックホルム、オスロとは変わっていた。
1.    FUTURE METAL
2.    DADADANCE
3.    Distortion
4.    PAPAYA!!
5.    BxMxC
6.    Kagerou
7.    Oh!MAJINAI
8.    メギツネ
9.    ギミチョコ!!
10.    KARATE
11.    ヘドバンギャー!!
12.    Road of Resistance
アベンジャー:鞘師里保
神バンド:下手からChris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

デンマーク王国は、14世紀後半にスウェーデン、ノルウェー、アイスランドを支配した北欧の大国である。
コペンハーゲンはその首都として、中世の栄華の趣を残した美しい街であり、METALLICAのラーズ・ウルリッヒの故郷でもある。
会場のVega Main Hallは細長いフロアをぐるりと取り巻く二階席を持つ、収容1,150人の小さなコンサートホールだが、米ビルボードや英オフィシャルチャートのロック部門でアジア人初の第1位という実績を引っ提げ、欧米のメタルフェスで数万人を動員してしまうBABYMETALとしてはさすがに小さ過ぎた。
開演20分前には二階席までびっしりと埋まった超満員となり、ピットフロアはものすごい圧縮状態で、初めてメタルバンドのライブに参加したという女性が、終演後、「コンサートは素晴らしかったが、モッシュピットでもみくちゃにされて身の危険を感じた」とツイートしていたほどだった。
ライブの模様は、地元のラジオ局「Dentunge Radio」が収録し、2月11日に放送された。
“日出づる国”から初めて“北欧の首都“にやってきたBABYMETALはデンマークで注目の的だったのだ。
オープニングは「FUTURE METAL」。
テクノの曲調、モノクロの幾何学的デザインやオートチューンによる「…Welcome to the World of BABYMETAL」というアナウンス、宇宙を飛翔する正八面体の映像は、 “日出づる国”のイメージを、近未来的・SF的な、欧米人から見たテクノオリエンタリズムのカラーに染め上げていく。


そこからメタル音楽の概念を塗り替えるユーロビートの「DADADANCE」で、場内は一気に盛り上がった。
「♪フォー!」という奇声は、1986年アメリカのソウルシンガー、トラメイン・ホーキンスの「In the Morning」がオリジナルで、それをサンプリングした1990年オランダのHouse of Venusの「Dish & Tell」から、1992年ベルギー人プロデューサーとスリナム系オランダ人二人によるユニット2Unlimitedの「Twilight Zone」→1993年Maximizorの「Can’t undo this」(ジュリアナ東京のテーマ)→1993年TRFの「EZ DO DANCE」と引き継がれたダンスミュージックへの“オマージュ”である。
MOAによるラップにもTRF、Globeの楽曲タイトルが盛り込まれており、日本のバブル期を思い出させる。
欧米人が抱く日本のイメージが、フジヤマ・ゲイシャ・ゼン・サムライ・カミカゼから、ハイテク先進国=日本というイメージに大転換し、YMOがワールドツアーを行い、『Japan as No.1』(エズラ・ヴォーゲル)という本がアメリカでベストセラーになったのは1980年代初頭だが、1980年代後半~1990年代前半のいわゆるバブル期には、日本企業が欧米のアイコン的な不動産や絵画を買収するほどの好景気となった。
ロンドン市立大学のデヴィッド・モーレイとケヴィン・ロビンズが1990年代中盤に提唱したテクノオリエンタリズムという欧米人による新たな有色人種への偏見も、その当時の日本の勢いに由来する。
だが、バブル崩壊とともに日本の経済力は低下し、代わって「世界の工場」となった中国や韓国が台頭し、新たな東洋のハイテク先進国=テクノオリエンタリズムのイメージを担うようになった。
経済が低迷する中、テクノオリエンタリズムを利用しつつ、日本的な価値観を世界に向けて発信する政策となったのが2012年発足の第二次安倍政権で推進された「クールジャパン戦略」だった。
それは、欧米で大人気になっていたコミックやアニメーション、アイドル、日本料理、道具・小物といったサブカルチャーを表象としていたが、少なくとも公的機関が支援する企画展の題目としては、ものづくりやおもてなしの精神、お祭り=伝統的宗教が持つ先祖崇敬や自然共生の思想、公共観念など、経済的・軍事的に台頭する中国や韓国とは一線を画する日本的価値観をソフトパワーとして発信しようとするものだった。
BABYMETALの世界進出も、長い目で見ればその一環だったと言える。
事実、BABYMETALは2014年、欧米デビューする前に稲田朋美クールジャパン担当大臣に招かれ、長時間のインタビューに答えている。
『METAL GALAXY』収録の「DADADANCE」の「♪フォー!」は、BABYMETALが、“失われた20年”の時空を超えて、欧米の価値観が主流のメタル音楽やダンス文化に、日本固有の価値観を「融合」することによって、新しい表現を生み出した“産声”なのだ。
なお、日本のサブカルチャーの世界進出は、アメリカ帝国主義を補完する準帝国主義だとかいう意見には、ぼくは組みしない。クールジャパンを受容しているのは、現在も太平洋・カリブ海・アフリカに植民地を持つ欧米列強の国々であり、それを自虐的にアメリカの手先だとするのは、論理矛盾であるだけでなく、少数民族の土地を武力占領し、人権を蹂躙し続ける巨大な全体主義独裁帝国から目をそらそうとする言い草にすぎないからだ。
ここでセトリは前日までと違う展開を見せる。
3曲目は「ギミチョコ!!」ではなく、「Distortion」へ代わり、前日まで4曲目だった「Shanti Shanti Shanti」はセトリから除かれて、全12曲となった。
以下、4曲目「PAPAYA!!」、5曲目「BxMxC」、6曲目銀河神バンドソロ~「Kagerou」、7曲目「Oh!MAJINAI」と、セトリ前半は『METAL GALAXY』収録曲で、8曲目の「メギツネ」以降は『BABYMETAL』『METALRESISTANCE』からの代表曲が並ぶセットリストになった。
この“Bセット”は、同じ地域でのセトリのマンネリ化を防ぐためのものだったらしく、ハンブルクとケルン→ベルリン、ベルギー→オランダ、サンクトペテルブルグ→モスクワでセトリチェンジが行われた。
ライブに戻ると、3曲目の「Distortion」は、ユーロビートからのDjentパワーメタルという、ほかのバンドにはあり得ない流れだが、2018年に隣国ドイツのRock am Ring 2018(ニュルブルクリンク)、Rock im Park 2018(ツェッペリンフィールド)や、オランダ・ユトレヒト公演でお馴染みの曲であり、最前列付近ですさまじいモッシュが起こった。


間奏部の手拍子でMOAと鞘師里保が笑顔で客席に手拍子を促しながら、SU-が「Hey! コペンハーゲン!」と叫ぶと、満場の観客が大歓声で応えた。「ギミチョコ!!」でなくても、オープニング3曲で観客の心をわしづかみにしたわけだ。
続く「PA PA YA!!」も、「Distortion」とは全く異なる曲想だが、2019年のリリース以来、公式MVの視聴件数は、2020年2月当時でも1268万回(現在は1823万回)に達しており、単独ライブに来るほどのファンにとっては、どうしても見たい新曲だったろう。イントロが鳴った瞬間、大歓声が上がり、SU-が「んJump!んJump!んJump!んJump!」と煽ると、観客は小刻みにジャンプしながら「パッパッパッパパパヤ!」と叫び、場内は熱帯アジアの祝祭空間と化した。
5曲目から7曲目までは、公式MVはアップされていないが、「BxMxC」では、ダークな雰囲気のSU-による日本語メタル・ラップと荒ぶるMOAのダンス、「Kagerou」では、ラーズ・ウルリッヒの故郷で燃える銀河神バンドのソロとMOA・鞘師のしなやかなダンスのコントラストが披露された。
そして、7曲目の「Oh! MAJINAI」で、スクリーンに北欧ウォーメタルの雄SABATONのヨアキム・ブローデンが登場すると、場内は割れんばかりの拍手、歓声となった。


フィンランドのコルピクラーニが「イエバン・ポルカ」をメタル化したように、北欧ではフォークメタルが盛んで、数多くのバンドがある。その意味で新しさはないが、フォークメタルのサウンドをバックに、日本のKawaiiアイドル三人が手をつないで踊るとなると、楽しさは倍増する。観客は「♪ナイナナ、ナイナイ、ナイナイナイ!」という合いの手を叫びつつ、狭いピットでコサックダンスを踊り狂った。
8曲目はBABYMETALの代名詞「メギツネ」。
「さくらさくら」のメロディで“日出づる国”を感じさせ、イントロの途中に和楽器の「♪カラリンコン…」という音色が聴こえるが、そこからはヘヴィなリフに乗って、笑顔の三人が「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と踊り出す。考えてみれば「メギツネ」も日本のフォークメタルといえなくもない。ぎゅうぎゅう詰めのピットでは、引き続き観客が大喜びで踊った。
間奏部、銀のキツネ面で横顔を隠したSU-にMOAが何か話しかけていた。そのあとニコニコ顔のSU-は観客に向かって、デンマーク語で、「Er du klar til at hoppe?」(Are you ready to jump?)と観客に問いかけた。
汎ヨーロッパツアー初日のストックホルム、二日目オスロでも、この場面でMOAがSU-に何か話しかけていた。MOAの口の動きをファンカムで確認すると、忘れっぽいSU-のために、ライブ前に覚えたその国の言語での挨拶やフレーズを「復習」していた可能性が高い。汎ヨーロッパツアーでは、2月14日のベルリンまでアベンジャーは鞘師里保に固定されていた。このシーンで下手=SU-の背後に位置する鞘師里保がMOAに話しかけることもあり、三人が見知らぬ異国を巡るツアーを楽しんでいたことがわかる。
9曲目「ギミチョコ!!」では、クラウドサーフが次から次へと発生し、狭いピットは修羅場と化した。この頃になると、スクリーンにアップになる三人の髪の毛は汗で額に貼りついていた。外の気温は5℃。極寒の北欧だが、場内は熱気に包まれていた。


10曲目「KARATE」、11曲目「ヘドバンギャー!!!」と続き、フィニッシュの「Road of Resistance」では、かつて北欧四か国の盟主だったヴァイキングの末裔の大男たちがぶつかり合い、わめき散らす、すさまじいモッシュが展開された。
BABYMETALは日本人アーティストだが、バックバンドはアメリカ人である。それが北欧の観客に熱狂的に受け入れられた。かつて、アメリカに渡ったヨーロッパ人移民の音楽と、アフリカから連れてこられた黒人奴隷の音楽が融合して、R&Bやロックが生まれ、やがてヒップホップやメタルに発展した。
そして、それらがBABYMETALによって、アジアの音楽やダンスと融合され、新しい表現が生まれようとしていたのが2020年という年だった。

だが同時期、世界には、もうひとつの東洋の大国である中国で発生した武漢ウイルスの足音が迫りつつあった。
コペンハーゲン公演が終わった日本時間2020年2月6日の時点で、BABYMETALが2019年~2020年にライブを行った各国の武漢ウイルスの「感染者」数は以下のとおりだった。(出典:WHO Situation Report-17)
アメリカ…12人、スウェーデン…1人、ノルウェー…0人、デンマーク…0人、ドイツ…12人、フランス…6人、ベルギー…1人、オランダ…0人、イギリス…2人、フィンランド…1人、ロシア…2人。
この時点で、中国国内の「感染者」は28,060人と発表されており、閉鎖された武漢市内の病院で、死者が床に転がる映像がネットやメディアで広まっていた。だが、中国以外の国では、シンガポールの28人、日本とタイの25人、韓国の23人が最も多いだけで、欧米各国ではまだまだ「対岸の火事」の雰囲気だった。ただし、ロシアは1月30日に極東地域の中国との国境を閉鎖し、1月31日にはアメリカが14日以内に中国に滞在した旅行者の入国を禁止し、イタリアでは非常事態宣言が出され、2月6日には台湾が中国からの入国を全面禁止した。
こうして、BABYMETALの進撃を阻む「闇の力」はひたひたと全世界を覆いつつあった。
だが、その本質はウイルス由来ではなく、前代未聞の医療災害であるというぼくの考えは変わっていない。
2月当初、日本を含む西側世界で、武漢ウイルスは、閉鎖された武漢市の地獄の映像と、何をしでかすかわからない中国共産党政権への潜在的恐怖心によって「恐怖の殺人ウイルス」とみなされた。
そして各国の保健当局は、当の中国の臨床例やゲノム解析データに基づいて、インフルエンザのように発症した「患者」ではなく、ウイルス遺伝子の特定部位増幅技術=PCR検査の陽性判定者を「感染者」として隔離することにした。PCR検査は1件につき日本円で2万円~3万円かかるので、武漢ウイルス禍は巨大な利権を生んだことになる。
さらに米国CDCなど欧米の主要国の保健当局が、従来、さまざまな原因で発症する冬季の肺炎で死亡したすべての高齢者を、「武漢ウイルスの死者」としてカウントしたことで、ますます「武漢ウイルス=死病」のイメージが助長された。
日本では、当初専門家委員会の「日本モデル」に従ってPCR検査を限定的に用い、「武漢ウイルス死」の定義も厳密に行ったため、「感染者」も「死者」も欧米に比して抑えられた。
2020年9月2日現在、この「パンデミック」のワースト国は以下のとおり。

(出典:WORLDOMETER)
7月以降、冬を迎えた南半球の「感染者」が増えていることがわかる。また北半球では、どう見ても嘘くさい中国の1億6000万件を除いて、PCR検査数が8409万件のアメリカ、4433万件のインド、3710万件のロシアが「感染者」数でも上位になっていることがわかる。
ただし、社会的リスクを評価するために最も重要な指標となる人口当たりの死者数、および死亡率(=国民がこの病気で死ぬ確率)は、人口1000万人以上の国々の中で最悪のペルーですら、10万人当り88.5人/死亡率0.09%に過ぎず、最も「感染者」の多いアメリカでも10万人当り57.3人/死亡率0.06%に過ぎない。
日本の「感染者」数は、メディアと医療関係者の圧力によって6月以降、PCR検査数を増加させたため、9月2日現在69,001人となっているが、これは世界で44位、死者は1,307人で45位であり、先進国中最低水準である。人口当たりの死者は、10万人中1.0人、死亡率は0.001%である。どうしてこれが「死病」なのだろう。
しかも厚労省が発表している「武漢ウイルスによる死者」の年齢比率をみると、人口動態調査で毎年発表される「死亡者」の年齢比率とほぼ同じなのだ。

もちろん、武漢ウイルスを主因として発症した肺炎で亡くなった高齢者は、家族にとってそれぞれかけがえのない存在である。心よりお悔やみを申し上げたい。だが、その命の尊さは、同時期に風邪からくる肺炎で亡くなったぼくの母を含め、悪性腫瘍や脳溢血、心臓病など他の病気で亡くなった方、交通事故で亡くなった方、誤嚥で亡くなった方、お風呂で溺れて亡くなった方と等価である。
当たり前のことだが、高齢者が亡くなるのを人間が防ぐことはできない。
武漢ウイルスの死亡率が、これらの社会的リスクと同等以下であるなら、政府の対策も同様でいいはずだ。
より死亡率の高い他の社会的リスクへの対策をそのままにして、武漢ウイルスだけを極端に恐れ、人と人、国と国とを分断して、経済活動と国民生活を破壊し、ロックコンサートをさせないようにするのはどう考えても間違っているとぼくは思う。
(つづく)