10年のキセキ(114) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月2日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

YouTube動画の小岩Funk「怖いギター選手権」で、ぼくの作品が読まれました。
https://www.youtube.com/watch?v=5dRSU5oYunQ

(12:00~)ロッキーさん、ケンケンさん、怖がっていただきありがとうございました。

もちろん、2作品とも創作です。

小岩Funkは新小岩にあるギターリペアショップで、エフェクター、ピックアップ、コンデンサー、アンプなどに関する動画はギタリストにとってものすごい参考になります。


2020年2月4日、BABYMETALは北欧2か国目となるノルウェー・オスロ公演を行った。
1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.ギミチョコ!!
4.Shanti Shanti Shanti
5.BxMxC
6.神バンドソロ~Kagerou
7.Oh! MAJINAI
8.メギツネ
9.PA PA YA!!
10.Distortion
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance
アベンジャー:鞘師里保
神バンド:下手からChris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

セットリストは、前日ストックホルムと同じで、アベンジャーは鞘師里保、神バンドは銀河神バンドと、これも同じだった。
会場のSentrum Sceneは収容1,750人で、場内はエルゴノミクス曲線で構成され、2階シート席もあるお洒落な小ホールといった趣だった。
BABYMETAL登場は、現地時間20:02過ぎ。
オープニングの「FUTURE METAL」が始まると、大歓声が沸く。近未来からやってきたメタルダンスユニット=BABYMETALというイメージが会場に広がった。
「DADADANCE」が始まると、会場は一気にノリノリの雰囲気になった。ユーロビートは北欧発祥なので、ダンサブルな16ビートとメタルの組み合わせは受け入れられやすいのだろう。

オールドスクールなメタルヘッズはそもそも「Fusion of J-POP and Heavy Metal」ないし「Kawaii Metal」であるBABYMETALを拒絶する。
どうせKawaiiならダンスミュージックのような「DADADANCE」でもいいのだ。
だが、この曲は「メタル」の概念をぶち壊すとともに、ユーロビート~ソウルミュージック~ヒップホップといった欧米人の「ダンス」の概念をもぶち壊す『METAL GALAXY』の多様性の序章に過ぎなかった。
3曲目はBABYMETALの代表曲「ギミチョコ!!」。
実は、この曲だって、従来の「ダンスミュージック」の概念をぶち壊しているのだ。
MOAと鞘師はE単音のビートで頭指さしダンスをし、「♪あたたたたーたたーたたたズッキュン!」「♪わたたたたたーたたーたたたたドッキュン!」では驚いたように後ろに下がって見せ、「♪チェケラ、チョコレートチョコレート…」のところでは親指と人差し指で四角形のハンドサインを作ってみせたあと、人差し指で「ここがポイント!」という表現をする。


これは、要するに日本のアイドル特有の「振り付け」である。「ズッキュン」「ドッキュン」は小泉今日子の「渚のハイカラ人魚」のパロディだ。だが、日本人にとっては、「アイドルの振り付け」こそダンスだったのだ。1976年~1978年の2年間、日本の女子小学生はピンクレディの振り付けで朝から晩まで踊っていた。
BABYMETALは「メタルダンスユニット」だが、そのダンスには「アイドルの振り付け」も入っている。それは一般的なヒップホップと同じように楽しい。だから、「ギミチョコ!!」を見た欧米人女性の多くが、振り真似をしてしまうのだ。
ギターソロの間奏部、MOAと鞘師里保は手拍子をしながらニコニコ顔で客席を煽る。SU-も「Hey!オスロ!」と叫び、笑顔で手拍子。客席が一体化する。
4曲目は「Shanti Shanti Shanti」。
ここはオスロ。The Beatlesの「ノルウェーの森」以来、シタールの音色やラーガの旋律には馴染みがあるだろう。だが、BABYMETALはタブラのリズムに乗って、ダンスという形で、ノルウェーにインドの風を吹かせ、観客は「♪Shanti Shanti Shanti~」と合唱した。
インド舞踏は、ヒップホップより遥かに歴史のあるアジアのダンスミュージックである。その動きは繊細でしなやか、かつセクシーである。BABYMETALは「メタル」を媒介として、欧米人のダンスミュージックの概念を拡張しているのだ。
5曲目はダークな雰囲気を持つ「BxMxC」。
リズムは「Black Night」(ディープパープル)や「Captured」(キャメル)のような三連符の連続。
そのリズムに乗ったSU-の「TEKINA TEKINA TEKINA TEKINA…」と繰り返すラップの意味も解らないだろうし、日本語の字幕も読めないはずなのに、ものすごい盛り上がりになっている。
それは、SU-の両サイドでMOAと鞘師里保が踊り続けているからだ。一体、「Black Night」のリズムでラップし、踊ることを思いつくメタラーはいただろうか。そのパフォーマンスに、意味は解らないけど「凄い!」と心動かされてしまうということなのだろう。
6曲目の「Kagerou」も同じだ。銀河神バンドのアドリブソロに続いて、三人が肩を揺すって入ってくる。以前も書いたが、この曲のMOAの表現力は素晴らしい。体全体を使い、目線をスパッ、スパッと切り、緩急の効いたダンスで、観るものをくぎ付けにする。
この曲はわかりやすいブルースロックであり、ダンスミュージックとはほど遠い。だが、それで踊ってしまう。ダンスによって、理解できないはずの日本語の歌詞の内容が伝わってしまう。
それは、BABYMETALのダンスが、クラブで自分たちが踊るためのダンスミュージックでも、ジャズダンスやヒップホップをベースにしたK-POPのような“カッコいい”集団群舞でもなく、表現としてのダンスの可能性を拡張するものだからだ。だからこそ、「Kawaiiメタル」を媒介としながら、7曲目「Oh! MAJINAI」の東欧ポルカ、8曲目「メギツネ」の日本の祭り、9曲目「PAPAYA!!」のタイ民族音楽モーラムといったさまざまな世界の民族音楽、民族舞踏を取り入れ、昇華することができるのだ。


昨日も書いたが、BABYMETALはこうした方法論で、欧米中心の「メタル」や「ダンス」の既成概念に挑戦しているのだ。
話は少しそれるが、ワシントンポストによれば、昨日2020年9月1日、中華人民共和国のモンゴル国境に接する内モンゴル自治区で、学校の「国語」科の授業がモンゴル語から中国語に変更された。

すでに「音楽」科ではモンゴルの民族音楽は教えられておらず、他の教科も順次中国語へ置き換えていく方針とされる。

これに対してモンゴル人児童の保護者が立ち上がり、内モンゴル自治区全域で、登校ボイコット運動が起きているが、当局は方針に反対する者は1か月以内に全員逮捕するとしている。


中華人民共和国憲法第4条には、「いずれの民族に対する差別及び抑圧も、これを禁止し、並びに民族の団結を破壊し、又は民族の分裂を引き起こす行為を禁止する。」「いずれの民族も、自己の言語・文字を使用し、発展させる自由を有し、自己の風俗習慣を保持し、又は改革する自由を有する。」と定められている。
この規定にもかかわらず、中国共産党政権は、チベット、ウイグルに続き、内モンゴルでも民族言語および民族文化の破壊を始めたのだ。
近代国民国家では、国民を構成する少数民族の伝統文化を保護することは大切だが、前近代的な習俗が人権を阻害したり、近代化の足かせになったりするケースがあるのは事実だ。たとえば、極端な身分制や宗教の強制、公衆衛生観念や複雑な計算を要する数詞の言語などだ。その場合、伝統といえども古い慣習は改められなければならない。
アイデンティティとしての伝統文化を尊重しつつ、より自由で豊かな近代社会の形成者を育てるという課題は、グローバル化した世界の中の日本人自身にも突きつけられている難問だとぼくは思う。
だが、憲法に定められた自治権のひとつだったモンゴル語・モンゴル文化教育を、今になって奪いとるという中国政府の政策はどうしたことだろう。
内モンゴル自治区はすでに近代化されており、2015年には1人あたりの域内GDPが、上海、北京、天津に次ぐ中国第4位となった。近代化のために中国文化に同化する必要は全くない。
国民が多様な文化・言語・宗教・習俗を持つことを許さず、金太郎飴のように同じ顔、同じ言語、同じ思想を持つことを強制する中国共産党政権。習近平主席は、国民が自分のわからない言語を話していることが怖くて仕方ないのだろうか。
それはさておき、民族音楽は、民族にとっての伝統文化であると同時に、世界の音楽が発展していく上で大きな意味を持つ。そもそも西洋音楽だって、ヨーロッパという特定地域の民族音楽だったのだが、アメリカで、ヨーロッパ各国からの移民が持ち込んだフォークソングと、アフリカから連れてこられた黒人奴隷特有のブルーノートやペンタトニック旋律とが「融合」して生まれたのがカントリー、ブルーグラス、ヒルビリーであり、それがエレクトリック化されたのがロカビリー~ロックンロールである。それがイギリスへ渡ってブリティッシュロック~ヘヴィメタルとなった。
その他のジャンルでもこうした「融合」が起こり、音楽は多様化したが、譜面や楽理は、現在でも西洋音楽をベースとして記述される。つまり音楽もまた、政治や経済と同じく西洋近代文明を基盤としているといえる。
BABYMETALは、最も早く近代化された極東の島国=日出づる国=日本でヘヴィメタルを学び、日本特有のアイドル文化(=振り付けダンス)と「融合」させて、欧米市場に打って出た。BABYMETALが世界史的存在だというのは、そういう意味である。

『METAL GALAXY』に至って、「融合」の対象はバブル期日本~アジア全域へと広がり、2019年の全米横断ツアー、2020年の汎ヨーロッパツアーで、直接観客と対峙することとなった。
誤解を恐れずに言えば、あらゆる民族音楽を抹殺しようとする中国共産党と、欧米中心の既成音楽に様々な民族音楽を「融合」しようとするBABYMETALは、現代にあって対極的な存在なのである。
汎ヨーロッパツアー二日目、BABYMETALの繰り出す新たな「世界音楽」に、オスロの観客は熱狂した。
北欧のWar Metalの雄ヨアキム・ブローデンとともに三人が手をつないでコサックダンスを始めると、客席もジャンプし、踊りだした。ジャパニーズホラーメタルの「メギツネ」では、「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」「ワッショイワッショイ」と声をあげながらジャンプした。「PAPAYA!!」では、北欧とは正反対のアジアの熱風のように、大声で「PA!PA!PA!PA!PA!PA!PAPAYA!」と合の手を入れた。


10曲目「Distortion」では、Djentなリフと、これも北欧メタルの雄アーチエネミーのアリッサのグロウルからのパワーメタルに、観客席は「ウォーウォーウォーウォー!」と合唱し、11曲目「KARATE」でも、客席は「Hey! Hey!」「Osu!Osu!」と合の手を入れた。三人が倒れるシーンでは、肩を組んだ三人が前進を始めると大歓声が沸き、BABYMETALが愛されていることがわかった。


12曲目「ヘドバンギャー!!」では終演後、「3年間追っかけて来たけど、初めてライブに参加して、この曲を聴けて感激した」というスウェーデン人観客のツイートがあった。
締めは昨日と同じ「Road of Resistance」。

狭い会場だったが、最前列付近ではモッシュが発生し、大興奮と大感動のうちにオスロでの公演を終わった。
(つづく)