サトシ・ナカモトの思想 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月30日は、2015年、Leeds Festival 2015@イギリスBramham Parkに出演し、2017年には、5大キツネ祭り in JAPAN 白キツネ祭り@Zepp Osaka Baysideが行われた日DEATH。

今日は、BABYMETALとは関係ない「お金」の話。関係があるとすればBABYMETALの結成とほぼ同時期に姿を消したビットコインの発案者が、SU-と同じナカモトという姓を名乗っていた点くらいかな。
例によって、興味のない方は飛ばしてください。
8月25日、金融庁長官の氷見野良三氏は、日本経済新聞社と金融庁主催のブロックチェーン・グローバルガバナンス会議(Blockchain Global Governance Conference, FIN/SUM Blockchain & Business)の閉会前の講演で、ビットコインの発案者であるサトシ・ナカモトの理念の意義について述べた。
その3日後の8月28日、中国の江蘇省蘇州市で、公務員の給与の一部が、中国人民銀行発行のデジタル人民元(DC/EP)で支給されたと地元紙『温州晩報』が報じた。中国政府は、ドルに代わる国際基軸通貨とすべく、デジタル人民元の実証実験を行っており、今年5月には、国家プロジェクト都市(国家級新区)である河北省雄安新区にあるマクドナルド、スターバックス、サブウェイなど19の小売企業の店舗でデジタル人民元での決済ができるようになると発表されていた。今回初めて実際に給与として支払われた事例が報告されたことになる。
いずれも先週報じられたこの二つのデジタル通貨に関するニュースは、今後の世界を変えてしまうほどの重要な内容を含んでいるとぼくは考える。
わかっている人はわかっていると思うが、ぼく自身の整理のため、まずビットコインおよびデジタル通貨についてまとめてみる。
2007年、アメリカの住宅バブル崩壊によるサブプライム・ローンの破綻が起こり、連鎖的に信用の暴落が起こった。この影響を受けて、2008年9月15日、アメリカ最大級の投資銀行だったリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが倒産。同社が発行している社債や投信を保有している企業へと波及し、世界的な金融危機が発生した。いわゆるリーマン・ショックである。
解決策を話し合うG7蔵相会議がワシントンDCで行われていた2008年10月、サトシ・ナカモトという日本人らしき名前を持つ人物が、暗号理論に関するmetzdowd.comのメーリングリスト・コミュニティに、奇妙な論文を発表し始めた。
その論文は、政府発行の通貨を単位とし、金融機関が取引の信頼性を担保している通常の電子取引に代わって、分散型ネットワークにつながった無数のコンピュータがタイムスタンプを記録する(採掘=マイニング)ことによって、一連のデータの信頼性=プルーフ・オブ・ワークを構築することができ、商取引に用いられる、交換可能な価値を生み出すというものだった。この信用構築技術をブロックチェーンといい、取引の単位となる仮想通貨をビットコインと呼んだ。


サトシ・ナカモトは、2009年にビットコインのソフトウェアをネット上に発表し、最初のマイニングを行い、ビットコインの運用を始めたが、2010年半ばまでにビットコインプロトコルのソースコードやドメイン、プロジェクトの管理を仲間に引き渡し、姿を消した。その正体は、いまだにわかっていない。
日本語訳された論文は
https://coincheck.blog/292
で読めるが、極めて難解である。彼の理念の中で、最も核心をついているとぼくが思っているのは、次のような言葉である。
「多数決の意思決定は、最も多くのプルーフ・オブ・ワークの労力が費やされたことを示す最も長いチェーンによって表される」
ぼくらが日常使っている通貨、例えば円は、日本国の中央銀行である日本銀行が発行したもので、ニセ札でない限り、その価値は日本銀行が保証している。
クレジットカードはカード会社が信用を担保するしくみで、暗証番号と署名によって保持者が証明され、決済額は保持者の銀行口座から毎月日本円で引き落とされるから、その国の通貨を使った決済システムに過ぎない。
通貨のデジタル化という概念自体は、プリペイドカードやSuica、Pasmoなどのように、各国ですでに実用化されている。ただし、それは各国の通貨をチャージするしくみであり、仮想通貨であるビットコインとは違う。
ビットコインは、政府や金融機関が信用を担保する通貨とは連動せず、その価値は「プルーフ・オブ・ワークの労力」=ブロックチェーンによって担保される。つまり、国家の担保を必要とせず、無名の人々のプルーフ・オブ・ワーク=マイニングによって、信用=価値=通貨を創り出すことができるのだ。言ってみればトレーディングカードと同じだから、取引を行う者同士がお互いに信用していれば、国家が介入したり、禁止したりすることはできない。しかもビットコインはデジタルデータなので、国境を越え、瞬時に送金することもできる。
悩ましいのは、円←→ドル、円←→ユーロがそうであるように、ビットコインもさまざまな通貨と取引でき、為替相場が動くことだ。例えばドル高の時に買ったビットコインをドル安の時に売れば、差額が利益になる。
こうして、ビットコインは投機的に取引されるようになり、また、乱立したビットコインの発行会社の中には、データを何者かにハッキングされ、多額の損害を出してしまうところも出てきた。
そこで各国政府はビットコインの監視、規制に乗り出し、現在では、各国の中央銀行がブロックチェーン技術を用いたデジタル通貨を発行することが検討されている。
その最先端を走っているのが、中国人民銀行が発行するデジタル人民元である。


中国はGDP世界第2位の経済大国だが、通貨としての人民元は、米ドル、日本円、ユーロ、英ポンドのように国際的な取引に用いられる基軸通貨ではない。
中国政府は長らく人民元の対ドル相場を固定してきたが、2005年以降は、複数の主要通貨による「通貨バスケット」を参考にした管理変動相場制がとられている。ただし、「通貨バスケット」に含まれる通貨は正式には公表されておらず、主要通貨の為替相場の平均値と連動しているわけでもなく、あくまでも「参考」として中国の金融当局が直接両替できる米ドル、日本円、英ポンド、オーストラリア・ドル、ニュージーランド・ドルの5通貨との交換比率=為替相場を決めている。
人民元は2015年にIMFの緊急事態に備えた準備金であるSDR(特別引き出し枠)の構成通貨となっているが、人民元を直接輸出入の決済に使えるのは、香港、マカオ、シンガポールなど一部の国・地域に限られるため、外国企業が中国にある企業と商取引(輸出入)する際は、人民元と米ドル、英ポンド、日本円などの通貨を両替することで行われてきた。
しかし、2016年に就任したアメリカのトランプ政権は、中国との貿易不均衡を改善する高関税化や、製造業の国内への呼び戻し政策に始まり、安全保障上の懸念があるとしてZTE、ファーウェイ、TikTokなどの特定中国企業との取引を禁止し、知財が中国に流出するのを防ぐため、中国企業と契約した研究者を摘発するなど、対中国強硬政策を次々と打ち出した。
最近ではペンス副大統領やポンペオ国務長官が、中国共産党/共産主義そのものへの批判を強め、ウイグル人権法や香港人権法を制定して、人権弾圧に関わった特定の中国高官が口座を持つ銀行を、銀行間の電子決済網(SWIFT)から締め出す経済制裁を行っている。


日本を始め、他の自由主義国でも、武漢ウイルスの発祥地となったことや、域外適用法である香港国家安全維持法の制定によって、「チャイナリスク」が高まったため、中国から撤退する自国企業への支援が始まっている。
もちろん武漢ウイルス禍の前も後も、中国にある企業との商取引、輸出入は行われている。
外国企業が中国国内で得た利益を国外に持ち出すことはできないので、利益は中国国内で再投資するしかないのだが、それでも中国企業や中国に進出した外国企業は、原料、部品の調達など世界的なサプライチェーンにがっちり組み込まれており、外国企業が撤退するとなると、これまで得た資産を放棄することになるので、デカップリングは容易ではない。
だが、仮にアメリカ政府が中国と戦争状態に入れば、米ドルと人民元の両替ができなくなり、人民元の価値は暴落する。通貨は政府の信用が担保となっており、戦争に敗れれば紙幣はただの紙切れになってしまうからだ。
そこで、中国政府は、ブロックチェーン技術で「信用」を担保し、かつ中国人民銀行によって発行量をコントロールでき、A.I.によってすべての商取引を監視できるデジタル人民元の実用化を急いでいるのだ。
これによって中国は、国際基軸通貨としての米ドルに代わるデジタル人民元経済圏を作ろうとしている。ウソかホントかわからない「抗米新8条」にも、中東・アフリカなどの友好国との間で、新たな経済圏を作るという項目があった。
サトシ・ナカモトは、「お金」の本質は「信用」であると喝破し、分散型コンピュータネットワークでマイニングすることによって、国境を越えた商取引に使える信用=価値=通貨を生み出すことができるとして、ビットコインを創造した。それは、個人同士の自由な商取引を、政治的に不安定な国家や金融機関による信用不安の連鎖から解放する手段だった。
だが、その技術は中国政府によって換骨奪胎され、商取引のすべてを政府が監視できるデジタル人民元として実用化されてしまった。
『温州晩報』によれば、今回支払われたのは公務員の給与の一部ということで、使える店舗も限定的なようだが、すべての給与がデジタル人民元になり、すべての商取引が決済できるようになるのは、中国共産党政権が存続する限り時間の問題だろう。
すでに中国では、個人の信用スコアがデータ化されているので、デジタル人民元のIDはそれと連動する個人識別生体マイクロチップとして身体に埋め込まれるものになるだろう。そして政府が「危険人物」としてIDを停止すれば、その人のデジタル人民元=「お金」は使えなくなってしまう。もとより中国は共産主義国家だから、私有財産は不可侵ではないのだ。
そうなれば、国民の生殺与奪の権はすべて中国共産党が持つことになる。少数民族の女性が強制避妊手術を受けさせられていても、宗教団体の信者が生きたまま臓器を奪われていても、家族や恋人や友人が突然警察に拉致されても、無警告のダム放水で家を流されても一切文句を言うことはできない。恐ろしいアンチユートピアだ。
もし、日本がデジタル人民元経済圏になってしまったら、中国共産党や共産主義への批判をさんざん書いてきたぼくは、山の中に逃げて自給自足の生活をするしかない。
冒頭にあげた金融庁長官の氷見野良三氏は、講演で次のように述べている。
「あれから十数年が経ち、今日、私たちは信頼という根本的な問題をもう一度深く考える必要に迫られているのかもしれない。信頼という社会の重要な構成要素には、いくつかの核となる構成要素があり、その中のいくつかは急速に変化している。
例えば、信頼の重要な構成要素の一つとして、対面での会議がある。対面式の会議は相手についての豊富な情報を提供してくれるし、私たちは動物的な本能と直感でそのような情報を解釈することにある程度の信頼を置いている。しかし、COVID-19では、G20に参加している閣僚や政治家との会合から夜の軽い飲み会まで、多くの対面でのコミュニケーションをオンラインへ置き換わりつつある。自分の目で直接見たものを信頼するというモデルは、コロナ後の時代には多少の補足が必要かもしれない。」
https://coinpost.jp/?p=178852
ぼくらがお店で物を買う時や契約を結ぶ時、相手を信用するのは、対面によってその人に接しているからだ。
通貨や手形というものが発明されたのは、見知らぬ相手でも商取引できるようにするためである。その通貨なり手形の信用を担保するために金融機関が生まれ、やがて通貨の発行元は国そのものとなった。
そして、近代において国は国民の主権によって存立するものとなった。近代国家では、普通選挙で選ばれた多数派が国の運営を行うのであって、法と秩序をもたらす権力の源泉は国民の自由意志である。
ここに、サトシ・ナカモトが喝破した「多数決の意思決定は、最も多くのプルーフ・オブ・ワークの労力が費やされたことを示す最も長いチェーンによって表される」と通底する思想がある。
生身の人間の自由意志が集積されたものが近代国家であり、国家が担保する通貨の信用の源泉でもある。
本来、通貨とは人間臭いものだったはずだ。労働の代償として、多くの人の手にわたり、手あかが染みついた紙幣こそ「お金」という感じがする。
普通選挙が実施されず、武力で権力の座に居続ける、信用ならない全体主義独裁政権の発行する目に見えないデジタル通貨など、「お金」ではない。他者の苦しみに目をつぶり、悪魔の言いなりになって生き延びても、それにどんな意味があるのか。
人間の魂は、不自由でフィジカルな身体に閉じ込められているからこそ自由を欲する。コンピュータにつながれ、身体性を失えば、自由もなくなる。
武漢ウイルス禍によって、人との接触を避け、リモートワークすることが「新生活」だといわれているが、それは相当恐ろしいことなのではないか。リモート会議では役割が固定され、主催者にとって不都合な発言は即座に遮断されてしまう。そこに生身の人間同士のぶつかり合いによる弁証法的意思決定のダイナミズムはない。
こうして人と人、国と国とが分断され、身体性を失うことが、実は人間の魂の自由にとって、最も危険な状態だとぼくは思う。
そもそも武漢ウイルスは、「死病」ではなく、インフルエンザと同等の感染症に過ぎない。新しい首相にぼくが望むことは、現在、厚労省が勝手に一類相当に格上げしている指定感染症からの解除と、中国に負けない経済力=国力の復興だ。
早くライブに行きたい。Mosh’shしたい。