10年のキセキ(112) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月28日は、2011年、TIF2011に出演し、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」披露した日DEATH。

幕張メッセ二日目。セットリストは以下のとおり。
1.    In the Name of
2.    Distortion
3.    PAPAYA!!
4.    KARATE
5.    神バンドソロ~Kagerou
6.    BxMxC(初披露)
7.    シンコペーション
8.    ヘドバンギャー!!
9.    Starlight
10.    Shine
11.    Arkadia
12.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
アベンジャー:1-4&12藤平華乃、1,5-8&12岡崎百々子、1,9-11&12鞘師里保
神バンド:1-12 Chris Kelly(G)、Clinton Tusin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)
12のみ大村孝佳(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、Leda(G)

前日より1時間30分早い開場・開演スケジュールで、客電が落ちたのは定刻を20分過ぎた17:20だった。
「In The Name of」のイントロが流れる中、英語の男声ナレーションが始まった。
「太陽と月が重なり合い、メタル銀河が出現した。それは新たな伝説の予兆…長い年月を経て、メタル銀河を旅するBABYMETALは我々を見たこともない世界に導く…光の力と闇の力。二つの力を得たBABYMETALはひとつ―THE ONE―になる…今宵は一夜限りのスペシャルライブ。我々は闇の力を得たBABYMETALを目の当たりにすることになるだろう…」
前日のものに似ていたが、Day-2のテーマはDarksideであり、ナレーションの後半部分は「闇の力」が強調された。
そしてステージ上には、下手から鞘師里保、MOAMETAL、SU-METAL、藤平華乃、岡崎百々子の五人が、銀色のマスクと黒いガウンをまとい、錫杖を持ってズラリと並んでいた。


「In The Name Of」こそ、2018年Darksideの象徴だった。藤岡幹大氏の逝去、YUIMETALの脱退に揺れたあの1年を乗り超えたことでBABYMETALは確かに成長した。SU-の声域や表現力は増し、MOAのダンスも強靱な体幹としなやかな手足の動きという相反する要素を統合して、間違いなく進化した。
結成以来の危機を「闇」だとすれば、それを乗り越えるため懸命に努力することによって、BABYMETALは「闇の力」を得たのである。
曲が終わり、「♪キーン」というハウリング音が続き、やがて照明が青に変わる。
遠くから「♪ウォーウォーウォーウォー…」というコーラスが聴こえてくる。
2曲目「Distortion」である。このオープニングはやはり2018年Darkside仕様だ。だが、イントロに入るとドラムスが異様に重いことがわかる。Legend-METAL GALAXY-二日目のバックバンドは、「全米横断ツアー」でバックを務めたGalactic Empireを主力とした銀河神バンドだった。
スクリーンに映るアベンジャーの先発は藤平華乃。SU-とMOAはキレッキレに踊る。
だが、アップになる表情はニコリともしない。間奏部の手拍子パートに入ると、MOAは笑顔を見せるが、SU-は鋭い眼光のまま、人差し指を下に向けクルクルと回す。無言でサークルピットを要求しているのだ。怖えー!
観客席は、圧倒的な存在感を見せるメタルクイーンの意志に従い、各ブロックで巨大なサークルピットを作る。それをじっと見ていたSU-は機が熟したと見るや、「スクリーーームッ!」と長く伸ばして叫ぶ。MOAがドンピシャのタイミングで「♪ウォーウォーウォーウォー↑」とScreamを入れる。滅茶苦茶カッコいいぞ。
再びバンドが入ると、場内はサークルピットの嵐。存在するだけで2万人の観客をひとつにしてしまう。これが闇の力なのだ。「♪このセカイが壊れても~」で曲が終わると、会場は2曲目にして歓喜に包まれている。
そして、短いイントロが流れると、観客は「♪パッパパパヤ!」と絶叫した。
3曲目、「PAPAYA!!」である。
イントロでSU-は「幕張~!」と叫び、「んJump!んJump!ん Jump!…」と煽る。もちろん観客はタオルを振り回し、ジャンプする。


スクリーンにアップになったMOAと華乃の表情はニコニコの笑顔になっていた。
銀河神バンドの特徴は、リズムがわずかに後ノリになること。全米横断ツアーのファンカムでは、ドラムスのせいかと思ったが、The Forumの映像では、Anthony Baroneはバスドラこそ重いが、スティックさばきは軽快に見える。重い音像になるのは、Galactic Empireの三人のピッキングが強く、ストロークが大きいためだと思う。いずれにせよ、銀河神バンドの演奏による「PAPAYA!!」は粘っこいリズムになるのだ。そのため、F.HEROのラップパートも、バックのヨナ抜きリフが際立ち、ラオ族の「モーラム」の感じが一層強くなる。MOA、華乃は盆踊り風の手ぶりで踊るが、銀河神バンドのバックだと、和風というより汎アジア・エスニックな感じが強いように思う。
熱狂の時間が終わり、場内がまだざわめく中、照明が青に変わり、ドラムスのSEが響くと、MOA、華乃が腕を斜めにピッタリ同じ角度にそろえて構える。4曲目「KARATE」である。
7弦ギターのうねるようなリフが「KARATE」の背骨になっているのだが、オリジナル神バンドでは、スケールアウトした浮遊感を感じるのに対して、銀河神バンドではあくまでもグルーヴィな重低音の迫力が前面に出てくる。幕張二日目はDarksideがテーマだから、こちらの方が適している。
だから、「♪セイヤ、セセセ、セイヤ!」「♪ソイヤ、ソソソ、ソイヤ!」と歌いながら正拳突きや貫手の型で踊るSU-、MOA、華乃はニコリともしない。間奏部で倒れ込むとき、華乃は胸を押さえ、絶望的な「あがき」の演技をして倒れ込んだ。フラリと立ち上がったSU-の表情も悲壮感に満ちている。助け起こされてSU-を見つめるMOAの横顔が美しい。そして三人は、肩を組み、拳を振り上げて一歩、また一歩と前進した。
「♪セイヤソイヤ戦うんだ」の後、観客は、心の中で「Everybody, Jump!」と叫び、ジャンプした。
その光景は「闇」を力に変えて再び立ち上がったBABYMETALの虚実皮膜の世界を現していた。
客席が感動に包まれると、5曲目「Kagerou」のリフが流れるが、メロディに入らず、銀河神バンドのアドリブ・ソロになった。全米横断ツアーのファンカムでは見ていたが、生で聴くのは初めてだった。
下手のChris Kellyはユニゾンを多用しているが、スケールはブルースロック的なマイナーペンタトニックである。上手のC.J. Masciantonio。スケールアウトしたスウィープ奏法でハイフレットに上がってから、クラシカルなシュレッドっぽく下がってからのタッピング。テクニックを見せつける感じ。ベースのClinton Tustinは本職はギターなので、6弦ベースを弾いていても、ギターソロのようである。最後にドラムスのAnthony Barone。スティックを空中に投げて受けるギミックを織り交ぜながら、重く、激しいドラムソロを聴かせた。
大歓声の中、各ソロパートが終わると、三人が激しく肩を入れ、腰をゆすりながらステージに出てくる。アベンジャーはこの曲から岡崎百々子に代わっていた。
岡崎百々子は大柄で、ダンスも荒々しくダイナミックなため、MOAのダンスは、エレガント&セクシーな感じになる。「Kagerou」での登場シーンは「猫」だ。
以前も書いたが、三人のアベンジャーが交代で登場する幕張Legend-METAL GALAXY-を通して観ると、MOAのダンス表現力の幅の広さに気づかされる。最年少で手足の長い藤平華乃とのコンビではエネルギッシュ&パワフル担当になり、大人っぽく表現力の塊のような鞘師里保とのコンビだと、逆にMOAが可憐でKawaii感じになる。SU-の声域拡大と並んで、ダンサーとしてのMOAの成長も、新生BABYMETALの大きな魅力だ。
6曲目は初披露となる「BxMxC」。前日のセトリから、『METAL GALAXY』Disk-2の残り曲が披露されるとは予想していたが、この曲は最もダークな味わいだったため、やはりどんなパフォーマンスになるのか注目された。
ほぼ真っ暗な場内に赤いレーザー光が点滅する。スクリーンはモノクロで、「♪BxMxC」というリフに応じて、「それなそれな」以降、すべての歌詞が現れて消えていく。


観客は、『METAL GALAXY』を聴き込んでいても、「♪Mosh!」と「Wanna Wanna Wanna (Beat!)」「What some What some What some (Beat!)」の合いの手を入れるのが精いっぱいだった。ただ、SU-が「♪BxMxC」に合わせてハンドサインを作っていたので、次のライブではこれをマスターしておく必要があるだろう。
後半のSU-の長尺ラップは圧巻。ラップだが、MOAと岡崎百々子のダンスはヒップホップではなく、歌詞の世界観を表現しているし、スクリーンの映像と合わせて、ちゃんとメタル・パフォーマンスになっているところがBABYMETALである。
確かにDarkになった場内に、ホワイトノイズと心臓の鼓動のSEが流れ、スクリーンには心臓の鼓動の波形。とぎれとぎれにAmのギターリフが聴こえてくる。7曲目「シンコペーション」である。
鼓動が速くなり、「♪アー」という音がフェードインすると、爆発するように照明が輝き、生演奏のイントロが始まる。ドラムスの音もギターのリフの音も、オリジナル神バンドに比べて明らかに太く、重い。
この曲は『Metal Resistance』のEU/US盤には収録されなかった。それは曲調が何となくヴィジュアル系を思わせ、なんとなく「軽い」からだとぼくは思っていた。海外では2019年、グラストンベリー後のロンドン公演で初披露され、「新曲」だと思われたらしい。だが、それもうなずける。
銀河神バンドの演奏による「シンコペーション」は、音の重心が低く、クリーントーンのアルペジオでさえブリティッシュに聴こえ、2番の後のジミヘンコードE7(#9)もまさにブルースロックのように響いた。
太くなったSU-の歌声はその演奏にマッチしており、東京ドームでYUI、MOAのカワイイ「♪めぐる」「♪回る」というScreamをバックに、BABYMETALにしては大人っぽい歌詞を、美少女のSU-が背伸びして歌っているみたいに聴こえた頃とは全く違った印象になった。
曲が終わり、またしても真っ暗になった場内に、不穏なパイプオルガンの和音に、雷鳴のSEが轟く。
8曲目「ヘドバンギャー!!!」である。
だがこの曲もこれまでと違って、Darkside仕様だった。
「♪伝説の黒髪を華麗に乱し…」と歌い出したSU-の声が、最初から太いのだ。
この曲は、少女の「成長」をテーマにした曲だから、ヘドバン地獄を経て、間奏部のチェンバロの伴奏になるところで「♪…泣き虫なやつはここから…」まではカワイク歌い、「キ・エ・ロ!」の後、別人のように太い大人の声で「♪イーチゴの夜を忘れはしない…」と歌っていた。
ところが、2020年の幕張では、SU-は最初からその大人の声なのだ。
腰に手を当て、「♪ヘドバン、ヘドバン」と横振りヘドバンしながらステージ前面にせり出してくるMOAと百々子も、全く笑っていない。間奏部、虹色のスタンドマイクを持ち、土下座ヘドバンするMOAと百々子を前に、SU-は鋭い眼光で客席を見つめている。またしても怖いSU-だ。


かつては、ここで笑顔のYUI、MOAが「行くよー!」とか言いながら客席にCo2を噴射したりしたものだが、Legend-METAL GALAXY-@幕張メッセ二日目では、移動ステージの上手、下手に分かれて客席を煽るMOAと百々子も、ニコリともせず両手を振っている。
観客のほとんどが両手を挙げてヘドバンし始めても、SU-は相変わらず無表情のまま、天井を見つめている。
すると、客席中央に全身骨タイツをつけた男が現れた。彼は客席の中に入って回りの客を煽り、やがて観客とともにステージ上の三人に向かってヘドバンし始める。その様子がスクリーンに映ると、会場からどよめきが起こった。あれはKOBAMETALではないか。そして、ヘドバン地獄は東京ドーム以来の長さで続いた。
「頭!頭!頭!」から、C.J.による短く激しいギターソロのあと、SU-が太い声で「♪イーチゴのよーるを忘れはしない 泣き虫な奴はココから~」と歌うと、観客はすかさず「キ・エ・ロ!」と叫んだ。そのあともSU-は太い声で、「♪邪魔をする奴は即座に消え失せろ!」と力強く歌った。
これでようやくわかったが、Legend-METAL GALAXY-二日目では「ヘドバンギャー!!」は、少女時代の成長ではなく、大人になってからも訪れるDarkside=闇の力を乗りこえる曲として位置づけられていたのだ。
この曲はKey=Dmで、日本武道館など、BABYMETALの成長の節目では、B♭→C→Dmと盛り上げて終わるのだが、Dm→D#m→Dmというおそらく初めての終わり方をした。
9月9日リリースの『Legend -METAL GALAXY-』のDVD & Blu-rayでは、ぜひ以前の「ヘドバンギャー!!」と見比べてもらいたい。
(つづく)