10年のキセキ(110) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月25日は、Apocrypha White Mass@Zepp名古屋二日目が行われた日DEATH。

『ミュージックステーションウルトラSUPER LIVE』出演翌日の2019年12月28日、BABYMETALはCount Down Japan19/20@幕張メッセに出演した。
セットリストは以下のとおり。
1.FUTURE METAL
2.DA DA DANCE
3.ギミチョコ!!
4.Shanti Shanti Shanti
5.Kagerou
6.Distortion
7.メギツネ
8.PA PA YA!!
9.KARATE
10.Road of Resistance
アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:(下手から)大村孝佳(G)、BOH(B)、青山英樹(D)、Leda(G)

BABYMETALは、メインステージであるEARTH STAGEに出演した。Count Down Japanは15/16以来で、前日のMステ出演に続いて、日本のポップ市場に「再来日」したかのようだった。
このステージのタイムテーブルは12:00~欅坂46、13:15~ヤバイTシャツ屋さん、14:30~King Gnu、15:45~BABYMETAL、17:00~Official髭男dism、18:15~あいみょん、19:30~ALEXANDROSというラインナップ。BABYMETALは海外のロックフェスと同様、比較的早い出番だ。
ただし、ロックフェスとは違って、地上波テレビを主戦場とするアイドルやポップアーティストもラインナップされているので、客層が若く、中高年ベビメタファンの中には「アウェー感」を感じた人もいたようだ。
定刻の15:45。
大スクリーンにNextアーティストとしてBABYMETALの文字が映り、大歓声が上がる中、モノクロ映像の「FUTURE METAL」が始まった。
かつてBABYMETALのオープニング曲といえば「BABYMETAL DEATH」や「メギツネ」であり、Kawaiiアイドルが「DEATH!DEATH!」と連呼したり、キモノ姿でキツネ様崇拝の和風メタルをやったりすることに「イロモノアイドル」感やエクストリーム感が醸し出された。だが、2019年のTHE FORUM以降は、「FUTURE METAL」がOvertureとなり、イメージが一新した。
テクノの曲調に乗って、「…Please fasten your neck brace to Head Bang…This ain’t Heavy Metal. Welcome to the world of BABYMETAL」というA.I.みたいにオートチューンされたSU-のアナウンスが響く。
B♭m→G→F→G→B♭mというコード進行だから、キーこそ違うが「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(Key=C#m)の冒頭に似ているのだが、音像が全く違い、インダストリアル/エレクトロニコア感が強い。そして、後半の映像はメタル銀河を飛翔する正八面体の宇宙船からSU-とMOAが転送されてくる映像となり、「未来から来たBABYMETALが今、当地に降臨!」という感じになる。未来から来たのなら、海外でも日本でも「外タレ」ならぬ「来タレ」である。BABYMETALの前に、国境は融解するのだ。
そして、照明が点滅する中、「フォー!」という奇声が響き渡り、16ビートの「DA DA DANCE」が始まる。
MOAとともに「♪BABY、BABY、ベイビーメロッ!」とScreamするアベンジャーは岡崎百々子だった。
2019年最後のBABYMETALに会場はヒートアップ。タイミングを合わせて「フォー!」と叫ぶ観客多数。
2曲目「ギミチョコ!!」では、早くもサークルモッシュ、クラウドサーフが発生した。
間奏部で、SU-が「Countdown Japan!」と叫び、MOAと百々子が手拍子しながら観客に笑顔を振りまく。二人はZepp Divercityと同じく変顔対決をし、MOAは三番の「♪あたたたたーた」でお約束のSU-ほっぺツンツンを敢行した。


他のアーティスト目当てで来場し、Mステで「噂のベビメタ」を初めて見たファンもいたようで、当初はピット後方でサークルモッシュを怖そうに見ている人や、腕組みのタイガー状態の観客がいたことは事実だ。
だが、「Shanti Shanti Shanti」の三人のインド舞踏風ダンスの魅惑や、一転してブルースロック色が強い「Kagerou」の表現力には圧倒されたようで、会場後方でも見様見真似でキツネサインを掲げる人が増えていった。
SSAや大阪城ホールのようなセットこそないが、真っ赤な廃墟のMV映像を前にした「Distortion」からは、さらに会場が熱気を帯びた。要するに、すべての曲がバリエーション豊かで、歌唱・演奏・ダンスの完成度が信じられないほど高いのだ。そしてベビメタファンの熱意。
SU-が「Sing!」と叫ぶと、間髪を入れず「♪Woh Woh Woh Woh…」の大合唱。ぼくらにとっては見慣れたライブの光景だが、初見の観客には「アイドル」でも、怖そうなメタルバンドでもない、そしてその両方を兼ね備えた「アイドルとメタルの融合」であることがハッキリわかったはずだ。
7曲目の「メギツネ」は、本日のセトリのうち最も初披露が早い曲だった。
メジャー2ndシングルとしては「♪ああーそうよいつでも女は女優よ」とか「♪顔で笑って心で泣いて…」という歌詞が意表を突く演歌風で、オカルトじみたキツネ様崇拝の設定といい、「イロモノアイドル」と揶揄された。
だが海外のライブでは「メギツネ」こそ、一気に観客を熱狂させる最強チューンであり、YouTubeのMVでも「ギミチョコ!!」に次ぐ再生数を誇る曲となった。
『METAL GALAXY』で、民族音楽からDjent、ラップ、ゲーム音楽、インダストリアルまで様々な音楽を融合して“BABYMETAL化”した楽曲群を聴いた後では、「メギツネ」もまたその方法論で作られたのだということがよくわかった。
もちろん、曲が始まれば、MOAの「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」の掛け声に合わせて、会場が一体となってジャンプするお祭りメタルである。間奏部で、SU-は「Countdown Japan!」「Are You Ready to Jump? A—re Y—ou Read—y?」と煽り、観客は「ウォー!!」と叫んでSU-の「1、2、123!」で踊り狂う。いつもの光景だが、これが2019年の見納めである。
続くのは「PA PA YA!!」。
前日のMステで披露されたように、この曲は、横アリで初披露されて以来、2019年のBABYMETALを上昇気流に乗せた曲だった。
イントロからSU-は「んJump! んJump! んJump! んJump!…」と煽る。観客のタオル振りはもう定番となっており、「メギツネ」の和風お祭りメタルが、一気に熱帯アジア全域に拡大された感じになる。笑顔を振りまくMOAと百々子の笑顔は、BABYMETALが世界を股にかけたメタルバンドであるとともに日本のアイドルでもあることを示している。
いよいよ終盤。場内が青い照明に満たされる中、きれいにそろった三人のポージングから、グルーヴィな重低音のギターリフが響き渡る。「KARATE」である。


「♪涙こぼーれてーもー」と歌い出すSU-の歌声は、過酷なライブツアーでさらに鍛え上げられ、低音成分が多くなり、太くなっていた。
ちなみにハイトーンも「メギツネ」(2013年6月)の「♪ここに生き~る~」がhi-C、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(2013年1月)の「♪君を守るから~」がhi-C#だったのに対して、「Shine」(2019年10月)の「♪ぼくらを照らすから~」はhi-D#で、地声の最高音を更新している。
音域.comというサイトによれば、広瀬香美、大黒摩季、Superfly、MISIAなど日本を代表する女性ボーカリストの最高音は地声のhi-E~Fで、最低音は2オクターブ下のmid-1E~Fである。
「Shine」のhi-D#はhi-Eの半音下、hi-Fの1音下だが、「KARATE」の「♪涙こぼーれーてーもー」はmid-1D#だから、SU-はトップボーカリストたちと同じく2オクターブの声域を持っていることがわかる。幼いころから歌い続けてきたSU-は、22歳でその域に到達したのだ。

音域が広がることは、表現力の拡大につながる。封印している裏声も含めて、SU-にはまだまだ伸びしろがある。まあ地声でhihi-Dを出せる浜田麻里は別格だが。
「♪ひたすらセイヤソイヤ戦うんだ悲しくなって立ち上がれなくなっても~」という歌詞は、Darksideの暗闇から立ち上がった2019年だからこそ、ぼくらの心にしみる。
三人が倒れ込み、SU-が助け起こしたあと、肩を組んで進むシーンに応え、SU-が煽らなくてもジャンプする観客は、BABYMETALに対する応援を形にしたものだ。最後の握りこぶしをキツネサインに変えて肩の高さまで掲げた後、それをスッと胸に秘めるポーズは、何回見ても泣ける。
フィニッシュはもちろん「Road of Resistance」。
BABYMETALロゴ旗を持った三人が一列に並び、やがてSU-が客席を分ける仕草をすると、巨大なWODが形成されるのはもはや様式美だが、MOAの「♪1234!」に合わせて、観客は、「ウォー!!」と叫び、2019年最後のサークルモッシュに走り、シンガロングパートでは、柵際に圧縮された観客も「♪ウォーウォーウォウォー、ウォーウォーウォウォー…」と大合唱した。
考えてみれば2019年の始動は6月末だったから、活動期間は実質6か月しかなかった。
だが、横アリ、グラストンベリー、ロンドン、PMなごや、台湾超犀利趴10、サマソニ、全米横断ツアー、SSA、大阪城ホール、Zepp Divercityと、2019年のBABYMETALはすさまじい勢いでライブツアーを駆け抜けた。
「♪君が信じるなら進め!答えはココにある!」と三人がステージを指さす瞬間は、やはり鳥肌が立った。
「We are?」「BABYMETAL!」のC&Rでは、三人ともニコニコ顔だった。
45分間のステージ。フェスだから、「ヘドバンギャー!!!」「THE ONE」「Elevator Girl」「Starlight」「Shine」「Arkadia」といった曲は省略されたが、Mステ新規、初見のアイドルファン、ポップロックファンにも「世界水準」の凄みを見せつけたライブだった。
こうして、BABYMETALの2019年が終わった。
(つづく)