10年のキセキ(108) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月21日は、2015年、APOCRYPHA The Black Mass-Ⅱ@新木場Studio Coastが行われ、2016年には、サマソニ2016@大阪・舞洲ソニックステージ府民共済アリーナに出演した日DEATH。
 

METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN@SSAのつづき。
暗転した場内に、ギターのボリュームを上げる「♪ギュイーン」というハウリング音が響いた。
この音は、かつて「Catch Me If You Can」や「悪夢の輪舞曲」、「あわ玉フィーバー」などの前に行われた神バンドソロに入っていく時の音だ。
だがステージにはすでに三人がポーズをとって立っていた。全米横断ツアーで銀河神バンドがやっていたアドリブソロはなく、そのままミドルテンポのイントロに入っていく。7曲目「Kagerou」である。
ステージの前後に置かれたパイロの炎がゆらゆらと揺れる。MOAと岡崎百々子がしなやかに全身を使ってSU-が歌う歌詞の世界観を表現していく。
間奏部のソロパートで、下手の大村神はギターを立て、ダブルストップで 「GGG、A#A#A#、CCC、D#D#D#」というフレーズを弾いていく。いかにもアドリブに入りそうな感じなのだが、この曲ではここまで。
8曲目「Distortion」は、Djentなギターリフに続いてすぐに「♪ウォーウォーウォーウォー!」というコーラスが入り、スクリーンには、MVと同じく、夕陽の中に廃墟となった街の映像が映った。左右の一段高いステージにMOAと岡崎百々子、中央ステージにSU-が立ち、本当に救世主BABYMETALが廃墟の中に降臨した感じになった。ドラムスのイントロで三人が激しく踊り始めると、またもや高速サークルピットが発生した。


「Give up Give up!」のグロウルは『METAL GALAXY』の音源どおりアリッサ・ホワイト・グラズ(アーチエネミー)に代わっていた。“ホーム”の観客はここでも「Give up!Give up!…Stop the Power…Distortion!」と正確に合いの手を入れ、そこへ大村神の「♪キュイーン!」というギターが重なる。
そこからSU-が「♪ひずんだカラダ叫びだす」と歌うと、観客はMOAとともに「♪ウォーウォーウォーウォー」と、まるでコールアンドレスポンスのように歌った。
大村神、Leda神によるリフが続く間奏部。SU-は「さいたまー!」と叫び、裏のリズムで「Sing!」とマイクを向けると、もちろん観客は「ウォーウォーウォーウォー!」と歌った。2018年Darksideの思い出が詰まった楽曲だが、2019年SSAでは、SU-、MOA、アベンジャー、神バンド、観客がひとつになって楽曲を作った。素晴らしい光景だった。
そして、観客がぜえぜえはあはあ息を切らせる中、暗転した場内に「♪キーツーネー、キーツーネー…」というSU-のアカペラが流れる。そう、すべてはキツネ様のお導きなのだ。9曲目「メギツネ」である
重低音のC#mパワーコードと「♪キュイーン」という機械音のイントロに、ステージ上のシーリングからのサーチライトが場内を照らすこと数分。もちろん、観客は「オイ!オイ!オイ!…」と叫び続ける。
やがて息を整えた終わったSU-たちが銀のキツネ面をつけて現れ、ゆっくりとメギツネポーズをとる。
ドラムスと和楽器に続いてMOAと岡崎百々子が狛ギツネポーズをとり、アイコンタクトしてキツネサインを交わしてから場内へグルリと向けると、大熱狂の「メギツネ」が始まった。
「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と澄んだ声でScreamしながら、MOAの笑顔が弾ける。
2万人はジャンプで揺れつつ、SU-の「♪おめかしキツネさん」には「♪チキチキワッショイ、チキチキワッショイ」、「♪ツインテなびかせて」には「♪ヒラヒラワッショイヒラヒラワッショイ」、「♪弾けてドロンして」には「♪クルクルワッショイクルクルワッショイ」と正確に合いの手を入れ、最後の「♪いざゆけ七変化」「♪コンコンコン、ココンコンココン!」までMOAと一緒にScreamした。
1番が終わり、間奏部に入ると、MOAはキツネ面をかぶったSU-に何か話しかけ、またもや変顔を見せた。楽しくて仕方ないという感じ。見ているこちらも嬉しい。
D#→E→Fmのコード進行に入る。Chris Kellyのようなアドリブメロディはない。
SU-が日本語で「さいたまー!もっと声出せるよねー!」と煽ると観客は「ウォー!!」と叫んだ。
SU-が微笑みながら「Are You Ready to じゃ~あ~んぷ?」と言い、続けて「Are You Ready----?」とシャウトすると、観客は「イェー!!!」と絶叫する。お約束とはいえ、こうやって煽られるとどんなに足腰にガタが来ていてもジャンプしたくなる。
SU-が「1、2、123、Jump!」で銀のキツネ面を放り投げると、MOA、岡崎百々子もニコニコ顔で足を高く上げて踊り、場内は異常なお祭り状態となった。
「メギツネ」は、BABYMETALの楽曲で、最も多く生演奏された曲である。2013年6月22日の「いなりんとヒット祈願」以来、2019年11月16日のMETAL GALAXY WORLD TOUR in JAPAN@SSAで国内外通算208回目の演奏となった。(モスクワ公演で232回)「なめたらいかんぜよ」
「メギツネ」が終わり、大歓声に包まれる中、短いインターバルで「♪ドドッドソ#ソ」というイントロが流れ、すかさず観客は「パッパパパヤー!」とScreamした。10曲目「PA PA YA!」である。
イントロに入るとSU-が「Are you ready~!」と叫び、踊りながら「んJump!んJump!んJump!んJump!…」と煽ると、観客もジャンプしつつタオルを振り始める。いくつかのブロックではサークルモッシュも発生している。
もちろん、歌に入れば「♪最強で最高って才能か?You Know What」「んパッパッパッパッパッパ、パパヤー!」と合いの手を入れる。サビではSU-が「♪祭rrrりだ!祭rrrりだ!」と巻き舌で歌えば、Kawaii声のMOAと一緒に盆踊りダンスをしながら「♪祭りだ!祭りだ!」とシンガロングし、「♪Spicy Summer Song Song」で「パッパヤー!」とジャンプする。「♪騒げ!騒げ!騒げよPAPAYA BOY」には「♪Hey!Hey!Yo!パッパヤー!」と正確に応える。これがベビオタ、日本人メイトの誇りである。
BABYMETALが「アイドルとメタルの融合」である限り、メイトも「オタクとメタルヘッズの融合」なのだ。
大歓声とともに曲が終わると、ピアノによるプレリュードに続いて「♪ドドツッツッドドツッツッツッドド…」というドラム音から、ヘヴィなグルーヴに満ちたリフによる「KARATE」のイントロとなる。三人が両手を斜めに伸ばす。岡崎百々子は気合を入れ直すように一瞬間をおいてから腰を落として構えた。
「♪セイヤ、セセセ、セイヤ、ソイヤ、ソソソ、ソイヤ」と歌うMOAは満開の笑顔だ。もちろん、観客はMOAに続いて「押忍!」と叫び、歌詞に合わせて「♪ウォオー、ウォオー、ウォオー!」とシンガロングする。
間奏部、三人が倒れ込むシークエンスで、先に立ち上がったSU-がMOAを助け起こした瞬間、二人の間に笑みがこぼれた。岡崎百々子と肩を組んで拳を振り上げるときも、三人の間に笑顔のアイコンタクトが見られた。こういう瞬間を見られるのが、BABYMETALライブのだいご味である。
「♪セイヤソイヤ戦うんだ」「♪ウォオー、ウォオー、ウォオー!」「♪全部全部研ぎ澄まして」のあと、観客は誰からともなく「Everybody、Jump!」と叫んでジャンプし、BABYMETALと“ひとつ”になった。
いよいよ終盤。
広いSSAにほら貝が響き渡る戦国SEが流れ、赤いサーチライトが場内を照らす。「Road of Resistance」である。
神バンドによるプレリュード演奏とともに、後方のステージ上に三人がBABYMETAL旗を担いで登場した。
昨年のChosen Sevenは7人がずらりと並び壮観だったが、やはりBABYMETALは三人がいい。
SU-のしぐさに合わせて、ピットでは合計8個のWODが形成された。そして、MOAの「1234!」の掛け声で曲が始まると、場内は高速サークルモッシュの暴風雨圏と化した。
2014年のBack to the UKロンドン公演で初披露されて以来、「Road of Resistance」は、「世界征服」を目指すBABYMETALのアンセムだった。
2018年のChosen Sevenでも観客はシンガロングでどんなことがあってもついていくというBABYMETALへの愛の決意を歌ったが、Light Sideに帰還した2019年の「Road of Resistance」は喜びにあふれていた。
一周回って「♪命が続く限り決して背を向けたりはしない」という歌詞は、やはり2015-16年の頃とは意味も重みも違っていた。そして、三人が「♪進め!答えはココにある!」とステージを指さすポーズも。
曲が終わり、三人は笑顔を爆発させた。
SU-は「Thank you for Bring Me The Horizon to Support us!」と叫んでBMTHへの感謝を示し、MOAもスカートをつまむ究極のKawaiiポーズでお辞儀をした。
そして、いつものように、「We are?」「BABYMETAL」のコールアンドレスポンスに続き、SU-が「Get your Fox Hands U—p!」と叫んで終了。
だが場内は明転しない。場内から「チャッチャッチャチャチャ、ベイビーメーロッ!」が散発的に発生。もちろん、“ホーム”の観客は、THE FORUMで起ったことを知っていたのだ。
大スクリーンに無数の星が映し出される。
「The metal melodies become a myth and transcends through time and space for lightyears to come. Like the starry skies that light up the metal galaxies. The metal spirits also bring infinite light. A shining light awaits at the end of odyssey.」(Jaytc意訳:メタルのメロディは神話となり、時空を光速で超えてゆく。満天の星空のように、メタル銀河を照らす。そしてメタルの魂は永遠の光をもたらす。旅の終わりには、輝く光が待っている。)というSU-の英語ナレーションと、巨大な惑星の間を小さな正八面体の宇宙船「BABYMETAL号」が横切っていく映像の「紙芝居」が流れる。
すると2万人の観客はスマホライトを点灯し、SSAは宇宙空間となった。
スモークが焚かれたステージの上では、アコースティックギターのコードストロークで、MOAと岡崎百々子が踊り始める。そして、スッポンから登場したSU-が静かに「♪Twilight、きのうきょうあす続く道…」と歌いだすと、場内のスマホライトが揺れる。
PMなごやでは、SU-とMOAが二人だけで、THE FORUMではSU-、MOA、鞘師里保が踊った。そしてSSAではSU-、MOA、岡崎百々子の三人。さくら学院を母体として出発した三人が、全米横断ツアーという過酷な経験を積み、同じ舞台に立っている。それは歌詞にある通り、「道の途中で巡り合えた奇跡」なのだ。
これからどうなっていくかはわからない。2020年には武漢ウイルス禍で、未来はますます見えにくくなった。
それでも、「♪果てしなく続く/闇の中彷徨っても/僅かな光を/手繰り寄せて」という歌詞のとおり、どんなことがあっても彼女たちを愛し続ける観客という「眩い光」は現実に存在した。だから、その光が「♪ぼくらを照らすから~」というSU-史上最高音のハイトーンは、Darksideを経てBABYMETALが得たパフォーマーとしての確信を表しているのだとぼくは思う。
スクリーンでは、太陽と月が重なり、一瞬、2018年の日蝕コロナロゴになるが、二つの天体が完全に一つになることでそれが消え、星々と一体化していく。Darksideは終わったのだ。
曲が終わるが、音源通りMETAL GALAXYを宇宙船が飛翔するSEは続いている。
メロトロンのクワイヤーが高まっていく。いよいよフィニッシュ曲「Arkadia」である。
青山神の正確なブラストビートに乗って、大村神とLeda神のツインギターのフレーズが美しく響き渡る。
「♪嗚呼小さな胸に宿る…」というAm→AmM7→Am7→DonF#という下降クリシェは、藤岡神最後のステージとなった2017年12月の広島GAの映像がオフィシャルMVとなった「No Rain No Rainbow」の「♪誰も知らない本当はただ」のところと同じである。それと同じコード進行で始まる「Arkadia」は、2018年のDarksideを払しょくする、輝かしい新生BABYMETALのアンセムとなった。


「♪Glorious, you just be ambitious!」というScream部分を合唱する観客もいた。「♪星の欠片を抱いて」というのは、メタル銀河の彼方へ去った藤岡神と離脱を余儀なくされたYUIのことだとぼくは思う。
もうこのへんから、熱いものがこみ上げてくる。
サビの「♪今、for your dream, for your faith, for your life」という歌詞は、夢のために、信じるもののために、人生を賭けるという決意であり、「♪今、no more tears, no more pain, no more cry」という歌詞は、もう涙も痛みも泣くこともない、という新たな境地を示している。
MOAも岡崎百々子も、踊りながら大きく口を開けて歌っていた。いかにこの歌詞に三人の思いが込められているかがわかる。
そして、「♪どれほどの闇が/覆い尽くそうと/信じたこの道をあるこう」というパートに差し掛かると、MOAと岡崎百々子はこぶしを高く掲げた。見ていて、ついにぼくの目から涙があふれた。
サビが繰り返され、最後の「♪はるかと・お・くへ/目指すは夢のアルカディア」からE→F#→G#と上昇コード進行が3回繰り返され、三人が過酷な運命を空手チョップでバッタバッタとなぎ倒し、最後はE→F#→G→A→Bとさらに転調して大フィナーレを迎えた。
喜びを全身で表現するMOAと百々子。SU-が「さいたまー!You are the Best!」と叫び、こぶしを天に掲げると大歓声の中、特効4発の爆発でフィニッシュ。
やはりというか、さすがというか、半年ぶりに生で見たBABYMETALのステージは最高!だった。
(つづく)