10年のキセキ(105) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月17日は、2014年、サマソニ2014大阪@舞州特設会場Mountain Stageに出演し、2015年には、フジテレビ『めざましテレビ』で報道され、2016年には、白ミサ@Zepp Tokyoが行われ、サマソニック2019幕張@Mountain Stageに出演した日DEATH。

2019年10月16日、BABYMETALは前日のポートランドに続いて、全米横断ツアーのフィナーレを飾るシアトル公演に臨んだ。
シアトルは2016年に、平屋根のスーパーマーケットのようなShowbox Sodo(1,800名収容)でライブを行ったが、2019年の会場となったThe Paramount Theatre(2,800名収容)は、ゴシック調の装飾が施された格式高い雰囲気だった。


セットリストは以下のとおり。
1.メギツネ
2.Elevator Girl (English Ver.)
3.Shanti Shanti Shanti
4.Kagerou
5.Starlight
6.FUTURE METAL
7.ギミチョコ!!
8.PA PA YA!!
9.Distortion
10.KARATE
11.ヘドバンギャー!!!
12.THE ONE(Unfinished English ver.)
13.Road of Resistance
アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:下手からChris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J. Masciantonio(G)

開演前、ステージスタッフの複数の男性が、MOAと同じツインテール&髪留めのヘアスタイルをしていた。最終公演にちなんだジョークだったのだろう。チケットはもちろんSOLDOUTしており、「メギツネ」のイントロをバックにした全米横断ツアー最後の「紙芝居」で「Are you ready to headbang?」と問われると、二階席まで満杯の観客から大歓声が起こった。
繰り返されるヘヴィなリフとステージからのバックライトで、会場がみるみる非日常空間に変わっていく。ステージ中央でゆっくりとメギツネポーズをキメた最終公演のアベンジャーは岡崎百々子だった。
2019年の全米横断ツアーは、Darksideを脱したBABYMETALを初めて世界に披露したツアーだった。
新機軸としてまず挙げられるのが、鞘師里保と岡崎百々子の日替わりアベンジャーによる「新三人組体制」。
トライアングルはBABYMETALの基本形だが、ダンサーの個性はそれぞれ異なり、メタルダンスユニットとしてのダンス表現力が一層向上した。「メギツネ」「ギミチョコ!!」「ヘドバンギャー!!!」「KARATE」「Road of Resistance」などの既存曲では、一見、昔と同じ振り付けに見えるが、振りの大きさ、ダイナミズム、しなやかさ、目線や表情のつけ方、シンクロ率などが一段上がっているのがわかる。
コスチュームもDarksideのヘッドギア付鎧+スパッツの武骨さから、虹色に光るメタル色の胸当て付きジャケット+スカートに代わった。メイクやヘアスタイルもナチュラルになった。
結果、BABYMETALは、再びオトナKawaii装いとなった。
もう一つの重要な変更点は、神バンドがGalactic Empire主体の銀河神バンドになったことである。
9月6日の初日には、戸惑いさえ覚えるほど、演奏は粗削りでゴツゴツした印象だったが、テクニシャンぞろいであることは間違いなく、「メギツネ」間奏部のChris Kellyによるバックメロディの入れ方、「ギミチョコ!!!」ソロでのC.J. Masciantonioのアーミング、「ヘドバンギャー!!!」のアウトロをDm→D#m→Dmというコード進行で演奏するところなど、これまでの神バンドとは一味異なる演奏の違いが楽しめた。
特に、「Kagerou」前の銀河神バンドソロは、かつて「Catch Me If You Can」や「悪夢の輪舞曲」や「あわ玉フィーバー」の前に超絶演奏を聴かせ、そこからKawaii三人が再登場するコンビネーション/コントラストの復活だった。
「Kagerou」はDarksideの2018年にはSU-ソロ曲だったが、2019年Ver.では、銀河神バンドソロ+MOAとアベンジャーによるダンス曲になった。前述したように表現力の高い三人の振り付けダンスが加わることで、この曲の世界観がより伝わってきた。SU-の歌、MOA+アベンジャーのダンス、そして生演奏のすばらしさの三位一体がBABYMETALを作っていることが改めて感じられた。


全米横断ツアーで見せた新生BABYMETALの最後の特徴は、「PAPAYA!!」「Shanti Shanti Shanti」といったエスニックな曲想、「DADADANCE」のバブル期日本のディスコミュージック、「FUTURE METAL」のインダストリアル/テクノ、「Distortion」「Starlight」のDjentメタル、「Shine」~「Arkadia」のプログレッシヴメタル~パワーメタルというように、多様な音楽を「融合」したBABYMETALミュージックの多彩さだった。もともとBABYMETALは「Fusion of J-POP and Heavy Metal」であり、オールドスクールなヘヴィメタルバンドとは成り立ちが異なる。Kawaii日本のアイドルが、さまざまなヘヴィメタルのサブジャンルをオマージュして作られた楽曲を歌い踊るのがBABYMETALの魅力だった。
全米横断ツアーでは、その「BABYMETALらしさ」が確実に進化していることが証明された。
しかも、「Distortion」「Starlight」「Shine」「Arkadia」といった楽曲では、この数年間に起こった出来事を昇華して、絶望、怒り、哀惜、惜別、希望、情熱、気迫といった生身の感情を歌とダンスで表現していて、観る者の心を揺さぶった。
BABYMETALの変化と成長の象徴である「ヘドバンギャー!!!」が全米横断ツアーで復活したのもオールドファンにとって嬉しかった。間奏部の「ヘドバン!ヘドバン!」はライブ冒頭の「紙芝居」の「Are you ready to headbang?」につながっている。
SU-もMOAも鞘師里保も岡崎百々子も、15歳はとうに過ぎた。だが、BABYMETALである限り、永遠に過去の自分を乗り越える「イチゴの夜」は続くのだ。
The Forumでは演奏されなかった「THE ONE」。
この曲の演奏スタイルはDarksideの2018年とほぼ変わらない。静かなピアノのアルペジオにバックライトの後光を浴びるSU-の独唱。1番の終わりで「Turn on your camera light, turn on!」とSU-が呼びかけ、会場は観客が掲げるスマホライトで宇宙空間となる。
シアトル最終公演でのSU-の高音の伸びはすさまじかった。まるで5万人に聴かせるかのような、澄み切った、それでいてエネルギーの塊のような歌の力。2番を歌い終わったところで、SU-は「Thank you…」と、長いツアーを締めくくる一言を述べた。
一瞬の沈黙の後、大音量の銀河神バンドの演奏が始まり、MOAと岡崎百々子が入ってくる。キツネサインを掲げながら「♪ララララー…」と歌う二人の顔は笑顔にあふれていた。会場は大合唱しながら一つになった。
感動の余韻が消え去らぬまま、戦国SEが鳴り響き、赤い光が場内を照らし、やがて銀河神バンドのプレリュードに乗って、三人がBABYMETAL旗を持って再登場。
SU-が客席を分けるしぐさをすると、ピットにサークルが形成された。MOAのよく通る声で「♪1234!」と曲が始まると、ピットは一斉にサークルモッシュに突入。


「♪ウォーウォーウォウォー、ウォーウォーウォウォー…」のシンガロングパートでは観客も声を限りに歌い、「Stand up and Shout!」にも大歓声で応えた。
「♪今日が明日を作るんだ、そう、ぼくらの未来、On the way!」のあと、三人は「♪君が信じるなら進め!答えはココにある」と力強くステージを指さした。
観客と共にあるライブツアーこそBABYMETALの命。史上最長の全米横断ツアーをこなした今、この言葉には重みがあった。
「♪燃える熱いハート、ぼくらのレジスターンス!」とSU-が歌いあげ、「We are?」「BABYMETAL!!!」のC&Rに入ると、MOAと岡崎百々子は、腕をぐるぐる振りながら満面の笑顔でステージを駆け回った。
これで9月6日から10月16日まで41日間全20公演にわたったMETAL GALAXY WORLD TOUR 2019、全米横断ツアーが終了した。
これが現在までのところ、アメリカでのBABYMETALの見納めとなった。
2020年幕張では、「BxMxC」「Oh!MAJINAI」「Brand New Day」「Night Night Burn!」など『METAL GALAXY』収録曲の生披露がなされたから、2020年後半ないし2021年にはこれらの楽曲をセットリストに入れて、再度のUSツアーが組まれるはずだったかもしれない。だが当時は2020年以降の見通しが全く立たない状況になるとは夢にも思わなかった。
(つづく)