10年のキセキ(104) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月16日は、2014年、サマソニ2014東京@幕張メッセMountain Stageに出演し、2015年にはサマソニ2015大阪@舞州Mountain Stageに出演し、2019年にはサマソニ2019大阪@舞洲Mountain Stageに出演した日DEATH。

2019年10月13日、BABYMETALはAftershock フェスティバル2019に出演した。
会場のDiscovery Parkがあるサクラメントはサンフランシスコの北東約120㎞、ロサンゼルスからは約600kmの距離にある地方都市だが、金曜日の段階でチケットはすでにSOLDOUTしていた。
BABYMETALの出番は、日曜日の14:55-15:35、ステージはKolas Discovery Stage。
Aftershock 2019は、“メタル復権”といえるほど、Billboard 200でメタルバンドが上位にランキングされた2019年のアメリカの音楽シーンを体現したフェスだった。
金曜日ヘッドライナーのSlipknotの最新アルバム『We Are Not Your Kind』は2019年8月19日付 Billboard 200で1位となっていた。
BABYMETALが出演した日曜日に限っても、ヘッドライナーのTOOL(19:25~)は『Fear Inoculum』が2019年9月14日付Billboard 200で1位、KOЯN(18:25~)は『The Nothing』が9月28日付8位となっていた。
この傾向は2016年ごろから続くもので、A DAY TO REMEMBER(17:05~)は2016年の『Bad Vibrations』が2位、CHEVELLE(16:15~)も 2016年の『The North Corridor』が8位になった。フランスのGOJIRA(15:35~)は2016年の『Magma』が24位となり、2017年グラミー賞にノミネートされた。
そして、われらがBABYMETAL(14:55~)もまた、2016年に『METAL RESISTANCE』がBillboard 200で39位となり、最新の『METAL GALAXY』は2019年10月11日付iTunesで第1位、Billboardでは10月26日付のトップ・ロック・アルバムとハード・ロック・アルバムで1位、総合では13位となった。
BABYMETALは出演バンド中最年少だったが、このラインナップに堂々と肩を並べる位置にいた。
ハッキリ言って、こんなアーティストは日本の音楽史上、BABYMETALだけである。サザン・オールスターズでもB’zでもX-JAPANでもAKB48でも乃木坂46でも欅坂46でも日向坂46でも、アメリカのロックフェスはもちろん、イギリスのグラストンべリーフェスであっても、絶対にこのポジションにはブッキングされない。
常態化しているので、ぼくらもついつい見過ごしてしまうが、BABYMETALが更新し続けている日本芸能史上の快挙を、日本のマスメディアの「芸能レポーター」や味方であるはずの「メタル専門誌」は取材もせず、一切報じなかった。クソだよね。
ちなみに、10月15日のポートランド公演からBABYMETALのOAを務めるモンゴルのメタルバンドTHE HU(13:55~)も、デビュー配信シングル「Wolf Totem」が2019年4月11日付ビルボードのHard Rock Digital Song Salesで1位、「Yuve Yuve Yu」が7位となっていた。
ロックはもともとインターナショナルなものだが、Aftershock 2019の最終日にはGOJIRA、BABYMETAL、THE HUなど、インターネット動画で果敢に世界に打って出たバンドが多かったのも特筆される。
BABYMETALのセットリストは以下のとおり。
1.メギツネ
2.Elevator Girl
3.Shanti Shanti Shanti
4.Distortion
5.PAPAYA!!
6.ギミチョコ!!
7.KARATE
8.Road of Resistance
アベンジャー:岡崎百々子
神バンド:下手からChris Kelly(B)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J.Masciantonio(G)

秋晴れのカリフォルニア。真夏に戻ったかのような日差しの中、Kolas Discovery Stage前はBABYMETALを待ちわびる観客でぎゅうぎゅう詰めになっていた。
「♪キーツーネー、キーツーネー…」というSU-の歌声が響き渡ると大歓声が沸き起こった。短い「紙芝居」に続いて、和楽器の音色に合わせて、MOAと岡崎百々子が狛キツネポーズをとる。MOAの「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」のScreamが響き、元気いっぱいの三人が空中平行移動ダンスを始めると、会場はキツネ様の魔力により、熱狂の渦に巻き込まれた。
早くもサークルモッシュが発生し、大衆のエネルギーの象徴のような砂埃が立ち昇る。


「メギツネ」は2014年のSonisphere以来、「さくらさくら」をモチーフとした和風メタルで、欧米人の人気チューンとなってきた。
前述したように、現在のアメリカでは、Slipknot、KOЯN、TOOLといったメタルバンドが総合チャートの上位を占めている。彼らの音楽性は、日本の「メタル専門誌」が金科玉条とするオールドスクールな「正統派ヘビメタ観」とは程遠い。メタルは反体制的=反商業主義=反資本主義=反伝統文化でなければならないと思い込み、脊髄反射のように神道=右翼だと考える編集者にとっては、キツネ様=稲荷神=豊受大神をアイコンとし、大手音楽事務所アミューズがプロデュースする「アイドル」のBABYMETALは、2012年以降、ロックフェスに殴り込んだももクロと並んで唾棄すべき存在だった。
だが、ラップ、ミクスチャー、エモ、仮面=演劇的要素、ダウナー系、プログレッシヴ要素など、“旬”なアメリカのメタルバンドの音楽性は、そんな日本の「知識人」のサヨク的思い込みなど、一切関係ない。
日本神道の稲荷神や「さくらさくら」は欧米人にとっては興味をそそられるエキゾチズムに過ぎず、それをギミックに用いつつ、すさまじい生演奏を聴かせるBABYMETALは、当然のようにアメリカで人気バンドになった。
しかも『METAL GALAXY』で立証されたように、BABYMETALの出自であるJ-POPは一般アメリカ人音楽ファンが考える以上に、世界の様々な音楽の要素を取り入れた高度な音楽性を有していた。
『METAL GALAXY』リリース後、初の大規模音楽フェスとへの出演となったAftershock 2019でのBABYMETALのセットリストは、いわばその「見本市」だった。


「メギツネ」に続く「Elevator Girl」は、ハードコアをBABYMETAL流に解釈したもの、続く「Shanti Shanti Shanti」は、シタールの音色と「ドンドコドンドコ…」というヘドバンに適した二拍子/三拍子が入り乱れるインド=ボリウッドメタルというべきアジアンエスニックな曲想。
「Distortion」はDjentなギターリフと「♪ウォーウォーウォーウォー」のコーラスが観客参加を促すパワーメタル。続く「PAPAYA!!」は、タイ王国北部の伝統的ラップである“モーラム”をフィーチャーしていた。とはいえ、そんな知識がなくても、SU-の「んJump!んJump!んJump!んJump!」という煽りに、ジャンプする者、モッシュする者、回る者でステージ前は騒乱状態になった。知っている者はタオル回しだが、タオルのない者は白いPlastic Bag(日本でいうビニール=ゴミ袋)をぶん回していた。SU-の「♪祭rrrりだ!祭rrrりだ!」「騒gggげ!騒gggげ!」の巻き舌と、盆踊りポーズで踊りながら「♪祭りだ!祭りだ!」「ヘイ!ヘイ!」とKawaiくScreamするMOA、岡崎百々子のコントラストがBABYMETALらしかった。
さらに、BABYMETALの代名詞というべき「ギミチョコ!!」。分類すればハードコアだが、何度も言うようにそんな「知識」は関係ない。ピットはモッシュ、クラウドサーフの嵐となった。
次の「KARATE」は、アジアンエスニック=日本の雰囲気を残しつつ、グルーヴメタル的な「タメ」と「残心」の表現に、観客はこぶしを突き上げ、「押忍!押忍!」「ウォー!ウォー!ウォー!」とシンガロングした。


フィニッシュの「Road of Resistance」は、戦国SEが鳴り響く中、BABYMETAL旗を担いだ三人が登場するという、ぼくらは見慣れているが、初見のアメリカ人にとっては、間違いなくシアトリカルな演出とみなされるはずだ。観客は大歓声を上げ、SU-の「モーセの紅海渡り」のような仕草に従って、WODの準備に入った。
MOAの澄みきった声の「1234!」から曲が始まると、ピットの巨大なサークルですさまじいモッシュが始まり、やがてそれは砂埃をあげるサークルモッシュの渦になった。

砂埃の舞い上がる中、観客にシンガロングを促すSU-主代姿は、アメリカの女神=ドラクロワ描くところの自由の女神のようだった。


「We are?」「BABYMETAL」のC&Rのあと、「See You!」なしの右手を上げるポーズをとった三人は、上手へと退場していった。一分の隙もない、カンペキな野外ライブ。アメリカの音楽シーンにフィットしつつ、最年少ながら、大物バンドの風格さえ漂う見事なステージ。感激に涙を流す女の子が出るほど、人の心動かす生演奏。
主催者だったら、ぜひもう一度呼びたくなる。素晴らしいステージだった。
こうしてThe Forumに続いて、全米横断ツアー唯一のフェス出演を終えたBABYMETALは、いよいよ最終ターンであるポートランド&シアトル公演に臨むことになる。
(つづく)