10年のキセキ(103) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月14日は、1982年、BOH神が誕生した日DEATH。

2019年10月11日、The Forum公演7曲目「Starlight」。
この曲は2018年の幕張以来、必ずセットリストに入っていた。全米横断ツアーでも同様で、『METAL GALAXY』でも、フィニッシュの「Arkadia」に至る「Shine」の前に置かれており、新生BABYMETALにとって重要な曲であることがわかる。それはもちろん、2018年1月に逝去された藤岡幹大氏に捧げる曲であり、発表と同時に脱退が公表されたYUIMETALへの惜別の曲でもあるからだ。この曲を観客と共有することも、アメリカ初のアリーナ公演であるThe Forumのポイントだった。
はたして、観客はレーザー光の中、「♪ララララーラーラーラーラー…」というコーラスが聴こえると、キツネサインを掲げ、SU-とともに歌った。Djentギターからブラストビートが始まると、ピットの一角ではモッシュが発生した。だが「♪Wherever we are we’ll be with you. We’ll never forget shining starlight…」という祈りのようなパートに入るとモッシュの動きは止まり、再びキツネサインを掲げてともに祈る雰囲気になった。
少し静かになったあと、スクリーンに「Give me…」の文字が映り、グロウルとホワイトノイズが交互に流れると、客席から大歓声が沸く。
9曲目「ギミチョコ!!」のイントロが始まるとアリーナは、サークルモッシュで巨大な渦と化した。
間奏部のソロは、全米横断ツアーで聴きなれたC.J. Masciantonio。SU-が「Everybody clap your hands!」と叫び、MOAと鞘師里保は八角形ステージの上で跳びはねながら、笑顔で観客を煽った。17,500人のThe Forumが一体化した。
さらに、次の「PAPAYA!!」で場内の熱狂は最高潮に達した。イントロで、SU-が「んJump!んJump!んJump!んJump!」の煽ると、ピットはタオルを振り回しながらジャンプする観客、興奮して走り回る観客。スクリーンにF.HEROの巨体が映ると大歓声が上がり、客席はタイ北部のジャングルと化した。
大興奮のうちに曲が終わると、場内が真っ赤な照明に染まる中、「♪タンタン、タタン、タンタタン」というドラム音とディミニッシュを重ねるDjentなギターリフが繰り返される。大スクリーンには廃墟の街。そこへ遠くから「♪ウォーウォーウォーウォー…」のコーラスが響く。理不尽な運命の攻撃で荒廃した街に救世主となるレジスタンス軍が到着したことを示す。「Distortion」である。
「♪ウォーウォーウォーウォー」が高まると、三人にスポットライトが当たり、ダンスが始まる。アベンジャーは岡崎百々子に代わっていた。
「Give up! Give up!」のグロウルは『METAL GALAXY』と同じく、アーチ・エネミーのAlissa White Glaz。
パイロの炎が上がり、またも客席はサークルピットの渦と化す。
間奏部。SU-が「Hey, Forum! Everybody clap your hand, and scream!」と叫ぶと、観客が「ウォー!!!」と応える。SU-が裏拍で「Sing!」と煽ると、観客は「♪ウォーウォーウォーウォー!」と叫ぶ。それを繰り返した後、最後にSU-が「Forum!!!」と叫び、そこに「♪ウォーウォーウォーウォー!」と客席が応える。すかさず「♪歪んだカラダ叫びだす…」とSU-が歌い出す。リハーサルをしたわけでもないのに完璧なコンビネーションだった。
11曲目は「KRATE」。場内の照明が青く変わり、静かなSEが流れる中、三人が両手を斜めにピッタリそろえて構え、イントロが始まると、見事なシンクロ率で正拳突き、貫手突きのダンスを行う。MOAの「♪セイヤ!セセセ、セイヤ!」「ソイヤ!ソソソ、ソイヤ!」とScreamする声が響き渡り、観客も合唱した。
間奏部。今日はハミング煽りはなく、倒れた三人が肩を組み、コブシを突き上げて前進すると、歓声が上がる。「Everybody Jump!」もなかったが、観客は心の中の声に従ってジャンプし、拳を突き上げた。
曲が終わると、雷鳴と不穏なオルガンの和音。BABYMETALの「次の段階への変化と成長」を表す「ヘドバンギャー」である。
これも、2017年のLegend-S-、2019年のLegend-M-でセトリに入ったように、アメリカ初のアリーナ公演で披露するにふさわしい曲だった。
「♪イーチゴのよーるを忘れはしない」のところ、観客席も「トイ!トイ!」とジャンプして応える。間奏部。マイクスタンド=成長のための魔法の杖=ファルスの象徴を持ったSU-が鋭い眼光で、客席を睥睨し、MOAと岡崎百々子の土下座ヘドバンから「頭!頭!頭!」で」、客席もヘドバン地獄となる。遠征組が多かったためか、この光景は日本と変わらない。ふと、2025年には、この曲がBABYMETAL自体の15周年を意味することになるのだろうと思い至る。この10年間を思えば、あと5年などあっという間だろう。
戦国SEが流れ、客席にサーチライトの光が走る。銀河神バンドによるプレリュードが流れ、三人がBABYMETAL旗を持って登場すると、会場から大歓声。「Road of Resistance」である。


SU-がWall of Deathの仕草をすると、ピットに巨大な円が生まれ、MOAの「1234!」から曲が始まると、客席は一斉にモッシュし、高速サークルピットが出現した。
シンガロングパートになると、旗を振るMOAと岡崎百々子、拳を突き上げて歌うSU-を乗せた八角形のステージが客席中央に移動していく。
客席中央で、バンドが止まり、無伴奏のシンガロングパートとなる。観客は声を限りに「♪ウォーウォーウォーウォー」と歌う。2コーラスでドラムスが入り、曲が再開。「♪今日が明日を作るんだ、そうぼくらの未来、on the way」のあと、SU-は「Forum!」と叫んだ。
そこから、曲は終わり、「We are?」「BABYMETAL!」のC&R。そして、「Get your FOX hands U---P!」で終了し、三人はステージを去ってしまう。全米横断ツアーの他会場なら、この曲でフィニッシュのはずだ。
だが、終演を示す「紙芝居」は始まらず、客電は暗いままだ。
「チャッチャッチャチャチャBABY、METAL!」というアンコールが場内で散発的に起こる。
すると、スクリーンに無数の星の光が映り、再びSU-の英語ナレーションが始まった。
「The metal melodies become a myth and transcends through time and space for lightyears to come. Like the starry skies that light up the metal galaxies. The metal spirits also bring infinite light. A shining light awaits at the end of odyssey.」
(Jaytc意訳:メタルのメロディは神話となり、時空を光速で超えてゆく。満天の星空のように、メタル銀河を照らす。そしてメタルの魂は永遠の光をもたらす。旅の終わりには、輝く光が待っている。)
おそらく、台風で中止にならなかったら、都内のどこかの会場がライブ中継され、Wembley Arenaのような世界同時スマホライトが出現したのだろう。
静かなアコギのストロークが鳴り響き、「Shine」が始まった。スモークが焚かれた八角ステージ上、バックは白い太陽に月がかかる日蝕。PMなごやではSU-とMOAの二人だったが、今回はそこに鞘師里保が加わっていた。
2017年12月のLegend-S-の終演後「紙芝居」、2018年4月藤岡神逝去後FOXDAYのトレイラーで「予告」されていた「時」が再び動き出した。
これまでのBABYMETALセルフイメージすらも乗り越え、果てしないメタル銀河をどこまでも行く。SU-、MOAと深い縁と絆で結ばれたアベンジャーたちと共に。
SU-の澄み切った歌声とMOAのしなやかなダンスに、彼女たちの決意が陽炎のように立ち上る。
「♪心が叫んだ かまわない 壊れても 眩い光が僕らを照らすから~」のところで照明が落ち、曲が一瞬止まる。大歓声。そこから静かにアコギのストロークが再開する。BDで何度見ても鳥肌が立つ。
「♪Shining in my heart Shining in Your heart Shining Forever~」
そこで、スクリーンの太陽の前にかかっていた黒い月は太陽と一体化して消えていく。あの日蝕コロナは消え失せたのだ。その代わり、大宇宙を飛翔するBABYMETAL号の映像に、CDと同じメロトロンのクワイヤーがF→G→Aの神秘的かつ次に起こることの予告のようにコーラスを響かせる。
そしてステージがパッと明るくなると、素早いドラムスのビートとギターのリフが始まる。
「Arkadia」である。


やはり、「Road of Resistance」を超える新フィニッシュ曲は、「Arkadia」だった。
横アリ1曲目がThe Forumのフィニッシュ曲。PMなごやで、「Shine」からの「Arkadia」フィニッシュは予告されていた。横アリからのセトリは、この瞬間のための壮大なフリだったのだ。
BABYMETALは『METAL GALAXY』でメタル音楽の可能性を大幅に拡張した。
16曲からなるアルバムの多様性を締めくくるパワーメタル「Arkadia」は、このBABYMETALの音楽を全世界に広めてゆく、という強い意志を表している。
「♪光より速く、鋼より強く、使命の道に恐れなく、どれほどの闇が覆い尽くそうと信じたこの道をあるこう」とSU-が歌い上げるところは、この数年間、彼女たちに起こったことが蘇り、涙があふれて止まらなかった。
「♪今No more tears, no more pain, no more cry あの誓いの大地へ はるか遠くへ輝き放つアルカディア~」からの長いアウトロで、三人は空手チョップで、押し寄せる理不尽な運命を切って切って切りまくる。
そしてE→F#→G#と進んできたコードがさらに半音上がって、G→A→Bと転調するとBABYMETALが「新次元」に突入したことがわかる。その瞬間、大会場ならではの特効の爆発音が響き渡る。それは、新たに始まる「世界征服」の戦いに向けた号砲だった。


ライブが終わっても、三人はステージにいた。下手で、MOAが腕グルグルをやって喜びを表す。上手で笑顔を振りまく鞘師里保のショーマンぶりがまぶしい。
SU-は「Forum! Thank you for coming to see us!」「You’re the Best!」と言ってから深々とお辞儀をし、最後に何も言わずに拳を突き上げた。
(つづく)