10年のキセキ(102) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月12日は、2016年、Rising Sun Festival@北海道・小樽港湾特設会場に出演した日DEATH。

8月11日深夜から12日未明にかけて、香港警察は民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏、Apple Dailyの創業者黎智英(ジミー・ライ)氏らを釈放した。
取り調べを受けていた大埔(タイポ)警察署前で行われた記者会見で、周氏は日本語で以下のように語った。
―引用―
「昨日まではとても心的な準備ができていないままで逮捕されました。今までこの香港の民主化運動に参加するのは8年目になりましたが、今まで4回逮捕されましたが、正直今回の逮捕が一番怖かったし、一番きつかったです。でも拘束されている24時間の間で、いろんな香港市民そして日本のみなさんも世界のみなさんからもいろいろ応援をいただいて。そして日本人のみなさんが私のためにハッシュタグを作ったということも弁護士から聞きましたので、本当にとってもいろんな愛、そして支持をいただきました、本当にありがとうございました。
正直、今回の容疑というのは私が7月以来、SNSで外国、国際社会との連携という容疑なんですけれども、正直、理由とか証拠というのも私は全然把握していませんし、今回の逮捕について一体どういう理由で、私はどういう形で国家安全法に違反する仕事に参加したのか、過去24時間全然聞いていないので、まだわかっていない部分がたくさんあります。だからこの国家安全法とはまさに政治的な弾圧をするために利用したものじゃないかと思います。もともと法律というのは、市民の権利を守るものなんですけれども、今、香港政府にとって法律はもう市民の権利を侵害するものになってしまったのでとても残念なことだと思います。
(中略)一つ最後に言いたいことがあるんですけど、今回の逮捕ほんと怖かったし、そしていままで私が逮捕された4回の中で一番罪が重かった。拘束されているときにずっと「不協和音」という日本語の歌の歌詞が、ずっと頭の中で浮かんでいました。本当につらい時期、これからどんどんつらくなるかもしれませんが、引き続き自分の家を守るために頑張らないといけないという決心もつけましたので、これからも香港人の一人として頑張っていきたいと思います。」
―引用終わり―
周氏の心の支えになったのが欅坂46の「不協和音」だったという。「僕は嫌だ!」というやつですね。
https://www.youtube.com/watch?v=gfzuzDrVRVM
これによって、「不協和音」は検索エンジンのトレンドワードに入り、全世界に拡散中なのに、当の欅坂46はMVに出演している平手友梨奈はじめ主要メンバーがすでに脱退・卒業しており、10月には活動休止と改名が決まっているのが残念。
「♪不協和音で既成概念を壊せ!みんな揃って同じ意見だけではおかしいだろう/意志を貫け!ここで主張を曲げたら生きてる価値ない/欺きたいなら僕を抹殺してから行け!ああ、調和だけじゃ危険だ/ああ、まさか自由はいけないことか」という歌詞は、立憲民主党の枝野幸男代表もお気に入りだそうで、8月5日の定例会見で国民民主党との合流や党名変更に絡んで、欅坂46の改名について質問されると、この歌詞のような本質は変わってほしくないと述べている。
だが、今回の周氏の発言で、中国本土では「不協和音」あるいは欅坂46は発売禁止・放送禁止になるかもしれない。そういうことをやりかねない国なのだ。マジで。


2019年10月11日、BABYMETALはカリフォルニア州ロサンゼルス公演を行った。
会場のThe Forumは収容人員17,500人で、BABYMETALとしてはアメリカ初のアリーナ公演となる。3rdアルバム『METAL GALAXY』のリリースライブでもあり、2019年の全米横断ツアーの天王山であった。
旅行会社による日本からのファンツアーも組まれ、当日は全国の53館の映画館でLive Viewingが設定されていた。ただし、日本時間10月12日は台風19号が日本列島を襲い、愛知県から宮城県までの26館でLVが中止となった。LVは、1か月遅れの11月12日に行われた。
ライブ前にBABYMETALのメンバーやアベンジャーズ、神バンド、スタッフの方々がこの情報をつかんでいたかどうかはわからないが、10月11日付iTunes のWorldwide Album Chartで『METAL GALAXY』が17710ポイントを獲得し、見事世界第1位となっていた。
セットリストは以下のとおり。
「紙芝居~Don’t Think Feel」
1. FUTURE METAL
2. DA DA DANCE
3.メギツネ
4. Elevator girl
5. Shanti Shanti Shanti
6.神バンドソロ~ Kagerou
7. Starlight
8.ギミチョコ !!
9. PA PA YA!!
10.Distortion
11.KARATE
12.ヘドバンギャー!!
13.Road of Resistance
「紙芝居」
14.(En1)Shine
15.(En2)Arkadia
メンバー:SU-METAL、MOAMETAL
アベンジャー:2-5および10-13=岡崎百々子、6-9および14-15=鞘師里保
神バンド:下手からChris Kelly(G)、Clinton Tustin(B)、Anthony Barone(D)、C.J.Masciantonio(G)

抜けるような青空の下、The ForumのエントランスにはBABYMETALのロゴとTonight SOLDOUTの看板が立っていた。
入場してみると、詰めかけた観客がスマホライト点灯の練習をしており、客席が光り輝く美しい光景が広がる。やはりBABYMETALには大会場がよく似合う。
オープニングアクトはAVATARではなく、DJショー。
客電が落ち、大歓声が上がる中正面スクリーンに「METAL RESISTANCE EPISODE Ⅷ」の文字。
「Odyssey to METALGALAXY」というタイトルに通いて、宇宙空間を飛翔する赤と青の2つの彗星がぶつかり、宇宙が生まれる。


「Life is a conflict between the LIGHT FORCE and DARKFORCE」というSU-の英語ナレーション。
「Anyone can become a comic hero or tragic hero just like a crown. Is it hope? Or fear? …」
「Don’t think, feel.」の文字が大写しになると間髪を入れず「FUTUREMETAL」が流れる。
モノクロのアーティスティックな映像にオートチューンで、「はなく、宇宙空間を飛翔する正八面体の宇宙船が惑星に到着し、SU-とMOAの二人が「転送装置」に再生されてくる。アップになる顔はSUN盤とMOON盤のジャケット表紙そのものである。そしてBABYMETALの巨大なロゴが、レーザーでスクリーンに焼き付けられていく。


一瞬の暗転後、場内の照明が青く、赤く、白く点滅し、16ビートのイントロが繰り返される。このリズムとノリは「アイドル」グループのOvertureに近い。だが骨格となるギターのリフは確かにヘヴィメタルだ。
そして、ステージ前面に設置された八角形の移動ステージに「♪フォー!」という奇声とともに、「♪BABY、BABY、BABYメロッ!」と踊るSU-、MOA、岡崎百々子の三人がいた。


三人を乗せた八角形の移動ステージの側面はスクリーンになっていて、大スクリーンの映像と連動する。まばゆい光の洪水の中、この曲初披露のSU-、MOA、岡崎百々子のダンスはキレッキレである。「♪フォー!」の瞬間の三人の両腕が斜めに伸びるのがカッコいい。ラップのシークエンスでセンターに来るMOAがKawaii。

ピットでは、ディスコのような曲調にもかかわらず、大柄なアメリカ人メイトが笑顔でモッシュしている。
大歓声の中、場内が真っ赤な照明に染まり、「キーツーネー、キーツーネー…」というSE。C#mの重低音リフが繰り返され、サーチライトが客席を照らすと、観客は「オイ!オイ!オイ!…」と合いの手を入れる。
アリーナ中央に進んだ八角形ステージで、和楽器の「♪カラリンコン…」というサウンドに、三人がメギツネポーズをとる。イントロが始まると三人が足を高く上げて踊る。移動ステージ上だから空中移動の距離は短いが、その分高く跳んでいる。MOAの「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」「チキチキワッショイ!ヒラヒラワッショイ!クルクルワッショイ!」のScreamがよく通る。もちろんピットはお祭りだ。
間奏部、SU-が「Hey Forum!」「We’re so--- happy to be here!」と挨拶すると観客席は「ウォー」と叫ぶ。Chris Kellyが独特のバックメロディを奏でる。
「Are you ready to Jump?」「A---re y---ou ready---?」から「1,2,123Jump!」で、またも「ソレソレソレソレ!」と熱狂のダンスが続く。
「FUTURE METAL」とも「DADADANCE」とも全く違う曲調だが、それがメタルらしい重低音のパワーコードでBABYMETALミュージックになる。
続くのは「Elevator Girl」。ジャズっぽいピアノのコード弾きに、「♪Hey Lady, Are you going up or dadadadadada down…」というSU-のオートチューンが重なり、そこへヘヴィなギターのリフ。都会的な曲で、これも「メギツネ」とはぜんぜん違う。三人のダンスは見事なシンクロを見せ、歌詞と連動して観客を魅了していく。スクリーンには炎のフレームでできたエレベーターが上下し、ステージ上の三人と合成される。
SU-の歌は「メギツネ」ではやや苦しげだったが、この曲では「♪Are going u---p?」のブルノートや「♪See the whole world spin spin spin around(日本語版:閉まるドアにお気をつけください)」のDと「♪One day I’m happy, one day I’m a mess(日本語版:火あぶり針地獄のフロアです)」のD#の半音歌い分けも正確なピッチだった。
曲の終盤、日本人も多い観客席は「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」とScreamする。これで、この曲がテーマ的に「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の続編であることがよくわかる。
スクリーンに巨大な万華鏡のような黄色、赤、青の幾何学模様が映り、「ビロローン、ビロローン」というシタールの音色が響き渡る。たちまち場内はインドの熱風とカレーの匂いに満ちる。「Shanti Shanti Shanti」である。


この曲は2/2拍子表打ちの「♪ドン、ドン、ドン、ドン」というリズムであり、インド風の曲調にもかかわらず意外なほどヘドバンに適している。間奏部は3拍子になるが、ここも、三人のダンスを楽しみながらずっとリズムを保っていける。観客は3拍目に「Hey!」という合いの手を入れ、「ダンスとメタルの融合」であるBABYMETALのグルーヴに魅了されていく。
きれいに決まったポーズで曲が終わると、ステージが青い照明になり、Cmのペンタトニックで構成された「Kagerou」のパワーコードによる銀河神バンドによるアドリブ・ソロになる。
下手Chris Kellyのソロはブルージィなペンタトニック中心で、時折シュレッドっぽい速弾きになるが、全体的にブルースロックの王道というようなソロ。これに対して上手C.J. Masciantonio のソロはスケールアウトしたフレーズを織り交ぜ、タッピングも入れるテクニカルなもの。ベースのClinton Tustinはギタリスト出身なため、スラップベースやタッピングではなく、ペンタトニックのギターソロのようなフレーズを弾く。三人ともおとなしい性格なのか、藤岡神、大村神、BOH神のようなソロ終わりのアピールは行わないが、ドラムスのAnthony Baroneは、手数の多いドラミングを見せ、最後にはスティックを天に掲げてダブルバスドラを響かせ、大歓声を浴びていた。
そこへゆっくりと、BABYMETALの三人が腰と肩を揺らせながらゆっくりと入ってくる。この曲からアベンジャーは鞘師里保にスイッチした。
スクリーンには赤、青の炎が映り、各ダンサーがアップになる。
前にも書いたが、「Kagerou」は、2018年に「Tattoo」として初披露されたとき、振り付けもなくSU-がゆらゆらと揺れながら歌うソロ曲だった。
だが、2019年には、銀河神バンドのアドリブに続いて、MOAとアベンジャーがSU-の両サイドで踊る通常の曲になった。この曲の歌詞は、さくら学院~BABYMETALを通してこれまでの持ち歌にはない嫉妬、隠し事に揺れる恋心といった複雑な心情を現わしている。だが、海外では日本語のニュアンスまでは理解されない。そのため、歌詞の内容と連動する振り付けダンスは、この曲の表現力を大きく向上させた。
特に「Kagerou」でのMOAのダンスは、身体全体をしなやかに使い、ゆったりと体重移動したかと思うとスパッと向きを変えて手の動きを早めたりするメリハリの効いたもので、KawaiiからSexyへとシフトしている。


これによって、BABYMETALは大人の表現力を獲得したと思う。
「Kagerou」が、アカペラの「♪ヒラヒラ落ちる…」という余韻を残して終わると、エコー音が響き、シンセサイザーによる壮大なインターリュードが流れ、場内に青いレーザー光が放たれた。
遠くから「♪ラララララ…」というコーラスが聴こえてくる。
遥かメタル銀河の彼方へ昇天した藤岡神と、脱退したYUIMETALに思いをはせつつ、前を向いて疾走する「Starlight」である。
(つづく)