10年のキセキ(100) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月9日は、2014年、Heavy Montreal 2014フェス@Parc Jean Drapeauに出演し、    2016年、白ミサ@大阪・なんばHatchが行われ、2017年には、白キツネ祭り@Zepp Nagoyaが行われた日DEATH。

先日8月7日に放映されたTBS系の刑事ドラマ『MIU404』第7話で、トランクルームにベビメタ関連の衣装やグッズを預けているBABYMETALファンの家出少女という設定で、スゥ(原菜乃華)とモア(長見玲亜)という登場人物が出てきた。さらに実は弁護士のコスプレイヤー、ジュリ(りょう)も登場し、事件解決後にはBABYMETALバックドロップを背景に、三人が主演の綾野剛、星野源、トランクルーム管理人役の井口理(King Gnu)らの見守る前で「PAPAYA!!」を歌い踊るというシーンが演じられた。


番組のエンドロールには振付指導ELEVEN PLAYと表示されており、脚本家の野木亜紀子氏が自身のTwitterで「家出少女たちが好きなバンドは、実在のグループがいいなあということでBABYMETALにお願いしたら、快く使わせてくださいました。ありがとうございました!」とコメントしていることから、公式のお墨付きが出たものと思われる。スゥ・モアが着ているベビTは「TOKYO DOME MEMORIAL -KxY-」、「PAPAYA!!」で踊るシーンのコスチュームは2015年仕様だが、綾野剛と星野源はベビメタタオルを首にかけ、井口理はタオル回しをしており、ちゃんと「考証」されていた。
BABYMETALの楽曲は海外も含めドラマやバラエティで時々使われるが、ドラマのストーリーにがっつり絡むのは初めてではないか。めでたい。



2019年9月18日、BABYMETALはミシガン州デトロイトへ進んだ。

ここからアメリカ第三の都市であるイリノイ州シカゴを経てミシシッピ川を越え、西部エリアへ入って北からミネソタ州セントポール、ミズーリ州カンザスシティー、テキサス州ダラスへと南下したあと、ロッキー山脈東麓のデンバーへと進んでいくことになる。
この中で、カンザスシティーの会場は、2018年USツアーの初日、YUIMETAL欠場とDarkside仕様が判明した同じUptown Theaterだった。四人体制のBABYMETALのパフォーマンスは素晴らしいものだったが、事前通告がなかったファンのショックは大きかったらしく、2019年の全米横断ツアーでは、最も小さい会場のひとつ(収容1,700人)だったにも関わらず、9月3日の時点で550名の空席が確認されていた。一方、翌日のダラスSouth Side Ballroom(収容3,800人)は同時点で残り8席になっていたし、翌々日の同規模のデンバーOgden Theatre(収容1,600人)はすでにSOLDOUTしていた。
ちなみに、2019年全米横断ツアーの公演都市のうち、過去に同じ都市でライブを行った会場の推移は以下のとおり。(※はOAとしての出演)
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・オーランド
2019年Hard Rock Live(3,000) ←2017年Amway Center※(20,000)
・アトランタ
2019年Coca Cola Roxy(3,600)←2018年Tabernacle Atlanta(2,600)←2017年Philips Arena※(21,000)
・ワシントンDC/シルバースプリング
2019年The Anthem(6,000)←2017年Virizon Center※(18,277)←2016年The Filmore(2,000)
・ボストン
2019年House of Blues(2,500)←2016年House of Blues(1,800)
・ニューヨーク
2019年Terminal 5(3,000)←2016年Playstation Theater(2,100)←2014年Hammerstein Ball Room(3,500)
・デトロイト
2019年The Fillmore Detroit(2,888)←2016年The Filmore(2,888)
・シカゴ
2019年Aragon Ballroom(5,000)←2016年House of Blues(1,300)←2015年House of Blues(1,300)
・カンザスシティー
2019年Uptown Theater(1,700)←2018年Uptown Theater(1,700) 
・ダラス
2019年South Side Ballroom(3,800)←2018年House of Blues(1,600)
・デンバー
2019年Ogden Theatre(1,600)←2014年Pepsi Center※(18,007)
・ソルトレークシティ
2019年The Union Event Center(3,500)←2014年Energy Solutions Arena※(19,911)
・ラスベガス
2019年House of Blues(2,500)←2014年MGM Grand Garden Arena※(17,157)
・サンフランシスコ
2019年The Warfield(2,300)←2016年Regency Ballroom(1,400)
・ロサンゼルス/ハリウッド/イングルウッド
2019年The Forum(17,500)←2017年Palladium(3,700)←2016年The Wiltern(1,850)←2014年The Fonda Theater(1,200)
・シアトル
2019年The Paramount Theatre(2,800)←2016年Showbox Sodo(1,800)
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Lady Gaga、レッチリのOAを務めた会場を除き、ほとんどの都市で単独公演の会場規模は、回を重ねるたびに大きくなっている。2019年全米横断ツアーで最大のロサンゼルスThe Forum(収容17,500人)は、実は2017年のKOЯN、Stone Sourとの巡回フェスツアーThe Serenity of Summerで使われた会場であり、それを2019年のBABYMETALは単独公演で使用したのである。
つまり、アメリカにおけるBABYMETALは、主要都市で数千人の会場がSOLDOUTするのが当たり前であり、大物バンドがライブを行う2万人クラスの会場でも単独公演可能な集客力のあるアーティストになっていたのである。
しかし、カンサスシティでは、前述したように9月3日時点で1,700人の会場が2/3も埋まらないという状況だった。2018年にファンが感じたショックは大きく、長引いていたのだ。だから、カンザスシティー公演を素晴らしいライブにすることは、Darksideの暗い影を払しょくするという意味で、全米横断ツアーの重要な課題だったといえる。
2019年9月23日。
AVATARのOAが終わる頃、会場は超満員となり、後方までびっしりと埋まっていた。
アベンジャーシステムで「新三人体制」になり、『METAL GALAXY』に入る新曲や、未披露だった「ヘドバンギャー!!!」も入ったBABYMETALの“原点回帰”のステージが、ワシントン、ニューヨーク、デトロイト、シカゴ、セントポールと各地で評判を呼びながら、再びカンサスへやってくるという状況に、昨年のDarksideとは違うという確信を持ったファンが大慌てでチケットを購入したのだろう。
「♪キーツーネー、キーツーネー…」というSEから、C#mを繰り返す「メギツネ」のイントロが流れると、銀河神バンドのメンバーがステージに登場した。
ステージ上のスクリーンに、虹色に輝く宇宙空間が映り、そこからメタル色のキツネ面が飛び出す。燃え上る画面に懐かしいBABYMETALのロゴ。ナレーションは男声である。
「A long time ago, in the Metal Galaxy far, far away…」
「“Impossible” does not exist in BABYMETAL.」
「In the name of the FOXGOD, the BABYMETAL sensation continues to spread worldwide.」
「Are you all ready to headbang? 」
「Let me ask again. ARE YOU ALL READY TO HEADBANG? 」
「Now is the time for Metal Resistance with BABYMETAL.」
(Jaytc意訳:昔々、はるか遠くのメタル銀河…。BABYMETALに“不可能”は存在しない。キツネ様の聖名のもと、BABYMETALのセンセーションは全世界に広がり続ける。諸君、首の準備はできているか?さあ、メタルレジスタンスの時間だ。BABYMETALとともに!)
最後のセンテンスあたりでステージ中央にSU-、MOA、鞘師里保の三人が並び、メギツネポーズをとる。大歓声。ドラムスと和楽器のイントロで、MOAと鞘師里保がきれいな狛キツネポーズをとり、キツネサインを客席に突き刺していく。1曲目「メギツネ」である。


鞘師里保はシカゴ公演で、曲中で右膝をついた瞬間があり心配されたが、動画で見る限り、笑顔を振りまきながら、空中平行移動シークエンスも正確無比にこなしていた。
間奏部のSU-の煽りが凄かった。「He---y!Kansas Cit---y!」「Ho---w you feeling toni---ght?」一語一語を伸ばすように、叫び、その都度大歓声が沸いた。「Are you ready to ju---mp?Are you read---y?」「1,2,123、Jump!」から、狭い観客席はやはり他会場と同じく、大ジャンプ大会となった。
2曲目の「Elevator Girl」。
2018年、ここで世界初披露された曲だが、2019年の観客にとっては全く違う印象だろう。
2018年は大柄のサポートダンサーを含め、鎧&ヘッドギア+タイツコスチュームの四人が、日蝕コロナバックドロップの背景で歌い踊った。
だが、そもそもこの曲は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の続編であり、オトナKawaiiを目指す新生BABYMETALのいわば「再デビュー曲」である。
2019年は同じ黒ながらキラキラ輝くスカート姿のKawaiiスタイルに戻り、三人で歌い踊る。背景のスクリーンは「浮き沈み」を現わす燃えるフレーム状のエレベーターが上下するステージとの合成CG。歌詞は井上ジョーによって英訳され、明るく楽しく激しいメタルポップに仕上がっている。
3曲目はDarksideでは思いもよらなかったインド風ボリウッドメタルの「Shanti Shanti Shanti」。


昨年のサポートダンサーの技量も相当なものだったが、MOAと鞘師里保のしなやかでセクシーなダンスは、メタルダンスユニットとしてのBABYMETALの魅力を存分に伝えるものだった。
昨年はTattooと呼ばれていた4曲目「Kagerou」も変わった。まず、2016年度までの定番だった神バンドのソロが付いた。
下手のChris Kellyのフレージングは、ブルージィだが、メロディアスなフレーズに特徴がある。
「メギツネ」間奏部でSU-が煽っているところは、ギターとベースがD#m→Em→E#mとパワーコードを繰り返すのだが、その間、Chris Kellyは「F・D#・A#・G#・C#・C・F↑」というフレーズをメロディ弾きするし、「ヘドバンギャー!!!」では、短いソロの中にトリルを入れ込んだりもする。ベイダー卿はエモーショナルなメロデス系「泣きのギタリスト」なのだ。
一方、上手のCJ Masciantonioは、フュージョン、Djent系で、時折スケールアウトした速弾きに特徴があるが、彼もエモーショナルな「泣き」の表現が好きなようで、フィンガービブラートやチョーキングを多用する。
「ギミチョコ!!」のソロは彼が担当しているのだが、スイープ奏法で上がっていくところは書き譜どおりに演奏するが、後半はアームを使っていったんダウンしてからキュイーンと上げていく独特のフレーズになる。また、「THE ONE」の「♪ララララー」のところ、ギターでのメロディにめちゃめちゃビブラートをかける。
神バンドミュージシャンの生身の演奏力も含めて、Best Live BandとしてのBABYMETALの魅力なのだ。
「Kagerou」は、2018年はSU-がゆらゆら揺れながら歌うソロ曲だったが、新生BABYMETALでは、銀河神バンドのアドリブソロ演奏のあと、三人が腰を揺らしながら入ってくるダンス曲となった。ダンスがつくことによって、曲としての表現力がアップしていた。
特に「Kagerou」のMOAは、止め・キメ・間をしっかりとって、SU-の歌う日本語の歌詞を、身体全体でしなやかに表現していた。ジャズダンスやヒップホップ系の「カッコいいダンス」ではなく、表現として歌詞とダンスのシンクロをここまで完璧にできるのは、世界でBABYMETALだけだろう。
要するに、2018年はYUIMETAL不在の初日で、Darksideの悲壮感がただよい、観客席は戸惑うしかなかったのだが、2019年の新生BABYMETALは、それまでのBABYMETALが大きく進化したものだった。その成長を目の当たりにした観客席は、今や大熱狂していた。
「三人組」のフォーメーションに戻った「ギミチョコ!!」では、熱狂する観客席でモッシュが多数発生した。
続く「PAPAYA!!」は新曲だが先行公開されており、10公演目ともなれば、アメリカ人の観客もタオル回しをして熱狂した。
昨年はなかった「ヘドバンギャー!!!」がセトリに入っていたのは、この曲がBABYMETALの「変化と成長」を表す曲だからである。観客は遠征組を見習って、頭を大きく上下させてヘドバンした。
そして、2019年カンサスシティ公演のハイライトは、フィニッシュ前に置かれた「THE ONE Unfinished Ver.」だった。
青い照明とスポットライトの中、一番を歌い終わったSU-が「Turn on your camera light!」と客席に呼びかけた。次々に点灯されるスマホライトで、場内は宇宙空間と化した。2017年のレッチリツアーの「KARATE」と同じだが、今回は東京ドームだけでなく、Legend-S-やLegend-M-の再現でもあった。
SU-はあの光景を、カンサスの観客と共有したかったのだ。
二番が終わって、一瞬静まり返った会場に、大音量で神バンドが入ってきた。
続いて、MOAと鞘師里保が登場してきた。二人ともSU-と同じ黒いマントをまとっていた。


1年が経過して、公式の情報公開は十分でないにしろ、YUIMETAL脱退という事実から、BABYMETALが苦境を乗り越えるためにDarksideを演じ、今、新たに蘇ったことがわかった。共感した観客は、文字通り「ひとつ」になって「♪ララララー…」と大合唱した。
2018年は「Road of Resistance」→「THEONE」の順だったが、2019年は「ヘドバンギャー!!!」→「THE ONE」→「Road of Resistance」の順だった。
昨年は見られなかったBABYMETAL旗を担いだ三人が登場し、SU-が手振りでWODを指示すると、狭い場内にサークルが作られた。
MOAの「♪1234!」のカウントに続いて曲が始まると、客席はモッシュからの高速サークルピット、クラウドサーフの嵐となった。
曲が終わり、「We are?」「BABYMETAL!」のC&Rが3回繰り返される。MOAと鞘師里保は上手、下手に分かれてぴょんぴょん跳び、喜びをあらわにした。そして、SU-の「Get your FOX Ha---nds U----p!」の時、両手でキツネサインを掲げながら、MOAは感に堪えないというように、頭を大きく振って笑顔を見せた。
(つづく)