10年のキセキ(94) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日7月31日は、2020年、全国52の映画館でBABYMETAL ARISES~BEYOND THE MOON~Legend-M-のライブビューイングが行われた日DEATH。

2019年7月6日、BABYMETAL ARISES~BEYOND THEMOON~Legend-M-は、メタルで世界を一つにする戦いをリスタートした新生BABYMETALの記念碑的ライブである。
1年後の今年、国と国、人と人を分断する「インフォデミック」の闇が世界を覆い、ここ日本でも再自粛を望む勢力が再び暗躍する中、全国の映画館でライブビューイングが行われ、各地の映画館で知り合ったメイトたちが語り合う機会を得たこともまた、数年後に振り返れば、非常に大きな意味を持っていたことがわかるはずだ。
ライブビューイングは8月3日に再度行われるが、もうネタバレを恐れることもないと思うので、ぼくなりに、このライブの歴史的な意義を総括しておく。
会場は、名古屋駅から地下鉄あおなみ線で約15分の「金城ふ頭」駅の名古屋国際展示場ポートメッセなごや。隣にはレゴランドがあり、名古屋のウォーターフロントスポットとなっている。東京ならお台場、千葉なら幕張メッセといった雰囲気だ。
名古屋では、2012年7月8日に、伝統ある地元のライブハウスElectric Lady Landの最小フロアSize(収容150名)で「ヘドバ行脚in名古屋」を行い、2015年10月7日-8日のジャパンツアー公演、2016年8月24日-25日のWhite Mass、2017年8月8日-9日の銀キツネ祭り&白キツネ祭りは、Zepp Nagoya(収容1,864名)で行われた。収容10,000人のポートメッセ名古屋はBABYMETALとしては初めてのライブ会場だが、名古屋が生んだ世界のMOAMETALの聖誕祭=故郷に錦を飾る凱旋公演だから、地元メイトはもちろん、日本全国、世界各国からファンが詰めかけ、物販列には午前中から長蛇の列ができていた。
Legend-S-同様、チケットには「三種の神器」が付属しており、超Mosh’shピットのチケットでは、光るメタルカラーの手甲、ビロードの袋に入ったメダリオン、ドリンクホルダー+デザインウォーターボトルの3つが配布された。
グッズ売り場では、Tシャツ類だけでなく、小物類も多く、ぼくが狙っていたケース入りピックセットは、現場に到着した午後3時ごろには売り切れていたので、2日目早朝から並んだメイト友達に頼んで買ってもらった。
17:00過ぎ、超Mosh’sh Pitの集合場所に行くと、会場内から「ROR」をリハーサルしている音が洩れていた。「♪レジースタンス」というSU-の声に続いて、「♪レジースターンス」と返すMOAの声がよく通っている。何度も言うが、MOAもまた、防音壁を突き破って聴こえるほどの歌声の持ち主なのだ。
開場は、横アリほどではないが、約15分遅れた。
ぼくの初日チケットは、超Mosh’shピットの上手側Aブロック。番号が大きかったので、最前列突撃はあきらめ、ブロック後方の柵にもたれて観戦することにした。
舞台装置は横アリとほぼ同じだが、会場が一回り小さいためか、花道中央の島に置かれた正八面体が、なんとなく大きく見えた。
19:20。客電が落ち、場内から大歓声。
スクリーンに「紙芝居」が映る。全編英語だが、SU-ではなくMOAの声だった。
「1999年7の月、空からエンジェルモアの大王が下りてきて…」といった内容のナレーションは、前回書いたように、1973年に大ベストセラーになった『ノストラダムスの大予言』のパロディだった。もちろんLegend “1999“の「ラブマシーン」でさえ知らなかったMOA自身は、KOBAMETALに教えられて初めてそんな予言があったことを知ったのだろうが、ぼくら世代にとって、1999年7月は非常に大きな意味があった。
ナレーションが終わると客席に突き出した島舞台の正八面体が赤く光った。
横アリとは違って、PMなごやでは、三人の白装束の少女たちは現れず、正八面体が割れると中から鳥のようなものが舞い上がった。スポットライトが当たると、それは翼をつけたMOAMETALその人だった。


MOAはゆっくりと翼を動かし、客席にあのMOAスマイルを送りながらメインステージの方へ飛んでいく。まさに「微笑みの天使」の誕生である。場内からは割れんばかりの拍手と「MOA!」の叫び声。
MOAが見えなくなると、スクリーンでは、「この荒れ果てた地球を救うためのメシアが誕生した。」というナレーション。ついに、BABYMETAL神話では、MOAもまたメシア=救世主の一人と位置づけられたのだ。
ここからは横アリと同じ。「Vocal & Dance、SU-METAL」「Scream & Dance、MOAMETAL」という紹介に続いて、ステージに立つ二人にスポットライトが当たった。MOAMETALもまた「もうひとりの女神=Vocal & Dance」の“神格”を持つのではないかという予測は外れた。
そして、PMなごやでもアベンジャーシステムの説明があり、どの「選ばれし勇者」が降臨するかは、「ONLY THE FOX GOD KNOWS」とされ、日本武道館の黒い夜召喚の儀の再現=BABYMETALのリスタートを示すように「Metal Resistance will be started here in Japan…Japan…Japan…Japan…」とフェードアウトしていった。
いよいよMOAMETAL聖誕祭Legend-M-の始まりである。
セットリストは以下のとおり。
01.Road of Resistance
02.メギツネ
03.Elevator Girl
04.Distortion
05.Shanti Shanti Shanti
06.Starlight
07.シンコペーション
08.ヤバッ!
09.PA PA YA!!
10.ギミチョコ
11. KARATE
12.ヘドバンギャー!!!
13. FUTURE METAL
13.Shine(初披露)
15.Arkadia
アベンジャー:7月6日鞘師里保、7月7日藤平華乃
神バンド:(下手から)大村孝佳(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、Leda(G)
暗転に続いて、ステージ背後の白いスクリーンに、一瞬、旭日のような赤い放射状のバックライトが輝いたかと思うと、「Road of Resistance」のプレリュードが鳴り響き、三人がBABYMETALロゴ旗を持って登場した。
アベンジャーは、初日が鞘師里保、二日目が藤平華乃だった。
Aメロの終わり「♪さあ、時は来た」の時、MOAが微笑んだ。2日間にわたって主役のMOAが場内カメラで抜かれることが多かったが、その一発目。それは美しく気高く、それでいて会場の隅々にまで届くファン愛にあふれた、輝くような笑顔だった。横アリからイギリスへと弾丸スケジュールをこなした疲れなど、みじんも感じさせない。それに応えて、ピットは1曲目からサークルモッシュの嵐になっている。
「♪ウォーウォーウォウォー…」のシンガロングが始まると、三人は八角形の移動ステージに乗ったまま、花道を客席中央の島舞台まで動いていく。SU-もMOAもアベンジャーも笑顔でこぶしを振り上げ、場内は1曲目から「ひとつ」になった。
「♪キーツーネー、キーツーネー…」に続いて、和楽器のイントロが流れ、MOAとアベンジャーが狛キツネポーズを決める。2曲目は「メギツネ」。オープニングから熱狂チューンの連続だ。ブロック中央だったら体力が持たない。
神バンドは初日、2日目とも下手ギター大村神、ベースBOH神、ドラムス青山神、上手ギターLeda神。グラストンベリーと同じメンバーである。
移動する八角舞台にもかかわらず、「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」の三人の着地と平行移動のタイミングはぴったり合っており、特に鞘師里保はグラストンベリーを経験したことで、動きが大きくなりダイナミックに見えた。そのため、MOAのダンスはキレとエレガントさを増したようにも感じた。
間奏部でSU-が「Hey、なごや!ハッピーバースデイMOAMETAL!」と叫ぶと、スクリーンに大写しになったMOAが弾けるような笑顔を見せた。PMなごやではジャンプが禁止されていたので、SU-は観客に「Are You Ready to shout?」と呼びかけ、さらに「Are You ready?」と畳みかけた。これはダチョウ倶楽部の「押すなよ、押すなよ」と同じで、場内は「Yeah!」と大騒ぎ。
このとき、肉眼ではMOAの背中しか見えなかったが、島舞台先端でキツネ面を持つSU-の顔が見えた。その顔が笑顔でくちゃくちゃになった。MOAが「変顔」をして笑わせたのだろう。
SU-の掛け声は「1、2、123!Shout!」だったが、当然、場内はジャンプ大会となった。
大熱狂の中、曲が終わるともうヘトヘトだが、まだ2曲目。
3曲目が「Elevator Girl」なのは、この曲がピアノのコードと、SU-のオートチューンで始まる新生BABYMETALの「ド・キ・ド・キ☆モーニング」だからである。
特筆すべきなのは、初日の鞘師里保も二日目の藤平華乃も、「♪…Dadadadadada、Down」のとき、MOAとともにコケティッシュに細かく表情を作り、しぐさをキメていたことだ。オトナになっても、Kawaii-METALスピリットを忘れない。それがこの曲のテーマなのだから。
曲終盤、「♪上へ参ります、下へ参ります」のあと、観客は「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」と合の手を入れる。このタイミングも「ド・キ・ド・キ☆モーニング」と同じだ。やはりBABYMETALはメタル・アイドルなのだ。
三人がワチャワチャした最後のポージングをキメると、暗転。
「♪キーン…」というハウリング音の中から、ドラムスとDjentなギターによるイントロが断続的に響いた。
4曲目「Distortion」である。
暗闇の中から「♪Woh Woh Woh Woh!」とコーラスが聴こえると、客席も待ってましたとばかりに合唱する。
メロディーの最後が上がると明転し、バンドの演奏に合わせて、カチッカチッとしたダンスが始まる。MOAもアベンジャーもキレッキレである。
観客が「Give Up Give Up」「Stop the Power」「Distortion!」と入れる合いの手を切り裂くように、SU-の「♪ひずんだカラダ叫びだす…」という歌声が響き渡る。グラストンベリーではピッチが不安定な瞬間があったが、PMなごやは絶好調だった。
間奏部。SU-は「Clap your hands!」「And Scream!」と叫び、8拍目の裏で「Sing!」と命ずる。客席は「♪Woh Woh Woh Woh!」と返す。サークルモッシュやクラウドサーフも発生しており、場内の空気は熱気に包まれた。曲が終わって大歓声が上がると、熱気をさらに加速するように、スクリーンに黄色や赤色の万華鏡模様が映り、シタール、タブラの音色が響いた。
ボリウッドメタル、「Shanti Shanti Shanti」である。
三人を乗せた八角ステージが、舞台上で4メートルほどの高さにリフトアップされていく。
2/2拍子の「♪ドンドコドンドコドンドコドンドン」というリズムは、原始的だが、どこか懐かしく、汎アジア的な「お祭り」のムードに満ちており、かつ、ヘドバンに最適である。


MOAとアベンジャーはバリ舞踏のように、首をクイクイ動かし、指の先までしなやかに表現する。「♪(フォー!)果てしなくFree」の直前のMOAの足さばきは、ここだけスパニッシュ風になるのが超セクシー。
ギミチョコの「♪だからちょっとハート、ちょっとだけお願いなんです」のところのひざ下をチョンチョンとあげる動きや、東京ドームの「Tales of the Destinies」のホンキートンクピアノのところのダンスはKawaii感じだったが、「Shanti Shanti Shanti」では、間違いなくオトナっぽいセクシーさになっている。こういうところも「成長」の証だ。
この曲では決まった合いの手がないが、2拍子でヘドバンしつつ、間奏部で3拍子になるところで3拍目に「ヘイ!」と合いの手を入れているといつのまにか2/2拍子に変わっていくのが楽しい。こういう音楽的な豊かさも、新生BABYMETALの新たな魅力だと思う。
インドの熱風が過ぎ去ると、エコーがこだまする神秘的なインターリュードが響き、緑色から青色に変わるレーザーの光が観客の頭の上をかすめる。メタル銀河の彼方で、BABYMETALを見守っている藤岡幹大神への祈りを込めた「Starlight」である。「♪ラララ、ラーラーラーラーラー…」というコーラスと、SU-の「♪ラー、ラーラーラララー…」というメロディが交錯し、見上げるスクリーンには無数の星。
Djent的なイントロリフから、疾走感に満ちた曲が始まる。
「Distortion」と「Starlight」は、どうしても2018年のDarksideを思い出す。1月に藤岡幹大氏が急逝し、打ちひしがれた中で、USツアー直前に突如「Distortion」がリリースされて「よっしゃー!」となった翌日、YUIMETALの欠場が判明し、「Starlight」リリースと同時にYUIMETAL脱退が発表されたからだ。
だが、それらも新生BABYMETALがリスタートするために、なくてはならない過去の一つだった。起こってしまった悲しい出来事を「なかったこと」にはできない。それを糧にして前へ進むしかないのだ。
だから、MOAMETAL聖誕祭の中でも、「♪Wherever we are, we’ll be with you. We never forget shining starlight」と誓う。それは「Distortion」の「♪歪んだチカイ忘れないこのセカイが壊れても」と表裏一体だ。
この2曲があるから前へ進める。Legend-M-で、メンバー、スタッフ、ファンのすべて、つまり、MOAMETALのいう”チームBABYMETAL“がこの思いを共有したことが、3rdアルバムリリースを控えて、過酷な全米横断ツアーへ自信を持って進むための精神的な支えになったとぼくは思う。
(つづく)