10年のキセキ(70) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月30日は、2013年、Legend “1999” YUIMETAL&MOAMETAL聖誕祭@NHKホールが行われた日DEATH。

2018年2月26日、BABYMETAL World Tour 2018の日程が発表された。
5月8日ミズーリ州カンザスシティ    から5月20日のオハイオ州コロンバスのRock on the Rangeまでのアメリカ中西部ラウンド、6月1日のドイツ・ニュルブルグリンクのRock am Ring 2018からオーストリア・インスブルック、オランダ・ユトレヒトの単独公演を経て6月9日のイギリス・ドニントンパークのDownload Festival UK 2018までのヨーロッパラウンド。この日程は、従来のワールドツアーとほぼ同規模で、小神様の急逝という不幸を乗り越えたBABYMETALが、YUIMETALの復帰とともに、前を向いてさらに進撃を続けるのだという期待が膨らんだ。
4月1日のFOX DAYに、『Legend-S- Baptism XX』のジャパンプレミア上映会が開催されることも発表された。
そして、待ちに待った4月1日当日、公式HPにて、「METAL RESISTANCE EPISODE VII -THE REVELATION-」と題したトレイラー映像がアップされた。
「REVELATION」とは啓示という意味である。
壮大なオーケストラのメロディが流れる。これは今聴けば「Shine」そのものである。
そして次のような文章が画面に現れる。
「BABYMETALとは 時空を超え 肉体を超え 思考を超え メタルの銀河を旅する英雄のメタルの魂の物語である。英雄(the CHOSEN ONE)の中に宿るメタルの魂は復活 再生を繰り返し 自分を信じる力 隣人を信じる力 光の力 闇の力 それら全ての力が暗黒の闇の中に無限の光をもたらし対立を超えてひとつになる時 英雄は超越者となるだろう。超越者は宇宙の そして天空の歌となって我々のもとへと届くのだ。それこそが時空を超越した神話“METAL RESISTANCE”なのだ。」
この文章の「英雄」の英訳には「the CHOSEN ONE」という単語が当てられていた。文字通り訳せば、「選ばれた者」である。そして「超越者」とは神のことだ。これは銀河の彼方へ召された藤岡神のことを指しているとも、Legend-S-で女神となったSU-METALを指しているとも思われた。
だが、ここで画面は、Darksideのロゴに描かれた皆既日食の映像に変わる。タイトルは「METAL RESISTANCE Episode Ⅶ」。そして、低い男声による英語のナレーションが響く。
「光と闇 それは表裏一体でありお互いに欠けることのできないバランス。“METAL RESISTANCE”においても例外ではなかった。まるで正典(Canon)と外典(Apocrypha)のように。我々が見てきた“光” すなわち3つのメタルの魂の物語はある一面に過ぎず、もう一方では知られざる“闇” 7つのメタルの魂の物語・The CHOSEN SEVENの物語が存在したのだ。新たな時代の幕開けが今始まる」
映像の中で、フード付きの赤いローブをまとった人物は、最初3人、次に7人になり、最後には10人がズラリと並んだ。


「善行と悪行」「光と闇」の対立は、広島Legend-S-の最後の「紙芝居」でも語られていた。
新しい女神となったSU-METALが乗り越えるべき試練として、闇=Darksideが強調されてはいるが、2018年のBABYMETALは、復帰するYUIMETALを含めた従来の3人に、7人の選ばれし者=サポートメンバーが加わり、よりパワーアップした10人体制になるのだと理解された。
しかし、時系列を追ってみれば、このトレイラーがアップされた時点で5月から始まる2018年ワールドツアーでのYUIMETAL不参加は確定していたと思われる。
5月8日のカンサスシティでは、欠場したYUIMETALに代わって、SU-より一回り大きい二人のサポートダンサーが加わり、「メタルダンスユニット」としてショーアップされていた。
これまで三人でフォーメーションを取っていたダンスパートは、四人になればすべて変更しなければならない。
Darkside物語に合わせたコスチュームや小道具、Darkside仕様の「紙芝居」や曲間のインターリュード、グッズの発注、照明・演出、サポートダンサーの労働ビザの手配まで考えれば、この発表日以降にYUIMETALの欠場が決まり、慌てて始めたのでは到底間に合わない。
遅くともワールドツアーの日程が公表された2月26日からFOXDAYまでの間に、早ければ年明け早々にYUIMETALの2018年ワールドツアー不参加が確定し、Darksideへの切り替えがスタートしたに違いない。
そんな裏舞台をまったく知らないぼくらBABYMETALファンは、大きく新展開しそうなMETAL RESISTANCE第7章と、YUIMETAL復帰への希望に胸を膨らませた。

2018年4月23日、藤岡幹大追悼ライブMy Little God@川崎CLUB CITTA’が行われた。
厳密に言えば、このイベントはBABYMETALとは関係ない。
神バンドのメンバーは、コープスペイントを施され、キツネ様に召喚された「神のごときテクニックを持つメタル楽団」であって、生身の日本人サポートミュージシャンではない。
だが、もちろんBABYMETALファンなら全員その正体を知っており、会場に集まったのは、ほとんどが黒いベビメタTシャツを着たメイトだった。参加者は皆、このイベントが一般参列できなかった藤岡幹大氏のお葬式に代わる、小神様のフュネラル・セレモニーなのだとわかっており、BABYMETALを支えてくれた小神様=藤岡幹大氏に感謝とお別れを告げるために来たのだった。

13:50に現場へついてみると、すでに会場横の路地には数百人の列ができていた。
14:00物販開始。羽の生えた藤岡氏が月にまたがってギターを弾いているメモリアルTシャツは、開始50分ほどでSOLDOUTした。


17:40入場。ぼくは比較的早い番号だったので、最前列上手寄りの5列目あたりに行けた。
17:55。BGMに「ハイウェイスター」がかかる。そのあとキングクリムゾン、ジェフベックなどがかかり、次第にテクニカルな楽曲になっていく。藤岡氏が淡路島のギター少年だった頃から影響を受けたアーティストを選んだのだろう。
18:30。暗転し、幕が開いた。
最初の出演者は、BABYMETALのライブでマニピュレーターを担当し、曲間のインターリュードも手掛ける第五の神バンドメンバー宇佐美秀文氏率いるUSB。
メンバー紹介のあと、宇佐美氏は観客を「第4のメンバー」と呼び、「みんなの大好きな名前を呼ぼう」と言って、「ミキオ!」「フジオカ!」と叫ばせ、サビのメロディ「♪ララララー…」を歌わせる。それをサンプリングして、最後の曲で「♪Woo Woo Woo」「♪パンパンパパン」というリズムに乗せて流した。ぼくらの小神様への感謝と鎮魂の思いが、宇佐美氏のマニピュレーションによってひとつの楽曲へと昇華し、USBの音源として永遠に残ることになった。
2番目の出演者は、山本容子率いるアコースティックユニット、レインブック。
レインブックは、オリジナル曲だけでなく、日本の童謡や、障害者支援、葬祭で使われるハートウォーミングな楽曲を演奏するユニットである。藤岡幹大は、サポートギタリストとしてレインブックの『童謡の風景』シリーズのレコーディングにアコースティックギターで参加していた。
山本氏は、実家の生業から藤岡氏を「フレッシュ」と呼んでいたこと、レコーディングでは童謡のメロディにジャズ的なコードを当てて「ちゃうなー」と言いながらアンサンブルを創っていったエピソードを披露した。
何曲か披露された中で、「いのちの歌」(作詞:竹内まりや 作曲:村松崇継)が心に沁みた。
―一部引用―
いつかは誰でもこの星にさよならをする時がくるけれど
命は継がれていく
生まれてきたこと
育ててもらえたこと
出会ったこと 笑ったこと
そのすべてが ありがとう
この命に ありがとう
―引用終わり―
山本容子がこの曲が歌い上げたとき、ぎゅうぎゅう詰めの会場からはすすり泣きが漏れた。
3番手は、藤岡幹大の同僚だったMIの講師やスタッフで構成されたMI Squad Goalsという大編成のバンドだった。率いるのは地獄カルテットのNOV(Vo)。「なだそうそう」(夏川りみ)「A Day in the Life」(ビートルズ)「Little Wing」(ジミ・ヘンドリクス)といった曲のカバーで、演奏はアマチュアクラスだが、同僚を送る情熱を感じた。
4番手で登場したのは、大村孝佳(G)、GO(D)、小川洋行(B)、TOKI(Vo)で構成されたMI Cannon。ボーカルのTOKIはC4のメンバー、小川洋行は藤岡幹大のTRICK BOXのメンバーであり、前2バンドとは打って変わって、大神様の超絶技巧全開のメタルチューンを熱演。それも小神様から譲り受けたESPのSnapper藤岡シグネチャーモデルを弾いていた。
TOKI氏は、「生きている者が藤岡幹大を送るためではなく、彼の立場に立って、できなかったこと、つまり幼い娘さんたちの成長を、仲間たちやファンがサポートするために、このプロジェクトを継続していきたい」とおっしゃった。
5番手は、前田遊野(D)、BOH(B)、桑原あい(P)、西脇辰弥(K、ハーモニカ)のレギュラーメンバーに加え、ISAO神(G)、そして藤岡幹大の弟子だった岡聡志(G)を加えた仮バンドだった。
演奏されたのは、『仮音源』と『TRICK DISC』から、すべて藤岡氏が作曲したインストナンバー。
1.    Jamrika
2.    忍者Groove
3.    Harmony X
4.    Chuku
5.    Snow Flakes
変拍子、分数コード、スケールアウトしたフレージング、ピッキングハーモニクス、アーミングといった技巧を駆使して、エレクトリックギターの表現を極限まで追求した藤岡幹大の音楽を、8弦ギターの使い手ISAO神と、愛弟子の岡聡志が再現し、前田遊野、BOHがリズムを支え、桑原あいが力強いタッチでラテンフレーバーを加える。見事な演奏だった。
最後の曲は『仮音源』の最終曲で、3拍子の親しみやすいメロディ。冬空に雪が舞っている。寒い季節なのに雪を見ると、なぜか心が温まってくる。家へ帰って家族と笑い合いたくなる。そんな情景が浮かんでくる。
超絶技巧のギターの鬼才なのに、藤岡幹大は子煩悩なお父さんでもあり、日本の童謡を何十曲もギターアレンジした。ヘビースモーカーなのに、澄んだ星空を愛する人だった。
その優しさが、この曲に溢れていた。
21:35、満を持して大トリが登場した。
久世敦史(Vo)、青山秀樹(D)、Leda(G)、Shoyo(B)、大村孝佳(G)の布陣による大村バンドである。
青山神のシンバル4つ打ちから、ハイスピードのメタルチューンに突入する。久世敦史のハイトーンシャウト、青山神のタイトかつパワフルなブラストビート、大村神、Leda神の超絶ギターに会場のボルテージは一気にヒートアップする。
セットリストは以下の通り。
1.Pleasant Surprise
2.Holy Tomorrow
3.Shadows Of Eternity
4.Tell Me Why
5.Every Time
6.Distant Thunder
7.Never Surrender
素顔の大村神とLeda神は、ステージを動き回り、客席を煽る。ベースのShoyoは、上手PAに足をかけて演奏する。みんな驚くほど若く、美しい。


2.「Holy Tomorrow」や4.「Tell Me Why」のサビで、久世敦史が客席にシンガロングを促すと、会場は大合唱となった。
あっという間に7曲が終わり、バンドのメンバーが去っていく中、大村孝佳は上手に残り、ライブ全体の締めくくりとして、もういちど各バンドの代表から一言を求めた。
USBの須藤満、レインブックの山本容子、MI Squad Goalsのベース、MI CannonのTOKI、そして仮バンドのBOHの各氏がそれぞれメッセージを発した。
BOHは、「二人のお嬢ちゃんが成長して、将来お父さんは素晴らしい仲間とファンを持っていたと思ってくれることが一番うれしいこと」と述べ、「これからも藤岡幹大をよろしくお願いします」と結んだ。
それが終わると、ドラムセットには青山秀樹が、下手にはBOHが、上手には大村孝佳が残った。
この数年間、藤岡幹大と海外ツアーで苦楽を共にしてきた三人である。
最後の曲は、2016年の楽器フェアで、藤岡、大村両氏がデモンストレーションで弾いていたオリジナル曲「Hill of Wisteria」だった。
メインメロディは藤岡神が弾いたのをサンプリングしたもの。それにハモるフレーズを弾きながら、大村神は大粒の涙を流した。青山神はとんでもない速さでダブルバスドラを叩き続け、体全体でリズムを刻む。BOH神は大きなアクションで、うねるような魂のベースラインを弾く。ボーカルはない。SU-のボーカルがなくても、YUI、MOAがいなくても、これは神バンドだった。ソロを応酬するシークエンスでは、「CMIYC」や「Mischief of Metal Gods」の神バンドソロを彷彿とさせる瞬間が幾度もあった。
藤岡幹大はもういない。それはぼくらが受け入れねばならない事実だ。だが、小神様は生きている。神バンドのメンバーはもとより、出演したすべてのバンド仲間とぼくらすべてのファンの心の中に。
死ぬことによって永遠に生きる。それはBABYMETALのテーマでもあった。
ライブ終了は22:00を回っていた。開場時間から5時間立ちっぱなしだった。
GW明けの5月からMetal Resistance第7章が始まろうとしていた。
(つづく)