10年のキセキ(番外編その3) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月29日は、2015年、雑誌「AERA」の表紙にBABYMETALが使われ、2019年、BABYMETAL AWAKENS The Sun Also Rises@横浜アリーナ初日が行われた日DEATH。

昨夜Online Liveとして公開された「Legend-S-Baptism XX」はいかがだったでしょうか。

意識して調整したわけではないのに、ちょうど連載のタイムラインとシンクロしたので、BABYMETALの歴史の中で、2017年12月のLegend-S洗礼の儀が行われた「意義」や、演奏された楽曲の「意味」を解説できていたら幸いである。
公式サイトに発表されているBABYMETALの予定は、来年1月10日のKnotfesだけ。10月にはMETAL RESISTANCE Episode Xが予定されているが、現在まで詳細は発表されていない。
「10年のキセキ」と題した本連載は、BABYMETALの10年の歩みを、現在の視点でもう一度振り返り、その軌跡=奇跡を証しする目的でスタートした。
その意味で、2017年12月2日-3日のLegend-S-洗礼の儀は大きなターニングポイントとなった。
Legend-S-のフィニッシュ曲「THE ONE」の前に流れた「新たな伝説がここから始まる」という紙芝居のBGMをよく聴くと、『METAL GALAXY』の最後から二番目に収録されている「Shine」であることがわかる。


相次ぐテロ事件、北朝鮮によるミサイル発射が相次いだ2017年、世界が絶望に沈むとき、Legend-S-で新たなメシアとなったSU-METALは暗闇に光を放ち、世界をひとつ―THE ONE―にするはずだった。
勝手な推測だが、本来、2018年には3rdアルバムのリリースが予定されていたのではないか。
2018年のワールドツアーでは、Legend-S-のオープニングに使われた「In The Name Of」のほか、「Distortion」、「Kagerou」(仮タイトルTattoo)、「Elevator Girl」がドロップされたし、『METAL GALAXY』 リリース時のインタビューでKOBAMETALは「Night Night Burn」は「メギツネ」と同じ時期に生まれたと話している。
つまり、2018年ワールドツアーは、3rdアルバムのリリースへ向けて、新曲を小出しにしながら期待感を高めていくはずだったとぼくは見ている。
だがその矢先の2017年12月30日、欧米進出以来、卓越した演奏技術でBest Live BandとしてのBABYMETALを支えていた神バンドのギタリスト“小神様”こと藤岡幹大氏が、自宅で天体観測中に屋根から滑落する大事故が起こった。
年が明けて、入院療養中だった2018年1月5日に容態が急変して亡くなり、1月8日に本人名義のツイッターでそれが発表された。


さらに、Legend-S-を欠場したYUIMETALは、2018年のワールドツアーも引き続き欠場し、幕張メッセでスタートしたJapan ツアー直前の10月19日に脱退が発表された。
ぼくらメイトは、藤岡神の急逝に慟哭しつつも、5月に始まるワールドツアーでは、当然YUIがあの笑顔で復帰すると思っていたし、YUI欠場が判明して、Darkside仕様のChosen Seven体制を応援しながらも、10月に脱退が正式発表されるまでは、いつか必ずYUIMETALが復帰すると信じていた。
つまり、Legend-S-以降、ぼくらBABYMETALファンは、2017年12月、2018年1月、5月、10月と数段階に渡ってショックを受け続けたのである。
Legend-S-以降、三人がベビメタ体操で自己紹介する「BABYMETAL DEATH」は演奏されなくなった。
BBMの「おねだり大作戦」「4の歌」はもちろん、重音部デビュー曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」も、インディーズデビュー曲「ヘドバンギャー!!」も、メジャーデビュー曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」も演奏されなかった。
メタルヘッズを惹きつけ、Kawaiiと超絶技巧のギャップを生み出した神バンドソロもなくなった。
だが、立ちはだかる不幸の前に一旦封印された「BABYMETALらしさ」はやがて少しずつ復活していった。
2018年のDarksideワールドツアーでも、BBM楽曲の「GJ!」はセットリストに入っており、MOA+二人のサポートダンサーというフォーメーションで披露されていた。
2018年12月のシンガポール&オーストラリアGood Thingsフェスでは、SU-+MOA+サポートダンサーというトライアングルが復活し、2019年6月の横アリでは、SU-+MOA+アベンジャーの三人体制復活がハッキリした。(6月30日修正)
そして7月にPMなごやで行われたMOAMETALの20歳の聖誕祭Legend-M-では、「ヘドバンギャー!!」でMOAが「♪ハタチの夜を忘れはしない」と歌った。
2019年ワールドツアーでは、Galactic Empire主体の銀河神バンドが、「Kagerou」の前にアドリブソロを行うようになった。
そして、2020年1月のLegend -METAL GALAXY-@幕張メッセ二日目のフィニッシュでは、神バンド+銀河神バンドがバックを務め、MOA、鞘師里保、藤平華乃、岡崎百々子の4人がステージを疾走する「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が披露された。
Legend-S-二日目から、実に2年と54日ぶりのことだった。

ギタリスト藤岡幹大のラストライブは、Legend-S-ではない。
それから2週間後の2017年12月26日に行われたガールズバンドGacharic Spinの「ハピバ大村孝佳」のサポートが小神様のラストステージとなった。
当ブログでは、BABYMETALのほか、いわゆる「アイドル」や、PassCode、BiSHなどのラウド系アイドルグループについてはたびたび論じてきたが、女性メンバーだけで構成されたバンド形式のガールズバンドにはあまり触れてこなかった。
Gacharic Spinは、2009年に、グラビアアイドル出身のFチョッパー古賀(B)と、高校の同級生だったはな(D、Vo→G、Vo)らによって結成されたガールズバンドである。
初代ギタリストが数カ月で脱退したため、2009年12月にTOMO-ZO(G)が加わり、2012年3月に初代ボーカリストの脱退にともなってオレオレオナ(Key、Vo)が加入して、現在に至るバンドの基礎が確立された。
現在のメンバーは、上記4人とyuri(D)、アンジェリーナ1/3(マイクパフォーマー)の6名。


2010年3月にインディーズシングル「Lock On!!」を発表して以降、アイドル並みのハイペースでシングルをリリースしてきたが、メジャーデビューは2014年10月リリースのベストアルバム『ガチャっとBEST<2010 - 2014>』(オリコン20位)となった。
最新アルバムは2019年3月リリースの『ガチャっ10BEST』。
メンバーの演奏力と音楽的クリエイティビティは抜群で、オクターブ奏法を基本とした古賀のスラップベースは、裏・裏と入っていくリズムをダイナミックに刻み、はなのドラムはパワフルかつ手数が多く、叩きながらリードボーカルもとってしまう異能ぶり。ギターのTOMO-ZOはシュレッド奏法もこなす万能タイプ。
古賀・はな・TOMO-ZOの三人は、楽器初心者向けのレッスンを収録したバンド教則DVDも出している。
2011年11月にリリースされたPSP専用ソフト「初音ミク -Project DIVA- extend」では、この三人がモーションアクターとして参加。AKB48がバンド形態で演奏する「GIVE ME FIVE!」(2012年2月リリース)では、この三人が演奏指導を担当した。
Gacharic Spinの楽曲はすべてメンバーによるオリジナルであり、大雑把なジャンルでいえば、古賀のチョッパーベースをコアとしたダンサブルなミクスチャー/オルタナティブロックである。
演奏を担当する4人に、ダンスパフォーマー2人(1号まい、2号ありさ、3号ねんね)が加わった時期が長く、ライブでは、はながドラムを叩きつつリードボーカルをとり、オレオレオナがキーボードブースから出てレディガガ風のコスチュームで踊りながら歌う横で、ダンスパフォーマー2人が踊り、古賀、TOMO-ZOがソロをとるというカーニバルのような楽しさが身上だった。
2019年以降は、小柄だが信じられないほどパワフルなドラマーyuriの加入とともに、はながギター&ボーカルとなり、モデルのような容姿の女子高生アンジェリーナ1/3がフロントに立ち、曲によってはリードボーカルを担当することで、よりバンドらしい佇まいになった。
バンドメンバーは曲作りに追われつつ、休む間もなくバラエティに富んだテーマのライブハウス・ツアーを精力的に行ってきた。これで生きていく!という気骨あふれるライブバンドなのだ。
海外でのライブも、2011年3月のアメリカ・ヒューストンで開催されたAnime Matsuri 2011に招待されたのを皮切りに、2012年5月~6月フランス・ニームのジャパンフェスティバルを中心としたフランスツアー、2014年10月「WINNER」中国ツアー、2015年8月サンフランシスコJ-POP Summit 2015、2017年1月台日爆音BORDERLESS@台中TADA、2017年3月アメリカ・ヒューストンAnime Matsuri 2017、2017年5月シカゴ Anime Central、2017年9月中国 CONCRETE & GRASS MUSIC FESTIVAL@上海ラグビーフットボールクラブなどフェス招待中心ではあるが、活発に行ってきた。
2012年のフランスツアーをきっかけに、古賀・はな・TOMO-ZO・オレオレオナの4人に、別のガールズバンドLIGHT BRINGERのボーカリストFukiが加わったサイドプロジェクトDOLL$BOXXが結成されており、2017年11月には、DOLL$BOXのミニアルバム『high $pec』がAmazon UKの「World Music」部門で1位を獲得。アメリカSliptrick Records、イギリスJPU Recordsの各レーベルからCDがリリースされた。
こうして見てくると、同時期にデビューした日本人の女性アーティストで、テレビよりライブ活動が中心で、海外で高く評価されているという共通項はありつつ、Gacharic Spinは、楽曲も衣装もライブのブッキングもメンバー自身と少数のスタッフによって行っており、音楽性や手作り感という意味でBABYMETALとは対極に位置することがわかる。


大村孝佳バンドでは、誕生日ライブを行っており、その際、同じ誕生日のゲストを呼ぶのが恒例になっていた。2015年の誕生日ライブで、当時Gacharic Spinに在籍していたダンスパフォーマー3号ねんねの誕生日が同じだということが判明。大村からのオファーによって、翌2016年12月26日、ツーマンライブ「Gacharic Spin×大村孝佳 ねんねバースデーライブ!!」が代官山UNITにて開催された。
この時の大村バンドのメンバーは、前田遊野(D)、Shoyo(B)、藤岡幹大(ゲストG)、久世敦史(V)、大村孝佳(G)というラインナップ。うち三人が神バンドメンバーである。
3号ねんねは、2017年7月にGacharic Spinを「卒業」してしまうが、前年に引き続き12月26日にGacharic Spin主催で「ハピバ! Ohmura w/大村孝佳」がTSUTAYA O-WESTにて開催された。
この時の大村バンドのメンバーは、青山秀樹(D)、BOH(B)、藤岡幹大(G)、TOKI(V)、大村孝佳(G)というラインナップ。C4のボーカルTOKIを除けばこれはもう神バンドである。


そして、これが日本の生んだギターの神、藤岡幹大のラストステージとなった。
最後のセッション曲では、青山神がドラムを叩き、ステージ前面のお立ち台でTOMO-ZO→藤岡→大村の順でソロを披露したあとトリプルギターでハーモニーを奏で、Fチョッパー古賀とBOH神が下手に並んで楽しそうにベースを弾き、TOKIとはながセンターでボーカルを取る光景が展開された。
https://www.youtube.com/watch?v=wgTh6wZjtGE
その4日後に悲劇が起こる予感など、カケラもなかった。
2016年と2017年のハピバ大村ライブに出演したバンドのメンバーは、2018年4月23日の藤岡幹大追悼ライブMy Little God@川崎CLUB CITTA’のメンバーと重なる。
なお、Gacharic Spin主催のハピバ! Ohmura w/大村孝佳は、翌年2018年も、Gacharic Spinのデビュー10周年&大村孝佳プロ15周年記念となった2019年も開催されている。
これだけ相性がいいのだから、いつか、BABYMETALとGacharic Spinの対バンライブが観たいと思うのは、ぼくだけではないはずだ。そこにはきっと本当の神となった藤岡幹大がメタル銀河の彼方から降臨するだろう。