10年のキセキ(65) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月23日は、2012年、Pop’n アイドル02@Zepp Tokyoに出演し、2013年、アミューズ株主総会ライブ@両国国技館に出演し、Diver City Tokyoフリーライブ@プラザフェスティバル広場に出演し、2014年には、Apocrypha-Ⅰ@TSUTAYA O-EASTが行われた日DEATH。

サマーソニックが終わってもBABYMETALの2017年の夏は終わらなかった。
8月29日-30日、銀キツネ祭り&白キツネ祭り@Zepp Osaka Baysideが行われた。


Zepp Osaka Baysideは、全国のZeppの中で最大のスタンディング2,801名の収容定員を持ち、JRゆめ咲線「桜島」駅から徒歩5分の立地で、すぐそばにユニバーサルスタジオジャパンがある。
五大キツネ祭りで唯一白キツネ祭りだけ当選したぼくは、8月29日から大阪入りし、30日は朝7時過ぎから会場の物販列に並んだ。METALLICAソウル、Guns N‘ Roses大阪、サマソニ2017幕張でグッズが買えなかった二の舞をしたくなかったのである。
すでに会場前には20名くらいのメイトさんが並んでいた。午前9時を過ぎると、強烈な夏の太陽が容赦なく照りつけ、遮るものが何もないZepp Osaka Bayside前は灼熱地獄と化した。直射日光に当たるとスマホやタブレットが熱で動かなくなるので、カバンの中に入れておくのだが、それでも取り出してみるとヒートサインが出ていた。
午前11時頃には物販列はエントランスの角を曲がって駐車場の金網に沿ってUSJ方面まで長く伸びていた。
隣のホテルがご親切にもトイレを使わせてくれたのだが、水分を摂ってもすぐ汗になってしまうためか、ほとんど尿意を感じなかった。12時30分、物販の準備が整い、列が動く。ややフライング気味に物販が始まり、お目当ての白キツネマスクほかグッズを購入できた。
物販待機中に新しく知り合ったメイトさんや、ハリウッド~Richard氏オフ会などで知り合い、再会したメイトさんたち10人ほどで、UFJ前のハードロックカフェで食事をした。店内ではずっとBABYMETALのBlu-rayが上映されており、店内で白塗りを始めるグループもいて、USJに遊びに来た一般客が白塗りたちに取り囲まれる状況が現出していた。ゾンビナイトと勘違いされたかもしれない。ぼくたちは店を出て、大阪出身のメイトさんのご厚意で、車の中で白塗りを行った。白塗りを終え、ふと見ると、Zepp Osaka Baysideの回りには、いたるところで座り込んでメイクしている方もいて、2,800人もの黒シャツ&白塗り軍団が入場待機列を作る光景はやはり非日常だった。
ぼくは幸運にも早い番号で、荷物はみな車に置かせてもらっていたので、身体検査を終えるとダッシュで入場し、下手お立ち台の前3列目に陣取ることができた。これが今のところBABYMETALライブの最接近記録である。
五大キツネ祭りのセットリストは、色によって微妙に異なる。
「BABYMETAL DEATH」に始まるのは全色共通だが、白キツネ祭りは、2曲目に「META!メタ太郎」、3曲目「Catch Me If You Can」、4曲目に「Amore-蒼星-」、5曲目「GJ!」、6曲目「シンコペーション」が入り、そのあとは「メギツネ」「ギミチョコ!!」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」「Road of Resistance」と激しい曲で最後まで突っ走るものだった。

「紙芝居」が始まるが、いつもの「BMD」前のグレゴリアンチャントではなく、「IDZ」のピアノアルペジオだった。そして、SU-によるナレーションの内容も、英語で「The spirits of Heavy Metal save weak」、「Help each other, cooperate each other, let’s make the world as ONE」「One for All, All for One, We are THE ONE」「No more Ignore, Forever」(メタル魂は弱者を救う。助け合い協力し合って世界を一つにしよう。一人はみんなのために、みんなは一人のために。ぼくらはTHE ONE。無関心はもうやめよう。)といったメッセージだった。
前日、大阪銀キツネ祭りが行われた8月29日、北朝鮮は、日本列島を飛び越え、襟裳岬東方の太平洋上に落下する弾道ミサイルを発射した。
6月20日にアップした本連載(63)は、有難くも当ブログの1日当たりの記録を更新する24,061アクセスをいただいたのだが、そこで述べたように、21世紀の世界は決して平和ではなかった。
インターネットの普及によってグローバリズムが加速し、人の行き来やサプライチェーンの国際化は進んだ。BABYMETALの海外進出もその恩恵のひとつだが、一方で、その価値観をよしとしないイスラム過激派や排外主義者によるテロが頻発し、独裁国家は国内の反対勢力を弾圧し、現状変更を求めて武力で他国を威圧する。
もちろん、いくら海外でも人気があるとはいえ、日本の10代の少女たちのメッセージが政治的な力を持つはずがない。だが、音楽活動は世界が平和だからこそ成り立つ。アリアナ・グランデがテロに負けずに追悼ライブを行ったように、暴力や圧政に対してNOというメッセージを出すのは、アーティストの正義だった。
日常性をかなぐり捨て、笑いを取ることに特化したメイトもいた白塗りの2,800人がこのメッセージを聞くというのは、なんともミスマッチだが、それこそBABYMETALらしい光景だともいえた。


そんなことを考えているうち、青山神のシンバル4つ打ちから「BABYMETAL DEATH」が始まった。白い紗幕がバックライトに照らされて、影絵のような三人の姿が映る。
紗幕が落ちて三人と神バンドが現れると、大歓声が沸く。同時に左からものすごい圧縮が来て、下手お立ち台前からセンター付近まで押された。だが前へは進めない。ポジションはセンターの3列目。一番圧縮がキツイところだ。周りの観客と密着した肉布団状態で腕を上げることさえままならない。
ベビメタ体操1番が終わり、下手お立ち台にYUIが立つ。警備員さえいなければ触れるくらい近いが、いかんせん目の前に林立する腕でステージレベルは見えない。
「BABY!METAL!DEATH!」で曲が終わった瞬間、大歓声。
「♪キーン」というハウリング音の中、天井を見上げると観客席から立ち上る蒸気で靄がかかっていた。
間髪を入れず「♪ドンドン、ドドン!」というドラム音。観客はすかさず「META!」と叫ぶ。2曲目「META!メタ太郎」である。
東京ドーム以降、この曲はシンガロング待ちの曲になった。観客は一番のサビから「♪ウォーウォーウォーウォウォ、ウォーウォーウォー」と大合唱し、「ぶっとばせーメタ太郎!」と合いの手も入れる。シンガロングは東京ドームと違って、音源通り、転調して三番に入るまでの短いものだった。
「コツコツコツ…」という靴音のSEが響き、青山神の8ビートが始まる。神バンドソロ。「青山さーん、誕生日おめでとう!」という声が飛ぶ。青山神は前日8月29日生まれである。
ステージ前面に出てきた藤岡神は右手でアームをつかんだまま左手の流れるような動きに合わせてスウィープピッキングを展開。続く大村神は速弾きの後ご当地に合わせて「六甲おろし」を織り込んだ。BOH神はサマソニに比べてクールに構えていたが、やはり超絶チョッパー&タッピングを見せてくれた。青山神のドラミングは気合がほとばしるタイトで手数の多いソロだった。
大歓声の中、「ハイ!ハイ!」と三人が入ってくると、後頭部にガーン!という物理的衝撃を受けた。最前列付近の宿命、クラウドサーフである。モッシュ、ダイブ禁止がアナウンスされていたが、結局このライブでは終演までに10人以上のサーファーが送られてきた。海外のフェスよりは少ないが、腕も上げられないのはキツイ。
曲が終わり暗転。壮大なオーケストラのインターリュードに続いて「♪愛の言葉~」とSU-が歌い出す。
「Amore-蒼星-」である。
2016年のアメリカ東海岸ツアーでは、この曲は小箱にはそぐわない印象があったが、目の前で見たそれは、心動かされずにはいられないものだった。藤岡神&大村神のツインギターは、あれほどのブラストビートなのにピッキングやタッピングやハーモニクスの入れ方に1音の狂いもない。そのバンドの大音量を本当に切り裂いて聴こえるSU-の生歌は鳥肌もので、マントなしでもスポットライトを一身に浴びる気迫や目配りは、「これぞスター!」という紫色のオーラがハッキリ見えた。
またも暗転後、「♪ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドンドンドンドンドン」という三々七拍子のバスドラの音。「GJ!」である。
YUIとMOAが声を合わせて「♪みみみみ緑の電車のサークルモッシュはデスボのベルで」と歌うと、観客は、「Wall of Death!」と合いの手を正確に入れる。SU-ソロに聴き惚れるのも、BBMに合の手を入れるのもBABYMETALの楽しみ方である。しかし、白塗り2,800人との掛け合いは、YUI・MOAにどう見えているのだろう。
三々七拍子の余韻を残したまま、ステージが青く染まる。
闇を切り裂くような不穏なギターのメロディが繰り返され、「♪アー」というSEが高まると、生演奏でギターのリフが始まった。『METAL RESISTANCE』日本盤のみに収録された「シンコペーション」である。
2016年のApocrypha White Massと2017年の白キツネ祭りでは必ずセトリに入っていたが、ぼくが生で観るのは東京ドーム以来である。ちなみに海外では2019年7月のロンドン単独公演@O2 Academy Brixtonまで生演奏されなかった。
BABYMETALとしては珍しくマイナーペンタトニックで構成された楽曲であり、ノリ方としては「♪好き、キライ、好き、キライ、好き!」の合いの手と「♪この世界から…」のところの手拍子なのだが、密集状態のまま、次々と後方からサーファーが送られてくるので、合いの手だけを叫んでいたら酸欠寸前になった。曲終わりに顔面蒼白となった最前列の方が「出ます」といってピットをかき分け、後ろに下がっていった。


「♪キーツーネー、キーツーネー、わたしはメーギツネー」のメロディが流れる。
目の前で見る狛キツネポーズのYUI・MOA。五大キツネ祭りの締めくくり、この夏最後の「メギツネ」である。
もっとも9月には巨大キツネ祭り@SSAが迫っていたのだが。

三人が「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と平行移動すると、最前列付近も密着状態のまま上手、下手へと移動する。朝の満員電車と同じだ。
間奏部のSU-の煽りはまた英語に戻っている。
SU-「White Fox!We are so happy to be here!」観客「ウォー!」
SU-「On the count of Three, let’s jump up with Fox God. Are you ready?」観客「イェー!」
神バンド「♪ピロピロピロピロ…」
SU-「Are—You—Ready--!?」観客「イェー!」
SU-「1!2!1,2,3 Jump!」
ジャンプしようにも手拍子しようにも密着状態で右腕一本しか上げられないので、背伸びしながら叫ぶのが精いっぱいだった。
曲が終わって、汚れた池の鯉のように口をパクパクさせて背伸びして酸素を求めていると、照明が赤から青へ変り「ギミチョコ!!」が始まった。
間近に見るYUI・MOAの頭指差しダンスはパワフル&カワイさ爆発。
ギターソロの間に下手お立ち台に来た菊地プロとアイコンタクト。Carolina Rebellionでキツネ面をかぶっていた時以来だった。
曲が終わって暗転すると、「Why do people hurt each other?」という英語の「紙芝居」が始まった。オープニングの「紙芝居」のメッセージとリンクして、BABYMETALが「No More」と言っている「イジメ」が「圧政や戦争や暴力」に思えてくる。「♪ルルルー、ルルルー」に合わせて客席は手拍子と大合唱。右手一本のぼくは手拍子できないが。
SU-の「♪アー」で狭いステージをYUI、MOAが駆け抜ける。背中方面から更なる圧縮の波が押し寄せたから、ピット後方ではついにサークルが出現したらしい。息ができなくなるが、「♪イエスタデー!バイバイ!」と合いの手を懸命に入れる。肉布団に挟まれているので、ダメジャンプはできない。だが「♪ダメ!ダメ!」と叫び続けた。
ダブルストップで曲が終わり、三人が舞台をはけると、鬨の声を上げる戦国SEが流れる。
最前列の柵前にいた方がここで限界を訴え、後ろに下がる。モッタイナイが仕方ない。
神バンドの奏でるプレリュードに乗って、三人がBABYMETALロゴ旗を担いで下手から再登場。三人の目には燃えるような炎が宿っている。
SU-が客席をかき分けるポーズをする。上手側ブロックでは、「Wall of Death!」の声が巻き起こり、WODができたようで、今度は右後方からぼくのいるあたりまで圧縮がかかる。
「♪1!2!3!4!」の掛け声で曲が始まると、周りはすぐに連続ジャンプしながら「♪東の空に」「DEATH!」の合いの手を叫ぶ。体力はとっくに限界を迎えているが、ぼくも背伸びで胡麻化しながらついていく。
「♪ウォーウォーウォウォー! ウォーウォーウォウォー!」のシンガロングは、サマソニ同様、短いがバンドがストップするアカペラバージョンだった。
そして、シンガロングの最後に、SU-がマイクを離して「あ・り・が・と・う」と言ったのを、ぼくは確かに聞いた。それは、「ついに!ついに、ここまで来ました!」と叫んだサマソニ2017に匹敵する感動だった。
(つづく)