10年のキセキ(64) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月22日は、2013年、タワレコ渋谷店「“いなりん”とヒット祈願」イベントが行われ、2015年、日テレ「Zip」でBABYMETALが報道され、2017年、KORN US ツアーマウンテンビュー公演@Shoreline Amphitheaterが行われた日DEATH。

サマーソニック2017幕張のセットリストは以下のとおり。
1.    BABYMETAL DEATH
2.    ギミチョコ!!
3.    メギツネ
(神バンドソロ)
4.    Catch Me If You Can 「ついに!ついにここまで来ました!」
5.    Road of Resistance
6.    KARATE
7.    ヘドバンギャー!!
8.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
神バンド:藤岡幹大(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、大村孝佳(G)

マリンスタジアムの大スクリーンにアップになる三人は、レッチリ、Guns N‘ Roses、METALLICA、KOЯNとともに海外の2万人クラスの会場で観客を熱狂させてきた「世界クラス」のオーラをまとっており、その美しさ、気高さにまず圧倒された。
ぼくのようなオジサンがラウド系アイドルグループのライブ現場へ行ったり、動画を見たりすると、生バンドでもカラオケでも、彼女たちのエネルギーの高さはHR/HMバンドに匹敵すると思わされるのだが、BABYMETALには、それに加えて説明しがたい神聖さを感じる。もちろん、2017年8月の時点では、三人ともまだ10代の生身の少女たちであり、BABYMETALが現代音楽市場における「商品」であることもわかっているのだが、あの衣装を身に着けた三人がステージに立つと、数万人を熱狂させる「女神の降臨」という言葉が相応しい存在に見えてしまうのだ。
あの神聖さがどこから来るのか、いまだにわからない。だから、こうして書き続けているのかもしれない。


ベビメタ体操を2回繰り返した後、ギターソロに入る前、三人は身をよじりながら何度もジャンプする。あれはキツネ様の憑依を受け入れ、その眷属としての正体を現すTransformである。
ギターソロの間、三人はステージ狭しと走り回り、目の前の下手お立ち台にはSU-が来てくれる。センターに戻ってもう一度ベビメタ体操をやった後、「♪DEATH!DEATH!…」と繰り返しながら、今度はMOAが下手に来てくれて、ぼくの回りは盛り上がった。
「♪キーン…」というハウリング音でマリンスタジアム全体にキツネ様の結界が引かれた。ここから約50分間、4万人がその結界の中でBABYMETALの世界に浸るのだ。
2曲目は「ギミチョコ!!」。
大物バンドとの前座ツアーではフィニッシュ曲だが、サマーソニック2017では、代表曲を惜しげもなく2曲目に持ってきた。
E単音をベースにしたシンプルで暴力的なリフと「あたたたたーた…ズッキュン」というKawaiさが、世界のどこにもないBABYMETALイズムを醸し出す。ぎゅうぎゅうパンパンのアリーナでは早くもサークルモッシュとクラウドサーフが発生した。
SU-の煽りは、ギターソロの「Summer Sonic!Clap your hands!」だけ。ここではYUIがニコニコ顔で手拍子を打ちながら下手まで来てくれた。
3曲目は「メギツネ」。今回は三人が後ろを向いて息を整える間に「♪キーツーネー、キーツーネー、私はメギツネー、女は女優よ」のSEが流れ、そこから振り向きざま、すぐに曲に入った。
YUIとMOAが狛キツネポーズをとってキツネサインを4万人の観客に突き刺すと、ギターのピッキングハーモニクス音が「♪キュイーン!」と響き、三人が息のそろった空中ダンスで「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と踊りだす。もちろん、4万人の観客も「ソレ!ソレ!」とジャンプする。3曲目にして、マリンスタジアムは大カオス状態となった。
間奏部のSU-の煽りは、「Hey Summer Sonic!What’s Up Guys? I can’t hear you, what’s up⁉ On the count of three, jump up with the Fox God. Are you ready? A—re Y—ou Read—y? 1, 2, 1,2,3 Shout!」というもの。
もちろん、フレーズが途切れるたびに、怒涛のような大歓声が湧きあがる。
この堂々たるクイーンぶり、スケールの大きさは、2014年Sonisphere、2015年Reading & Leads、2016年Download UK & Parisといった大規模海外フェスを経験してきたからこそ出せるものだろう。
ここで、BABYMETALのライブには珍しく、オペレーターのミスにより「戦国SE」が入るというハプニングがあったが、「Road of Resistance」には行かず、かつてYUIが怖がった「コツコツコツ…」という靴音のSEが入り、「♪ギュイーン~」というコードから、青山神が8ビートを刻み始め、神バンドソロになった。
アドリブソロは、下手藤岡神の気合の入りまくったアウトなスイープ、それをキュイーンとウケて速弾きを見せる上手の大村神、もはや踊っているといっていいアクションのBOH神による表情豊かなスラップベースへと引き継がれ、青山神は、ソロ最後に両足でバスドラを連打しながら立ち上がり、観客の大歓声を受けた。
サマソニ2017でBABYMETALの出番の2つ前は、イギリスの2ピースバンドRoyal Bloodだった。彼らはドラムスとベースという2つの楽器だけで、ヘヴィかつ抒情的かつグルーヴィな演奏の妙技を見せてくれた。少人数で大音量が出せるエレクトリック楽器のアドリブ演奏と生歌こそロックの原点である。Royal Bloodはそれを再認識させてくれたのだが、BABYMETALには、その原点がちゃんと備わっているのだ。
そこへ「ハイ!ハイ!ハイ!」と笑顔を振りまきながら、Kawaiiアイドル三人組が入ってくる。このギャップこそ「アイドルとメタルの融合」BABYMETALの真骨頂である。
そして…。
ついさっきまでクイーン然としていたSU-がセンター位置に立ったかと思うと、「Summer Sonic!」と叫んだ後、日本語で「ついに、ついにここまで来ました!ここで、大きなサークルが見たい!」と叫んだ。
前日の大阪ではここでも「Summer Sonic! We’re so happy to come here! I want to see a big circle!」と、海外フェスと同じく英語で煽っていた。しかし、幕張では日本語。しかも、「ついに、ここまで来ました」。
もちろんこれは、オープニングの「紙芝居」にあったように、2012年のフードコートから始まった5年間の歩みを指している。
ぼくはその瞬間、午前中のSonic Stageで、PassCodeの南菜生が「いつか、必ずメインステージに立ちます。それまで応援よろしくお願いします」と叫んだのを思い出した。
前年初めてサマソニに出演したPassCodeのステージは、フードコートの新人アイドル&お笑いの特設ステージだった。
5年前、史上最年少でサマソニに出たBABYMETALも、そこからスタートしてメインステージ=マリンスタジアムまで上り詰めた。もちろんBABYMETALだって現在進行形であるが、いつのまにかラウド系アイドルというジャンルのロールモデルとなっていたのだ。
色んな思いが交錯して、ぼくはもみくちゃになりながらも泣いてしまったが、三人は、SU-「Make bigger circle pit!」、MOA「みんなの本気はそんなもんですかあ~?」、YUI「ちゃーんと見えてるよ~」、SU-「もっともっと~!」と煽り続るので、プラチナエリアでも発生していたサークルの中に走り込んでしまった。大スクリーンは、アリーナレベルにできたいくつもの巨大サークルピットを映し出していた。クイーンSU-のお褒めの言葉は、「いいね!Summer Sonic!」だった。
曲が終わって、すでにヘトヘトであるが、ここで2度目の「戦国SE」がかかり、三人がBABYMETAL旗を担いで登場。5曲目は、いつもならフィニッシュの「Road of Resistance」である。
もちろん、SU-のWODのしぐさで、またもアリーナが割れる。
YUI・MOAの「1!2!3!4!」で曲が始まると、高速サークルピットが再び始まった。


もう、アリーナレベルは修羅場である。ぼくの近くでも、連れの白人男性にホッタラカシにされた中国人と思しきオネーサンがサークルに巻き込まれて転倒し、当たり散らしていた。
シンガロングパートは、バンドがストップするアカペラバージョンになり、マリンスタジアムに響き渡る大合唱となった。
曲が終わってもぜえぜえはあはあが止まらない。
だが、セカンドヘッドライナーであるBABYMETALの残り時間はまだたっぷりある。
照明が青く変わり、ヘヴィ&グルーヴィなリフによる6曲目「KARATE」が始まった。
会場はすでに夕陽が落ち、暗闇となっていた。大スクリーンにアップになる三人の顔は汗だくで、髪が張りついているが、それが戦い続ける情熱と誇りに満ちた美しさを際立たせていた。
間奏部は、ハミング煽りのないMV仕様だったが、「♪ウォオーウォオーウォオー…」のシンガロングからSU-が「Everybody Jump!」と叫ぶと、観客全員がジャンプした。
2017年秋の巨大キツネ祭りで、より明確にライティングされるようになるが、最後の握りこぶしをキツネサインに変えて掲げ、それをスッと胸にしまう“残心”のポーズは、サマソニに初出演した2012年当時「キワモノアイドル」と笑われた悔しさを誇りに変えて戦い続けるBABYMETAL自身を表現していた。


不穏な雷鳴とオルガンの響き、そして運命の時を知らせる鐘の音。
7曲目は、2016年東京ドームBlack Night以来1年ぶりの披露となる「ヘドバンギャー!!!」だった。
この曲はBABYMETALのインディーズデビュー曲であり、初めての単独東名阪ツアー「ヘドバ行脚」を行い、初出演した2012年のサマソニでは、メイン曲(1曲目は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」と「いいね!」のメドレー、3曲目は「BABYMETAL DEATH Short Ver.」)だった。2014年の日本武道館「黒い夜」では、この曲でSU-が銅鑼を鳴らし、海外進出という過酷な運命が始まった。
そして、今思えば、この曲をサマソニ2017でやったことが、Legend-S-洗礼の儀@広島グリーンアリーナの「♪ハータチのよーるを…」の伏線になっていた。
1997年生まれのSU-が2017年に20歳になるのは既定の事実だが、2012年、フードコートの片隅で「♪イーチゴのよーるを~」と演奏したインディーズデビュー曲「ヘドバンギャー!!」を、ちょうど5年後のサマーソニックのメインステージ、しかも日本人最高位の最終日セカンドヘッドライナーとして演奏でき、それが広島凱旋ライブのハイライトになるなんて、誰にも予想できなかったはずだ。
まるで誰かがシナリオを書いたような、キセキのリンケージがBABYMETALにはある。
「♪ヘドバン!ヘドバン!」のシークエンスでは、アリーナ、スタンド席ともに、観客がヘドバンしまくる光景が見られた。東京ドームほどの長時間ではなかったが、2010年のデビュー時はもちろん、2012年のサマソニ初出演時、いや2014年NHK『BABYMETAL現象』放映時でさえ、「メタル」や「ヘドバン」という言葉は、一般人にとっては死語に近かったから、わずか数年でBABYMETALが日本人の音楽知識や言語空間を変えてしまったのは間違いない。
ピアノのアルぺジオに乗せて「Why do people hurt each other?」という英語版「紙芝居」が始まった。
いよいよフィニッシュ曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」だ。
「ギミチョコ!!」や「Road of Resistance」ではなく、あえてこの曲をフィニッシュに持ってきたのは、2016年の東京ドーム同様、サマーソニック2017が一つの到達点だったからだろう。
観客は、「WOD!WOD!」と声をかけながら、再び巨大なWODを形成する。
「♪ルルルールルルー…」SU-の澄み切ったハミングがマリンスタジアムに響き渡る。
SU-の「♪あー」で、YUIとMOAがマリンスタジアムの広いステージを疾走すると、観客も「ウォー」と雄たけびを上げながらモッシュし、再び高速サークルピットを回り始めた。
実は、前日の大阪・舞洲Ocean Stageで、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の終盤、YUIが右手を挙げなかった。
脱臼したのではないかと衝撃が走ったが、イヤモニのトランスミッターが外れ、それを右手に握っていたからだとのことだった。大阪ではMOAが機転を利かせて、自分も片手だけの振付にして左右のバランスをとったのだが、幕張ではそんなアクシデントもなく、SU-の歌は響き渡り、YUI・MOAも元気にXジャンプし続けた。


魔法のコード進行は、下降進行と上昇進行がせめぎ合い、ついに絶望を希望へと転換し、「♪イジメ、ダーメ、ダーメー」からのダブルストップで、大団円を迎えた。SU-の「We are?」の問いかけに、4万人の観客が「BABYMETAL!!!」と叫び、「3、2、1!」で三人はお立ち台から飛んだ。

翌朝、日テレ系『スッキリ』に出演したFoo Fightersのデイヴ・グロールは、インタビュアーに、トリ前の「日本人アイドル」=BABYMETALをご存知でしたかと聞かれ、「この業界でBABYMETALを知らない奴なんているのかい?」と問い返し、そのパフォーマンスを絶賛した。

(つづく)