10年のキセキ(61) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月18日は、2013年、ニッポン放送「ミューコミプラス」にSU-が出演し、2017年にはKORN US Tour アルバカーキ公演@Isleta Amphitheaterが行われた日DEATH。


2017年6月16日現地時間午後9:30。    
ハリウッドのSunset Blvd.に面したPalladiumでは、1時間以上も続いたHellyeahのライブ中に観客がどんどん増え、フロアも2階席もぎゅうぎゅう詰めになっていた。
客電が落ち、スクリーンがないため音声のみの「紙芝居」が始まる。
「A long time ago…In Heavy Metal Galaxy, Far, far away…」
神バンドのメンバーがステージに上がると大歓声が沸く。
ナレーションが「Are you ready?」と呼びかけると、観客は「Yeah!!!!」と歓声をあげる。
「It’s time to Metal Resistance with BABYMETAL…METAL…METAL… METAL…」から青山神がシンバルを打ち鳴らし、「BABYMETAL DEATH」が始まった。下手からフードをかぶった三人が登場してくる。
ぼくは、Hellyeahのライブで疲れ、ダンスフロア後方やや上手寄りの手すりにもたれていたのだが、ピットにいた人たちが一斉に前へ進んだので視界が開けた。前の方にいた人たちはものすごい圧縮だったろう。
セットリストは以下のとおり。
1.BABYMETAL DEATH
2.ヤバッ!
3.ド・キ・ド・キ☆モーニング
(神バンドソロ)
4.あわだまフィーバー
5.Amore-蒼星-
6.META!メタ太郎
7.Sis. Anger
8.メギツネ
9.ギミチョコ!!
10.KARATE
11.THE ONE
(アンコール)
12.From Dusk Till Dawn(初披露)
13.Road of Resistance
神バンド:藤岡幹大(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、大村孝佳(G)
ステージまでは約15メートル。スクリーンがないので、表情まではわからないが、三人のダンスのキレは素晴らしかった。YUIはコスプレの女の子を指さしてニコニコ。MOAはベビメタ体操の間にコスチュームの一部が客席に飛び込むハプニングがあったが「♪DEATH!DEATH!…」の大合唱の中、ニコニコしている。東京ドーム以来の単独ライブだからね。


2曲目は「ヤバッ!」。SU-のボーカルは絶好調。もともとボールルームであるため、メタルサウンドとは相性が悪く、高音域がキンキン響き、時折ハウリングが混じるのだが、SU-の歌はハッキリ聴こえる。
YUI、MOAの行進風ダンスからの「♪ヤバッ」のタイミング、「あれどっち、これどっち」のフリがピシッと決まる。
3曲目は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」。前述したように、打ち込み音源の“ご本人”ヴィニー・ポールの前で、この曲を披露する日が来るなんて、2010年には思いもよらなかった。振付はあの頃からまったく変わっていない。2015年の「大きくなった身体」問題を乗り越え、SU-「♪ぱっつんぱっつん前髪ぱっつん」YUI・MOA「♪Cuty Style!」と歌い踊る三人は限りなくKawaii。観客は最初から「Ima Nanji!」と叫ぶ。ぼくの回りにいるラテン系のグラマーな女の子と長髪金髪モデル風の女の子が「リンリンリン!」と楽しそうに踊っていた。
三人がステージを去ると、「あわだまフィーバー」の電子音のイントロが一瞬流れ、青山神がロカビリー風のリズムを叩き出す。同じドラムスでも、ソウルで見たラーズ・ウルリッヒや、レッチリツアーで見たかどしゅんたろう神、Hellyeahのヴィニー・ポールとはやっぱり違う。上半身がピシッとキマり、正確無比かつキレ味鋭い日本刀のようなドラムスだ。
藤岡神、大村神は、BOH神、青山神のアドリブが終わると「あわだまフィーバー」のイントロに変わり、三人が「ハイ、ハイ…」と入ってくると、あまりの楽しさにクラウドサーファーが次々に現れ、ピットは左右に揺れた。
壮大なオーケストラのイントロに続いて、ピンスポを浴びたSU-が「♪愛の言葉~」と歌い出す。5曲目「Amore-蒼星-」である。SU-のピッチは正確で、うわんうわん音が回るボールルームで、速いリズムがズレそうになるところ、SU-の歌がきっちりと曲のコアとなり、演奏を引っ張っているのがわかった。演奏だけでなく、約4,000人の観客全体を支配してしまうオーラ。もっとも東京ドーム5万5000人を惹きつけたのだから当然だが。
ライブの折り返し点になったのは「META!メタ太郎」だった。
意外だったのは、アメリカの観客もこの曲が大好きだということだった。三人が声をそろえて「♪メーター太郎、メーター太郎」と歌うと、多くの女性客が敬礼のフリコピをしていた。間奏部の「♪ウォーウォーウォーウォウォ、ウォーウォーウォー…」のシンガロングも、ほとんどの観客が大合唱していた。
後半の最初は「Sis. Anger」だった。ダークな雰囲気のHellyeahを聴いたばかりなので、この曲がブラックメタルを志向していることはよくわかる。だが、やっぱり目の前のYUI、MOAはKawaiく、ダンスのキレ、歌のピッチも素晴らしかった。観客は「♪ざっけんじゃねーぞ」のところで正確に「♪オイ!オラ!」と合の手を入れる。やはり単独ライブは、前座やフェスとは一体感が違う。
暗転の中、「さくらさくら」のSEが流れ、Cmのイントロリフ&赤いライトの客席照射が何度も繰り返される。
やがてSU-、YUI、MOAが黒いキモノガウンを羽織り、キツネのお面をかぶって、下手からゆっくり登場。深々とお辞儀をして、観客を焦らすようにキモノを脱いでいく。
「メギツネ」は、2012年6月22日の「いなりんとヒット祈願@タワレコ渋谷店」での初披露以来、2017年6月16日の時点での演奏率は86.8%(131/151回)で、2013年12月20日初披露以来の演奏率が97.7%(129/136回)だった「ギミチョコ!!」に次いで、BABYMETALの代表曲だった。
そもそもキツネ様がBABYMETALの守護神となったのは、ロニー・ジェイムズ・ディオ(Rainbow~Black Sabbath~Dio)が広めたメタルの象徴であるメロイックサインを、三人が「影絵のキツネさん」と間違えたからであった。
しかし、「日出づる国から来たKawaiiメタル」というキャッチコピーで欧米デビューしたBABYMETALにとっては、ストレートにメロイックサインをやるより、「オリジナルアレンジ」されたキツネサインの方が、ガチガチの欧米メタルヘッズには抵抗感がなかっただろう。キツネ様崇拝とキツネサインは、メタルバンドとしてのBABYMETALの「ギミック」=ファンの“お約束”として受け入れられたのだ。KOBAMETALがどこまで意識的だったのかはわからないが、“お約束”は、ファンにとって日常との境界線となる「選ばれた感」を醸し出すものであり、消費社会における擬似帰属集団としてのファンベース拡大の重要なポイントである。
アメリカのショービズの本場ハリウッドPalladiumの観客が、三人の「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」に合わせて踊り狂う様子は、日本調のメロディとリズム、日本語で歌うBABYMETALが欧米メタル市場で、それを見事にやってのけたことを示していた。
間奏部でSU-が、「Hey Guys!Clap your hands!」と叫ぶ。そこから「Now, let’s jump up with the Fox God。Are you ready? あーーゆーーレディーーーー↑」とシャウトすると観客が「ウォー‼」と応える。そして、「ワン、ツー、ワンツースリージャンプ!」と号令をかけると観客のほぼ全員がジャンプした。
曲が終わり暗転すると「キリキリキリ…Give me Chocolate」というSEに続いて10曲目「ギミチョコ」が始まる。観客はYUI・MOAの「ズッキュン」「ドッキュン」に合わせて合いの手を入れたが、間奏部では煽りがなく、音源通りに終わった。ここから現在に至るまで「ギミチョコ!!」では煽りなしという形態になった。
「ギミチョコ!!」が終わると、照明は青く変わり、11曲目「KARATE」になった。
間奏部では、レッチリツアー仕様のスマホライト煽りが展開された。


「How you feeling…How you feeling, Hollywood?」観客「Yeah!!!」
「Take your phone out」「Turn on your light, camera light」で観客にスマホライトを点灯させると、SU-は「Oh, it’s amazing!」と叫び、「I wanna see more!」「Show me your light!」と畳みかけ、ハミングに入った。
大会場には敵わないが、やはり場内は幻想的な雰囲気の中、SU-のメロディラインが響いた。
握りこぶしをキツネサインに変えで胸にスッとしまう残心を刻んだあとは、東京ドーム以来の「THE ONE」。
三人が東京ドームと同じ金色のガウンで登場する。
SU-が静かに「♪No reason why, I can’t understand it…」と歌い出すと会場は息を殺して歌に集中する。
間奏部になって、三人が動き出すとステージが狭いので、袖に行って戻ってくるような動きになった。
だが、「♪ラララー」のところでは、東京ドーム同様「Sing it!」と叫び、観客もシンガロングした。ここで暗転し、しばらくインタバールがあった。会場からは「ベイビーメートー」と、「One more song!」の声が交互に響く。アンコールなら「ヘドバンギャー!!」から「Road of Resistance」だろう。
だが、ここで初めて聴くオーケストラのインターリュードに続いて、プログレのような幻想的なイントロから、ドラムとへヴィなリフと電子音。
霧の中から湧いて出たように三人が登場し、SU-が「♪In the air…」と歌い出す。
東京ドームでも披露されなかった『METAL RESISTANCE』EU/US盤のみ収録の「From Dusk Till Dawn」の世界初披露だった。


『BABYMETAL』は「悪夢の輪舞曲」と「紅月-アカツキ-」の2曲がSU-ソロで、「おねだり大作戦」と「4の歌』の2曲がBBMだった。
同じように『METAL RESISTANCE』では「GJ!」と「Sis. Anger」の2曲がBBM曲だったから、「Amore-蒼星-」ともう1曲SU-ソロがあるはずだ。それが、日本盤には収録されなかった「From Dusk Till Dawn」ではないかと思っていた。
だが、この曲は、SU-ソロではなかった。歌うSU-の両サイドで、YUIとMOAがしなやかに踊っていた。音源では聴きとりにくいが、間奏部の三人によるウィスパーパートは「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のセリフ部分の英訳らしい。
「Break!」以降は、神バンドによる幻想的なプログレメタルの演奏と三人のダンスが拮抗するMIKIKO師仕込みのメタル表現だった。Kawaiく激しく楽しいだけがBABYMETALじゃない。曲の世界観を観客にダイレクトに訴求する総合アートとしての「メタルダンスユニット」の本領発揮だった。
そしてフィニッシュはいつものように、戦国SEからの「Road of Resistance」。
三人がBABYMETAL旗を持って登場し、SU-が客席を2つに分けるしぐさをすると、アリーナの客席が二つに割れた。YUI・MOAの「1、2、3、4!」で曲が始まり三人が馬上ダンスを始めると、狭いダンスピットに大きなサークルができ、曲の間中、途切れることなく回り続けた。ぼくの隣にいた長身の金髪モデル風も、ヒスパニックの女の子も、日本人の中高年ご夫婦の奥様も、がまんできなくなってサークルの中に入っていった。「♪ウォーウォーウォウォー…」のシンガロングの際も、回転が止まることはなかった。
「♪今日が明日を創るんだ、そうぼくらの未来on the way」のあとのSU-のシャウトは、「Come on Hollywood!!!」だった。
曲終わりのC&R「We a----re?」は過去最高レベルの長さだった。
観客も負けじと「BABY---METAL---!!!」と応え、SU-の「Get your Fox Hands U-----P!あー」で終了。
最後のSU-の挨拶は、「Very big thanks to coming our special live tonight!」「You guys amazing!」で、三人は「See you!」の残像を残し、ステージを去っていった。
(つづく)