10年のキセキ(57) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日6月10日は、2012年、雑誌『MARQUEE』にBABYMETALが初掲載され、2016年には、豪雨のDownload Festival UKに出演した日DEATH。

■武漢ウイルス関連データ
●累計
・世界 感染確認者7,064,938人>死者405,072人
・日本 感染確認者17,210人>死者916人・退院15,213人・要入院1,074人>重症92人
●10万人当たり
・世界 感染確認者91.57人>死者    5.25人
・日本 感染確認者13.60人>死者    0.72人
出典:厚労省「新型コロナウイルスの現在の状況について」(6月9日12:00現在)

2017年1月11日、BABYMETALはMETALLICAのニューアルバム『Hardwired to…Self-Destruct』リリースツアーであるWorld Wired Tour初日、ソウル公演のサポートアクトとして、韓国・ソウル高尺SKYドームのステージに立った。
東京ドーム後、ますますBABYMETALにのめり込んでしまったぼくは、国内単独公演のスケジュールが発表されない中で、海外のサポートアクトでもいいからライブを観たいという衝動に駆られた。
仕事上、二週間にわたるレッチリUKツアーは無理だが、ソウルなら1泊2日でなんとかなる。Guns N’ Rosesも初日が観たい。ぼくは、ソウル行きの航空券とホテル、大阪のホテルを予約し、METALLICAソウル高尺SKYドーム公演とGuns N‘ Roses京セラドーム大阪のチケットも取った。
ところが、2016年の年末に釜山の日本領事館前に左派グループが設置した「慰安婦」少女像を、釜山広域市が「道路交通法違反」として撤去したところ、抗議の電話が殺到。釜山市は一転して少女像の設置を認めるという事件が起きた。
これに対して日本政府は、慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した2015年の日韓合意違反であり、国内情勢がどうあっても国と国との約束は守るように申し入れたが、状況は改善せず、明けて1月6日には駐韓大使・領事を引き上げるという事態になった。
「道路交通法」という明文法、正当な選挙で選ばれた大統領が締結した日韓合意という国際条約より、特定グループの主張を優先する事態に、日本人の多くが違和感を覚えた。
法律より国民の命の方が尊いのだから、横田めぐみさんを救うためには、日本国憲法なんか関係なく、国会を通す必要もなく、「超法規的措置」として、自衛隊の特殊部隊が北朝鮮に突入して奪還すればいいという議論がある。心情的には正しいように感じるが、それをやったら、普通選挙で選ばれた国会議員が多数決で議決した法律を守ることで成立している民主主義・法治国家の枠組みが崩れてしまう。為政者の意向で、いくらでも「超法規的措置」が乱発できるファシズム国家になってしまう。
武漢ウイルス対策でも同じだ。感染症法およびコロナ特措法では、首相といえども国民に「自粛要請」することしかできない。緊急事態宣言を発しても強権を発動しない/できない安倍総理は、法治国家の首相として正しい。
1891年(明治24年)、ロシア皇太子ニコライが訪日し、琵琶湖観光を行っていた時、警備に当たっていた警官がサーベルで切りつける事件が起こった(大津事件)。この警官はロシアの南下政策に不満を持っていたと言われる。
大国ロシアの報復を恐れた明治政府は、裁判所に対して、犯人を極刑にせよという政治的圧力をかけ、マスメディアも同調したが、裁判所はそれに屈せず、法律の条文どおりの判決を下した。ロシアを含む欧米列強は、それを見て、日本が政治から独立した司法制度を持つ近代法治国家であることを認めた。
逆に言えば、明文法に定められたことを、行政機関が国民感情に引きずられて恣意的に捻じ曲げてしまう国は、近代国家とはいえないということだ。
だが、日本との併合によって近代化が進んだ時代に「日本にすべてを奪われた」と考え、上海に亡命政府を作った両班たちによって建国された韓国では、こと日本に関する限り、法律よりも国民感情を優先するのが当然だと考えられており、2016年末~2017年初頭には、日本との関係修復に方向転換した朴槿恵大統領の弾劾を求める運動が、反日感情を伴って日増しに強くなっていた。
ライブ当日の朝、少しだけ仕事をして、成田空港からソウル仁川国際空港に着いたのが午後3時ごろ。
そこからソウル九老区まで直行で行けるバスに乗って、ホテルにチェックインし、高尺SKYドームに着いたのは5時少し前だった。待機列は地下駐車場で、事前にハングルの読み方だけ覚えて行ったので、並ぶべき「ダ」列はすぐにわかった。
開演は19:20で、開場はその1時間前のはずである。
だが、18:30を過ぎても列は動かない。途中、物販が再開されたという情報が入ったので、列で隣り合った方と見に行くが、購入希望者が殺到して一瞬でなくなったらしい。
列に戻ると、スタッフにチケット提示の準備をしておくようにいわれたが、結局チケットチェックはなかった。
19:20を過ぎた頃、列が動き出す。ドーム下手側の搬入口に近づいていくと、「♪ダダダダダダダッ、ダダダダダダダッ…」という音が聴こえる。「BABYMETAL DEATH」である。客が半分も入場していないのに、もう始まっている。このあたりはメインの開演に間に合えばいいという会場スタッフの考え方で、レッチリUKツアーでも同じことが起こっていた。
だが遠征組にとっては大問題で、列のみんなは一斉に駆けだした。


ステージ近くの「カ」「ナ」列の客は先に入場しており、最前列は盛り上がっている。
だが、アリーナの「ダ」「ラ」ブロックは半分も埋まっていない。見上げるドーム球場の内部は鉄骨がむき出しで工事現場のようだった。ステージにはBABYMETALのバックドロップがあるだけで、スクリーンは左右の小さなものしか使わせてもらえない。
セットリストは、以下のとおり。
1.BABYMETAL DEATH
(神バンドソロ)
2.Catch Me If You Can
3.メギツネ
4.ギミチョコ!
5.KARATE
6.Road of Resistance
神バンド:Leda(G)、瀧田イサム(B)、青山秀樹(D)、大村孝佳(G)
「BABYMETAL DEATH」で、SU-→YUI→MOAの順にスポットライトが当たるのはぼくらにとっては常識だが、左右のスクリーンの映像は全然タイミングが合っていない。スイッチャーが知らないのだろう。
METALLICAのライブだから、メタルファンを意識して超絶演奏を聴かせるためか、神バンドソロが2曲目に設定されていた。仮バンドのレコーディングのため、藤岡神とBOH神はお休みで、ベースには瀧田イサム神が入った。瀧田イサム神は、Guns N’ Rosesの横浜アリーナ、SSA公演でもベースを担当した。
このセトリでは、「いいね!」のように、初めて訪れた韓国・ソウルの観客に曲中でグリーティングして心理的距離を縮めることができない。
下手側アリーナに当たる「ダ」ブロックでは、何人もの韓国人観客が、持参した寝袋や座布団にくるまり、柵にもたれてゴロゴロしていた。寒い国だから、それがピット観戦の習慣なのか。そばにいた初老の遠征組日本人男性が「これはあり得ないよね」とぼやいた。
サポートアクトの時間に入場しているのだから、BABYMETALにも関心があるはずなのだが、三人が「ハイ!ハイ!」と入ってきて、手をぐるぐる回してサークルピットの指示をしても、盛り上がっているのはステージ前だけである。
立ってモッシュッシュすれば寒さなんて吹き飛ぶぜと思っていると、「メギツネ」で状況が一変した。
「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と三人が踊りだすと、韓国人観客の中に、「イェイ!イェイ!」と合いの手を入れる人たちが現れた。ゴロ寝組も今は立ち上がり、首を振って見ている。
「ギミチョコ!」は、K-POPの本場である韓国でも、さすがにこの場にいる観客はよく知っているらしく、合いの手こそ入れないが、首を振り手拍子をして楽しんでいた。
「KARATE」では、ぼくの回りにいる観客の多くが、三人の正拳突きに合わせて「エイ!エイ!」と声を出していた。この頃になると、客席も埋まってきており、BABYMETAL登場時のガランとしたドーム内の印象は、打って変わって熱気を帯び始めた。


だが、次はもうフィニッシュ曲の「Road of Resistance」。
三人がBABYMETAL旗を持って登場すると、客席からも大歓声が沸いた。SU-がピットを分けるしぐさをすると、アリーナ後方では動かずに見ている人が大多数だが、ステージ前ではピットが割れた。
「1234!」で三人が馬上ダンスを始めると、ステージ前ではサークルモッシュが発生。アリーナ全体には広がらないが、さすがBABYMETALだけあって、ほとんどの観客が熱気に乗せられ、「DEATH!」に合わせて右手を挙げる。
「♪ウォーウォウォー、ウォーウォウォー…」のシンガロングでは、SU-が「Sing it!」と叫び、ようやく観客がひとつになって大合唱する光景が見られた。
「Get your Fox Hands U---P!」で終演し、SU-が英語で、「Thank you coming to see us! We also thank to METALLICA having us today」と師匠への感謝を口にした。
5th Member of METALLICAにも加入しているぼくは、引き続きMETALLIAのライブも堪能した。
長いインターバル中、サウンドチェックが行われる。
主役だから仕方ないが、ドラムスやベースの音量が全く違う。
客電が消えると、オーケストラに合わせた大合唱の中、大スクリーンに『Hardwired…』のジャケット写真と同じ歪んだ顔が点滅し、アルバム1曲目の「Hardwired」が始まり、そこに生演奏が重なった。
セットリストは、以下のとおり。
1.    Hardwired
2.    Atlas, Rise!
3.    Sad But True
4.    Wherever I May Roam
5.    The Unforgiven
6.    Now that we’re Dead
7.    Moth into Flame
8.    Harvester of Sorrow
9.    Halo on Fire
10.    The Four Horsemen
11.    One
12.    Master of Puppets
13.    For Whom the Bell Tolls
14.    Fade to Black
15.    Seek and Destroy
16.    Battery
17.    Nothing else matters
18.    Enter Sandman
スクリーンの中の演奏が生演奏に代わるというオープニングはカッコいい。音源よりも速いBPMで、荒々しいスラッシュメタルそのものである。ちなみに巨大キツネ祭り以降、BABYMETALのライブで大スクリーンが導入されたのは、これがをヒントにしたのだと思う。
メタル刺繍ジーンズベストを着たジェームズは、「Hardwired」が終わるとすぐに、ドスの利いた声で「Hallow!Seoul!」と挨拶し、韓国でのライブの思い出を語り始めた。これでつかみはオッケー。
『Hardwired…』の順番どおり「Atlas Rise!」をやった後は、『METALLICA』(ブラックアルバム)収録の「Sad But Blue」「Wherever I May Roam」「The Unforgiven」が続き、6曲目に『Hardwired…』収録曲に戻って「Now that we’re Dead」になった。これが凄かった。「Are you Alive?Are you Alive?」というジェームズの問いかけに観客が「ウォー!!」と応えると、そこからラーズ・ウルリッヒのバスドラとタム主体の重いドラミングがドーム中に響き渡る。半音下げのシンプルなリフだけなのに、それが重層的に空間を満たし、ものすごいグルーヴ感と熱狂を生んでいく。これがヘヴィメタルということなのだ。
8曲目の「Harvester of Sorrow」では、三つ編みゴリラ、ロバート・トゥルージロ(B)が大股でノッシノッシとステージを動き回り、ベースソロを披露。
ジェームズが「Kill ‘em Allは知っているか?」と問いかけ、スラッシュメタルの原点「The Four Horsemen」をぶっ速く演奏したあとは、巨大スクリーンに兵士たちの影と戦場の悪夢が描かれる「One」で、映画の中のようなスペクタクルが展開される。間奏部では「BABYMETAL DEATH」のオマージュ元である、「♪ダダダダダダダッ…」のオリジナルが聴けた。

お馴染みの「Mater of Puppets」を経て、「For Whom the Bell Tolls」では、“ロン毛のお兄さん”ことカーク・ハメットが10分近くソロを披露し、ギターヒーローぶりを見せつけた。
アンコールののち、お馴染みの「Battery」が演奏されて観客との一体感を醸し出し、ロマンティックなバラード「Nothing Else Matters」から「Enter Sandman」でフィニッシュ。
客席には在韓米軍と思われるアメリカ人観客も多く、原点回帰と重厚さを併せ持ったメタルの王者METALLICAの凄みが存分に発揮された大熱狂のライブとなった。
SKYドームを出ると、そこは極寒のソウルで、雪が舞っていた。タクシー乗り場で30分ほど待ったが、若い韓国人カップルがスマホで予約しないと乗れませんよと英語で親切にアドバイスしてくれたので、あきらめてホテルまで1時間近く歩いて帰ることにした。
3時間におよぶスタンディングのライブ後だったため、ホテルまでの中間地点で右足、次いで左足のふくらはぎがつりそうになった。人気もまばらな深夜、ハングルは読めて発音できても意味が一切わからない。道は凍り、雪がちらつくが、身体が火照り、イエロータグのおかげで、足元も寒さは感じない。コンビニを見つけて入ると英語が通じたのでほっとした。食料品を買い込み、店を出ると500メートル先にホテルが見えた。
(つづく)