10年のキセキ(49) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日5月31日は、2013年、2nd シングル「メギツネ」Special Trailerが公開された日DEATH。

■武漢ウイルス関連データ
●累計    
・世界 感染確認者5,876,136人>死者363,823人
・日本 感染確認者16,804人>死者886人・退院14,404人・要入院1,494人>重症123人
●10万人当たり
・世界 感染確認者76.17人>死者4.72人
・日本 感染確認者13.28人>死者0.70人
出典:厚労省「新型コロナウイルスの現在の状況について」(5月30日12:00現在)

アメリカ東海岸~中西部のツアーを終えたBABYMETALは、一時帰国して約2週間のインターバルを置いたのち、再び天空を飛翔してユーラシア大陸を横断し、6月2日、スイスの田舎町プラッテルンに降臨した。
こうして書いていると、現代のテクノロジーが消滅した遠い未来、なぜかぼくの文章が書き込まれたハードディスクが古代の遺跡から発見され、解読されたなら、BABYMETALは不思議な乗り物に乗って地球上を巡幸する女神たちだと解釈されるだろうなという感慨にとらわれる。
謎のキツネ神の新しい大教典『METAL RESISTANCE』を携え、各地の民衆を数千、数万の単位で集め、5から14曲の「小教典」からなる儀式で熱狂させたかと思うと、次の日には海や大陸を越えて別の場所に現れ、現地の民衆を教化する。これはもはや神話だ。
超人的な力を持つ神や、その活躍を描く物語=神話とは、畢竟、民衆の思いや願いを託して創られたものだ。
例えば、わが国最古の物語とされる『竹取物語』(9世紀後半~10世紀に成立)は、“罪”を償うために地球にやって来た“女神”としてのかぐや姫を主人公とした高畑勲監督のアニメ『かぐや姫の物語』(2013年)に再構成されたが、ぼくは、本当の主人公は竹取の翁だと考えている。
アイスランドの妖精伝説は、病気や事故で幼い子どもを失った親が、「わが子は妖精の国へ行ったのだ」と信じることで心の平安を保つために創られ、宗主国の圧政に苦しむ民衆に信仰された。
同じように、なんらかの原因で幼い娘を失った竹取の翁が、悲しみのあまり、荒唐無稽な「わが子は月から来て、輝くばかりの美しい娘に成長し、都の貴族や帝にまで求婚されたが、月へ帰ってしまったのだ」と語ることで自分の心を慰め、わが子の記憶を永遠にとどめようとしたのが『竹取物語』ではないか。
平安朝の藤原貴族たちの間抜けぶりを辛辣に描くことで、このおとぎ話は人気となったが、本当に人々の心を動かし、1200年以上も語り継がれる原動力になったのは、竹取の翁が夭逝した幼い娘を仮託した、美しく不可思議なかぐや姫のイメージではなかったか。
その意味で、科学的には荒唐無稽に思える超人伝説や神話には人々の思いや願いがこもっており、不幸や苦難を乗り越えて生きるために必要なのだとぼくは考える。
BABYMETAL現象は2010年代に現実に起こった出来事であるが、ぼくらがそこに人智を超えた不可思議な力が働いているように感じるのは、その「神話」に、ぼくらが生きるために必要な「何か」があるからだろう。
それが何かは未だにわからないが、BABYMETALが2014年からついこの数カ月前までワールドツアーを行ない、ぼくらメイトにとって身近な存在になった欧米の国々が武漢ウイルス禍に覆われた2020年、BABYMETAL神話の意味はますます重くなったといえる。
なぜなら、国境や言葉や世代の壁を超え、「メタルで再び世界を一つにする」という目標を掲げたBABYMETALは、人との接触を避け、感染防止の名目で位置情報を常時モニターされ続ける「新しい生活様式」を提唱するインフォデミック勢力の対極に位置するからだ。
戦慄すべきなのは、BABYMETALがこの目標を掲げた最初の時から「再び」と言っていたことだ。
国の専門家会議の指針や東京都が示した行動制限緩和のステップを考えれば、客席を2メートル間隔にしたお行儀のよいコンサートは「許可」されるが、狭いライブハウスやモッシュピットでもみ合うメタルバンドのライブは「不許可」になることは目に見えている。
武漢ウイルスによって荒廃し、メタルが禁止された世界。キツネ様によって召喚され、地上に降臨したBABYMETALは、「再び」メタルで世界をひとつにするために立ち上がる・・・。
BABYMETAL神話は現実になりつつある。
10月に予定されているMETAL RESISTANCE EpisodeⅩは終わりの時ではない。

新たな神話の始まりである。

スイスのプラッテルンはドイツ国境沿いのライン川源流に面した小さな町で、公演会場のZ7 Konzertfabrikは、ホテル三日月竜宮城みたいなスパAquabasilea Prattelnと並んで、外国人が訪れる観光スポットになっている。
収容人員は2,000人だが、天井が高く、コンサートホールといった雰囲気である。
セットリストは、
1.    BABYMETAL DEATH
2.    いいね!
3.    あわだまフィーバー
4.    Amore-蒼星-
(神バンドソロ)
5.    Catch Me If You Can
6.    META!メタ太郎
7.    Sis. Anger(初披露)
8.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
9.    KARATE
10.    メギツネ
11.    ギミチョコ!
12.    THE ONE English Ver.
13.    Road of Resistance
の13曲。神バンドは引き続き、藤岡幹大(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、大村孝佳(G)。


4曲目に「Amore-蒼星-」が繰り上がり、7曲目に新BBM楽曲「Sis. Anger」が初披露された。
各雑誌のインタビューで、この曲は「GJ!」と並んで、BLACK BABYMETALがBLACKな要素を詰め込み、BLACK METALに挑戦した「BLACK三段重ね」ということになっており、タイトルはMETALLICAの「St. Anger」からの借用である。確かに歌詞は、礼儀正しいYUI、MOAにしては乱暴な言葉遣いであるが、それは二人のKawaiさを際立たせることになった。合いの手は「♪オイ!オラ!」「♪関係ねー」「♪バカヤロー」など入れるタイミングが多いのだが、初披露ではまだ定着していなかった。
「META!メタ太郎」は、ウェンブリー、東海岸ツアーの当初からセトリに入っていた。
これには、2016年のBABYMETALが、ブラックメタルやヴァイキングメタルといった北欧メタルのヴァリエーションをBABYMETAL流にアレンジしてみせる意図があったと思う。
ただし、ドイツ語圏であるプラッテルン公演を見た方から、曲中の敬礼しながら行進するような振り付けが、ナチス式の敬礼やナチスのシンボルを公衆の面前で見せることを禁止したドイツ刑法典130条の「民衆扇動罪」に抵触するという指摘があり、ケルン、シュトゥットガルトに入れないのではないかと危惧された。
欅坂46がこの年10月にやらかしたナチス制服コスプレに比べれば、「META!メタ太郎」の敬礼はオリンピック代表団の行進みたいなもので、特段「ナチス式」とは思えなかったため、チームベビメタはその後のセトリにも入れ続け、問題になるようなことはなかった。
翌6月3日、BABYMETALは2年連続となるRock in Vienna 2016@オーストリア・ウイーンDonauinselのセカンドステージであるMind Stageに立った。ステージは並列式で、一回り大きいSoul Stageもピットは共通である。16:35~ANTHRAX、17:35~BABYMETAL、Red bull 提供のスカイダイビングショーをはさんで、18:45~SLAYERというタイムテーブル。スラッシュメタル四天王のド真ん中に堂々とラインナップされている。「海外でライブツアーをやっている」だけじゃなくて、トップクラスのバンドとして評価されているのだ。
だが、この日、日本のメディアが報じたのは、東京ドーム公演が9月19日-20日の2日間になるというビッグニュースだった。


セットリストは、
1.    BABYMETAL DEATH
2.    KARATE
3.    Catch Me If You Can
4.    META!メタ太郎
5.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
6.    ヘドバンギャー!!
7.    メギツネ
8.    ギミチョコ!
9.    Road of Resistance
Northern Invasionと同じく2曲目に「KARATE」が来て、4曲目に問題の「META!メタ太郎」、5曲目以降は2014~2015年のお馴染みの楽曲で、最後はRoad of Resistanceで〆る9曲構成。
スラッシュメタル四天王に挟まれ、数万人の観客を前にして、SU-METALは「♪Ah~Ah~Woh~Woh~」とアドリブのハミングを響かせ、「Everybody, Jump!」と煽った。SU-は高校を卒業して2ヶ月の18歳である。
ヒトラーの故郷であるウイーンで「META!メタ太郎」の敬礼振り付けが問題になるようなこともなく、「ギミチョコ!」では、チョコバーの張りぼてこそ掲げなかったが、「Sit Down!」からの「1,2,3,Jump!」で観客を楽しませた。
中一日置いて、6月5日はFortarock@オランダ・Nijmegen Gofferpark。
今や各地での単独ライブのオファーが引きも切らないオランダは、この時が初見参だった。
BABYMETALの出番は、LOUDPARK 2013を欠場したKING DIAMONDがトリのセカンドステージ、テント内のLarge Rockhand Stageの18:20~19:15の55分間。


セットリストでは、「ギミチョコ!」が2曲目に入り、「KARATE」はフィニッシュの「Road of Resistance」の前に置かれ、「ヘドバンギャー!!」が省かれた8曲構成となった。
ここでも、SU-は鮮やかなクイーンぶりを見せた。「ギミチョコ!」ではギターソロの間に「C’mon!Fortarock!」と叫んで観客を惹きつけたあと、間奏部の「Sit Down」で座らせ「Give me!Give me!」と言わせ、「1,2,3!」でジャンプさせた。
「Catch Me If You Can」では、「I want to see a big circle pit!」と叫んで、狭いテント内でサークルモッシュを強要。押し合いへし合いしながらぐるぐる回るオランダ人観客にニコニコしていた。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」からの「メギツネ」で観客がヘトヘトになると、「KARATE」では、澄み切ったアドリブハミングを聴かせ、最後にはまた「Road of Resistance」のサークルモッシュで観客を熱狂させた。
(つづく)