10年のキセキ(48) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日5月30日は、2015年、ROCK IM REVIERフェス@ドイツ・ゲルゼンキルヒェン・Veltins Arenaに出演した日DEATH。

■武漢ウイルス関連データ
●累計    
・世界 感染確認者5,758,897人>死者358,859人
・日本 感染確認者16,719人>死者874人・退院14,254人・要入院1,574人>重症131人
●10万人当たり
・世界 感染確認者74.65人>死者4.65人
・日本 感染確認者13.22人>死者0.69人
出典:厚労省「新型コロナウイルスの現在の状況について」(5月29日12:00現在)

アメリカは、英語・資本主義・キリスト教プロテスタントの良識という共通項がありながら、東海岸と西海岸、南部、中西部では、文化的・社会的な価値観の異なる「連邦」である。アメリカの各州はヨーロッパ各国とほぼ同じ面積を持っている。勝手なぼくのイメージだが、ニューヨーカーはどんな分野でも「経済的・社会的に成功すること」こそアメリカンドリームだと思っているし、カリフォルニア人は、多文化主義&科学技術など「先進性こそアメリカ」だと思っている。南部テキサス人は「質実剛健で多くの人に恩恵を与えるのがアメリカ人の生き方」だと思っているし、白人・黒人・ヒスパニックその他がほぼ均等の人口比を持つ中西部のシカゴでは、住人は「最もアメリカらしいのはシカゴ」だと思っている。
要するに、一口にアメリカといっても、住むところや人によって色々なのだ。
2016年5月11日~14日、BABYMETALは、東海岸から五大湖沿岸の中西部へと歩を進め、単独2公演・フェス1公演を行った。
最初の公演地デトロイトはフォード、GM、クライスラーのビッグ3が本社を構える自動車産業の街で、黒人やアジア系の労働者が集まり発展したが、1960年代後半~1970年代に黒人暴動が頻発するとともに、コストパフォーマンスや耐久性の良い日本車人気に押されて自動車産業が衰退し、空洞化が進んだ。
KISSの「デトロイト・ロック・シティ」はそうした背景に生まれた。1990年代の都市再生計画も、高層ビルが林立する街区と荒廃したダウンタウンの格差を助長した。ぼくが訪れたときも、打ち捨てられたレンガ壁の低層ビルと遠くに立つ高層ビルのコントラストが見て取れた。
会場となったThe Filmoreは収容定員2,888人と大きかったが、SOLDOUTしていた。
セットリストは、東海岸ツアーから若干変わっていた。
1.    BABYMETAL DEATH
2.    いいね!
3.    あわだまフィーバー
4.    GJ!
5.    Amore-蒼星-
(神バンドソロ)
6.    Catch Me If You Can
7.    META!メタ太郎
8.    イジメ、ダメ、ゼッタイ
9.    KARATE
10.    メギツネ
11.    ギミチョコ!
12.    THE ONE English Ver.
13.    Road of Resistance
2曲目「ド・キ・ド・キ☆モーニング」~3曲目「ヤバッ」ではなく、「いいね!」を2曲目にいれている。

やはり「いいね!」は、ラップパートで都市名を織り込み、ライブの始まりに観客への挨拶ができるためだろう。このため全体の曲数は13曲になった。
3曲目の「あわだまフィーバー」では、「♪アワーアワーあわだまフィーバー」のところで、頭の上で両腕を丸くする振りや「♪Ah~(イェイ!)」の前に「C’mon!」と掛け声をかけて合いの手を促すなど、観客とのコミュニケーションの細かい工夫も加わっていた。
極めつけは「ギミチョコ!」だった。
間奏部で、YUIとMOAが50cm×25cmくらいのチョコバーの張りぼてを持ってステージの上手下手に立った。ブランドはMOAが「SNICKERS」、YUIが「3Musketeers」(三銃士)だった。


SU-が英語で「Push it back! Push it back! And sit down!」(下がって!下がって!座りなさい!)と観客を座らせ、「On count of three, Let’s jump together, OK?」(3つ数えたらジャンプするのよ、わかった?)と言い、「チェケラチョコレートチョコレート」のところで観客に「Give me!Give me!」と叫ばせ、「One!Two!Three!」で一斉にジャンプさせたのだ。
この新しい煽りは、MOAが持っていたチョコバーに因んで「スニッカーズ煽り」と呼ばれた。なぜこんなことをしたのかについては、ネットで色々な説がある。
ひとつは、SNICKERS、3Musketeers、Milky Wayなどのチョコバーを販売する米マース社とタイアップしたという説。大企業の広告塔に堕したなどと批判もされたが、ライブの観客数×訴求による売り上げを考えればCMにしてはあまりにしょぼいし、宣伝費をもらっていたとしたら、当のマース社の広告にはBABYMETALの肖像は一切使われていないので信ぴょう性に欠ける。
ぼくは、進駐軍再現説をとった。

敗戦後の日本に進駐した米軍兵士は、中西部や南部出身者が多かった。

彼らは占領地慰撫の一環として、子どもたちに街頭でガムやチョコレートを配った。ジープに押し寄せ、飛びついてくる子どもたちに対して、「下がりなさい、下がりなさい」と落ち着かせ、「123!」でばらまいた。

その光景を再現してみせたというわけだ。


そもそも「ギミチョコ」という曲名は当時の子どもたちが発した「Give me chocolate」に由来する。デトロイトの観客に「Give me!Give me!」と叫ばせたのはその再現ではないか。

そうだとしたら、2014年の欧米デビューの原動力になった「ギミチョコ!」は、広島出身のSU-METALをリードボーカルとするBABYMETALを生み出すほどに日本が「成長」した証となる曲であり、70年前の「恩返し」ないし「意趣返し」だということになる。
もちろん、これはうがった見方というもので、KOBAMETALやSU-METALにアメリカ人に復讐してやろうなどという気持ちはサラサラなかったはずだ。ライブ中に観客を座らせてからジャンプさせるというのは、他のバンドでもよくある観客参加パフォーマンスの手法である。CBSで放送された「ギミチョコ!」はBABYMETALの代表曲なので、YUIとMOAにチョコバーの張りぼてを持たせ、楽しい観客とのコミュニケーション手段としてこのシーンを考案したと考えるのが無難だろう。
中一日置いて、5月13日はシカゴ公演@House of Blues(収容1,400人)。
2015年にもここで公演を行っており、R&Bの発祥地で、アメリカ第三の都市シカゴでも、前年の「戦果」を拡大する意味合いがあった。もちろんチケットはSOLDOUTし、シカゴの観客は前年とは違ったセトリのBABYMETALを堪能した。


ここでも「KARATE」のハミング煽りからの「Everybody, jump!」と「ギミチョコ!」の「スニッカーズ煽り」が行なわれた。House of Bluesはライブネーション傘下の新興ライブハウスだが、デトロイトのThe Filmoreに比べるとやはり狭い。その狭いピットで、1,000人以上の観客がSU-の煽りに素直に従い、座ってから一斉にジャンプする光景は壮観で、BABYMETALが「最もアメリカらしい街シカゴ」を完全に手中に収めたという印象を与えた。
5月14日のNorthern Invasionは、同じく中西部ウィスコンシン州の保養地Somersetのアンフィシアターで行われているロックフェスである。
メインステージのトリはロブ・ゾンビで、BABYMETALの出番はLAMB OF GODがトリのセカンドステージのトリ前5:55からの30分である。セットリストは以下のとおり。
1.    BABYMETAL DEATH
2.    KARATE
3.    Catch Me If You Can
4.    ギミチョコ!
5.    Road of Resistance
の5曲。Carolina Rebellionとは2曲目と4曲目の順番が入れ替わっている。
「KARATE」は、SU-の語りからのハミング~「Everybody, Jump!」で盛り上がるが、オープニング2曲目としては「ギミチョコ!」の方が、ギターソロ中に「Hey、〇〇(都市名orフェス名)!」と挨拶ができるので、ライブの流れが作れる。
先走って言えば、2016年のフェスでは、Rock in Vienna(オーストリア・ウイーン)は2曲目が同じく「KARATE」だったが、それ以降のFortarock(オランダ)、Download UK (イギリス)、Download Paris(フランス)、Chicago Open Air、日本の四大夏フェスでは、曲数が違っても、すべて2曲目に「ギミチョコ!」が置かれた。


Northern Invasionでは、4曲目に置かれた「ギミチョコ!」で、デトロイト、シカゴ同様、「スニッカーズ煽り」が行われた。観客は約1万人に膨れ上がっていたので、「座ってジャンプ」はステージ前に限られたが、後方の観客もそれを楽しそうに見ていた。
(つづく)