10年のキセキ(45) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日5月26日は、2012年、インディーズデビュー曲「ヘドバンギャー!!」のレコーディングが行われ、2013年、METROCK TOKYO@新木場若洲公園に初出演し、2016年には、WWEのファーム団体「NXT」がテーマソングに「KARATE」を採用すると発表された日DEATH。

■武漢ウイルス関連データ
●累計    
・世界 感染確認者5,355,798人>死者343,930人
・日本 感染確認者16,581人>死者830人・退院13,612人・要入院2,121人>重症165人
●10万人当たり
・世界 感染確認者69.42人>死者4.46人
・日本 感染確認者13.11人>死者0.66人
出典:厚労省「新型コロナウイルスの現在の状況について」(5月25日12:00現在)

2016年ワールドツアーの日程は、横アリの終演後から五月雨式に発表されており、4月には、Carolina RebellionとNorthern Invasionを含むアメリカ東海岸ラウンド、初見参のオランダFORTAROCK、2年連続のROCK IN VIENNA、Download UK&パリを含むヨーロッパラウンド、CHICAGO OPEN AIRを含むアメリカ西海岸ラウンド、日本の四大夏フェス出演が決まっていた。
ウェンブリーを終えたBABYMETALは帰国せずにそのままニューヨークに飛び、5月からの東海岸ツアー会場の下見を行うとともに、現地時間4月5日に放映された『The Late Show with Stephen Colbert』(CBS)に出演した。
この番組は、かつてエルビス・プレスリーやThe Beatlesが出演したCBSの人気トーク番組『エド・サリヴァン・ショー』~『The Late show with David Letterman』の枠を引き継ぎ、ブロードウェイにあるエド・サリヴァン・シアターで夕方に収録され、その日の深夜に放送される。

視聴率は高く、YUIは帰国便のCAさんに「BABYMETALでしょ、テレビに出てたでしょ?」と言われ、お菓子をいっぱいもらったという。
BABYMETALはここで「ギミチョコ!」を披露。ステージのある劇場なので、生演奏が原則だが、神バンドメンバーは狭いステージ、大音量、ドラムスや歌の生音とアンプからの出音のバランスを考え、ギターやベースの音をアンプ/スピーカーシミュレータを通してライン録りすることを提案。スタッフもそれに応えて非常にクリアな音で生演奏が収録された。アーティストとコミュニケーションをとって、生演奏の「音」をよりよく伝えようとする考え方は、日本のテレビ局とはだいぶ違う。


Stephen Colbertは、曲終わりにリリースされたばかりの『METAL RESISTANCE』を宣伝してくれたが、演奏された「ギミチョコ!」は収録されていなかった。
『METAL RESITANCE』リリースによる各雑誌の特集は、4月に入っても続いた。
4月4日発売『ぴあMusic Complex Vol.4』
4月4日発売『日経エンタテインメント5月号』
4月9日発売『ヤングギター5月号』

そして4月11日~23日にかけて、『METAL RESISTNCE』のチャート成績が確定した。

 

<国内>
4月11日付オリコン週間ランキング…2位
4月11日付Billboard Japanトップアルバムセールスチャート…2位
<EU盤>
4月14日付UK Official Chart総合アルバム・トップ100…15位(41年ぶり日本人最高位更新)
4月14日付UK Official Chart Albums Sales Chart Top 100…10位
4月14日付UK Official Chart Album Downloads Chart Top 100…9位
4月14日付UK Official Chart Rock & Metal Albums Chart Top 40…2位
4月14日付ドイツOffizielle Deutsche Charts TOP 100 ALBUM-CHARTS…36位
4月14日付フランスSNEP Top Albums…108位
iTunes Store総合アルバムチャート…7位、メタルチャート…1位
Amazon UKダウンロード総合…2位
<US盤>
4月23日付Billboard 200…39位(坂本九以来53年ぶり40位以内)
4月23日付Billboard Top Album Sales…17位
4月23日付Billboard Digital Albums…7位
4月23日付Billboard Hard Rock Albums…2位
4月23日付Billboard World Albums…1位
4月9日付オーストラリアARIA CHARTS Top 50 Albums…7位
iTunes Store総合アルバムチャート…3位、メタルチャート…1位
Amazon USAダウンロード総合…1位
 



前作『BABYMETAL』は、当初日本盤のみの発売だったが、アメリカの総合アルバムチャートBillboard 200に日本人14組目としてランクインしたことが驚きをもって受け止められた。
今回はUS盤、EU盤が同時リリースとなり、イギリスのオフィシャルチャートでは、1975年の冨田勲の記録を更新する日本人最高位15位を獲得し、アメリカのBillboard 200では、1963年に14位となった坂本九の『SUKIYAKI and other Japanese Hits』以来53年ぶりとなるトップ40入りを果たした。
2010年代に10代の少女たちの三人組「メタルダンスユニット」が、1960年代~70年代の高度経済成長期にオジサンたちが作った記録に並んでいるという事実が、中高年ファンの琴線に触れないはずがなかった。

日本人アーティストが欧米で楽曲をリリースすることは、敗戦した二流国というセルフイメージが支配的だった戦後日本の言語空間では、「本場への挑戦」ととらえられてきた。
グラフは、シングルのBillboard HOT100、アルバム総合のBillboard 200の順位を100点満点に換算して1960年から2020年まで散布図にしたものである。
1963年にシングル「SUKIYAKI」が1位、「China Nights」が58位、アルバム『SUKIYAKI and other Japanese Hits』が14位となった坂本九は別として、1970代前半~1980年代後半までが、日本人アーティストによる「本場への挑戦」の量的なひとつの山をなしており、ランキングとしても1975年の冨田勲『展覧会の絵』(49位)、1979年のピンクレディのシングル「KISS IN THE DARK」(37位)、1981年のオノ・ヨーコ『Season of Glass』(49位)、1980年のYMO『Yellow Magic Orchestra』(81位)、1985・86年のLOUDNESS『Thunder in the East』(74位)『Lightning Strikes』(64位)がピークになっている。
しかし1990年代から2000年代にはこの「挑戦」が激減し、順位も低調になる。これは明らかに高度経済成長~バブル崩壊を経て、日本の経済が「失われた20年」と呼ばれる長期的な停滞に入り、社会的なエトスも「内向き」になったことを反映しているだろう。
情勢が変わったのは、宇多田ヒカルの2004年『Exodus』(160位)、2009年『This is the One』(69位)、DIR EN GREYの2008年『Uroboros』(114位)、2011年『Dum Spiro Spero』(135位)あたりからで、ドットが見事なV字を形成しており、再び日本人アーティストたちの「挑戦」が始まっていることがグラフから読み取れる。
2014年の『BABYMETAL』(187位)はそのとば口にあり、2016年の『METAL RESISTNCE』の39位は、1970年代~80年代に先人たちが作った実績を超えるエポックメイキングな出来事だった。
ちなみに、その後2016年にピコ太郎のシングル「PPAP」が77位、2017年にONE OK ROCKの『Ambitions』が106位、2018年に米在住のコメディアンJojiの『Ballad1』が3位となり、2019年のBABYMETAL『METAL GALAXY』が、坂本九の記録を56年ぶりに更新して13位となった。
2016年の『METAL RESISTANCE』のBillboard 200の39位というニュースは「坂本九以来53年ぶりの40位以内」「10代のメタルダンスユニットが快挙」として、日本中を駆け巡った。
最も政治や経済と縁遠いと思われていた「キワモノアイドル」の世界的な活躍は、「内向き」になっていた日本人の顔を上げさせ、戦後復興~高度経済成長期の国民が持っていたチャレンジ精神を思い出した人もいた。
もちろん、米ビルボードといわれてもピンとこない人も多いし、「アメリカで人気が出たと言っても、日本ではテレビに出ないB級アイドル」といった辛辣な意見を吐く輩もいた。ニュースを聞いても、日本人スポーツ選手の活躍と同じく、しょせん自分の仕事には関係ない芸能の世界の話と素通りする人も多かっただろう。
だが、BABYMETAL成功のキーワードを分析していけば、「失われた20年」を突き破るヒントがいくつも隠されていることに気づく。
音楽といえば若年層をターゲットとするのが常識だったのに対して、「アイドル」「メタル」という中高年男性をメインとしたターゲット設定としたこと。そこでは20年前の「古さ」こそが”オマージュ“という名の価値を生んだ。
「アイドル」の常套手段だった数カ月おきのシングル・リリースという手法もとらなかった。サイン会や握手会、水着写真といった「疑似恋愛」の要素を排除し、古臭い「高嶺の花」路線を徹底した。そして海外ロックバンドと同じく、数年おきのアルバムリリースをメインとし、ライブでも中高年客を念頭にチケットやグッズを割高に設定した。KOBAMETALはそこに聖書やカバラのオカルト要素や、メタルバンド、ポップス、アニメ、プロレスといったサブカルチャーの要素を盛り込んだ「神話」をくっつけた。これもターゲットが海外ロックバンドの元ファンで、年齢を重ねて様々な蘊蓄を持っている中高年がターゲットだったからできることだ。
テレビに出ない代わりにインターネットを活用し、軽々と国境を超えて「ワールドツアー」を活動のメインとしたこと。これは1970‐80年代にはできなかったことだ。
デジタルテクノロジーの発達による機材のコンパクト化(Kemper、ワイアレス&イヤモニシステム、コンパクトペダル等々)や、SE、照明などをマニピュレーターがパソコンで操作できるようになったことも大きい。
共産主義国や紛争地域でなければ、デジタルデータさえ持っていけば、世界中どこでも本格的なライブができるようになったのだ。
告知やチケット販売、グッズ発注もネットでできる。あとはアーティストの魅力、楽曲、演奏力の勝負だ。
その点、BABYMETALは、SU-・YUI・MOAという超絶Kawaiく、歌とダンスが上手く、しかもまだ10代の三人組である。その上神バンドという超絶演奏技術集団と、アミューズの誇る楽曲制作陣、天才的振付師のMIKIKO師がいる。
もちろん、これらはすべて跡づけである。
KOBAMETALは、歴戦のメタルファンである自分が観たい・聴きたいと思う「アイドル」とはどんなものか、ということから全てを発想したのかもしれない。だから、最初はさくら学院の父兄だったファン層が、徐々にKOBAMETAL的要素を共通項として持った中高年の集まりになっていった。最初は水と油だった二つのファン層はやがて混合し、メタルファンだけどアイドルの魅力もわかるとか、アイドルファンだけどメタルも勉強してみているとか、あるいはジャンルを問わない音楽ファンだから、却ってベビメタのスゴさがよくわかるというように、垣根が消えていった。「アイドルとメタルの融合」とは「アイドルファンとメタルファンの融合」だったのかもしれない。
『METAL RESISTANCE』の「坂本九以来53年ぶり」のインパクトは、東京ドームへ向かって歩みを進める2016年のBABYMETALに大きな勇気を与えた。
(つづく)