緊急事態宣言と日本モデル | 私、BABYMETALの味方です。

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★今日のベビメタ
本日4月7日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

■武漢ウイルス関連データ
●累計
・世界 感染確認者1,246,192人>死者68,634人
・日本 感染確認者3,654人>死者73人・退院592人・入院治療を要する者2,989人
>無症状340人・病状確認中885人・治療中1,764人>重症者79人
●10万人当たり
・世界 感染確認者16.15人>死者0.89人
・日本 感染確認者2.89人>死者0.06人
出典:厚労省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況について」(4月6日正午現在)

コロナ特措法に基づく「緊急事態宣言」の発出が確定したので、今日は再び武漢ウイルスについて書く。
4月4日付の「ヨーロッパの教訓」に対して、有益なコメントがいくつか寄せられていた。
大森幸一さんから、VOXという団体が作成した「Coronavirus is not the flu. It's worse.」という動画https://youtu.be/FVIGhz3uwuQをどう思うかという問いかけがあり、Quweppさんからは「国によって違うというのは逃げ口上ではないか」というご指摘があった。
ぼくの考えは、4月1日の専門家会議の会見で尾身茂副座長が最後におっしゃった「日本モデルが世界に広がって欲しいと願っている」という言葉に尽きる。
記者は誰も食いつかなかったが、この言葉は「日本モデル」が日本独自であり、「世界では主流ではない」ということを示している。
そして、「願っている」というのは、それが、日本だけが「ジャパンパラドクス」と呼ばれるほど、感染者の指数関数的な拡大を抑え、人口当たりの死亡率を抑えられている要因だということだ。
「日本モデル」とは何か。
VOXの動画で言っている一人の感染者が何人に二次感染させるかを表すR₀(基本再生産数)=2.0~2.5とか、感染者に占める死者数を表す「致死率」=1%という数字は、「予め決まったもの」ではない。
これは、あくまでも中国や欧米など、これまでの症例から計算した「推計値」である。
新型なので、武漢ウイルスのR₀は地域や感染状況によって変わる。武漢で「爆発的」に流行し始めた頃はR₀=3.86と「推計」されたが、都市封鎖後はR₀=0.32~1.58と「推計」されている。現在の欧米ではR₀=2.0~2.5と「推計」され、武漢の教訓から都市封鎖が有効だとされているのである。
これに対して、ある地域・時期における実際の新規感染者数の増減から推計されるものをR(実効再生産数)という。これも統計上の「推計値」だが、その地域・時期の感染状況をよりダイレクトに反映する。
よくR₀とRを比較して今後の予測をしたりするが、あえて言うなら、この数字はどちらもこれまでの症例からの推計による「結果」に過ぎない。
ぼくの考えでは、ウイルス対策で大事なことは、これまでの「結果」=統計的な推計値から予測される「未来」に備えて対策を準備しておくことと同時に、「これまでの結果」なりではなく、「未来」を変えるため=「結果」を変えるためにどうするか、ということである。


尾身茂氏はWHOの西太平洋地域事務局長として、ポリオ(急性外白髄炎/小児麻痺)根絶に尽力し、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)対策でも陣頭指揮をとった。
日本に戻ってから発生した2009年の新型インフルエンザでも、対策本部専門家諮問委員会の委員長として、世界各国に比べて「ケタ違い」の致死率を達成している。
学歴や肩書や机上の研究だけでなく、実際にウイルスとの戦いを指揮し、勝ち抜いてきた世界最強のコマンダー。それが尾身茂氏である。WHOが中国に支配されなければ、テドロスの位置にいた人だ。
では、その戦いとはどんなものか。
一言で言えば、実に地味だ。日本全国津々浦々の自治体・医療機関・保健所から、指定したウイルスの感染状況を毎日報告させ、感染経路(リンク)を洗い出し、状況に応じて必要な措置をとっていく。それだけである。しかし、これが他の国には真似のできない「積極的疫学調査」=感染症サーベイランスの中身なのだ。
ぼくは、以前から「積極的疫学調査」こそ、日本のウイルス対策の根幹だと考えていたが、尾身先生の「日本モデル」という言葉にインスパイアされて、武漢ウイルス関連だけでなく、2009年新型インフルエンザの対策諮問専門家会議の『感染拡大防止に関するガイドライン』『積極的疫学調査実施要綱』なども読んでみた。感動した。
「積極的疫学調査」のサーベイランスは、感染状況を時間的に数段階に分け、目的別に調査内容を数種類設定したシステムを成しており、各サーベイランスは、調査主体・調査対象・人権への配慮・段階切り替えの目安・報告書式に至るまで、ものすごく細かい「決まりごと」で成り立っている。
こんなシステムは、マニュアルを生真面目に守る日本人にしか運用できないだろう。これを、少なくとも10年以上前から、日本では毎日やってきたのだ。
それが、今回の対武漢ウイルス戦でも効果を発揮している。
ネット動画やSNSで、こういう現場の努力を知らず、「武漢ウイルスはテロであり、アベ政権の防疫体制はユルユルだ」とかエラそうに言う人があるが、とんでもないことだ。
日本では、政権に関わらず、こと感染症対策に関しては常に臨戦態勢をとっている。そうでなければ、世界一、二位を争う長寿国は達成できていないはずだ。
日本では、小学校から手洗い・うがい、ハンカチ・ティッシュ・爪切り・頭髪チェック、給食当番のマスク・白衣着用といった公衆衛生の基本を身体で教わる。
また、自治体・保健所は、各種の公衆衛生に関する規則を設け、事業者には七面倒くさい書式の提出を義務付け、感染症に関しては全国的なサーベイランスシステムを常時運用している。
武漢ウイルスの感染状況について、欧米人が「ジャパンパラドクス」と言うのは、日本では、公衆衛生に関してここまできめ細かくやっているとは、思いもよらないからだろう。
一部の人々は、学校での生活指導や、「規則と書式ばっかり」の保健所やお役所の対応を、自由がないとか、杓子定規だとか、はては人権侵害だとまで言ってきたが、それは、本当の意味で、国民の命と自由と人権を守るためだった。
移動の自由や集会の自由が制限される「緊急事態宣言」の発令を考えれば、保健所や公衆衛生指導の本当の価値がわかるだろう。
かつて、国連WHOは「医療に貧富の差があってはならない。人類社会から感染症をなくそう」という理想を掲げ、国民皆保険制度も含めて、各国に公衆衛生に関する指導を行ってきた。
しかし、長く続くWHOの中国支配によって、その役割と気概は失われてしまった。
中国はあれほど経済発展したのに、WHOを発展途上国への政治的影響力を強める場として使うだけで、自国には国民皆保険制度もない。14億人もの人口を抱えていながら、公衆衛生はおざなりだ。だから、SARS、鳥インフル~新型インフルエンザ、武漢ウイルスと次々に新しい感染症が発生するのだ。
もっとも国民皆保険制度がなく、治療を受けられるかどうかは金次第というのは、中国だけでなく、アメリカも同様だ。
かつてのWHOの理想を誠実に実行しているのは、ほんのわずかな国だけになってしまった。その一つが日本なのだ。「自由」をはき違えた者たちが、それを内側から突き崩そうとする。愚かなことだ。
VOXの動画で言っている現在のR₀や致死率の「推定値」はその通りだろう。
そこから導き出されるのは「緊急事態宣言」「外出自粛」「人との接触禁止」「都市封鎖」しかない。
だが、お医者さんやクビにならない公務員やテレビ局員はそれでいいかもしれないが、それでは経済活動が一切できなくなってしまう。日銭稼ぎの貧しい庶民はバタバタと倒れてしまう。
日本の『感染拡大防止に関するガイドライン』の「職場対策」の項では、「職場対策の目的は、職場内感染を防止し、重要業務を継続することである。そのために、企業等の職場に出勤しなければならない職員を減らす体制をとりながら、必要とされる企業活動を可能な限り継続する方策をあらかじめ検討する。」と規定されている。
感染拡大の危険があるからこそ、経済活動と両立できるように、R₀なり=ウイルスのやりたい放題にはさせない。日本ならではのきめ細かいサーベイランスシステムをフルに活用して「クラスターつぶし」をやり、重症化しやすい感染者への早期対応を行い、実効再生産数や人口当たりの死亡率を抑え、リスクを社会的に許容できる範囲に押し下げる。
それが尾身先生のおっしゃった「日本モデル」の意味だとぼくは思う。
そして、「ジャパンパラドクス」と呼ばれるほど、それは奏功してきた。
4月6日正午現在、10万人当たりの累計感染確認者は2.89人、死者は0.06人で、世界全体の10万人当たり感染確認者16.15人、死者0.89人を大きく下回っている。
実数の内訳をみても、これまでの退院者と死者を除いた、現在入院治療を要する者2,989人のうち、無症状の340人、病状確認中の885人を除いた隔離治療中の患者は1,764人、うち重症者(人工呼吸器使用)は79人である。
インフルエンザ患者数は721万8,000人(4月3日付厚労省発表)である。これは昨年同期1,170.4 万人(2019年4月6日)の約6割で、インフルエンザでの人工呼吸器の使用は、2020年2月に42人、3月はわずか4人である。
日本の人工呼吸器の数は2万個ある。インフルエンザ患者の激減で病院はガラガラである。日本医師会東京医師会がなぜ「医療崩壊が起こる前に医療が危機的状況になる」と言い、東京都知事が「ロックダウン」という強い言葉を使ったのか。ぼくにはわからない。
ここへきての安倍首相の政治決断による「緊急事態宣言」は、「日本モデル」を推進してきた専門家会議にとって、ある意味悔しい決定だと思う。


これによって「日本モデル」の価値が揺らぐことが何より痛手だ。それに気づかず、「ようやく出たか」とはしゃいでいる言論人はタチが悪い。
とはいえ、外出自粛や都市圏封鎖で「人との接触を減らす」ことだけではなく、法的強制力によって感染拡大が著しい大都市圏から感染者の少ない地方へ軽症患者を移送したり、逆に地方から大都市圏へ保健所の所員などを一時異動させて、“主戦場”である「クラスターつぶし」と重症者ケアを充実させることができるなら、「緊急事態宣言」の意味も効果もあるだろう。4月1日の会見で、尾身先生は「”主戦場“である保健所の人員が疲弊している。補充をお願いしたい」「医療分担を再構築する必要がある」と繰り返しおっしゃっていたからだ。
だが、日本の武漢ウイルス対策の根幹は、あくまでも「日本モデル」が十全に機能して、中国や欧米のような「大惨事」を未然に防ぐことにある。
念のために申し添えておくが、サーベイランスシステムがあっても、以前述べたように、日本のインフルエンザと風邪等から併発した肺炎での死者数は毎年10万人近い。
したがって、冷静に考えれば、武漢ウイルスとインフルエンザの患者を合わせて1000万人、インフルエンザと風邪による肺炎と武漢ウイルス肺炎による死者数10万人までは、「通常」のことであり、社会的に許容されねばならない。だって去年までそうだったんだからね。


志村けんさんは今年3月29日に武漢肺炎で亡くなったが、去年の3月17日には日本の元祖ロックンローラー内田裕也さんが肺炎で亡くなっている。「2019年に亡くなった芸能人」で検索してみればわかるが、肺炎で亡くなった芸能人・有名人は多い。悲しいけどね。
BABYMETAL同様、マスコミや世界、悲しいかな政治家も「日本モデル」の価値を知らない。世界はいつかそれを知ることになるだろうが、学ぼうとしない者にはいつまで経ってもわからないだろうな。