ギターとアジア(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日1月18日は、2014年、Live Expo Tokyo 2014@国立代々木競技場体育館に出演した日DEATH。

1990年代になると、OEM生産に始まった韓国のギターメーカーも、生産量が増え、人件費が上昇したため、国外に生産拠点を移し始める。
サミックは、1992年にインドネシア・ボゴールにギター製造工場を建設し、Cortは1995年にインドネシア・スラバヤ工場、1999年に中国・大連に工場を建設した。
かつてOEMが中心だった日本の楽器メーカーは、高品質で培った評価をもとに自社ブランドを前面に押し出し、そのうち高価格帯のギターは国内で生産しつつ、量産品はアジアの生産工場に委託するようになった。
ただし、韓国のサミックやCortが、堂々とアジアの工場をHPで公表しているのに対して、日本のブランドメーカーは、海外のOEM先を公表していない。
ぼくの持っているYAMAHAのエレガットやIbanezのセミアコ、そしてESPのBABYMETAL Mini ArrowにはしっかりMade in Chinaのシールが貼ってあるのに。
今、世界中の楽器・音楽機材メーカーが一堂に集まり、最新のモデルが展示されるNAMMショー(National Association of Music Merchants Show)が、1月16日~1月19日の日程で、カリフォルニア州アナハイムで行われている。
著名なミュージシャンがメーカーのブースでデモ演奏したりもするので、年一度の音楽の祭典のようなイベントであり、日本のギター雑誌でも毎年必ずNAMMショーの動向がレポートされる。
日本でも、晴海の東京ビッグサイトで全国楽器協会主催の「楽器フェア」が行われるが、こちらは2年に1回である。
2016年の楽器フェアでは、ESPのブースに藤岡幹大、大村孝佳両神のギターが展示してあり、「パープルステージ」で、藤岡&大村によるデモ演奏があった。そこで初披露されたのが、当時は無題の「Wisteria Hill」だった。


また、別会場で仮バンドのライブがあり、ぼくは幸運にもBOH氏主宰のジャンケン大会に勝ち残って、藤岡幹大氏、BOH氏、前田遊野氏の握手&サイン会に参加することができた。藤岡氏の手のぬくもりは今でも覚えているし、もらったサインは家宝である。
それはともかく、中国でも、毎年10月にNAMMショウや楽器フェアにあたる「Music China」(上海国際展示場)が開催されている。2019年は世界34か国2414社が出展し、79か国から12万2,519人の来場者があったという。
この数は、日本の楽器フェアをはるかに超え、NAMM Showに匹敵する規模である。


だが、世界中のすべての楽器メーカーが参加しているわけではない。
2019年のMusic Chinaには、ギブソンは現地法人(Gibson China Musical Instruments Co Ltd)が出展していたが、フェンダー、グレッチ、Musicman、PRSといったメーカーは参加していない。
日本のメーカーでは、YAMAHA、Deviser、サウンドハウスは出展していたが、Ibanez、フェルナンデス、ESP、FGN、トーカイのブースは確認できなかった。
ただし、毎年出展しているJETRO主催の「ジャパンパビリオン」は、例年と変わらず設置されていた。
公式サイトの出展社リストを見ると、その多くはローマ字で読んだだけでは意味(漢字)がわからない中国企業である。しかも調べてみると、エレキギターよりアコースティックギター、ロック系の楽器よりピアノ、ヴァイオリン、管楽器、打楽器といったクラシック系楽器のブースが多いようだった。
日本を含む欧米の著名ギターブランドの出展がなくても、12万人もの人が集まるというのは、どういうことなのだろう。
一般国民がインターネットで海外の情報に触れないよう、中国ではGreat Wallと呼ばれるファイアーウォールが稼働している。
人々はGoogleもYouTubeもFace BookもTwitterも使えない代わりに、Great Wallの中だけを検索する百度、微博、YOUKUといったサービスを使う。これにより、例えば天安門事件のような、中国共産党政権に都合の悪い情報は一切遮断され、その文字を検索しただけでA.I.にチェックされる。
反体制的なロックは禁止だ。
だから、欧米のロック文化の象徴であるエレキギターのブランドに憧れるというより、そもそも知らない可能性が高い。
いや、音楽番組に出演する中国のプロミュージシャンは、欧米の楽器を使ってロックっぽいポップスを演奏しているのだし、Metallicaは、2017年1月、BABYMETALがOAを務めたソウルのあと、上海・北京・香港でライブを行ったし、それ以前の2013年にも上海公演を行っている。だから、少しでもロックっぽい楽器が展示してあれば、それがどんなものでも見たい、触りたいという若者もいるはずだ。
公式サイトの「Hottest Products」では、 中国製のフェルナンデスのコピーモデル「RGD」やカラフルなコピーテレキャス「Schecter PT Pro」、床置きエフェクターペダルに2つのスピーカーがついた「Caline Scuruリチャージャブル・アンプ」といった珍品と並んで、YAMAHAのコンパクトデジタルアンプTHRがフィーチャーされていた。
前述したように、中国では、西側のギターメーカーのOEM生産が行われている。
ギブソン/エピフォンは山東省青島、Cortは遼寧省大連、ESPもハッキリ工場だとは言ってないが、黒竜江省鶏西市に事業所を持っている。
IbanezやYAMAHAやMini-Arrowがどこで生産されているのかは不明だが、少なくともMade in Chinaであることは間違いない。
にもかかわらず、中国の一般国民は、欧米のロックに直接触れられない。いわばロック鎖国状態に置かれているのだ。
2019年のMusic Chinaは、習近平政権による覇権政策や、ウイグルの再教育キャンプ問題、香港の学生弾圧といった人権蹂躙に対する世界中の非難の中で開催された。
それでもGreat Wallの中の人々は集まる。
音楽への関心は高いし、購買力だってある。
人々のロック衝動を押さえつけているのは、中国共産党政権に他ならない。
Metallicaのジェームス・ヘットフィールドとカーク・ハメットは、アメリカのラジオ番組「The Howard Stern Show」で、2013年の上海公演の際、事前にセットリストを送らねばならなかった事情を明かしている。

上海市当局は、すべての歌詞を調べ、演奏してよい曲としてはならない曲を選別した。BABYMETALのライブ前には必ずかかる「Master of Puppets」は「反動的」とされ、許可が下りなかったという。
(出典:メタリカ情報局サイトhttp://metallica.livedoor.biz/archives/51893706.html
さっき紹介した「Caline Scuruリチャージャブル・アンプ」というのは、ディストーションとディレイのエフェクターに、5Wのアンプ機能をつけ、2つのスピーカーが鳴るだけでなく、充電式なので、他の3つの他のエフェクターに9V/100mA~500mAを供給できるという。ヘッドフォン端子やAUX入力端子もある。
プロユースではないが、自宅練習や路上での演奏にメチャメチャ便利な機材ではないか。


きっと中国人だってロックしたいのだ。ディストーションとディレイをかけて、メタルのソロを演奏してみたいのだ。
習近平は、ロックで革命が起きると本気で思っているのだろうか。

そんなカッコイイ革命、世界史上起こったことなど一度もないのだが。
(つづく)