ギターとベビメタ(6) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日1月13日は、2013年、Nack5「Idol Showcase i-ban」に出演した日DEATH。

ギターとベースのエレクトリック化によって、フルオーケストラに匹敵する音量を持つドラムスとの3ピース、リズムギターとリードギターの4ピース、キーボードを含めた5ピースなど、少人数で大音量を出せるロックバンドという形態が可能になった。
しかし、内部に大きな空洞を持つアコースティックギターのボディ(ホローボディ)にピックアップを取りつけ、大きな音量で鳴らすと、スピーカーから出る音とボディが共鳴し、ハウリング/フィードバックが発生することが知られていた。そのため、ビーチャムが開発したエレクトリック・スチールギターのフライングパンは、アルミ製のボディだった。
カリフォルニア州フラートンでラジオ・音響機器修理店を経営していたレオ・フェンダーは、こうした特性に着目し、一枚の板でボディを成型するソリッド・エレクトリックギターを構想し、1945年に共同経営者とともにK&Fマニュファクチャリング社を設立、エレクトリック・スチールギターとアンプを製作した。これが1947年に改名され、フェンダー・エレクトリック・インストゥルメント社となる。
フェンダーは、大量生産が可能なように、指板・ヘッドストックが一体化したネックを作り、ハイフレットの演奏性を考慮して1弦側をカッタウェイしたソリッドボディに、ネックをボルトで取りつけるデタッチャブル方式を考案し、1949年に1ピックアップのエスクワイアー(Esquire)を発表、翌年、リアとフロントに2つピックアップを備えたブロードキャスター(Broadcaster)を発売した。だが、当時、1883年にドイツ移民によって創業されたグレッチ社が同名のドラムセットを商標登録していたため、1951年にテレキャスター(Telecaster)へと名前を変更した。


伝統的なギター職人からは「板切れに棒をネジ止めしただけ」と陰口を叩かれたテレキャスターだが、フィードバックがなく、カラッとした音色で、カントリー&ウェスタンのミュージシャンに愛用された。
同年、フェンダー社は、1弦側だけでなく6弦側にもカッタウェイを設け(ダブル・カッタウェイ)、指板にギター同様のフレットを打ち、ピックアップを搭載したプレシジョンベースを発売した。
フレットのないアコースティックウッドベースより、正確な音程とアンプを通して大音量が出せるエレクトリックベースは大好評を博し、以降、エレクトリックギターとエレクトリックベースはあらゆる大衆音楽の必須楽器となった。
一方、老舗のギター会社であるギブソン社の社長テッド・マッカーティは、ソリッドギターの可能性に注目し、当時、妻メリー・フォードとのデュオで大人気だったジャズギタリスト、レス・ポールのところにソリッドギターの試作品を持ち込んで、意見を聞いた。レス・ポールはギブソン社と契約してアドバイザーとなり、1952年にレスポールモデルが発売された。


レスポールモデルのボディは甘い音を出すマホガニー材に、クッキリした音を出すメイプルをアーチ状に削り出したトップを貼り合わせたもので、ローズウッド指板のマホガニーネックを伝統的なセットネックで接合した2ピックアップのソリッドギターだった。
初期レスポールモデルに搭載されたピックアップはシングルコイル(P90)でノイズが多かったが、ギブソン社のセス・ラヴァーは1957年、シングルコイルを2つ組み合わせてノイズをキャンセルするハムバッカーピックアップ(P490)を開発、特許申請中(Patent Applied For)のままレスポールモデルに搭載した。ハムバッカーピックアップは高出力で、ジミー・ペイジら1960年代後半のハードロック・ギタリストに愛用される。
フェンダー社は、1954年にプレシジョンベース同様ダブル・カッタウェイで、演奏者の腹と右肘に当たる部分をなめらかに削ったコンター加工を施し、スチールギターのスライド奏法のような効果を出すシンクロナイズド・トレモロユニットを組み込み、3つのピックアップでバリエーション豊かな音色が出せるストラトキャスターを発売した。


ストラトをハードロックで活用したのは、ジミ・ヘンドリックスが最初で、大出力のマーシャルアンプに接続し、激しいアーミングやフィードバック音を表現手段として使うなど、ギタープレイに革新を起こした。
その後、各社から様々な機種が発売されたが、レスポールとストラトキャスターは、現在に至るまで、エレクトリックギターの代表モデルとなっている。
2014年当時、神バンドの藤岡幹大神が愛用していたESPのHorizon FR7は7弦仕様で、ストラトキャスターの形だがセットネックで、レスポールのようなアーチトップがつき、ハムバッカーをさらに改良して低ノイズ化したアクティブピックアップEMGを搭載している。トレモロユニットは、激しいアーミングをしてもチューニングが狂わないように弦をブリッジ部とナット部で固定するフロイドローズユニットが組み込まれている。


現在、大村孝佳神が使っているSnapper-7 Fujioka Customは、よりストラトに近いフラットトップだが、EMGピックアップとフロイドローズトレモロがついている。
これらのギターは、1980年代に流行したストラトの進化系=スーパーストラトの最新型といえる。
また2016年に発売されたESPのBABYMETALモデルE-ⅡArrow-7とMini-Arrowの原型になったのは、ギブソン社がストラトの革新的なスタイルに対抗して実験的なモデルとして1958年に発売したフライングVである。
KOBAMETALはフライングVこそメタルの象徴と思っているらしく、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のMVや「紙芝居」にはフライングVが「メタルの墓標」のように、地面に突き立てられた映像が繰り返し出てくる。


さて、エレクトリックギターは、アンプがなければ音が出ない。
元マルコシアスバンプのギタリストで、アンプ製作者のアキマツネオ氏は著書『ギター・アンプの真実』(リットーミュージック社)のサブタイトルは「エレキ・ギターの音色の90%はアンプで決まる」である。
フェンダー社はアンプメーカーとして創業されたので、ツインリバーブ、チャンプなど有名なアンプで知られているが、ギブソン、エピフォンといったギターメーカーも、アンプを製作・販売していた。
1950年代には、すでにシリコンで作られたトランジスターが実用化されていたが、生産効率が上がり、単価が安くなるまで、一般的な音響機器の整流・増幅回路には真空管が用いられていた。
1960年代以降、家庭用のラジオ、テレビなどの増幅素子はトランジスターに置き換わっていったが、ギターアンプは現在に至るまで、真空管アンプが主流である。
三極真空管は、電球と同じく、空気を抜いたガラス管の中にフィラメント(陰極)を封入し、そこから内部のグリッドとプレート(陽極)へ電子が飛ぶ際に、増幅効果が得られる仕組みなので、電源を入れると熱を発し赤く光る。キレイだが、これは電気エネルギーが熱や光として逃げているということで、トランジスターに比べて増幅効率が悪い原因である。
また、真空管は同じ設計の機種でも加工精度によって個体差が生じやすく、衝撃には弱いし、大きさも変えられない。
トランジスターは小さく、安価で、品質のばらつきも少ないので、増幅素子としては優れており、歪みも少ないので、原音の忠実再生ならトランジスターアンプの方が断然有利である。
回路ごと極小のウェハースに成型した集積回路=IC、LSI、チップも開発された。
だが、ピュア・オーディオでは、真空管アンプは「暖かい音がする」と言われ、愛されている。ぼくがベビメタのCDを聴くアンプも、KT-88を使った真空管アンプである。
とりわけギターアンプは、ピックアップの電気信号を忠実に再生するというより、楽器の一部なので、真空管特有の粒立ったコンプレッション感や豊かな倍音が「いい音」と感じられる。プリアンプ段で入力(ゲイン、ボリューム)を大きくした時に生じる歪み=ディストーションや、大音量で生じるフィードバック/ハウリング音も、エレキギター表現の魅力のひとつとなる。
もっとも日本のローランドJC-120のように、歪みの少ないトランジスターアンプでもクリーンサウンドの美しさで定番アンプになったものもある。
以前も書いたが、ジミ・ヘンドリクスやピート・タウンゼント(THE WHO)の要望に応えて、歪ませることを前提に50W、100Wといった大出力真空管アンプを開発したのが、ロンドンでドラムクリニックと楽器店を経営していたジム・マーシャルだった。
ステージ上にマーシャルのスタックアンプ(キャビネット×2の上にアンプが乗ったスタイル)が壁のように並ぶ光景は、1970年代ハードロック~1980年代メタルの象徴であり、2012年の「ヘドバンギャー!!」のMVでも、SU-、YUI、MOAの後ろにWall of Marshallが並んでいる。


しかし実際には、BABYMETALのライブで、ステージ上に大きなスタックアンプが並ぶ光景は見られない。これはなぜか。

(つづく)