エルフの国へ(7) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日1月6日は、2013年、NHK「ミュージックジャパン」でPerfumeと共演し、「Kawaii girl Japan」に出演した際には、再び「世界征服」を宣言、2017年には、RED HOT CHILI PEPPERSのUSツアーに帯同することが発表された日DEATH。

北欧のメタルバンドの表現には、ステレオタイプな西欧キリスト教文化とは異なる北欧神話の世界観が含まれている。
例えば、北欧メタルの先駆けといえるEUROPEが1986年にリリースし、世界的大ヒットとなった「The Final Count Down」の「ファイナルカウントダウン」とは、キリスト教的な「審判の日」ではない。


一番の歌詞は「We’re leaving together, but still it’s farewell. And we’ll come back to Earth, who can tell? I guess there’s no one to blame we’re leaving ground, will things ever be the same again?」(ぼくらは一緒に去る。それはやはりお別れだ。ぼくらはいつか地球に戻ってくるだろう、誰がいえる? ぼくらが地上を去ることを非難する者は誰もいないはずだ、ものごとが再び同じになることも。)となっており、「It’s The Final Count Down」が繰り返されるのがサビである。
二番は「We’re heading to Venus, and still we stand tall. Cause maybe they’ve seen us and welcome us all, Yeah, With so many lightyears to go and thing to be found I’m sure that we ‘ll all miss her so.」(ぼくらは金星へ向かう。そして威風堂々と立つ。たぶん彼らはおれたちのことを見たことがあるから、俺たちを歓迎してくれるだろう、何光年もかけて行き、見つかるものは、ぼくらがみんな彼女(地球)を恋しく思うことだろう)である。
これは一体どういう意味か。
これは、滅びゆく地球を離れ、何光年もかけて金星へ移民する歌なのだ。「ファイナルカウントダウン」とはキリスト教的な「最後の審判」へのカウントダウンではなく、移民船=ロケットの発射のことである。
SF的といってもいいが、滅びゆく地球のイメージは、「世界の終わり」という北欧神話の終末観ではないか。
「ぼくらは威風堂々と立つ」とか、「彼ら」=先住の金星人は「ぼくらを見たことがあるから歓迎してくれるだろう」というのは、「ぼくら」の強さを知っているから、迎え入れてくれるだろう、もし歓迎してくれなかったら、力づくでも征服してやるという底意が含まれている。
これは、まさしく北欧ヴァイキングの決意ではないか。
北方ゲルマン人=ノルマン人は、アイスランドへの移民、フランスのノルマンディー公国からイギリス征服王朝を樹立したノルマン・コンクェスト、南イタリアのノルマン・シチリア王国、そしてアメリカ建国に至るまで、世界中に移民してきた。
移民したのちも地球=故郷を恋しく思うだろう、いつか戻ることもあるだろうというのは、彼らならではの心情なのだろう。
こういう感覚は、ぼくら日本人にはなかなか理解できない。
アジア大陸東端の島国である日本は、様々なルートを通ってやってきた移民によって形成された。異なるバックボーンを持つ人々が共存するため、日本人は、国内の「和」を第一義に考え、外国へ移民=侵略することは、歴史的にほとんどなかった。
桃山時代の朝鮮出兵や、戦前の台湾・朝鮮併合、満州国建国は、あくまでもスペイン・ポルトガル、欧米列強・ロシアなどの外的脅威に対する防衛ラインの形成に主眼が置かれていた。
戦後、GHQによるWGIPによって「アジア侵略」だとされた日本軍の海外進出も、アヘン戦争を目の当たりにした幕末の志士たちが「このままでは列強に植民地化されてしまう」と考え、当の欧米諸国に学んで明治維新=近代化を成し遂げ、国際情勢に対応して、本土の「外」に前線を広げていった結果に過ぎない。それが、戦後の政治思潮の中では、戦前の日本=悪の帝国とされ、韓国では、秀吉による朝鮮出兵も、日本人の「生来の侵略性」の証拠とされた。
だが、そんなのはフェイクだ。
日本史は争乱の連続だが、弥生時代から明治時代の約1600年間で、日本人が外国人と戦ったのは、663年の白村江の戦い、1019年の女真族による対馬・壱岐・筑前への襲来(刀伊の入寇)、1274・1281年の蒙古・高麗軍による元寇、1592・1597年の朝鮮出兵のわずか4回だけで、うち2回は侵略者に対する迎撃である。
外的脅威が存在しなければ、日本人が自ら海外へ出て行って戦うことはないのだ。
それは、大陸の戦乱を逃れて弥生人が到来するまで、1万年以上も続いた縄文時代のDNAによるものだろう。
逆に言えば、海外で活躍する日本のアーティストが少ないのは、言葉の壁や、国内だけである程度食えてしまう市場規模といった要因だけでなく、海外へ飛び出そうとするDNAが希薄だからではないか。
この点でも、BABYMETALは「日本人離れ」しており、ヴァイキングの末裔である北欧メタルバンドに近いのだ。


2014年に欧米市場へ進出したBABYMETALを初めて表紙にした『METAL HAMMER』の編集長アレクサンダー・マイラスは、2016年4月の4ウェンブリー・アリーナ公演のインタビューで、BABYMETALの最大の魅力を「勇気だと思います。」と述べていた。(『QJ』Vol.125、P.27)
日本人でありながら、国や言語、「アイドルとメタル」というジャンルの壁を超えて、「世界征服」へと乗り出すのは、並大抵のことではない。
しかも、2014年7月当時、SU-は16歳、YUIとMOAは15歳になったばかりだった。
そのヴァイキング・スピリットは、いったいどこから来たのか。
ぼくの考えでは、それこそメタルのパワー=キツネ様の力だ。
北欧のメタルバンドがモチーフとする北欧神話は、キリスト教伝来以前の古ゲルマン~ノルマン人の世界観であり、いわゆる西欧キリスト教の世界観とは異なる。
北欧神話の豊饒の女神フレイヤは海神ニョルズの娘で、双子の兄男神フレイは妖精エルフの王である。妖精エルフは、圧政に苦しむアイスランド人の心の拠り所だった「隠された人々」、岩山の下に住む白キツネの化身である。
日本の豊饒の女神豊受大神=宇迦之御霊もまた、海神素戔嗚尊の娘であり、キツネを眷属とする。
BABYMETALは、2010年の結成時、KOBAMETALが教えたメロイックサインを「影絵のキツネさん」だと思い込み、それ以降「メタルの神キツネ様に召喚された幼いメタルの魂」とされ、キツネサインをシンボルとしてきた。それは偶然だったのか。
つまり、日本のアイドルでありながら欧米市場に挑戦したBABYMETALのメタルのパワーとは、北欧メタルバンドを支える妖精エルフ=キツネ様の力なのだ。
だから、BABYMETALのメジャー・デビューシングル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のサビでは、「♪キツネ(飛べ!)キツネ(飛べ!)きっと飛べるよ」と歌われるのだ。
あのキツネが実在の動物なら、飛ぶわけがない。妖精エルフの化身だからこそ、天高く飛ぶのだ。
YUIの欠場~脱退以降、ライブで「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が演奏されたことはない。
今年のPMなごや~全米横断ツアーでは、久しぶりに「ヘドバンギャー」がセトリに入った。
来月から始まる『METAL GALAXY』を引っ提げた「汎ヨーロッパツアー」。
北欧の地で、森メタルの「Oh!MAJINAI」が披露されるのも楽しみだが、正統メロスピの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」も、久しぶりに演奏されるといいなあ。
(この項終わり)