ラウド系アイドルの現在(4) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日12月26日は、2014年、TV朝日「MステSuper Live 2014」に出演し「イジメ、ダメ、ゼッタイ」披露した日DEATH。

 

明日12月27日の「ミュージックステーションウルトラスーパーライブ」(テレビ朝日系)のタイムテーブルが発表されました。BABYMETALの出演時間は、18:00~19:00の時間帯とのこと。3年8か月ぶりの地上波出演となりました。お見逃しなく。(20:38追記)

2018年1月31日に「踊れるロックアイドル」をコンセプトとして結成され、2018年4月に1stシングル「ROCKSTEADY」でデビューしたアイドルグループQUEENS(スターレイプロダクション所属)の特徴は、楽曲の多くをメンバー自身が作詞作曲し、振り付けもメンバーが担当していることである。
メンバーは、URUMU、RIHO、NANAMI、EMIRY、RINA、MAHOの6人。


2018年、2019年と連続して「TOKYO IDOL FESTIVAL 2018」に出演しているから、フォーマットはアイドルである。
だが、活動姿勢はロックバンドに近い。
1stシングル「ROCKSTEADY」はダンサブルな16ビートだが、軽快なギターのカッティングとスラップベースが強調され、2018年10月にリリースされた2ndシングル「FLAGSHIP」は、ディストーションがかかったリフが印象的で、確かに「ロックアイドル」という感じがする。
これらのシングルカット曲の作詞作曲はuma sonicという人だが、2019年6月にリリースした1stアルバム『RXX』は、収録曲12曲中6曲が、メンバーのNANAMIの作詞作曲によるもので、フィニッシュ曲の「Never Ending Song」は、彼女たちが経験している等身大の日常を描いた歌詞を8ビートの王道ロックに乗せ、間奏部ではエモーショナルなギターソロが響き渡る。
振り付けは、メンバーのMAHOが担当。ライブでは、6人が歌割に従って歌い踊るが、いずれも歌唱力・表現力が高い。
2019年は、定期公演「Wednesday Star Live」をスタートし、大阪での初単独ライブ、「Yatsuiフェス」「ギュウ農フェス」「TIF2019」「THE ODAIBA 2019 真夏のアイドルライブ」、@JAM EXPO 2019」などにも出演して、2019年上半期アイドル・ポップス系ライブ本数99本で第3位となり、12月には東名阪ツアーを行った。
楽曲はヘヴィではなく、メタルでもないが、確かにロックであり、「歌って踊れるロックアイドル」というキャッチフレーズに偽りはない。
デビューからまだ2年であり、地上波への露出は『MUSIC B.B.』(TOKYO MX)のみ、配信系でもAbema TV『矢口真里の火曜The NIGHT』(2019年1月、6月)、アマゾンPrime『ピンキリ ~アイドルのピンからキリまで聞き取りマシュマロ~』(#11、#12)にとどまっており、単独ライブの会場も小規模だが、すでにコアなファンがついている。
メンバー自身が楽曲や振り付けに関わり、ライブ活動を中心にするスタイルは、やはりバンド的であり、それを可能にするファン市場があるということだ。

2018年2月に「渋谷で終電を逃した女の子たちが暇つぶしに結成した」というコンセプトで活動を開始した「始発待ちアンダーグラウンド」もロック色の強いユニット。


2018年4月にリリースされたデビューEPの収録曲「フラストレーション」は、疾走感のあるロックギターリフを骨組みにして、エモーショナルな歌唱力で若い女性の不安な心理を表現している。とてもアイドルとは思えないロックチューンである。
同じく収録曲「夜の終わりに」は、エルビス・コステロを思わせるディストーションギターのリフにポエトリー・リーディングで構成されている。
2019年3月に1stアルバム『始発待ちアンダーグラウンド』がリリースされ、シングル・カットされた「風街タイムトラベル」は、ロンドンパンク+中森明菜といった趣。間奏部のエコーのかかったサイコビリー風のソロもメチャメチャカッコいい。
同じく「感情線惑星」もミドルテンポの16ビート曲だが、終始一貫ギターリフが響き渡る中、そこへエモーショナルなコーラスが重なり、ロック楽曲として非常にレベルが高い。
MV中のダンス、歌の表現力、MV自体のクオリティも高い。ぼくの勝手な印象でいえば、始発待ちアンダーグラウンドは、楽曲のロックっぽさと完成度ではロック系アイドル最高レベルではないか。
2019年は、3月に「吉田豪×南波一海の“このアイドルが見たい”2019初雷」に出演し、タワレコ嶺脇育夫社長にもお目通りし、5月には「ギュウ農フェス」にも出演したが、ここでメンバーが1名脱退して、現在はオクヤマ・ウイ、フカミ・アスミ、ムラタ・ヒナギクの3人組になっている。11月9日に新メンバーオーディションを開催したので、来年早々には新メンバーが誕生するのだろう。

このほか、自称・他称を問わず、ライブハウスを主戦場としたラウド系/ロック系アイドルグループはたくさんあり、もはや一つのジャンル=市場に成長したと思う。
もっともオールドメディア的にはTVに出ないアイドルグループはすべて「地下アイドル」とくくられることも多い。ライブハウスが地下だからといって、楽曲がロックかどうかはわからんだろうが。
そんなのは無視して、ぼくの狭い知見の中で「これはもうロックだな」と思ったのは以下のグループ。
メロコアをテーマにして2015年に結成されたMalcolm Mask McLaren(現在は3人組)は、青春ロックの雰囲気があり、「Light on!!」はギターの音が気持ちいい。
2018年1月にデビューした爆裂女子-BURST GIRL(2019年9月以降は5人組)は、NYパンク風の「GREAT FXXKING MY WORLD」や、メタルコアっぽい「超革命」など、明るく元気の出るパンク楽曲を展開している。
幽世テロルArchitect(別表記KAQRIYOTERROR)はコドモメンタル所属で、ゆくえしれずつれづれの姉妹ユニットに当たり、エレクトロニカ、ピコリーモ系の楽曲が多い。「アイデンティティークライシス」はPassCode風と呼べなくもない。
LAST IN MY CULTは、2019年2月美月リカのプロデュースでデビュー。「Living Corpse」はパンキッシュなスカ曲調だが、なぜかちょっと椎名林檎の匂いがする。
現在は、YouTubeでMVやファンカムを視聴できるし、気に入れば配信シングルやアルバムを購入することもできる。
大手レコード会社と契約してプロモーションしてもらい、地上波TVに出なければ、音楽を必要とする「消費者」に届かないという時代ではない。
「消費者」は、ネットで知ったひとつの楽曲に心動かされ、ライブに足を運び、メンバーやグループの成長を共に体験する。それが現在のラウド系/ロックアイドルへの関わり方だ。
それだけに、グループの評価は、可愛さや親しみやすさやバラエティ対応力ではなく、音楽の質、表現のクオリティによって決まる。
思えば、1970年代から続いてきたアイドルというジャンルにおいても、高い音楽性を持つ歌手やグループが現れたことがないわけではない。だが、2000年代以降の「アイドル戦国時代」には、メンバーやグループの「がんばり」や「成長」に焦点が置かれ、音楽性は等閑視されてきたきらいがある。
それが、ここへきて音楽性が勝負を決める決定的な要素となった。
要するにロックバンドの評価と同等に、アイドルグループも音楽性で評価されるようになったのだ。
それはBABYMETALをはじめ、この項でご紹介したグループが、血のにじむような努力でファン層=ラウド系/ロックアイドル市場を切り拓いたおかげである。
第2回でご紹介したBiSHの「オーケストラ」@大阪城ホールは、誰が見たって感動ものである。
大事なことは、「Kawaiiの力」で書いたように、ロックであることは、アイドルらしさと矛盾しないし、むしろ年をとっても魅惑的な存在であり続ける原動力、すなわちKawaiさを完成させるものだということだ。
ラウド系/ロックアイドルというジャンルこそ、日本のアイドル文化がロリコンとかオタクとかnerdsと同じ枠にくくられる社会現象の殻を破り、世界に誇れる音楽を生み出した証ともいえる。
個人的にいえば、オジサンになって、ようやく日本において、「ロック」と「歌謡曲」がひとつに融合する時代になってきたという感慨もある。
世界には、アイドルどころじゃなく、自由な表現自体が規制されている国もある。それどころか、生まれた民族の母語を話しただけで再教育キャンプに送られることさえある。
それに比べれば、日本には表現の不自由なんてない。日本国民の総意に基づく国民統合の象徴の写真を燃やしたって逮捕されないし、公金を貰えないと噛みつけば、オールドメディアが応援してくれる。
そんな国に生まれた幸せをかみしめつつ、BABYMETALをはじめ、ラウド系/ロック系アイドルの活躍をこれからも応援していきたいと思う。
(この項終わり)