ラウド系アイドルの現在(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日12月23日は、2017年、WOWOWにて「巨大キツネ祭り@大阪城ホール」が放送された日DEATH。

BABYMETAL公式から、2020年3月20-21日に行われるKNOTFEST2020@幕張メッセへの出演決定のお知らせ。


あと、12月27日の「Mステウルトラスーパーライブ」は、タイムテーブルが未発表ですが、ベビメタの披露曲は、「PAPAYA!!」だとのこと。Tak Matsumotoつながりで「DADADANCE」を予想していたのは外れました。

 

「ラウド系アイドルの現在」の続き。

PassCodeについては、ぼく自身も2017年のサマソニやZENITH TOUR、握手会に足を運んだし、このブログでも何度か取り上げている。
全国のライブハウスツアーをコンスタントに続けており、サマソニや2018年のツアーでは、生演奏のバンドが帯同し、台湾・韓国でのライブも行った。同年、イギリスのJPU RECORDSから、海外デビューアルバム『Ex Libris PassCode』(ベスト盤)をリリース。
2019年4月にリリースしたメジャー2ndアルバム『CLARITY』は、オリコンウィークリーで10位、ビルボード・ジャパンで7位を獲得し、サマソニ2019ではLOUDNESSがトリを務める日のRainbow Stageに出演。2019年10月~2020年1月まで、盛岡から沖縄まで13都市を巡るライブハウスツアーの真っ最中である。


メンバーは、南菜生、高島楓、今田夢菜、大上陽奈子の不動の四人組。
リーダーの南奈生は、かつてBABYMETALファンであることを公言していたが、ライブでは激しい煽りで観客を引っ張る。今年の沖縄ライブで、ペットボトルの水で滑って転倒し右足を負傷した。
アリッサ・ホワイト=グラズばりの女声グロウル担当の今田夢菜は、PassCodeの代名詞のような存在だが、2017年当時、ライブ中に倒れ込むシーンを目撃した。のちに子宮関係の病気であることが発表され、数カ月ステージを休んだ。今は回復しているようだ。
高島楓はキレのあるダンスと個性的なハイトーンの声質を持ち、大上陽奈子は安定したピッチで歌い上げるボーカルに定評がある。
ちなみに大上陽奈子は、メンバー最年少の1998年6月生まれで、モーニング娘。10期生の最終候補として選考合宿に参加した。その経験はPassCodeの活動に生きているとも言っている(『Rolling Stone Japan』2019年6月19日)。
もし、大上陽奈子がモー娘。に入っていたら、石田亜佑美、佐藤優樹の同期となり、同学年で1期先輩の“エース”鞘師里保とともに、「モー娘。第二の黄金時代」を支えるメンバーとなっただろう。
PassCodeの音楽性は、今更ぼくが書くまでもないが、プロデューサー平地孝次のセンスによるエレクトロニコア(ピコリーモ)、シューゲイザー、ポストロック系のラウドロックであり、1曲の中で、オートチューンの歌割、転調、リズム変換が繰り返されるのが特徴。
振り付けはELEVENPLAY出身のKOHMENが担当しており、4人のダンススキルは、シンクロ率、キレ、表現力、スタミナともにラウド系アイドル随一だろう。
楽曲はほとんど平地孝次が作曲しており、メンバー、バンドが固定していることもあって、PassCodeの楽曲は、ちょっと聴けばすぐにわかるほど、個性が確立している。
2ndアルバム『CLARITY』は“光”をモチーフとしており、1stアルバム『ZENITH』に比べて、より楽曲がメロディアスになり、歌詞の内容もポジティブになっている印象。
アルバム冒頭の「PROJECTION」は、PassCodeらしく転調やリズム転換が多い激しい曲調で、半分は英語歌詞だが、公式MVとは別のティーザーMVは、ゴッホやピカソが愛飲した悪魔の酒とも呼ばれるフランスのリキュール「ABSENTE(アブサン)」とコラボし、「才能を開眼せよ」というキャッチコピーが入る。要するにそのぐらいカッコイイ。
シングルカット曲「Ray」は、大上陽奈子をメインボーカルに据え、南菜生と高島楓のオートチューンボーカルや今田夢菜のグロウルを交え、PassCodeらしさを存分に残しながら、転調がなく、キャッチーなメロディで、光を求めて前に進むメンバーの心境が歌い上げられている。後半1フレーズだけ聴ける今田夢菜のノーマルボイスは可愛らしく、グロウルとのギャップに驚かされる。
https://www.youtube.com/watch?v=bI0_Hx__dFU
「horoscope」は、南菜生が初めて作詞を担当した曲で、「♪音楽は魔法かなんて解らないけど 小さな希望 この孤独を包み いつか雨がやむと信じてさ」「♪この声に乗せ 色づけ 夜空よ 照らして 夜空を」というリフレインが感動を呼ぶ。
前にも書いたが、PassCodeというグループには、固定メンバーそれぞれが個性を確立しつつ、ひたすらライブパフォーマンスのクオリティで勝負する清々しさを感じる。
大規模なスタジアムではなく、ライブハウスを地道に回り続けるPassCodeの活動スタイルは、BABYMETALとはまた違った意味で、日本のラウド系アイドルのレベルの高さを示していると思う。

表現力ではラウド系アイドルグループ随一とぼくが思っているBiSHも、年間40公演以上のライブハウス/ホールツアーを行っている。
前身のBiSについては触れないが、2015年にデビューした当時のキャッチコピーは「新生クソアイドル」(Brand-new idol SHiT)で、馬糞まみれになるMVなど、過激なプロモーションで話題性を狙う意図がミエミエだったが、avex traxからメジャーデビューするにあたって「楽器を持たないパンクバンド」というキャッチコピーに変わった。
アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人のメンバーが固定した2016年後半からは、激しいライブパフォーマンスに賭けるロックアイドルのアイデンティティを確立した。
メジャーデビュー以降のシングルは、2016年5月「DEADMAN」が5位、2017年3月「プロミスザスター」が4位、2018年3月「PAiNT it BLACK」が1位、2018年6月「Life is beautiful/HiDE the BLUE」が3位、ゲリラリリースの「NON TiE-UP」が12位、2018年12月「stereo future」が4位、2019年11月「KiND PEOPLE/リズム」が2位を獲得。
アルバムは、メジャー1st『Killer BiSH』が7位、2nd『THE GUERRiLLA BiSH』が5位、今年7月にリリースした3rd『CARROTS and STiCKS』は4位だった。
Avexだけにタイアップや地上波への露出も多く、2018年レコード大賞新人賞を受賞。
今年は10月10日には『アメトーーク!』(テレビ朝日)で、「クセがすごい女性グループ BiSHドハマり芸人」が放映されたほど、芸人やお茶の間の知名度が高い。
それだけに、ライブハウスツアーだけでなく、2017年に幕張メッセイベントホール(7000人動員)、2018年5月に横浜アリーナ(同12000人)、2018年12月に幕張メッセ9-11ホール(同17000人)、2019年9月に大阪城ホール(同12000人)といったアリーナクラスの会場をSOLD OUTしており、知名度、人気、実力ともにラウド系/ロックアイドルのトップを走っていると言ってよい。


とはいえ、BiSHの楽曲は、曲調がラウド/ロック的というより、内面的な悩みを抱えた若者の心に突き刺さるような歌詞と分かりやすいメロディラインやコード進行に特徴がある。
例えば、大阪城ホールでの代表曲「オーケストラ」。
https://www.youtube.com/watch?v=uc-q5qS6D9M
この熱狂ぶりは、彼女たち自身が内面的な問題と向き合っているからこそあふれ出る表現力に由来するのではないか。
BiSHも他のアイドルグループと同じように歌割があるが、メインで歌うのはアイナ・ジ・エンドとセントチヒロ・チッチの二人。二人ともSU-METALのような澄み切ったハイトーンではないが、それぞれ観客の心を揺さぶる表現力を持っている。
アイナ・ジ・エンドはハスキーボイスで、SU-METALのようにハイトーンで歌い上げるのではないが、語尾の切り方、短いビブラート、癖のある母音の発音、仕草や表情のつけ方など、生まれつきのブルースシンガーかもしれない。
セントチヒロ・チッチの歌はパワフルで、歌詞をクリアに発音しながら、よく通る声質と安定したピッチで観客の胸に突き刺さる。馬糞塗れMVの「星の瞬く夜に」の彼女のサビの歌いあげは、BiSHが話題性だけでなく、共感を呼ぶ存在になっていく原動力になったと思う。
BiSHの特徴のもうひとつは、メンバー全員が楽曲を作詞することである。
インディーズデビュー以来のアルバム収録曲において、現メンバーでは、アイナ・ジ・エンドが6曲、セントチヒロ・チッチが5曲、モモコグミカンパニーが15曲、ハシヤスメ・アツコが3曲、リンリンが8曲、アユニ・Dが4曲を作詞しているほか、BiSH名義の作詞曲もある。
アイナ・ジ・エンドは、ダンサー経験があったので、BiSHでは振付師を兼任し、作曲も行う。BiSH加入以前に彼女が作詞作曲した「きえないで」は、昨年9月に、セントチヒロ・チッチの「夜王子と月の姫』とともに両A面シングルとしてリリースされ、最新シングルの「リズム」はモモコグミカンパニー作詞、アイナ・ジ・エンド作曲である。
こうしたBiSHのクリエイティビティは、他のアイドルグループにはほとんどないもので、「楽器を持たないパンクバンド」というコピーが伊達ではないことを示している。
BiSHもまた、日本のアイドル文化が到達した、聴く者の心を揺さぶる高い音楽性を証明する存在だと思う。
(つづく)