The Forumディレイ・ビューイング(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月16日は、2011年、BABYMETAL公式Twitterがスタートし、2019年、MGWT in Japan@SSA初日が行われる日DEATH。

5曲目「Shanti Shanti Shanti」を挟んで、6曲目「Kagerou」前の銀河神バンドソロになった。
ここでの新発見は、下手Dark Vader(Chris Kelly)のギターのエモーショナルなビブラートである。
銀河神バンドは、全米横断ツアーを通じてBABYMETALのバックバンドを務めてくれたが、その演奏は、これまでの神バンドに比べて、よりハードで荒々しい印象だった。
最も大きな違いは、ギタリストの出音である。
神バンドの下手Gは、流れるようにスムースなタッチでスケールアウトしたフレーズを奏でる藤岡幹大神がメインだったが、2018年以降、下手に回ったときのLeda神の端正なタッチ、流麗かつ超速な大村神の印象も強く、アンプの音はミドルを落とした「耳に痛くない」ディストーションだった。
これに対して、Dark Vader神は、ミッドハイの強い「前へ出る」音で、ゴリゴリしたマイナーペンタトニックをベースに、粗削りで豪快なフレーズを聴かせた。
特に、下降リックで、5弦あたりでグイングイングインとビブラートを利かせるのが手癖で、指板をこする音が聴こえるくらいだった。
上手GのShadow Trooper(C.J.Masciantonio)は、Dark Vaderとは対照的に、クラシックメタルのシュレッドギター的なフレーズのあと、EVH的なタッピングでソロを組み立てていた。こちらは、どちらかというと速弾き中心で、ゴツゴツした感じはないテクニシャンだ。
「Kagerou」本歌の間奏部は、2・3弦のダブルストップで、「ソソソ、ラ#ラ#ラ#、ドドド、レ#レ#レ#」と上がっていくだけで、ちょっと物足りない感じなのだが、そこからDark Vader神は弦をピックでこすり下ろすスクラッチ音をかけて、上手のShadow Trooper神のクリーン・アルペジオに引き渡していく。
このあたりのプレイヤーのアドリブ性は、かつて「CMIYC」や「悪夢の輪舞曲」の前に神バンドソロを組み込んでいたライブバンドとしてのBABYMETALの魅力が復活したように思った。
この曲から登場したRIHOMETALは、止め・キメがかっちりしたキレ味鋭いダンスで、「Kagerou」のブルージイな曲想を表現していく。
不思議なのは、MOAがMOMOKOと踊るときにはキレや鋭さが目立つのに、RIHOと踊るときはエレガントで柔らかい動きに感じることだ。MOAが合わせているのか、アベンジャー2人の個性によって、MOAのダンスが違って見えるのかはわからない。
もちろんこんなのは、専門家でもないぼくの勝手な印象に過ぎない。だが、大画面で見ると、微妙な違いがよく分かった。
ライブは進み「ギミチョコ!!」の「Give Me」という文字が大スクリーンに映ると、広い会場が大歓声に包まれる。最前列の柵に押しつけられているアメリカ人ファンが、顔を真っ赤にして歓喜の声をあげている。
三人が踊り始めると、客席は一体感に包まれる。ほとんどE単音のリフなのに、異様な熱狂が会場を支配していく。やはり「ギミチョコ!!」はBABYMETALの代名詞なのだ。
間奏部、映画館の観客も手拍子。
その熱狂が冷めないうちに、新曲「PA PA YA!!」がドロップされる。
「んJump!んJump!んJump!…」と煽るSU-の表情が凛々しい。
ぼくの行った映画館では、ジャンプするわけにもいかず、タオルを振る者もおらず、ただ画面を見ているだけだが、小さい声で「パッパパパヤ!」とScreamする人はいた。
映画館特有の吸音壁が、なんとなく盛り上がりを抑え込んでいる感じ。これなら、自宅のモニターで見ていた方が遠慮なく盛り上がれるが、それでも会場の熱気は伝わってきた。
そして「Distortion」の間奏部、SU-の「Sing!」煽りで、ようやく手拍子と「WohWohWohWoh!」の声が出始めた。
だが、「KARATE」では、またじっくり見る感じになってしまい、「押忍!押忍!」と声をあげる観客はいない。さらに、「ヘドバンギャー!!」のヘドバン煽りは、立ち上がれない映画館だとイマイチ盛り上がらない。
さすがに今日イチの声が出たのは、「Road of Resistance」のシンガロングパートとその後の「We are?」「BABYMETAL!!」のC&Rだった。
ぼくらは結末を知っているが、当日The Forumにいた観客は、「ROR」でライブが終わってしまったように思ったかもしれない。だが、会場の客電は点灯しない。
「BABY、METAL」「チャッチャッチャチャチャッ」のアンコールが場内に響く。
アンコールらしいアンコールは、2016年のアメリカツアー(「The One」→「ROR」)以来ではないか。
3分くらい経ってようやく「紙芝居」に無数の星が映る。
ここでのSU-のナレーションは、「The metal melodies become a myth and transcends through time and space for lightyears to come. Like the starry skies that light up the metal galaxies. The metal spirits also bring infinite light. A shining light awaits at the end of odyssey.」
(Jaytc意訳:メタルのメロディは神話となり、時空を光速で超えてゆく。満天の星空のように、メタル銀河を照らす。そしてメタルの魂は永遠の光をもたらす。旅の終わりには、輝く光が待っている。)
ライブ冒頭の「FUTUREMETAL」で「これはメタルではない」と言っておきながら、最後にはメタル一本である。やっぱりBABYMETALは「新しいメタル」なのだ。
ここから「Shine」が始まる。
PMなごやでは、SU-とMOAの二人のパフォーマンスだったが、The ForumではRIHOと三人だった。これがまたよかった。


中元すず香と鞘師里保には、SU-METALとMOAMETALの関係とはまた違った深い関係性がある。
中元すず香が1997年12月生まれ、鞘師里保が1998年5月生まれだから、一学年違うが、アクターズスクール広島では同時期に在籍していた。二人は歌の中元、ダンスの鞘師と並び称された逸材で、ユニットを組んだこともある。
中元すず香は2008年、可憐Girl’sで一足先にデビューし、2010年にアミューズのアイドルユニットさくら学院&重音部BABYMETALに入ったが、鞘師里保は2011年、押しも押されもせぬ元祖「アイドル」モーニング娘。の9期生に選ばれ、一時代を築いた。
1999年7月生まれの菊地最愛にとって、鞘師里保は一学年上のお姉さんで、アイドル好きとしては、中元すず香と同じくらい憧れの人である。2013年のLegend “1999”では、モー娘。の「ラブマシーン」を歌い踊ってもいる。
一方、鞘師里保は、2015年にモー娘。を卒業し、英語とダンスを学ぶため留学しており、今年、3月にハロプロの舞台に復帰したが、6月には世界的に活躍するBABYMETALに日替わりの「アベンジャー」の一人という立場で参加し、横アリ、PMなごや、グラストンベリーにも出演した。
その三人が今、ロサンゼルスの大観衆を前にして、ひとつの舞台に立ち、お互いを見つめ合いながら踊っていた。
フィニッシュはもちろん「Arkadia」。
ここで、冒頭のナレーションが効いてくる。
「Life is a conflict between the LIGHT FORCE and DARK FORCE.」(人生は光の力と闇の力とのぶつかり合いである。)
これが、「Arkadia」サビの「♪今、for your dream, for your faith, for your life」にかかっている。「今、君の夢のために、君の信じるもののために、君の人生のために」である。
SU-もMOAもRIHOも、紆余曲折がありながら、今この舞台に人生を賭けて立っている。
まだ21歳と20歳だから、人生といってもその入り口に立ったばかりだ。だが、三人は幼い頃から人前に立つ仕事をしてきたから、キャリアはもうベテランに近い。
その三人がそれぞれ胸に決意を秘めてThe Forumに立っている。
その重みが、大画面に映る三人の表情から伝わってきた。


「♪光より速く鋼より強く使命の道におそれなく」
「♪どれほどの闇が覆い尽くそうと信じたこの道を歩こう」
行進曲風のリズムの中で歌われるこの歌詞は、BABYMETALの「今」を現わしているといえよう。
それは、2018年に起こったBABYMETALのDarkside神話における「光と闇」のことだけでない。SU-が、MOAが、RIHOが、MOMOKOが、Life=人生を歩みだした「今」のことである。
『METAL GALAXY』のリリースライブというアーティストとしてのタイミングだけでなく、それぞれのメンバーが人生の岐路に立ち、一歩前へと踏み出したタイミングが、The Forumだったのだ。
ぼくらは、その目撃者となった。
ディレイ・ビューイングの会場を出ると雲一つない夜空に満月が光っていた。
いよいよ今日は、Metal Galaxy World Tour in Japan @SSA初日である。