The Forumディレイ・ビューイング(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
1977年の本日11月15日、当時13歳の横田めぐみさんが学校からの帰り道に、北朝鮮の工作員に拉致されました。拉致された方全員の一日も早い帰国を祈念します。

3日遅れのインプレッションDEATH。
2019年10月12日、台風19号が猛威を振るい、全米横断ツアーの集大成、『METAL GALAXY』リリースライブだったThe Forumと同時に行われるはずだった東海、関東、東北のライブ・ビューイングはほとんどの会場で中止になってしまった。
それどころか、居住地域によっては避難を余儀なくされ、河川の決壊で甚大な被害を受けた方、亡くなった方も多かった。あの悪夢はもう一カ月前。時間が経つのは早い。
ぼくが行った神奈川県下の映画館の観客は約200人。ほとんどが、50代~60代のオジサンだった。もちろん、ぼくもその一人だが、今更ながらBABYMETALのコア・ファン層の年齢が高いことに驚く。
座席指定なので、上映直前に、スーツを着たサラリーマン風の男性が駆け込んでくる。
30-40代に見える方々もいたが、オジサンたちの中ではいかにも「若手」という感じ。生演奏のライブではなく、Zepp などライブハウスでのスタンディングLVでもなく、映画館のディレイ・ビューイングで税込み5000円以上は、学生にはちょっと割高だと感じるからかもしれない。ライブ会場でも、YouTubeのインプレッション動画でも、若い女性が増えているというのに。
そうはいっても、11月12日にディレイ・ビューイングを行った映画館は全国39会場で、各会場200名が入ったとすると、約8000人が同じ時間にThe Forum公演を見たことになる。重複している館や人もあるだろうが、10月12日にLVが実施されたのは、北海道から沖縄まで全27館だったから、合わせて約1万5000人がThe Forumを国内のビューイングで見たわけである。
国内ライブ自体が少なく、会場も横浜、名古屋、さいたま、幕張、大阪、神戸といった大都市に限られているため、BABYMETALのライブを身近な映画館で、らくちんに観られるLVは、アリだと思う。


さて、ライブ自体はどうだったか。
ファンカム動画でとぎれとぎれに見て、すでにインプレッションを書いたので、大枠としては変わらない。だが、やはり大画面のプロショットとクリアな音響で見ると、全米横断ツアーをこなし、大舞台に臨んだSU-、MOA、RIHO、MOMOKOの高揚感と、それを大歓声で迎える観客の熱狂が直に伝わってきた。
まずは、「紙芝居」のSU-のナレーションにしびれた。
赤い彗星と青い彗星が大宇宙を飛んできて衝突し、虹色に輝く小宇宙が生まれると、SU-のナレーションが始まる。
「Life is a conflict between the LIGHT FORCE and DARK FORCE. Anyone can become a comic hero or a tragic hero. Just like a clown. Is it hope? Or fear? Thinking about it is useless. Don’t think, Feel.」
(Jaytc意訳:人生は光の力と闇の力のぶつかり合いである。誰もがコミック・ヒーローにも、悲劇の主人公にもなれる。まるで道化師のように。それは希望なのか、それとも恐怖か。考えても無駄だ。考えるな、感じろ。」
SU-の発音は年々進化している。2016年当時、海外のネット掲示板で話題になったLとRの違いはもちろん、cやtやpやthの発音も粒立っていてよく聴き取れる。
そして、今回初めて気づいたのが、冒頭の「Life」という言葉だ。このライブ、あるいは『METAL GALAXY』のテーマは、「Life」=人生だったのだ。
これは後で詳述する。
ここから「FUTURE METAL」が始まるのだが、それは他のライブ会場で映し出されるCGではなく、虹色の惑星から飛び立った黒い正八面体が、宇宙を横切って「メタルの惑星群」へと飛んでいく映像になる。
ここでも、SU-はボコーダーで加工された声だが、「We are on the ODYSSEY to the METAL GALAXY. Please fasten your neck brace to HEAD BANG. Are you still playing guitar? This ain't HEAVY METAL. Welcome to the world of BABYMETAL.」
(Jaytc和訳:私たちはメタル銀河への旅をしています。ヘドバンに備えてコルセットをきつく締めてください。あなたはまだギターを弾いているの?これはヘヴィメタルではありません。BABYMETALワールドへようこそ。)
というナレーションを行っている。
ここでも、「既存のヘヴィメタル」ではない、でもヘドバンが必要な=「新しいメタル」であるという『METAL GALAXY』のテーマがはっきりと打ち出されている。
SU-のナレーションを聴くことで、このライブの位置づけが理解できるようになっているのが、大画面、大音響のビューイングでよくわかった。
正八面体の内部にある2つのブースに、SU-METALとMOAMETALが映画「トータルリコール」のアーノルド・シュワルツェネッガーのように、顔と体がズレたような姿で現れ、「BABYMETAL」のロゴが大写しになる。ちゃんと右上のスカルもきらりと光るのが嬉しい。
17,000人が大歓声を上げると、分かっていることとはいえ、やはり興奮する。
観客が初見だった「DA DA DANCE」は、やはりノリノリの圧巻だった。
「♪ベイビーベビーベイビーメロッ」というScreamは、頑なに「ベイビーじゃなくてベビーメタルDEATHっ」と言ってた2013年頃とは隔世の感がある。
そして、雑誌のインタビューではOTFGKとごまかしていた間奏部の「♪ダダンダッダダンス…オーバーナイトでセンセーション…」というローチューンされたラップのパートでは、MOAがセンターに立っていたので、確定!という感じ。
大画面で見ると、MOMOKOMETALはデカい。SU-、MOAが華奢なだけに、腕を振るたびにブンブン音が聞こえてきそうなパワフルなダンスとコケティッシュな笑顔が、アリーナメタルでもある「DA DA DANCE」の大迫力を生んでいた。


3曲目、聴きなれた「メギツネ」の「♪キーツーネー、キーツーネー…」のアカペラがかかると、17000人の観客は大歓声を上げる。この瞬間はやはりみんなBABYMETALが好きなんだなあという感慨がこみ上げてくる。何度も書いているが、欧米人は和風メタルのこの曲に「ベビメタらしさ」を感じているのだ。
4曲目「Elevator Girl」では、見落としていた事実に気づかされた。
MOAのScream「♪Going up, Going down, Going up, Going to Hell Yeah!」には、2017年のハリウッドヘッドライナーショウでOAを務めてくれたメタルバンドHell Yeahの名前が含まれていた。
元パンテラで、ダイムダック・バレル亡き後、Hell Yeahのリーダーだったヴィニー・ポール(D)は2018年6月22日に亡くなっている。
「Elevator Girl」はその前の5月、Darksideツアーのカンサスシティ公演で初演されているから、追悼の含みはない。ではなぜHell Yeahが「Elevator Girl」の歌詞に含まれているのか。
「解題メタル銀河」で考察したように、「Elevator Girl」の歌詞は「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のアップデート版である。小中学生だった女の子たちが、社会人になって上がり下がりの激しい都会で忙しく暮らしているという歌詞になっている。
ご存じのとおり、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の打ち込みには、DAWソフトにセットアップされていた当時パンテラのヴィニー・ポールのドラムス音源が使われている。
そのご縁もあって、2017年のハリウッドでHell YeahがBABYMETALのOAを務めてくれたのだ。そして、「Elevator Girl」はその返礼でもあり、パンテラ→ヴィニー・ポール=Hell Yeahで、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」とつながっているのだ。
しかし、ヴィニー・ポールは2018年6月に亡くなってしまった。Darksideには、もうひとつの不幸があったのだ。井上ジョーによる「See the whole world spin, spin, spin around」とか、「One day I’m happy, one day I’m a mess」「Hang on cause I will never give up」といったビビットなネイティブ女子を思わせる英訳詞を作り、「Elevator Girl」を配信シングルカットしたのは、そうした背景もあったかもしれない。
大画面を見ながら、そのことに気づいて、ウルウルしてしまった。
(つづく)