何じゃこりゃ!?の逆襲(5) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月11日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

Legend “D”から1年。
2013年12月21日に行われたLegend “1997” SU-METAL聖誕祭@幕張メッセのステージ奥には、巨大な聖母マリア像が鎮座していた。
オープニングに流れるのは、「BABYMETAL DEATH」ではなく、前回のLegend “1999”を引き継ぐ「アヴェ・マリア」。
黒いフードを被りロウソクをもった大人4人と、白いガウンをまとったYUIとMOAが、「ベビメタ歩き」で下手階段から登場し、聖母マリア像にコルセットを掲げる。
これがいったい何を意味するのかは、ライブのラストシーンで明らかになる。
眩い光が放たれると、コルセットをつけたSU-がアリーナ床面から見上げると高さ5mはあろうかというせり上がり舞台に立っていた。
いつの間にかコスチュームに着替えたYUI、MOAと骨シスターズもステージ上でスタンバイしていた。
そしてLegend “D”で披露された「ヘドバンギャー!! -Night of 15 mix-」からライブがスタートした。
これも、Legend “1999”のラストからの引継ぎのようだが、前述したように、EDM/ジャングル風に編曲された「Night of 15 mix」は、「ドンツッドンツッドンツッドンツッ」という表拍16ビートであり、シンセサイザー、レーザービームといった、人工空間の雰囲気が漂うクラブミュージック仕様だった。
2曲目「ド・キ・ド・キ☆モーニング」、3曲目「いいね!」と続いた後、4曲目にSU-ソロのカバー曲「魂のルフラン」(高橋洋子)が演奏された。
この曲はSU-が生まれた1997年に公開されたアニメ映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の主題歌であり、原曲のバッキングは表拍16ビートのフュージョンで、小室サウンドに近いシティポップ風だった。
Legend “1997”の「魂のルフラン」は、原曲ではハープで演奏される導入部のバッキングを幻想的なプログレ風のシンセサイザーサウンドにしてSU-の歌唱力を見せつけ、「♪魂のルフラン」に続く部分は、表拍のまま、2バスドラが「ドドスコドドスコ…」と入り、本歌の「♪蒼い影に包まれた素肌が…」に入ると、ベースとバスドラで「ドドドッド、ドドドッドッドスコスコドドスコ」というようなリズムを出し、「♪命の行方を問いかけるように…」のところは「ドッツッドッツッドッツッドッツッ」と表拍を強調するが、サビの「♪私に還りなさい生まれる前に…」の部分は「ドッツッドドツッ、ドッツッドドツッ、ドッツドッドツッ…」と完全なメタル仕様の裏拍2ビートになる編曲だった。


観客も裏拍で、「(ん)オイ!(ん)オイ!」と合いの手を入れた。
2013年末の時点で、会場には赤いサイリウムこそ多かったが、BABYMEYALファンは、「合いの手は裏拍」という共通認識を持っていたのだ。
そして、5曲目「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」をはさんで、6曲目に新曲「ギミチョコ!!」が初披露された。
観客は、新曲が初披露されることも、ましてそれがオフィシャルMVになることもまったく知らなかった。
青いバックライトに照らされて、斜めのポジションでステージに立った三人が「…Give me Chocolate」というグロウルに合わせて倒れ込むように曲が始まった。
「ギミチョコ!!」は裏拍ではない。
BMP=221という猛スピードで、「ズンズンズンズンズンズンズンズン…」という無機的な全拍リズム。

ギターのリフは、7弦5F6弦7F→7弦4F6弦6F→7弦3F6弦5Fを、「タンタンタン(ツ)ターンタンタンタン(ツ)ターンタンタン(ツ)ターンタンタンタン(うん)」というシンコペーションの入ったリズムで繰り返し、そのあとは「ツツタツツタツツ」のリズムで6弦開放→6弦12F→6弦開放→6弦13Fと無機的に弾き続ける。
その間、調子っぱずれのキーボードが鳴り響き、三人は両手の人差し指で頭を指さしながら、観客を挑発するような視線で、ヘンテコなダンスを繰り広げる。


そして、MOA「あたたたたーたたーたたたズッキュン!」YUI「わたたたたーたたーたたたドッキュン!」「ズキュン」「ドキュン」ズキュン」「ドキュン」「ヤダヤダヤダヤダ、ネバネバネバー!」と続く素っ頓狂なScreamにビックリすると同時に、SU-が「♪C!I!O!(Check It Out、チェケラ)チョコレート、チョコレート、チョチョチョちょーだい…」と歌いだす。
ここは、E→Caug→C#m→E△というロマンチックなコード進行で、リズムもシンコペーションを入れた8ビート裏拍になり、それまでのヘンテコぶりを打ち消す。
しかし、つかの間の夢のような歌パートが終わると、また全拍E単音のヘンテコシークエンスに入っていく。
「ギミチョコ!!」は、今までのどんな曲にも似ていなかった。
「既存のメタル」とは全く違う。
「ズキュン」「ドキュン」なんてScreamするメタルは存在しなかった。アメリカンポップスみたいなE→Caug→C#mのクリーンコードを使うメタルなんてなかった。
ところが、間奏部のギターソロになると、E単音をバックに、鬼のような速弾きでアウトなソロが奏でられ、最後はワーミーペダルを使った奔放なフレーズが放たれた。
ワケが分からない。
複雑な構造を持っているわけではない。むしろシンプルだ。
エクストリームと言えばそうだけど、Kawaiiの極致と言えばそのとおりでもある。
要するに、これぞ「何じゃこりゃ!?」であり、BABYMETALがやるからこその「新しいメタル」の誕生だった。
この初披露の映像がそのままオフィシャルMVになり、2014年2月25日の初公開から数カ月で視聴件数2000万回を突破した。シングルカットされたわけではないが、海外のリアクションサイトで大きな話題になったのだ。
さらにあのMVが、大観衆が熱狂するライブであること、最後に「See you in the Mosh’sh pit」と出ることで、欧米人に「ライブに行ってみよう」と思わせる動機づけにもなった。
約8000人の幕張メッセの観客は、「世界征服」を目指すBABYMETALの重要な要素だったのである。
(つづく)