何じゃこりゃ!?の逆襲(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月7日は2016年、テレビ東京「Youは何しに日本へ」で、イギリス人の23年さんことリーさんの東京ドーム参加、日本人メイトとの交流の密着取材が放送された日DEATH。

3rdアルバム『METAL GALAXY』で、BABYMETALは様々なスタイルの音楽をメタル要素と「融合」して、新しい音楽の姿を提示した。
とりわけ「DA DA DANCE」、「Brand New Day」、「↑↓←→BBAB」、「BxMxC」など、ユーロビート、シティポップ、ヒップホップ、ラップと融合した曲調は、メタルとは水と油であり、メタルエリートからは再び「何じゃこりゃ!?」と思われている。
これを、『PMC Vol.15』でインタビュアーの阿刀大志は「何じゃこりゃ!?の逆襲」と名づけた。(P.24)
そのキャッチフレーズをお借りして、BABYMETALというユニットにおいて、この手の音楽との「融合」は、初期段階から試みられていたことを考察してみたい。
まずは、メジャーデビュー前の2012年12月20日に行われたLegend “D”~SU-METAL聖誕祭~@赤坂Blitzから。


このライブのテーマを一言で表すなら、BABYMETAL=メタルの多様性を示したということになろう。
オープニング。
「メタルレジスタンスの狼煙は上がった」というナレーションに続いて、巨大なBABYMETALロゴがステージ前の紗幕に映し出され、「♪ダダダダダダダッ、ダダダダダダダッ」というドラムスが響き渡る。「BABYMETAL DEATH」だ。イントロのギターリフからの「キイーン」というピッキングハーモニクスを合図に紗幕が落ち、3人の姿が現れる。
「BABYMETAL DEATH」は、TIF2012やサマソニ2012でショートバージョンが披露されていたが、10月21日のLegend “I”@渋谷O-EASTで、初めてロングバージョンとして演奏された。
Kawaii容姿の「アイドル」とは思えないデスメタルの曲調であり、「メタルレジスタンス」のために召喚された少女たちが、降臨したメタルの神キツネ様のパワーでメタル戦士へとトランスフォームしていく様子を表現している。
演奏は骨バンドの当てぶりによるカラオケ音源だが、十分にエクストリームだった。
暗転後の2曲目は、「君とアニメが見たい」。
この曲は、2012年3月7日に、インディーズながら、さくら学院と切り離されたBABYMETALの初シングルとなるキバオブアキバとのスプリットCDが発売された、最初期の貴重なレパートリーだった。


アニメオタクが女の子を部屋に招く切ない妄想をテーマにしており、メタルリフに乗せて、SU-の歌部分とYUI&MOAの合いの手、さらにセリフ/ラップパートで構成されている。
特にセリフ/ラップパートに注目してみると、1番は「♪君とアニメが見たいアニメが見たいアニメが見たい(チョー見たーい)…さあおいでー(こいやー)」のあと「(MOA)そろそろお家に来ない?今日はいっぱい歩いて疲れた(YUI)前にほら話してたよね?君のテレビは割とダイナマイト」でセリフっぽく、2番の「色々散らかった部屋…」も朗読調のセリフだが、3番になると演奏が「Kagerou」そっくりのR&Bリズムになり、「(YUI)君をかーえさないしDVDも返さなーい」「(MOA)二人を邪魔するものなんてなーい」「(YUI)おーわったーら次に見るものをきーめよーう」「(MOA)ふーたーりーのこれからを話そうよー」とラップ調になり、そこからメタルギターのソロが始まる。
ラップメタルといってしまえばそれまでだが、BABYMETALは、メロスピ、デスメタルといった日本人好みのいわゆる正統派メタルではなく、メタルの多様性を示していたのだ。
3曲目の「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」は、「ヘドバンギャー!!」のカップリング曲で、コルセット祭り@目黒鹿鳴館昼の部で、初めて生披露された。
この曲もメタルの多様性を体現した曲である。
SEからの曲始まりはYMO風のシンセサイザー。
曲全体のリズムは16ビート&表拍なのだが、サビ=表拍、ブレイクダウン=裏拍の繰り返し構造となっている。
最初の「♪電気を消して元気をチャージ…」から始まるサビは、YUI、MOAのモンキーダンスのリズムと「ウキウキミッドナイト!」という合いの手で、表拍なのがわかる。
サビ終わりからグロウルの「えいやー」までは、「ギリギリ…」というSEを入れ、ブレイクダウン風にして、ヘドバンしやすい裏拍でメタル色を強めているが、続く「♪ゲソ!ゲソ!イカゲソが食べたい…キャワイイお菓子にしようよ」までは完全な表拍になっており、「♪少年少女よ…今集まれパーリナイッ」のところで裏拍を強調して、擬似8ビートになり、「あなたとわたしYou & Me…キンキラリン!」の合いの手パートは、裏拍のブレイクダウンにして、デスメタルっぽくしている。
再びサビの「♪電気を消して元気をチャージ…ピカピカ☆ミラーボール」は16ビートの表拍だが、それが終わるとブレイクダウンで、シンセサイザーによる機械音、「キラキラ星」のメロディが流れ、3人は現代舞踏のような振り付けで踊る。
「ミッドナイト、ミッドナイト…」のグロウルのあとは、また「♪少年少女よ…」の擬似8ビートとなり、「♪あなたと私 You&Me…」の合いの手パートはブレイクダウンの裏拍、「♪眠くなってきた…」からはまたダンサブルな16ビート表拍になり、そのまま「♪電気を消して元気をチャージ…」のサビが繰り返されつが、後奏はまたブレイクダウン風で、最後は3人がキツネサインで固まるという目まぐるしい展開になる。
要するに、「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」は、16ビート表拍とデスメタル風の裏拍ブレイクダウンが交互にせめぎ合う曲なのだ。
この当時から、KOBAMETALあるいはチームベビメタの中に、「アイドル」の主流だったダンサブルな16ビートにメタル要素をどう組み込むかが、大きなテーマだったのではないか。なぜならBABYMETALはメタルを標榜しつつ、16ビートで踊ることの多いダンスをコアコンピタンスとする「メタルダンスユニット」だったからだ。
それがよりはっきりするのが、4曲目の「White Love」(SPEED)、5曲目の「Over The Future」(可憐Girl’s)のカヴァーだった。
(つづく)