解題メタル銀河(15) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月5日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

「PAPAYA!!」と「Kagerou」を双子の曲として考察したので、この15回で、『METAL GALAXY』収録全16曲のぼくなりの解題は最終回DEATH。


アルバムを締めくくるのは、新生BABYMETALのアンセムともいうべきパワーメタル「Arkadia」である。
作詞作曲はNORiMETAL。
『METAL GALAXY』では「Night Night Burn!」も作詞作曲者としてクレジットされている。
BABYMETALのデビュー曲「ド・キ・ド・キ☆モーニング」を村カワ基成と共に作曲したのも彼であり、「メギツネ」(作詞作曲、詞のみMK-METALと共作)、「Road of Resistance」(作曲のみMish-Mosh、KYT-METALと共作)、「ヤバッ!」(作曲のみ)、「シンコペーション」(作詞作曲、詞のみKxBxMETALと共作)、「Amore-蒼星-」(作詞作曲、詞のみMK-METAL、KxBxMETALと共作)も氏の作品である。
さくら学院のファーストアルバム『2010年度-Message』に収録された「ハッピーバースデイ」、「プリンセス・アラモード」(以上クッキング部ミニパティ)、「Brand New Day」(新聞部 SCOOPERS)を作曲した「のりぞー」こそ、NoRiMetalの別名である。
本業は三人組ユニット「Dugout」のボーカル&ギター担当。
さくら学院への楽曲提供は2010年度のみで、2011年度以降の楽曲・アルバムにはクレジットされていないが、BABYMETALについては、重音部の段階からずっと関わり続けているわけで、チームベビメタ=「キツネ様」の一人と言ってよい。
NORiMETALの楽曲は、キャッチーなメロディで、歌詞のテーマをド直球で訴求するのが特徴だと思う。
「Arkadia」は、「Road of Resistance」「Amore-蒼星-」に続くパワーメタルの曲調であり、BABYMETALの愚直なまでにメタル音楽の可能性を信じて突き進む一途さ、意志の強さ見事に表現している。
宇宙を旅するようなメロトロンっぽいシンセサイザーのインタールードは、Keyこそ違うが、「Shine」からのモチーフを引き継ぎ、F→G→Aの上昇転調シークエンスを繰り返す。
それが高まると曲が始まる。
イントロはKey=CのAm→C→F→Gの繰り返しだが、次にG#→B♭と転調してツインギターのところはKey=D#で奏でられ、そこからまた転調してKey=Cに戻る。
キャッチーなリフ、メロディ、コード進行なのに、転調の連続でカッコよく仕上げている。
編曲は教頭。
これがこの曲のポイントで、早くもイントロでそれが垣間見られる。
歌に入る。
「♪嗚呼小さな胸に宿る」のところのメロディは、Am→Am△→Am7onG→DonF#の下降クリシェが使われている。
これは、「No Rain No Rainbow」の「♪いらない何も明日さえも」のところと全く同じだが、その後は「♪暗闇(F)に火を灯す(G)欠片は」と素直に受け、これを繰り返している。
続くメロディも「♪(F)Glorious! You just(Am)be ambitious誇(G)り高く旗を掲(C)げて」と、非常にシンプルなコード進行だが、2回目は「♪(F)Glorious! You just(Am)be ambitious星(F)の欠片(G)を抱い(Asusu4→A)て」と転調しながらsus4を利かせる。
これは「Road of Resistance」の「♪Go for Resistance」の直前と同じで、ぼくらメイトの琴線に触れる“ベビメタ節”である。
そこからスムーズに転調するためにKey=G#のⅤにあたるD#7を利かせ、サビの「♪(D#)今(G#)for your dream,(C)for your faith,(Fm)for your life」に入っていくのだが、このコードCがドラマチックな効果を生んでいる。これがこの曲のキモだろう。
もしAメロのKey=Cのままなら、「♪(G7)今(C)for your dream,(E)for your faith,(Am)for your life(F)動(G)き始め(C)た未来(Am)の地図は君(F)の中にあ(G)る」と、まるで70年代フォークソングのようにシンプルな循環コードだ。
もちろんこのメロディでC→E→Amは、ドラマチックな展開を感じさせるコード進行だが、よくあるパターンでもある。
そこをクサくならないように、またSU-が力強く歌えるように、わざと転調してKey=G#になっているので、同じコード進行が「(D#7)今(G#)for your dream,(C)for your faith,(Fm)for your life(C#)動(D#)き始め(G#)た未来(Fm)の地図は君(C#)の中にあ(D#)る」となり、AメロのドミナントコードだったCが、よりドラマチックに聴こえる。
このあたりの編曲の妙と、ド直球のメロディラインが見事に結実しているのが「Arkadia」の魅力である。
間奏部はKey=G#主体だが、ギターソロの中で一瞬転調し、またG#に戻る。
そして感動のBメロもKey=G#である。
「♪(Fm)光より速く(C#)鋼より強く(G#)使命の道にお(D#)それ(C7)なく」
「ダダッ、ダーンダーンダン、ダダッ」というリズムが力強いが、すぐに「タン、タカタタン、タカタタン、タカタタカタタカタ…」というマーチ風に変わる。
強い意志を示す歌詞のとおり、新たな一歩を踏み出したBABYMETALの行軍である。
「♪(Fm)どれほどの闇が(C#)覆い尽くそうと(G#)信じたこの道(D#)を歩こう(E#)」
この歌詞にグッと来ないメイトはいないだろう。
ここでも”ベビメタ節“よろしく1音上げて転調するが、sus4は使わない。
その代わり、サビの出だしの「今」を1拍空け、D#に戻ってKey=G#を維持し、「♪(D#→G#)for your dream,(C)for your faith,(Fm)for your life(C#)動(D#)き始め(G#)た時代(Fm)の歌は夢(C#)に響き合(D#)う」と最初は同じコード進行だが、次の「♪(D#)今(G#)no more tears,(C)no more pain,(Fm)no more cry(C#)あの(D#)誓いの(G#)大地(C7)へ」のあと、「遥か遠くへ」の部分は、3連符気味にFm→D#→C#→Cm→B♭mという下降クリシェをとり、「♪か(B♭m)がきは(B♭7)なつ(D#)アルカディ(E)ア」と半音上げてE→F#→G#という上昇転調シークエンスに転じる。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でおなじみの、下がってから上がる感動パターンである。
このEというコードは、6弦ギターでは最低音の6弦開放をルートとしていて、聴くものにどっしりとした安定感を与える。
「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の終わりのコードであり、「ギミチョコ!!」のコードであり、「THE ONE」の出だしでもあり、「META!メタ太郎」の終わりでもある。つまりこれまでのBABYMETAL楽曲では、安定した「大団円」のコードだった。
しかし、「Arkadia」ではこのEからさらに転調して上がっていくのだ。
そしてこのまま後奏に入り、E→F#→G#を繰り返した後、最後は、E→F#→C→A→Bとまたまた転調して、最後はBで「大団円」を迎える。
まさにこれまでのBABYMETAL像の安定感をかなぐり捨てて、「遥か遠く」の宇宙へと飛び立っていく感じである。


歌詞のとおり、もう涙は要らない。痛みも要らない。泣くこともない。
「あの誓いの大地」とは世界中のライブステージのこと。
そして「輝き放つアルカディア」とは、2010年の結成以来追い求めてきた、BABYMETALの音楽でひとつになった世界だろう。
『METAL GALAXY』でBABYMETALが提案しているのは、過去、現在の様々な時空に偏在する音楽を取り入れ、メタルという要素で再解釈した、世界中の人が楽しめる新しい音楽である。
米総合アルバムチャート、ビルボード200では前作『Metal Galaxy』の39位を更新し、56年ぶりに坂本九の記録を抜く13位、ロックアルバム部門では1位を獲得した。
これからBABYMETALは、SSA&大阪城H、香港Clockenflapフェス、Countdown Japan19/20@幕張メッセで2019年を終え、2020年には再び1月の幕張を皮切りに、2月からは極寒のスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ドイツ、フランス、オーストリア、ベルギー、オランダ、イギリス、フィンランド、ロシアといった未知の国々を含む「汎ヨーロッパツアー」、3月からは灼熱のタイ、マレーシア、インドネシア、台湾での「アジアツアー」、さらに6月にはスイスのGreenfieldフェスへの参加など、世界中の人々のもとへ、この音楽を届けていく。
アルバムを締めくくる「Arkadia」は、音楽で世界をひとつにするBABYMETALの新たなアンセムなのである。
(この項終わり)