解題メタル銀河(14) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日11月4日は、2013年、Japan Pop Culture Carnival in松戸にSU-がソロ活動として出演し、2014年にはニューヨーク公演@ハマースタイン・ボールルームが行われた日DEATH。

11月22-24日に行われる香港Clockenflapフェスティバル@Central Harbourfrontのタイムテーブルが発表され、BABYMETALは23日土曜日のメインステージ(Harbourflap Stage)のヘッドライナーとして22:00~22:45に出演することとなりました。
また、久しぶりに幕張メッセで行われるCountdown Japan 19/20の初日12月28日に出演することとなり、さらに2020年6月11-13日に行われるスイスのフェス、Greenfield Festivalにも出演することが決定しています。METAL GALAXYツアーは単独公演だけでなく、フェスへも積極的に出演していくという姿勢がわかります。

2019年7月6日、BEYOND THE MOON-Legend-M-@ポートメッセなごやの終盤。
ステージ中央に黒いアコースティックギターが置かれ、ひとりスポットライトを浴びるMOAが、ライブ終わりの「紙芝居」で聴き覚えのある8分の6拍子のA→B→C#というコードストロークを始めた。
MOAのギター演奏は、2016年のAPMA’sで、ロブ・ハルフォードと共に「Breaking the Law」を披露して以来である。


あのときは「本当に弾いているか」論争が起こったが、今回はまぎれもなく本当に弾いていた。だから、Legend-M-だけの物販にピックセットがあったのだ。
観客席はヤンヤの大歓声となったが、すぐにその音色のすべてを聴き取ろうとした。
ぼくはてっきり、そこからシンガーとしてのMOAのソロ曲が始まるのだろうと思ったのだが、バンドが入るとMOAはギターを離れ、激しいソロ・ダンスを始めた。
そして、MOAの後ろからSU-が現れ、「♪Twilight過去現在未来(きのうきょうあす)続く道…」と歌い始めた。
「Shine」はMOAのソロ曲ではなかった。
だが、考えてみれば、SU-とMOAが二人だけでステージに立つのは、2017年のLegend-S-@広島グリーンアリーナ以来ではないか。
2018年のBABYMETALは、CHOSEN SEVENを掲げながら、US/EUツアーでは2+2=4人体制、ジャパンツアーでは2+5=7人体制、シンガポール&オーストラリアGOOD THINGSフェスでは2+1=3人体制とトランスフォームしていった。
2019年は、横アリから「アベンジャー」が一人ずつ参戦することになり、BABYMETALは「新三人体制」になった。
オリジナルメンバーの二人だけで披露された「Shine」は、ポートメッセなごや2公演限定だった。
2019年4月に発行された『PMC Vol.13』で、苦難の2018年を経て、SU-とMOAの絆がさらに深まったことが明らかにされた。
2018年5月8日のカンサスシティ公演で、二人はYUI不在がアナウンスされないまま、ステージに立たなければならなかった。SU-は「ワンマンライブなのに怖いという印象を抱いたのは初めてでした」、「MOAが前にいるときに何かあったら私が守らなきゃ!」という気持ちだったとインタビューに答えていた。
MOAは、ライブツアーの間、お互いの気持ちを伝えあい、「曲のイメージを絵や色で表現していたので、感情の共有ができるようになった」と語っていた。
「世界のBABYMETAL」の1/3がいなくなってしまったのだから、そして、その理由も軽々しく明かせないのだから、二人は孤立し、追いつめられたような心境に陥ったことは間違いない。しかし、だからこそ二人の絆はより強くなったのだろう。
ポートメッセなごやの「Shine」で、SU-とMOAは、スモークのたかれたステージの上で、スタンドに固定されたギターを中心として向かい合い、回転し、互いに手を差し伸べ、指先に触れ、身体を交差し、見つめ合いながら踊った。


二人にしかわからない世界がそこにあった。見ているだけで鳥肌が立った。
「♪まだ終わりなき旅の途中でも 巡り合えた奇跡信じて 僕らは行く君のもとへ」
ここでいう奇跡的に巡り合えた「僕ら」とは、SU-とMOAのこと。
「君のもとへ」とは、その奇跡に立ち会った世界中の観客すべてを指しているだろう。
「♪Shining lightさあ行こう Shining roadどこまでも」
「♪時空(とき)を超えて永遠(とわ)の旅へ 時空(とき)を超えて永遠(とわ)へ」
「♪光の彼方まで 光の彼方まで 光よ彼方まで」
と歌詞も細かく変化して、高ぶる感情を伝える。
特筆すべきは、この曲でSU-が最高音までストレートに歌い切っていることだ。
「♪光よ彼方まで」の「で」は、ギターでいえば1弦21フレットのC#である。
ソプラノ歌手でもこの音は厳しい。
サラ・ブライトマンの「Time to say goodby」の転調後(Key=A)の「Lo conte」の「te」は、1弦17フレットのAに過ぎない。
SU-はライブ冒頭、「メギツネ」の「♪ここにいきーるー」の「る」で苦しんでいるのをよく見るが、この音は1弦20フレットのC。「Shine」の「で」はその半音上だから、その高さがわかるだろう。
そこから間奏は6拍子から8拍子に変わり、光速のギターソロで、フレーズが宇宙を駆け上がる。6小節48拍目で、公倍数の6拍子に戻って、Bメロへ突入。バックに流れるストリングスが、聴く者の感情をさらに高みへと押し上げていく。
「♪果てしなく続く 闇の中彷徨っても 僅かな光を手繰り寄せて」
「闇の中」とは、2018年の状況。だが、二人はわずかな光=決して揺るがない絆と、チームベビメタの励ましと、ぼくらメイトの声援を思い出したはずだ。
だから、「♪心が叫んだ かまわない 壊れても」とは、これまでのBABYMETAL像が壊れたとしても、新たに作り直せばいいという思いだろう。
「♪眩い光が僕らを照らすから」の「ら」の音は、最高音を更新し、1弦23フレットのD#である。さっきの「で」より1音も高い。この音を、もちろんSU-はファルセットを使わずにストレートに歌う。
この曲にかけた彼女の思いが、深く胸を撃つ。
一瞬の静寂のあと、アコースティックギターのコードストロークに戻る。
ポートメッセなごやでは、神器のアームカバーが光り、広い会場が幻想的な空間となった。
「♪Shining sky飛び立とう Shining roadどこまでも」
「♪はるか遠く宇宙(そら)の旅へ はるか遠く宇宙(そら)へ」
このあたりは、前回考察した「Starlight」のモチーフをそのまま援用しているようだ。
アルバムの曲順どおり、「Starlight」「Shine」「Arkadia」は、つながっているのだ。
次回はいよいよ『METAL GALAXY』を締めくくる「Arkadia」である。
(つづく)