MGWT5日目フィラデルフィア公演 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日9月14日は、2014年、BABYMETAL WORLD TOUR 2014幕張2日目@幕張メッセが行われた日DEATH。

フィラデルフィアは、2016年5月7日にElectoric Factory(3,000人)で公演を行って以来、3年ぶり2度目のお目見えである。

今回はThe Fillmore(2,500)だが、ピットのみなので、会場はパンパンに圧縮されていた。

セットリストは以下のとおり。
1.メギツネ
2.Elevator Girl (English Ver.)
3.Shanti Shanti Shanti
4.Kagerou(TATOO)
5.Starlight
6.FUTURE METAL(CG)
7.ギミチョコ!!
8.PA PA YA!!
9.Distortion
10.KARATE
11.ヘドバンギャー!!!

12.THE ONE(Unfinished English ver.)
13.Road of Resistance
メンバー:SU-METAL、MOAMETAL、アベンジャー:MOMOKOMETAL
神バンド:下手ギターDark Vader神、ベース:Imperial Guard神、ドラムス:Anthony Barone神、上手ギターShadow Trooper 神
アベンジャーは引き続きMOMOKOMETAL。
今回もお立ち台は設置されなかった。
スタンディングのみの会場だからお立ち台があった方が見やすいはずで、修理しているにしては遅すぎる。となると、やはりお立ち台で何かパフォーマンス上の問題が生じた可能性が高くなった。
もちろん、怪我などのネガティブな意味だけではなく、お立ち台がないほうが、エネルギーを温存でき、パワフルなパフォーマンスができるという選択なのかもしれない。
もう一公演見守ってみよう。
5公演目となるフィラデルフィアでもSU-の歌は密集した会場の空気を切り裂き、MOAの笑顔はすべての観客を魅了した。MOMOKOに関しては「終始ニコニコというわけではなかったのだけど、逆に緊張がいい意味で取れた感じがしましたよ」(Hetoicさん)といったツイートがあった。
アップされた写真をみると、三人とも観客とのコミュニケーションを楽しんでいる様子が伝わってくる。
今日は、ようやくハッキリ視認できた銀河神バンドの機材と、Dark Vader神、Shadow Trooper神の演奏について考察してみる。

2018年のBABYMETALは、藤岡神の逝去、YUI不在のDark Sideを歩むという演出で「Distortion」「Elevator Girl」「Kagerou(当時はTATOO)」「スターライト」の4曲を披露した。うち「Distortion」と「スターライト」は配信リリースシングルとなった。
これらの曲のうち、「Distortion」「Elevator Girl」「スターライト」は、イントロ、ボーカル部のオカズ、間奏部、後奏部などに、Djent風のギターリフが絡みついていた。
Djentとは、ギターの演奏スタイルの一つで、スウェーデンのプログレッシブメタルバンド、メシュガーのフレドリック・トーデンダル(G)が作った言葉とされる。7弦、8弦ギターを用い、ブリッジミュートやタッピングを多用して、複雑で速いリフをメロディに絡ませる。変拍子も多用されるため、非常にテクニカルなので、ぼくのイメージでは、プログレッシブメタルとフュージョンの融合という気がしている。
BABYMETALは、藤岡幹大という当代きってのヴァーチュオーゾを擁していたから、2016-17年の時点では、将来的に「アイドル色」を薄め、「THE ONE」や「From Dusk Till Dawn」 のようにプログレメタル、シンフォニックメタルの方向へ進む可能性が高かった。
しかし2018年1月に藤岡神が逝去し、YUIもワールドツアー不参加という中で、かつて藤岡神とギターバトルを繰り広げたこともある8弦ギターの使い手ISAO神を起用し、得意のDjentフレーズを盛り込んだ上記の3曲をリリースしたわけだ。
しかし、2018年USツアーでの下手Leda神、上手ISAO神という布陣の神バンドは、インターミッションで速弾きテクニックを見せつけるというより、楽曲を忠実に演奏することに徹していたように思う。神バンドソロもなくなった。とりわけ、藤岡神に代わる「新しいギタリスト」(本当は2015年に一度、神バンドに加わっている)が、どんなものか、欧米の観客が見守る中で、ISAO神のテクニックを知っているぼくは、当時、もっと前に出てほしいなあと思っていた。
ヨーロッパツアーで下手Gが大村神に代わると、彼特有の大きなアクションが見られ、藤岡神の機材をそのまま使った「前に出る音」になった。そのため「Elevator Girl」で、SU-の歌のバックに恒常的に流れるDjentのリフがはっきり聴こえた。
今回の長期にわたる全米横断ツアーでGalactic Empireのメンバーが神バンドに選ばれたのは、Djentや変拍子を含めた複雑な楽曲に耐えうる演奏力の持ち主だからだ。
そして、彼らの参加によって、神バンドの音作りはかなり変わった。上手G、下手Gとも、中域から低域がハッキリ聴こえる「粗削りでヘヴィな音」になったのだ。

ここから演奏者としての推測である。
藤岡神と大村神は、ドイツ製のプロファイリングアンプ、KEMPERを使い、Peavey 5150MkⅠ、ENGL RB、H&K GM36などの音をモデリングし、現場に用意されたスピーカーキャビネットで音を出していた。ケンパー本体は機内持ち込みできるほど小型で、かつてのロックスターのように専用ジャンボで巨大なキャビネットを持ち運ばずに済む。


それがさらに進化した。
今回の銀河神バンドのステージを全景でみると、ステージ上には、ドラムセットと、各ミュージシャンの前のモニタースピーカーがあるが、かつてステージ奥に積まれていたケンパー+マーシャルのスタックキャビネットは影も形もない。


(写真はボストン公演)

スクリーンの後ろにあるのかもしれないが、それではせっかくの音圧が殺されてしまう。
つまり、今回のセッティングは、各ミュージシャンの出音が、ステージ奥のラックタイプのケンパーに入りそこからミキサーに直で入り、そこでミキシングされて、モニターとPAから出るしくみになっているようだ。
ステージ上のケンパー+キャビネットから出ていた音は、会場の構造によっては、アンサンブルの中で特に中低域が「埋もれ」てしまうことがあった。
それが、ミキサーに直に入りPAから出ることで、より効率的に、完璧なバランスで客席に届くということなのだろう。その結果、中低域が前に出るヘヴィメタルらしい粗削りなギターの音がしっかり聴こえるのだ。
そして、今回「スターライト」を下手ピットから撮影したファンカムを見ると、Dark Vader神の指が、激しくフレットを上下しながらSU-の歌のバックでDjentのリフを弾きまくっているのがよくわかった。
またおそらくShadow Trooper神が担当する「ギミチョコ!!」のソロでは、ツインでハモったあとのワーミーが、どんどん独自なものになっていて、藤岡神が「キイーン!」と超高音で終わるところ、中高音まであがったあと「ヒィウーン↓」と下がってもう一度上がるという終わり方をしている。要するに両ギタリストが、アドリブで演奏を楽しんでいるのだ。
今回の全米横断ツアーでは、ギターバンドとしての銀河神バンドが自己主張し始めている。
かつて、「神ソロ」からの「CMIYC」でKawaii Metalの実力を疑った観客をノックアウトしたのが神バンドだった。
それもアベンジャーを含めた新生BABYMETALの魅力だ。
次は、9月15日(日本時間9月16日9:00AM)、ニューヨーク公演。