フィクションの恐ろしさ | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日8月8日は、2016年、白ミサ@大阪・なんばHatchが行われ、2017年には5大キツネ祭り in JAPAN 銀キツネ祭り@名古屋・Zepp Nagoyaが行われた日DEATH。

現在YouTubeでは、手塚プロ作品『鉄腕アトム』(1980年版)が夏休み期間限定公開されている。
ぼくは、日本初のTVアニメ、元祖ロボットアニメでもある『鉄腕アトム』のオリジナル(1963年)をリアルタイムで見た。
「♪空をこえて~ラララ、星のかなた~」というメロディは死ぬまで忘れないだろう。
そして、これによって、ぼくら1960年代生まれの世代は、世界唯一の被爆国である日本という国は、原子力を平和利用する科学立国であるというインプリンティングを受けた。
それは、水爆に由来する放射能によって巨大化した怪獣が日本を襲う『ゴジラ』(1954年)世代とは、明確に異なる点でもある。
ゴジラ世代は核=放射能を恐怖の対象とイメージするが、ぼくらアトム世代は原子力を科学=人類の英知の象徴としてイメージするのだ。1950年代生まれのオジサンと、1960年代生まれのオジサンは、こと核に関しては正反対の反応を示す傾向があることは、若い世代には全然わからないだろうなあ。
しかしまあ、本稿ではそこを問題にしたいわけではない。
『鉄腕アトム』には、人間になりたい人形の視点から人間とは何かを鋭く問う「ピノキオテーマ」や、子どもにとって「大人になること」とは何かといった哲学的・教育的テーマが重層的に仕組まれているのだが、ひとつの見方として、「労働者」のアナロジーが含まれているということがある。
手塚治虫が日本共産党シンパだったというのは有名な話だが、手塚の問題意識は、政治的なテーゼを超えていた。
1980年版は、ロボットに人格や人間との平等を認め、「ロボット人権法」が成立した未来社会で、天馬博士が設計したアトムの設計図を不正コピーし、そこにロボット三原則を無効化し、人間を裏切る悪のプログラム=「オメガ因子」を挿入されたアトラスというロボットとのライバル関係がメインテーマとして流れている。
アトラスは、「オメガ因子」によって、すぐ感情的になって戦争の惨禍をひき起こす人間を支配する「王」になり、ロボットによる平和な世界を築くことを目標にし、そのためには「多少の犠牲が出ても仕方ない」と言い放つ。そして、同じ能力を持つアトムに対して、幾度も「仲間になれ」と誘う。
だが、アトムは悩みながらもアトラスの誘いを拒否し、人間のためにアトラスやアトラスの差し向ける悪のロボットと戦う。そして勝つ。アトムの活躍で、いつもアトラスの陰謀は退けられ、人間社会は安全に守られる。


要するに、アトラスは「労働者階級による独裁革命を目指す共産主義指導者」であり、アトムは、すぐれた能力を持ちながら、アトラスの独善にうさん臭いものを感じ、共産主義には与しない「忠実な労働者」なのですね。
『鉄腕アトム』は完全なフィクションであり、子ども向けアニメに過ぎないのだけれど、ぼくら日本人の子どもは、アトムに自己投影しながら、科学的思考と、労働者による「革命」には与しないという感性を知らず知らずのうちに身につけたのである。

今から2年前の2017年8月、韓国で『軍艦島』という映画が封切られた。
監督は、韓国歴代観客動員数第3位を誇るリュ・スンワン、出演者はソン・ジュンギ、ソ・ジソブ、ファン・ジョンミンら、豪華なキャスト。
ロードショウは韓国の全映画館の85%を占める2168スクリーンで行われ、いわば国を挙げた夏休みの超大作愛国映画だった。
ストーリーは、第二次世界大戦末期、長崎県端島、通称軍艦島に、炭鉱夫として強制徴用された朝鮮人400人が、ロクに食べ物も与えられず、地獄のような奴隷労働を強いられ、残酷に殺されたり、一緒に来た朝鮮人女性が遊郭に売られたりする。果ては、日本軍が強制労働の犯罪を隠すため、徴用工たちを炭坑に閉じ込めてしまうが、朝鮮人たちは旭日旗を引きちぎり、命がけで炭鉱の爆破を試み、見事脱出に成功するという内容だった。


公開から約1ヶ月で650万人を動員したが、その後、なぜか鈍化した。
動員が思ったほど伸びなかった理由は、さすがに史実にない炭鉱爆破→脱出というドラマチックなエンタメ性が「歴史の悲劇」にそぐわないと反発されたことと、言葉巧みに同胞を強制労働に駆り出す朝鮮人の口入れ屋=「親日派」が悪役となっていたことらしい。(ニューズウィーク日本版2017年8月19日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8242.php
「朝鮮人にも日本協力者がいた」ということは、国民感情にそぐわなかったようだ。
現在韓国で起こっている「反日運動」の大騒ぎは、日本政府の輸出管理の厳格化を、「徴用工判決への報復」ととらえることから生じている。
しかしこのブログで何度も言っているように、これは明らかなカン違いである。
この措置は、3年間も日本政府担当者の問い合わせに答えない文政権の輸出管理行政の在り方への危惧から生じたものであり、禁輸でも制裁でもない。
その証拠に、本日、7月4日の手続き厳格化以来初の韓国向けのレジスト輸出(サムソングループ向けと思われる)が許可された。ちゃんと手続きを踏み、不正輸出の危険性がない企業であるとの確認がとれれば、今まで通りなのだ。これは8月28日以降のすべての輸出品についても同じ。そのことを日本政府は最初からきちんと説明している。
韓国文政権と韓国メディア、一部日本のオールドメディア、韓国「ネチズン」は、「経済侵略だ」「全面戦争だ」「二度と負けない」と感情的に大騒ぎしていたが、それは、まったくのミスリードであり、韓国民を日本から離間させる以外には、無意味なものだった。
なぜここまで、感情的になってしまうのか。
それは、日本人が共産革命を絶対信用しないように、韓国人が「日本は韓国人を虐げた極悪非道の敵である」というフィクショナルな刷り込みをされているからである。
映画『軍艦島』について、ウィキペディアには、以下のような記述がある。
―引用(ウィキペディア『軍艦島』より)―
・映画に先立つこと7月3日から10日の1週間、広告宣伝として「Island of Hell」など過激なコピーと共にニューヨークタイムズスクエアの電光掲示板に流された炭鉱夫の写真が軍艦島と無関係な写真であり、炭鉱夫も日本人であったことを指摘され、広報側はフェイクだったことを認めた。
・当時を知る端島の旧島民やその子孫らは、映画と事実が違う点をいくつか挙げて、反論声明を駐日韓国大使と在日本大韓民国民団などに送った。
・映画では、憲兵による朝鮮人への激しい暴行を描いているが、警察官が2人ほど駐在していただけである。
・朝鮮人労働者には家族連れもいて、その子供らは日本人と同じ学校で一緒に学んでおり、映画のように奴隷のごとく「働かされていた」ということはない。
・映画では、朝鮮人労働者が地下1,000メートルの坑道での労働を強制させられたことになっているが、実際の坑道は地下710メートルを超えていたに留まっており、送風機が備えつけられ、水飲み場もあった。よって、坑道内は意外に過ごしやすく、少なくとも灼熱の環境などではなかった。
・多くの朝鮮人労働者が殺されたこともなく、米軍による空襲も1945年(昭和20年)7月31日の1度だけであり、その時に発電所などの施設が空爆された。
―引用終わり―
つまり、「強制的に駆り出され、奴隷労働を強いられた朝鮮人徴用工」という「悲劇」イメージそのものが、史実ではなくフィクションなのだ。
だが、韓国の場合、そのフィクショナルな刷り込みが、歴代政府によって、しかも実際には併合時代も、戦後も、韓国の発展に協力してきた日本という国、日本人という国民に対してなされている。
それは、大韓民国憲法前文の規定「大韓国民は3・1運動で成立した大韓民国臨時政府の法統」を継承すると書かれていることに起因する。
大韓民国臨時政府とは、戦時中、上海で設立された亡命政府であり、1940年5月、四郎理念として次のような「党議」を発表している。
―引用(ウィキペディア「大韓民国臨時政府」より)―
我が韓国は五千年の自主独立の国家である。日本の強占のもとに置かれ、敵の政治的蹂躙、経済の破滅、文化の抹殺にあい、死滅の道を歩んできた。内では民族の自立を実現できず、外では世界の共栄を図ることができなかった。本党は、ここに革命的手段をもって日本の侵略勢力を撲滅し、国土と主権を完全に回復する。(以下略)
―引用―
これが、大韓民国憲法前文にいう「法統」であり、現文政権はこの立場を鮮明に打ち出している。
「5000年の自主独立の歴史を持ち、日本のもとで経済の破滅、文化の抹殺にあい」云々というのは、ぼくら日本人から見ると全くのフィクションであるが、これが韓国という国の国是になっているのだ。
フィクショナルな刷り込みは、時に「事実」より強く、人間を支配する。
フィクションは恐ろしい。